ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

南町田グランベリーパーク号を撮影しました(6)

2025年03月09日 00時00分00秒 | 写真

6回目の、南町田グランベリーパーク号の東急2020系2137Fです。

ホームドアのために完全に見えませんが、Grandberry Parkの可愛らしいデザインが施されたヘッドマークが付けられています。2020系に合っています。

 ライナスとウッドストックです。ライナスと言えば、安全毛布とカボチャ大王が思い浮かびますが、そうかと思えば哲学的な、あるいは格言的なフレーズを口にします。これが4コマ漫画に独特の味わいと品格を与えています。ただ、聖書からの引用も多いので、我々にはわかりにくい部分もあることは否定できません。

南町田グランベリーパーク号ということからすれば、やはり、この世界一有名なビーグル犬が不可欠です。ちなみに、二子玉川ライズのオープン時からスヌーピータウンがあります。

 車内も南町田グランベリーパークの広告だけです。iPhone15 Proで撮影していますが、さすがに空いていないと無理でしょう。結構楽しめます。しかも、2020系にはテレビ画面もあります。次はいつ行こうかな、などと思いながら見ています。

 東急線には、1980年代からTOQ BOX号、TOKYU CABLE TV号、BUNKAMURA号、Shibuya HIkarie号などと、ラッピングトレイン、一編成まるごと一社独占広告という列車の伝統があります。8500系8637FがBUNKAMURA号であった時には、乗る度にコンサートや展覧会などの広告を見て「これ、行ってみたいな」などと思っていました。実際に行ったことも何度となくあります。

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これを言ってしまったら話が止まるか、相手を怒らせるか…

2025年03月08日 00時00分00秒 | 国際・政治

 兵庫県議会の百条委員会が、3月4日に調査報告書を全会一致で可決しました。そして、5日には兵庫県議会がこの調査報告書を了承しました。

 これに対する形で、兵庫県知事が5日の定例記者会見で、次のように発言しています。

 「議会側からの文書問題に関する一つの見解が示された。しっかり受け止めていきたい。そして改めるべきことは改めていく。例えば、物品受領のルール作り。それからハラスメント研修をしっかりやっていく。斎藤県政にとって大事なことなので、議会からの声を受け止めて、県政を進めていきたいと考えている。」

 「県としては、文書問題に関する初動対応、懲戒処分の対応も、弁護士とも相談しながらやってきた。文書については誹謗(ひぼう)中傷性が高い文書ということで、作られた方を調査したということ。四つの非違行為も判明したので、懲戒処分した。内容、手続きともに問題なかったと考えている。」

 「公益通報の関係については、有識者の中でも様々な見解がある。違法性があると指摘する方も百条委にいたが、違法性がなかったとおっしゃる方もいる。県としては違法性の問題はなく、適切だったと考えている。」

 「違法性についての可能性ということを言っているので、可能性というからには他の可能性もあるということだと思う。」

 〈以上は、朝日新聞社のサイトに2025年3月5日20時50分付で掲載された「斎藤知事、処分の元局長に『不服申し立てしなかった』 会見一問一答」(https://digital.asahi.com/articles/AST353GF3T35PIHB003M.html?iref=pc_extlink)より引用しました。この後の引用も同じです。〉

 記事を見て「いやあ、これを言っちまったか」と思いました。百条委員会の調査報告書を「一つの見解」というあっさりとした、というより冷ややかな表現で切り捨てています。しかもこのフレーズが繰り返されたとのことです(似たような単語が使われることによって結果的な繰り返しになったのかもしれません)。妻とも話したのですが、こんな言葉を口に出されたら、話が止まるか、火に油を注ぐかのどちらかでしょう。後にも発言は続いていますが、「そして改めるべきことは改めていく」や「議会からの声を受け止めて、県政を進めていきたいと考えている」の意味が薄められています。

 それに、「一つの見解」が流行したら困ったことになるでしょう。例えば、子供が悪いことをして親なり教師なりが叱ったとして、子供が「それは一つの見解だよね」なんて言うかもしれません。これでは躾も教育も成り立ちません。ただ、有名な誰かが多用したことで人口に膾炙した「それはあなたの意見ですよね」、「それはあなたの感想ですよね」と根は同じです。これらも話、議論などを止めてしまいます。コミュニケーションを断ち切ってしまいかねません。

 まあ、「それは一つの見解だよね」、「それはあなたの意見ですよね」、「それはあなたの感想ですよね」の応用範囲は広いのかもしれません。あまり使って欲しくないのですが……。

 もう一つ、この定例記者会見で、次のようなやりとりがありました。元県民局長への救済、具体的には「処分の撤回」(と上記記事には記されていますが、行政法学の観点からすれば、懲戒処分が違法であるならば取消、当初は適法であったなら撤回です〕や名誉回復はあるのかという質疑に関連するものです。

 質疑:「知事は亡くなった県民局長をあえて毀損(きそん)しようとしている。今日の記者会見での県民局長へのプライバシー情報に対する言及を取り消さないのか。」

 応答:「倫理上極めて問題のある文書というものは、これまでも申し上げてたし、その内容について申し上げるということ。」

 質疑の言葉をどなたが発したのかはわかりませんが、憤怒、義憤の念がかなり強く表されています。これに対し、応答は、おそらく、良く言えば冷静沈着という感じでなされたのでしょう。要するに「死人に口なし」または「死者に鞭打つ」ということでしょうか。

 以上を見てすぐに思い出したのが森友問題です。近畿財務局の職員が自死に追い込まれたことがわかった時の政府の反応がまさにこれでした。言葉などは全く違っていますし、たしか森友問題の際には何ら積極的反応が示されなかった、あるいは「トカゲの尻尾切り」のような対応であったと記憶していますが、それらが「死人に口なし」または「死者に鞭打つ」という態度の表明でした。

 しかも、「倫理上極めて問題のある文書」を御本人は目にしていないことも明言されています。私は「確認してないのに、よく断言できるな」と感心しました。また、「倫理上極めて問題のある文書」は百条委員会の調査報告書で問題とされた公益通報と全く関係のない事柄であり、懲戒処分を正当化することはできないと考えられます。

 兵庫県政の混乱が続いていますが、百条委員会の調査報告書を了承した以上、兵庫県議会は知事への不信任決議を行うべきでしょう。私がここに記すよりも前に少なからぬ方々が指摘されているはずですが、不信任決議が筋です。昨年の秋に知事選が行われましたが、議会議員選挙は行われていませんし、昨年9月に兵庫県議会は不信任決議を行いました(勿論、可決です)。これに対して知事が県議会を解散するかもしれませんが、地方自治法が想定しているのですから、法律上の問題は全くありません。むしろ、このままゴタゴタを抱えて続けるほうが問題です。

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ようやく、オンラインでの出席が可能に

2025年03月07日 00時00分00秒 | 国際・政治

 2020年のCOVID-19によって、国会や地方公共団体の議会に様々な問題があることが表面化しました。その一つが、オンライン会議の応用であるオンライン議会の実現が困難であることであることです。法律の解釈の問題があったからですが、即時的な対応ができなかったのも事実です。

 そして、オンライン会議は、感染症の流行という事態に対処するためだけでなく、何らかの事情によって会議場に足を向けることができない人であっても会議に出席できるようにするものであることが理解されてきました。実際に、業種によってはオンライン会議(併用を含みます。以下も同様です)の活用が進んでいます。

 このように記したのは、朝日新聞2025年3月6日付朝刊19面14版(神奈川、川崎版)に「オンライン出席 市議会委可能に 川崎 育児・介護などで」という記事が掲載されているからです。朝日新聞社のサイトには、同日11時0分付で「育児、介護でもオンラインで委員会出席可 川崎市議会が条例改正へ」(https://digital.asahi.com/articles/AST3540XHT35ULOB00CM.html?iref=pc_preftop_kanagawa)として掲載されています。

 実は、川崎市議会については既にオンライン開催が可能であるようにされています。川崎市議会委員会条例には「委員会開催の特例」と見出しが付けられた第13条の2があり、次のように定められています。

 同第1項:「委員長は、新型コロナウイルス感染症その他重大な感染症のまん延を防止するために必要があると認める場合又は大規模な災害の発生等により委員会を招集する場所に参集することが困難であると認める場合は、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法(以下「オンラインによる方法」という。)を活用した委員会を開催することができる。」

 同第2項:「委員は、前項の場合において、オンラインによる方法により委員会に出席することを希望するときは、あらかじめ委員長の許可を得なければならない。」

 同第3項:「前項の許可を得て委員会に出席した委員は、次条、第15条第1項及び第29条の出席委員とする。」

 同第4項:「オンラインによる方法を活用した委員会の開催方法その他必要な事項は、議長が別に定める。」

 現在は、川崎市議会の委員会をオンラインで開くことができる場合、またはオンラインで出席できる場合は、重大な感染症または大規模災害の発生に限られている訳です。しかし、川崎市議会の女性議員が組織する「女性議員ネットワーク会議」は、2024年7月に、委員会へのオンライン出席について柔軟な対応を求める提言書を、市議会議長に提出していました。ようやく、今月開かれている市議会において、川崎市議会委員会条例の改正が行われることになりました(他の条例などの改正かもしれません)。3月5日に開かれた議会運営委員会で決められました。

 改正案は、上記記事の表現を借りるならば「妊娠や育児、介護、病気、けがを理由に市議がオンラインで委員会に出席できるようにする」というものです。現在、川崎市議会では定例会が開かれており、その最終日である3月19日に改正案を議決するとのことです。おそらく、全会一致か賛成多数で可決されるでしょう。

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詳しい状況を知りたくなる 奈良県VS.香芝市

2025年03月06日 23時00分00秒 | 法律学

 朝日新聞社のサイトに、今日(2025年3月6日)の19時0分付で「奈良・香芝市が県を提訴の方針 歩道橋架け替え工事の費用負担めぐり」(https://digital.asahi.com/articles/AST362SPGT36POMB00DM.html)という記事が掲載されています。気になるので、ここで取り上げておきます。

 香芝市に国道168号が通っています。この辺りでの通称は香芝王寺道路というそうです。その道路にある歩道橋の架け替え費用をめぐって、奈良県と香芝市が対立しています。

 この歩道橋を、以下では、設置されている場所より上中歩道橋としておきましょう。上中歩道橋を管理してきたのは香芝市教育委員会でした。一方、国道を管理しているのは奈良県です。2023年度に国道168号の拡幅がなされるにあたり、奈良県は上中歩道橋を架け替え、2024年4月より供用としたのですが、香芝市は架け替え費用を負担する責任はないと主張していたようです。

 いつのことかはわかりませんが、奈良県と香芝市は、少なくとも上中歩道橋の架け替え費用負担に関して基本協定を結んでいたようです。協定ということは、一種の行政契約であると考えてよいでしょう。奈良県の前知事と香芝市の前市長が両自治体の代表として基本協定を結んでいるようなので、全国知事会のサイトに掲載されている「歴代公選知事名簿(都道府県別)」の奈良県の欄を参照すると、2023年5月2日より前の話であるということがわかります(現在の香芝市長の任期は2024年6月3日より始まっています)。

 奈良県は、基本協定の存在などを理由として、香芝市におよそ5100万円の負担を求めていました。そして、3月4日に開かれた奈良県議会において、奈良県知事が香芝市に損害賠償を求めて提訴する考えを示していました。朝日新聞社のサイトに3月4日20時0分付で掲載された「奈良知事、香芝市相手に『裁判起こす』 歩道橋の工事費用めぐり対立」(https://digital.asahi.com/articles/AST343FXQT34POMB002M.html?iref=pc_extlink)という記事によると、香芝市長が2024年12月の香芝市議会において奈良県の要求の内容が地方財政法に抵触する可能性がある旨を主張しており、奈良県知事は、基本協定に基づいた正当な負担割合であるとして、香芝市に支払を求めると主張しています。そして、香芝市が支払いに応じなければ、6月議会において提訴関連の議案を提出する意向を奈良県議会において示しています。

 〈なお、有料会員でなければ全文を読むことはできませんが、奈良新聞デジタルに2025年3月5日付で掲載された「歩道橋架け替え工事費を巡り奈良県と香芝市が対立 地方財政法の解釈で平行線 山下知事、訴訟の考えも」(https://www.nara-np.co.jp/news/20250305213501.html)という記事もあります。〉

 これに対し、香芝市は、国道の拡幅も歩道橋の撤去も求めていないこと、基本協定の期限が切れていることを理由として、負担を拒否していました。もっとも、上中歩道橋の撤去費用などを除いた2200万円ほどであれば支払うとも述べています。そして、売り言葉に買い言葉ということなのか、香芝市は、奈良県を被告として、上中歩道橋の撤去に係る債務の不存在の確認を求めて提訴する方針を示しました。3月7日の香芝市議会で議決されれば、ということになります。

 上記3月6日付記事には基本協定の具体的な内容などが書かれていませんし、おそらくGoogleなどで検索をかけてもこの基本協定を参照することはできないでしょうが、問題はこの基本協定の内容にあると考えられます。地方財政法には、次のような規定があるからです。

 

 (都道府県の行う建設事業に対する市町村の負担)

 第27条 都道府県の行う土木その他の建設事業(高等学校の施設の建設事業を除く。)でその区域内の市町村を利するものについては、都道府県は、当該建設事業による受益の限度において、当該市町村に対し、当該建設事業に要する経費の一部を負担させることができる。

 2 前項の経費について市町村が負担すべき金額は、当該市町村の意見を聞き、当該都道府県の議会の議決を経て、これを定めなければならない。

 3 前項の規定による市町村が負担すべき金額について不服がある市町村は、当該金額の決定があつた日から21日以内に、総務大臣に対し、異議を申し出ることができる。

 4 総務大臣は、前項の異議の申出を受けた場合において特別の必要があると認めるときは、当該市町村の負担すべき金額を更正することができる。

 5 地方自治法第257条の規定は、前項の場合に、これを準用する。

 6 総務大臣は、第4項の規定により市町村の負担すべき金額を更正しようとするときは、地方財政審議会の意見を聴かなければならない。

 (都道府県が市町村に負担させてはならない経費)

 第27条の2 都道府県は、国又は都道府県が実施し、国及び都道府県がその経費を負担する道路、河川、砂防、港湾及び海岸に係る土木施設についての大規模かつ広域にわたる事業で政令で定めるものに要する経費で都道府県が負担すべきものとされているものの全部又は一部を市町村に負担させてはならない。

 

 また、地方財政法施行令には、次のような規定が置かれています。

 

 (都道府県が市町村に経費を負担させてはならない事業)

 第51条 法第27条の2に規定する事業で政令で定めるものは、次に掲げるものとする。

 一 道路法(昭和27年法律第180号)第12条及び第13条の規定により、国土交通大臣又は都道府県が行う一般国道の新設、改築及び災害復旧に関する工事

 二 次に掲げる都道府県道(道路法第3条第3号の都道府県道をいう。以下この号において同じ。)の新設、改築及び災害復旧に関する工事

  イ 道路法第56条の規定による国土交通大臣の指定を受けた都道府県道

  ロ イに掲げるもののほか、資源の開発、産業の振興その他国の施策上特に整備を行う必要があると認められる都道府県道

 三 砂防法(明治30年法律第29号)第6条第1項の規定により国土交通大臣が施行する砂防工事

 四 海岸法(昭和31年法律第101号)第6条第1項の規定により、主務大臣が都道府県知事である海岸管理者に代わつて施行する海岸保全施設の新設、改良及び災害復旧に関する工事

 

 さらに、道路法第12条および第13条は、次のような規定です。

 

 (国道の新設又は改築)

 第12条 国道の新設又は改築は、国土交通大臣が行う。ただし、工事の規模が小であるものその他政令で定める特別の事情により都道府県がその工事を施行することが適当であると認められるものについては、その工事に係る路線の部分の存する都道府県が行う。

 (国道の維持、修繕その他の管理)

 第13条 前条に規定するものを除くほか、国道の維持、修繕、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法(昭和26年法律第97号)の規定の適用を受ける災害復旧事業(以下「災害復旧」という。)その他の管理は、政令で指定する区間(以下「指定区間」という。)内については国土交通大臣が行い、その他の部分については都道府県がその路線の当該都道府県の区域内に存する部分について行う。

 2 国土交通大臣は、政令で定めるところにより、指定区間内の国道の維持、修繕及び災害復旧以外の管理を当該部分の存する都道府県又は指定市が行うこととすることができる。

 3 国土交通大臣は、工事が高度の技術を要する場合、高度の機械力を使用して実施することが適当であると認める場合又は都道府県の区域の境界に係る場合においては、都道府県に代わつて自ら指定区間外の国道の災害復旧に関する工事を行うことができる。この場合においては、国土交通大臣は、あらかじめその旨を当該都道府県に通知しなければならない。

 4 第1項の規定により都道府県が維持、修繕、災害復旧その他の管理を行う場合において、その行おうとする国道の修繕又は災害復旧に関する工事が都道府県の区域の境界に係るときは、関係都道府県は、あらかじめ修繕又は災害復旧に関する工事の設計及び実施計画について協議しなければならない。

 5 第7条第5項及び第6項前段の規定は、前項の規定による協議が成立しない場合について準用する。

 6 前項において準用する第7条第5項及び第6項前段の規定により国土交通大臣が裁定をした場合においては、第4項の規定による協議が成立したものとみなす。

 

 奈良県と香芝市との対立は、国道168号の拡幅および上中歩道橋に関するものなので、まずは地方財政法第27条、第27条の2のいずれに該当するのかが問われることでしょう。国道の拡幅は第27条の2のほうに該当する可能性がありますが、上中歩道橋の架け替えは第27条のほうに該当するでしょう。但し、国道の拡幅と歩道橋の架け替えとを一体として捉えるならば第27条の2、さらに地方財政法施行令第51条第1号にいう「国土交通大臣又は都道府県が行う一般国道の新設、改築及び災害復旧に関する工事」に該当するかもしれません。

 そして、基本協定の内容が国道の拡幅と歩道橋の架け替えとを一体として捉えて奈良県が香芝市に費用の負担を求めるものであれば、少なくとも部分的には地方財政法第27条の2に違反するものと解することができます。これに対し、基本協定が歩道橋の架け替えだけを対象として香芝市に費用の負担を求めるものであれば、地方財政法第27条の趣旨に合致し、かつ同第27条の2に違反しないものであると解することができます。ただ、香芝市が望んでいないという主張もあるので、そうなれば同第27条第1項にいう「その区域内の市町村を利するもの」であるのか、香芝市に「当該建設事業による受益」があるのかも問われうるでしょう。同第27条第1項の文言による限り、「その区域内の市町村を利する」か否か、「当該建設事業による受益」の有無または程度は、市町村の主張や意思とは関係なく、何らかの客観的(?)基準に従って算定されるものと考えられます。基本協定の内容によっては香芝市に不利な状況とも言えますが、限られた情報だけでは何とも言えません。

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長良川鉄道越美南線の一部が廃止?

2025年03月04日 22時00分00秒 | 社会・経済

 この10年、20年くらいの公共交通機関、とくに鉄道の状況を見ていると、1980年代の国鉄改革は何だったのか、残されたものは何だったのかと考えることがあります。JRグループで存廃問題が生じている路線の全てではありませんが、多くの路線が、実のところ、1980年代にも存続か廃線かの検討がなされ、一定の基準によって特定地方交通線への指定を免れ、存続となりました。その代表例として留萌本線をあげておきましょう。

 また、特定地方交通線に指定された路線は第三セクターに転換されるかバス路線になりました。既に廃止されている元特定地方交通線もいくつかありますし、最近では、いすみ鉄道が危機的状況にあります。

 このような流れの中で、岐阜県の第三セクター鉄道が、一部とは言え廃線を検討することになりそうです。共同通信社が、今日(2025年3月4日)の19時14分付で「岐阜・長良川鉄道の一部廃線検討 施設老朽化、沿線自治体負担増で」(https://www.47news.jp/12256106.html)として報じています。

 長良川鉄道は、国鉄の特定地方交通線にして第二次廃止対象路線であった越美南線(72.1km)を運営する会社です。路線名称からおわかりでしょうが、越は越前、美は美濃を意味します。元々、髙山本線および太多線との接続駅である美濃太田駅からハピラインふくい線(旧北陸本線)との接続駅である越前花堂駅までの路線として計画され、美濃太田駅から北濃駅までの区間が越美南線、越前花堂駅から九頭竜湖駅までが越美北線として開業したのですが、北濃駅から九頭竜湖駅までの区間は未開業のままに終わりました。国鉄改革の結果、越美北線は国鉄線として残り、現在もJR西日本が運行していますが、状況はかなり厳しいところです。一方、越美南線は第三セクターである長良川鉄道が引き受けたのでした。

 その長良川鉄道の本社は関市にあります。筆頭株主は岐阜県、次いで郡上市、関市の順に主要株主となります。岐阜県や沿線自治体が株主である以上、沿線自治体の意向が会社の経営に多少なりとも影響を与えることとなります。現在の社長は関市の市長ですが、同市長が越美南線の「一部区間の廃線を検討していると明らかにした」のでした。共同通信社記事に書かれていることをそのまま引用しましたが、同記事では具体的にどこで述べたのかまでは明らかにされていません。そこで中日新聞社のサイトを参照すると、2025年3月3日16時04分付で「長良川鉄道、一部区間の廃線検討 山下清司・関市長が議会で答弁、区間や時期は触れず」(https://www.chunichi.co.jp/article/1032999)として報じていました。ただ、見出しにあるように、具体的な区間や時期は検討されていないようです。中日新聞社の取材によれば、一部区間というのは、越美南線の半分以上を占めるとともに末端区間を含んでいる郡上市にある区間です。

 関市長でもある長良川鉄道の社長が廃線検討の理由としてあげているのは、施設の老朽化、沿線自治体の負担の増加です。もとより、老朽化と負担増加は密接な関連があります。設備の更新に金がかかるためす。ただ、2023年度の運賃収入はおよそ2億5000万円、同年度の経常損益はおよそ3億8000万円であり、輸送人員の減少も理由としてあげられるでしょう。関市および美濃市には越美南線の他に名鉄美濃町線も通っていましたが、既に廃止されています。自動車社会の進展の結果でもありますが、人口減少の結果でもあるでしょう。現在、越美南線には、起点の美濃太田駅以外に他の鉄道路線との乗り換え駅がありません。これで70km超の路線なのですから、不利な形態であることも否定できません。

 現在のところは市議会などで端的な意見が出されているだけですが、今後、関市、郡上市などの沿線自治体において存廃が検討されることでしょう。

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大井町線各駅停車用の車両置き換えが始まる

2025年03月03日 16時30分00秒 | 日記・エッセイ・コラム

 2025年2月28日付で、東急電鉄が「2025年夏、大井町線に各駅停車用の『6020系』を導入します さらなる快適性と安全性を追求し、沿線の街や駅と調和した車両を目指します」という記事を公式サイトに掲載しています。

 上の写真の車両が6020系です。2018年に大井町線急行用として7両編成2本が登場し、大井町線および田園都市線の二子玉川駅から中央林間駅までの区間において運行されています。

 昨年であったか、大井町線各駅停車用の車両として2020系シリーズをベースとした新車を登場させる旨の発表がありましたが、大井町線ということであれば6020系そのものか6020系をベースとした新系列のどちらかであろうと予想していました。6020系は2編成しかありませんから、増備するとなれば5両編成の6020系かもしれないと思っていたら、やはり6020系の増備でした。5両編成18本、合計90両が製造され、今年の夏以降に順次投入されます。

 これにより、9000系および9020系は置き換えられることとなっています。2月下旬に9005Fが営業運転から外されたようで、既に報じられている西武鉄道への譲渡の対象となるかもしれません。9000系および9020系の撮影や乗車は、なるべく早く済ませておきましょう。

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再び、2代目うしでんしゃ 横浜高速鉄道Y000系デハY011+クハY001

2025年03月01日 00時00分00秒 | 写真

 以前、このブログに「2代目うしでんしゃ 横浜高速鉄道Y000系デハY011+クハY001」を掲載しました。その時は長津田駅の構内または長津田検車区の一角に留置されているところを紹介したのですが、今回は営業運転中の様子です。

 長津田駅(KD01、DT22)7番線に「うしでんしゃ」が入線しました。横浜高速鉄道Y000系クハY001+デハY011です。勿論、長津田行きとしてです。撮影日の何時から何時までかはわかりませんが、この編成が長津田駅とこどもの国駅(KD03)とを往復しているのでした。

 上のパンタグラフ付きの車両はデハY011です。もうじき停車するところです。

 長津田駅において、この7番線のみホームドアが設置されていません。設置の予定もないようです。また、こどもの国線の改札口はこの駅にないので、ここから恩田駅(KD02)またはこどもの国駅まで切符を買わずに乗った場合には着駅で精算することとなります。なお、田園都市線とJR横浜線には自動改札機が設けられています。

 この写真ではわかりませんが、到着してすぐに行先表示が「こどもの国」に変わっています。牛の顔が正面の下方に描かれています。初代の「うしでんしゃ」とは少しばかり顔つきが違うようにも見えますが、連結器の真上にある鼻の色が違うだけかもしれません。

 別記事でも書きましたが、「うしでんしゃ」は、元々、2018年10月11日から2020年3月31日までの実施が予定されている「こどもの国線楽しモウ」というイベントの一環で運行されていました。期間限定だったのですが、好評であったようで、編成を変えた上で現在まで走り続けています。

 こどもの国線には、もう一編成のラッピング電車である「ひつじでんしゃ」があります。クハY002+デハY012の編成ですが、こちらのほうの営業運転をまだ撮影したことがないので、時期を見計らって撮りに行きたいものです。

 出発の時間となり、恩田駅およびこどもの国駅に向けて発車しました。すぐに急カーブがあるため、ゆっくりと走って行きます。

 動物のラッピングと言えば、世田谷線の「幸福の招き猫」こと300系308Fがあります。「幸福の招き猫」を撮影する人は多く、鉄道ファンでない人々にも世代などを問わず愛されているのですが、この「うしでんしゃ」と「ひつじでんしゃ」を撮影する人はあまりいないようです。路線の違いでしょうか。

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最高裁判所第一小法廷判決が大阪高等裁判所判決を破棄した

2025年02月28日 00時00分00秒 | 法律学

 昨日(2025年2月27日)、最高裁判所第一小法廷が、大阪高等裁判所令和5年5月10日判決(判例時報2576号57頁)を破棄し、事件を大阪高等裁判所に差し戻す旨の判決を出しました。朝日新聞社のサイトに、昨日の18時3分付で「特別交付税を9割減額、国と市の争い『裁判の対象』 最高裁が初判断」(https://www.asahi.com/articles/AST2W2TZHT2WUTIL01BM.html)という記事が掲載されています。

 これだけを記しても訳がわからないかもしれませんので、事件の概要を示しておきましょう。以下、元号表記と西暦表記が混ざることを御了承ください。

 大阪府泉佐野市(原告、被控訴人、上告人)は、令和元年12月に、総務大臣より、地方交付税法第15条第2項に基づき、令和元年度の第一回目の特別交付税の額を710万2千円とする旨の決定(以下、12月決定とします)を受けました。泉佐野市は、同月25日に本件12月決定について地方交付税法第18条第1項に基づく審査申立を行ったのですが、総務大臣は令和2年1月23日に申立却下の決定を行いました。また、泉佐野市は、同年3月に、総務大臣より令和元年度の第2回目の特別交付税を4616万7千円とする旨の決定(以下、3月決定と記します)を受けました。

 泉佐野市は、国を被告として、令和2年6月8日に12月決定および3月決定の取消を求めて出訴しました。これが本件訴訟です。同市は、次のように主張していました。

 令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例を定めた「特別交付税に関する省令」附則第5条第21項(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)および同附則第7条第15項(令和2年総務省令第12号による改正前のもの)は、地方税法第37条の2及び同法第314条の7によって個人住民税の特例控除の対象となる寄附金に係る収入が多額であることを理由として特別交付税の額を減ずるものである。これは、地方交付税法第15条第1項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるから、同省令附則第5条第21項および附則第7条第15項に基づき泉佐野市に対して交付する令和元年度の特別交付税の額を算定した本件各決定は違法である。

 大阪地方裁判所令和3年4月22日中間判決(判例時報2495号14頁)は、本件訴訟が裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたると判示しました。続いて、大阪地方裁判所令和4年3月10日判決(判例時報2532号12頁)は、改めて本件訴訟が裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたる旨を述べるとともに、地方交付税法第15条第2項に基づき総務大臣が行う特別交付税の額の決定が抗告訴訟の対象となる行政処分にあたる、ならびに特別交付税に関する省令(令和2年総務省令第111号による改正前のもの)附則第5条第21項および同附則第7条第15項が地方交付税法第15条第1項の委任の範囲を逸脱して無効である旨を述べて、泉佐野市の請求を認容しました。

 国が控訴し、大阪高等裁判所令和5年5月10日判決は「地方交付税法の仕組みや目的等に照らすと、地方団体が国から法律の定めに従い地方交付税の分配を受けることができるか否かに関する紛争は、国と地方団体が、それぞれ行政主体としての立場に立ち、地方団体全体が適正に行政事務を遂行し得るように、法規(地方交付税法)の適用の適正をめぐって一般公益(地方団体全体の利益)の保護を目的として係争するものというべきである」から、「本件訴えは、行政主体としての被控訴人泉佐野市が、法規の適用の適正をめぐる一般公益の保護を目的として提起したものであって、自己の財産上の権利利益の保護救済を目的として提起したものと見ることはできないから、裁判所法3条1項にいう『法律上の争訟』には当たらないというべきである」として、大阪地方裁判所判決を破棄し、泉佐野市の訴えを却下しました。そこで泉佐野市が上告していました。

 令和6年12月5日、最高裁判所第一小法廷は「泉佐野市と国の双方の意見を聞く弁論を来年1月30日に開くと決め」ました〔朝日新聞社2024年12月5日18時59分付「『ふるさと納税で多額収入→交付税減』国と市の訴訟、最高裁が弁論へ」(https://digital.asahi.com/articles/ASSD532NVSD5UTIL022M.html)によります〕。実際に令和7年1月30日に弁論が行われたようです。そして、およそ1か月が経過した令和7年2月27日、つまり昨日に、最高裁判所第一小法廷の判決が出た訳です。

 判決文を見られないので詳しいことはわかりませんが、最高裁判所第一小法廷は、特別交付税の減額処分の取消を裁判で請求することができる、と判断した訳です。特別交付税の交付については、総務大臣が金額を決定する一方で、地方公共団体が受け取る権利を有する旨を述べたとのことです。

 正直なところ、地方交付税法に定められる特別交付税および普通交付税の算定の仕組みを念頭に置くと、最高裁判所第一小法廷の判決に対して疑問がないとも言えないのですが、大阪高等裁判所の判決はやや単純な筋を取っていたので、妥当なところでしょう。

 ただ、私は総務大臣による特別交付税の減額処分が妥当であると考えています。差戻後の大阪高等裁判所が、泉佐野市の請求を棄却する判決を出すのではないかと期待しています。泉佐野市は、「ふるさと納税」によって多額の寄附金収入を得ています。その上で満額の交付税を受け取るのでは、他の普通地方公共団体、とりわけ不交付団体との比較において不公平です。収入があるならばその分だけ交付金を減らすのが筋ですから、「ふるさと納税」は地方交付税の趣旨も歪めている訳です。

 また、泉佐野市は、「ふるさと納税」の返礼品などでも問題を起こしています。今回とは全く別の訴訟で国は敗訴していますが、法律や総務省令などの規定に稚拙な点があったことも否定できません。

 「ふるさと納税」は、地方自治法第10条第2項に定められる負担分任の原則に反しますし、住民税の仕組みなどにも反します。「他の市町村に寄附したりするなら移住しろ! それが筋だろう」と言ってよいでしょう。また、「ふるさと納税」は、結局のところ高額納税者に有利なだけで、納税者間に不公平をもたらします。つくづく、「馬鹿な制度を作ってしまった」と思わざるをえません。

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埼玉高速鉄道線の延伸は

2025年02月27日 12時00分00秒 | 社会・経済

 インターネットでは今日(2025年2月27日)の8時0分付で「埼玉高速鉄道延伸が現実味 さいたま市、国の補助適用向け素案策定へ」(https://digital.asahi.com/articles/AST2V1401T2VUTNB001M.html)として朝日新聞社のサイトに掲載されていますが、紙面では昨日(2025年2月26日)付で朝日新聞朝刊23面埼玉13版に「SR延伸 一転、現実味 国の補助適用高まる さいたま市素案作成へ コスト縮減・工期短縮」として掲載されていました。内容はほぼ同一です。

 時折東急目黒線を利用する私としても、埼玉高速鉄道線(赤羽岩淵駅から浦和美園駅まで。14.6km)の状況は気になっていました。もう20年程前のことですが、一度だけ、浦和美園駅から赤羽岩淵駅まで通して乗ってみました。当時、浦和美園駅の周辺は民家が非常に少なく、目立つ建物と言えば浦和美園駅そのものと埼玉スタジアムだけという状況でした。位置がいかにも中途半端であり、延伸が予定されているであろうことはすぐにわかります。

 実際に、2000(平成12)年の運輸政策審議会答申第18号において「<11>東京7号線の建設及び延伸」があげられており、そこには目黒駅⇆白金高輪駅⇆溜池山王駅⇆赤羽岩淵駅⇆浦和美園駅⇆岩槻駅⇆蓮田駅という計画(?)があげられています。当時、目黒駅から溜池山王駅までの区間および赤羽岩淵駅から浦和美園駅までの区間は工事中でしたが、同年に目黒駅から溜池山王駅までの区間が開通したことにより、帝都高速度交通営団(当時)南北線が全通し、同時に東急目黒線との相互直通運転が始まりました(相互直通運転については答申第18号においても「目黒駅において東京急行電鉄目蒲線と相互直通運転を行う」と明記されています)。2001年に埼玉高速鉄道線の赤羽岩淵駅から浦和美園駅までの区間が開業しました。埼玉高速鉄道線が東京メトロ南北線の延長線のようになっているのは、この答申第18号、さらに遡ると1972(昭和47)年の都市運輸審議会答申第15号に由来するようです〔当時は目黒駅⇆飯倉片町⇆永田町駅⇆市ヶ谷駅⇆駒込駅⇆王子駅⇆岩淵町(赤羽岩淵駅のこと)⇆川口市中央部⇆浦和市東部となっていたようです。もっと遡ることもできるでしょうが、ここで止めておきます〕。

 さて、埼玉高速鉄道線の開通直前とも言える時期に浦和美園駅から岩槻駅を経て蓮田駅まで延伸する計画(というよりは案)が答申として出されてから25年、まずは浦和美園駅から岩槻駅までのおよそ7.2kmを延伸する動きがようやく出そうです。上記記事によると「さいたま市は、埼玉高速鉄道(SR)の延伸について国から建設費の補助を得られる可能性が高まったとして、2025年度にその前提の計画素案をまとめる方針を開会中の市議会に示した」とのことです。

 2024年1月には埼玉高速鉄道線の延伸に関する事業化要請が見送られていました。理由は建設費の増大です。概算で860億円ほどと見積もられていたものが、昨今の材料費などの高騰によって1300億円ほどまで増えてしまったのでした。新幹線であれその他の鉄道であれ、新線開業なり路線延伸なりは費用便益比が1.0を超える見込みが立たなければ、建設する意味がなくなります。北陸新幹線の敦賀駅から新大阪駅までの延伸が暗礁に乗り上げたのも、費用便益比の問題でした。一般的な話として、基準を適当に変えた上で費用便益比を無視するならば、将来に禍根を残すことは明らかです。いわんや、人口増加の期待が非常に薄い日本においておや。

 ただ、さいたま市が市議会に示した方針に、問題が全くないとは言えません。建設費が、概算で1390億円ほどになっているのです。これでも「建設内容のコスト縮減は図れた」というのですが、大丈夫なのでしょうか。

 さいたま市は、工期を18年から14年に短縮すること、埼玉高速鉄道線沿線における「最新の人口推計で鉄道利用率の高い若い世代が1割以上伸びていることを加味すると、費用便益比が1・0~1・2程度に改善する見通しになった」という趣旨を述べたようです。たしかに、最近、土曜日・休日でも首都圏の鉄道利用者は多いように見受けられますし、岩槻駅まで延伸すれば東武野田線への乗り換え客も増えるでしょうから、費用便益比が上昇することは考えられます。2019年度までは乗車人員が順調に増えてきたことも、さいたま市の姿勢の背景にあるのでしょう(2020年度はCOVID-19のために落ち込みましたが、2013年度より多かったようです)。しかし、これが甘い見通しに終わっていないのかを検討する必要があるでしょう。

 私がこのように記したのは、埼玉高速鉄道線の運行本数の変化を見ているからです。埼玉高速鉄道線の場合、線内完結の運用はなく、全ての列車が東京メトロ南北線に直通運転していますが、南北線の列車の全てが埼玉高速鉄道線に直通する訳ではありません。朝夕ラッシュ時などを含めると面倒な話になるので平日日中に限定しておくと、2018年のダイヤ改正で赤羽岩淵駅から鳩ヶ谷駅までの区間で減便が行われており、2019年のダイヤ改正でやはり同じ区間で減便が行われ、南北線からの鳩ヶ谷行きの列車がなくなりました。これでも輸送人員が増えているので、朝夕ラッシュ時に増便するなど、メリハリの利いたダイヤ改正がなされたと言えるのかもしれません。

 今後、さいたま市は「速達性向上事業に関する計画」の素案を作成することとしています。この素案を埼玉高速鉄道に示して事業化を要請する方針のようです。また、副市長や埼玉県副知事をメンバーとする会議の場も作る旨が、市議会において市長から述べられています。

 地図を見る限り、埼玉高速鉄道線が岩槻駅まで延長されるならば、利便性は向上すると思われます。JR東北本線、東武野田線、東武伊勢崎線およびJR武蔵野線で囲まれた地域は鉄道空白地帯であり、岩槻区はさいたま市で最大の面積の区であるにも関わらず、鉄道は東武野田線しかありません(駅も岩槻駅と東岩槻駅しかありません)。さいたま市の利便性の向上という観点からすれば、埼玉高速鉄道線の延伸は必要かもしれません。ただ、延伸部分の開業はだいぶ先のこととなります。工期を14年として、2025年中に着工とはならないので、早くとも工事が始まるのは2026年中でしょう。そうすると2040年の開業となります。実際にはもう少し先のこととなるでしょう。その時までに、埼玉高速鉄道線の輸送人員数がどのような変化をたどるのか、など、不確定な要素は少なくありません。

 また、岩槻駅から蓮田駅までの区間については、今回の延伸要請の対象になっていません。蓮田駅は名前の通り蓮田市にありますから、さいたま市だけでどうにかなる話ではないのです。埼玉県、さらには国土交通省も関わらざるをえません。今後の人口動態予想などを念頭に置くと、実現不可能とまでは言わないまでも、かなり困難ではないでしょうか。もとより、地元では延伸を期待する声もあることでしょう。何せ、1924(大正13)年から1938(昭和13)年まで、蓮田駅を起点として岩槻駅(現在の東武野田線岩槻駅とは異なります)を経て神根駅(現在は川口市の領域)まで武州鉄道の路線が通っていたのですから。

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最近考えること

2025年02月27日 07時00分00秒 | 日記・エッセイ・コラム

 法学者の端くれなので、昨今の国際情勢や国内情勢(特に前者)を見ていて、考えてしまうことがあります。

 もう、民主主義や法治主義は時代遅れの遺物なのか?

 民主主義や法治主義は20世紀まで通用したが、21世紀に入ってから徐々に通用しなくなっているのか?

 いかなるものであっても、始まりがあり、終わりがある。そうであるならば、民主主義や法治主義にも終わりがあるはずではないか?

 そして、いつの日か、チャーチルの名言が次のように言い換えられるかもしれません。

 「民主主義は最善の政治形態と言われてきた。他に試みられたあらゆる形態を除けば。」

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