今月8日から阪神甲子園球場で行われてきた第99回全国高校野球選手権大会は、大会14日目の23日に決勝戦を迎えました。今年の決勝戦は、1大会6本塁打の大会新記録を打ち立てた中村奨成選手を擁する広陵高校(広島)と、春夏通じて初の決勝進出を果たした花咲徳栄高校が激突。どちらが勝っても初優勝となるこの一戦、全国3839校の頂点に立ったのは?
両チームのスタメン
広陵 花咲徳栄
1(右)高田誠也 (中)太刀岡蓮
2(二)吉岡広貴 (二)千丸剛
3(捕)中村奨成 (左)西川愛也
4(左)加川大樹 (一)野村佑希
5(一)大橋昇輝 (捕)須永光
6(中)佐藤勇治 (三)高井悠太郎
7(遊)丸山壮史 (右)小川恩
8(三)松岡直輝 (投)綱脇慧
9(投)平元銀次郎 (遊)岩瀬誠良
決勝戦は初回から試合が動きました。1回表、花咲徳栄は先頭の太刀岡がセンター前ヒット、続く千丸がライト線への2塁打を放ち、無死2,3塁のチャンス。この場面で西川が広陵先発・平元の2球目を打ち返す。詰まった打球は2塁手の頭上を越えてセンター前にポトリ。この間に2人のランナーが生還。花咲徳栄が3連打で2点を先行します。
2点を追う広陵は、1回裏に1死から2番の吉岡がヒットで出塁すると、3番・中村がレフト線へ2塁打。こちらも連打でチャンスを作ったが、4番・加川は空振り三振、大橋は投手ゴロに倒れて2者残塁に終わる。2回、2死2塁で9番・平元が徳栄先発・綱脇から1塁線を破るタイムリー2塁打を放って1点を返します。
3回、徳栄は2死2,3塁から須永が低めの直球をセンター前に弾き返して2点を追加する。広陵はその裏、中村に2度目の打席が回ったが、綱脇の変化球の前に空振り三振。2死後、途中出場の村上嘉一がセンター前ヒットと盗塁で2塁に進むと、大橋がセンターへのタイムリー2塁打で1点を返す。3回まで終わり、花咲徳栄が4-2とリード。
5回、花咲徳栄は太刀岡の四球、千丸のヒットで無死1,3塁と攻め立て、西川が2球目の直球を捉え、右中間オーバーのタイムリー3塁打で2点を追加。なおも西川を3塁に置いて、野村のレフト前タイムリーでもう1点追加。これで広陵先発・平元はノックアウト。山本雅也が2番手に上がるが、徳栄打線の勢いは止まりません。1死2塁で高井がセンターへのタイムリー2塁打でこの回4点目。さらに2死後、相手のエラーと岩瀬のタイムリーヒットで2点を追加し、この回一挙6得点。スコアも10-2と大差がつく。
広陵も諦めません。先頭の高田がヒットで出塁すると、吉岡の左中間へのタイムリー2塁打で1点返す。徳栄は先発の綱脇を下げ、清水達也が2番手のマウンドに上がる。清水は中村に内野安打を許して2人の走者を背負ったが、村上を2塁ゴロ併殺打、大橋を3球三振に退け、広陵の反撃を1点に抑えます。
6回、徳栄は1死から西川がレフトへの2塁打のあと、野村がレフト前に弾き返すと、相手の左翼手が後逸する間に2塁走者が生還し、打った野村は3塁へ。記録はタイムリー3塁打。この後2死1塁から高井の2塁打、小川の死球で満塁とし、清水が遊撃ゴロ→遊撃手が2塁に送球したが、2塁手がボールをこぼしてしまう。走者も2人還り、13-3となる。続く岩瀬にもタイムリーが生まれ、この回4点追加で14-3と突き放した。
徳栄2番手・清水は、6回裏に1死1,2塁から山本にタイムリーを打たれて1点を失ったが、7回と8回は無得点に抑える。
徳栄10点リードで迎えた9回裏、1死1塁から中村が初球ストレートを強振し、レフト線への痛烈な2塁打。2死後、大橋が四球を選んで満塁となる。しかし、佐藤が初球を打ち上げてしまい、ライトフライで試合終了。花咲徳栄が14-4で広陵を下しました。
第99回全国高校野球選手権大会 決勝
花咲徳栄(埼玉)-広陵(広島)
(観衆=43000人)
徳栄 202 064 000 14
広陵 011 011 000 4
【投手】
(花)綱脇、清水-須永
(広)平元、山本、森-中村
今年の夏の甲子園の決勝は、徳栄16安打、広陵13安打、両チーム合わせて29本のヒットが飛び交う乱打戦となりましたが、花咲徳栄が広陵に10点差の大差をつけての圧勝で、甲子園初優勝を果たしました。3回までは取られたら取り返すという展開が続きましたが、徳栄が5回に6点、6回に4点を奪って広陵を突き放しました。関東勢は一昨年の東海大相模、昨年の作新学院に続き、3年連続での優勝。埼玉県勢としては夏の選手権大会で悲願の初制覇。埼玉にようやく深紅の大優勝旗が渡りました…。埼玉県民の私も「ついにこの時が来たんだなあ」と感慨に浸ってます。
花咲徳栄はこの試合、3番の西川選手が3安打4打点の大活躍。1回の打席で先制の2点タイムリーヒット、第3打席では2点タイムリー3塁打、6回にも2塁打を放ち、ホームランが出ればサイクルヒットでした。4番の野村選手、9番の岩瀬選手も2打席連続でタイムリー安打を打っております。投手陣は先発の綱脇投手が、広陵の主砲・中村選手から変化球で三振を奪い、5回途中から2番手で登板した清水投手は、終盤の3イニングを無失点に抑えました。
1回戦から打線が爆発しまくった徳栄は、全試合で9得点以上。3回戦、準々決勝、決勝の3試合で2ケタ得点をマーク。全6試合で61得点、ヒットの数も80安打であります。全試合9得点以上で優勝したのは、1921年の和歌山中(現・和歌山県立桐蔭高校)以来96年ぶりだそうです。
広陵高校は守備での細かいミスが相次ぎ14失点。またも決勝で涙を呑み、4度目の準優勝となりました。中村選手が決勝でも3本のヒットを放ちながらも、得点につながらず…。甲子園を大いに沸かせてくれた中村選手は、この大会で28打数19安打、打率.679、6本塁打、17打点。優勝こそはなかったけど、この夏のMVPは間違いなく中村選手だと思います。今後の進路ではプロ入り志望を明言。秋のドラフト会議では清宮幸太郎選手(早実)、安田尚憲選手(履正社)と同じく、1位で指名されるでしょう。
花咲徳栄の優勝で幕を閉じる99回目の夏の甲子園。今年は史上最多となる68本のホームランが生まれました。開幕から毎日のようにホームランが出てたなぁって思いました。広陵・中村選手が1試合2本塁打を2度もやってのけたり、盛岡大附VS済美戦の「満塁ホームラン返し」というのもありました。
来年は100回目の記念大会。出場校も56校に増え、埼玉からは「北埼玉」と「南埼玉」の2校が出場します。今年の夏の王者・花咲徳栄は、春日部共栄と同じ北埼玉大会、浦和学院と聖望学園は南埼玉大会に出場。花咲徳栄高校の選手の皆さん、そして家族の皆さん、甲子園初優勝おめでとうございます。あなたたちは埼玉県民の誇りです!