うそをついている自分を
背負うのが苦しいばかりに
魂がこそどろのように
逃げていく女がいる
うつくしいものになりたかった
きよらかなものになりたかった
そのためにこぎたない泥棒をして
いかにもうつくしい自分をこしらえた
偽物の自分を
かつらのようにかぶって
見せびらかすように表を歩くと
神の目をしたこどもたちが
指をさして悲しげに歌う
ごらん
天使を映した鏡をまとい
馬鹿が歩いていく
猿のしっぽを
得意げにたてながら
馬鹿が歩いていく
正体を見抜かれた馬鹿が
逃げていく
うそをついている自分が
しびれるほど恥ずかしくて
馬鹿は自分を捨てて
こそどろのように逃げていく
ちまたに
魂に逃げられた
うその自分が
不用品のようにたくさん
転がり始める