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漱石枕流(そうせきちんりゅう)という言葉がある。
「石に漱(くちすす)ぎ流れに枕す」という意味だが、本来は「枕石漱流」(流れに口漱ぎ、石に枕す)である。
本来の「枕石漱流」の意味は、浮世を遠ざかり、山野の景勝の地に隠遁して自由に生活を送る様子をいうのだそうだ。
中国の故事によると、晋の孫楚がこの詞(ことば)を王済の前で、「流れに口漱ぎ、石に枕す」と言うべきところをうっかりと、「石に口漱ぎ、流れに枕す」と言ってしまい、「石で口を漱ぐのは、歯を磨くためであり、流れを枕とするは、耳を洗うためです」と、うまくこじつけて言い逃れたという。
そこから負け惜しみが強く、自分の誤りに、屁理屈を付けて言い逃れることの譬(たとえ)をいう、とある。
因みに、夏目漱石の「漱石」や「流石」と書いて「さすが」と読むのもここからきているのだそうだ。
堅いものと軟らかいものの対比として取り上げられることも多い、石と水。
あるお寺の掲示板にあった詞(ことば)。
至りて堅きは石なり
至りて柔らかなるは水なり
水よく石を穿(うが)つ
蓮如上人
私達の身の回りで極めて硬いというと"石" 、反対に軟らかいものといえば"水"ということになる。
「継続は力なり」というが、その軟らかい"水"が"石"に孔をあける様に、「たゆまぬ努力をすれば、大願は必ずや成就するであろう」ということらしい。
また、別の意味で僕なりに解釈すれば、どんなに硬い石よりも、軟らかい水のほうが結果としては強いのではないかと思う。
人生、肩肘張って生きてきたこともある。若いときはそれでもいいだろう。しかし歳とともに、それでは疲れてしまう。
少し肩の力を抜いて生きてみる事も大事だと思うようになった。
それはダンスに於いても同じ事がいえる。肩や腰に力が入っていてはダンスは踊れない。
足首、膝、腰、肩それぞれの関節を柔らかく使って、身体全体の力を抜き、心もリラックスさせて始めていい踊りができるのだ。
但し芯には強さが必用なのであるが・・・。
どんな器をも隙間なく満たす事ができる水のように、柔軟な生き方ができたらいいなと、この詞を見て思ったのです。
2006.02.12