ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

鉄道・軌道と令和7年度税制改正

2024年12月31日 11時00分00秒 | 国際・政治

 本当は「103万円の壁」がどのように変わるのかを書こうとしたのですが、私が担当している講義「税法B」のレポート課題になっているため、ここでは記さないこととします。ちなみに、以前記した結婚・子育て資金に関する贈与税の特例も、別の講義のレポート課題になっていますが、これは出題の仕方が異なるので、このブログに書いています。

 その代わりと言えるかどうかはわかりませんが、タイトルに示したことを、12月27日の閣議決定「令和7年度税制改正の大綱」(以下、政府税制大綱)から紹介しておきます。

 まず、政府税制大綱22頁です。固定資産税の特例措置で、新設となっています。

 「鉄軌道事業者が豪雨対策のために取得した一定の償却資産(次の線区に存するものに限る。)に係る固定資産税について、課税標準を最初の5年間価格の3分の2(一定の鉄軌道事業者については4分の3)とする特例措置を令和9年3月31日まで講ずる。

 ①1日当たりの片道断面輸送量が1万人未満の線区

 ②1日当たりの片道断面輸送量が1万人以上15万人未満の線区(一定の鉄軌道事業者の線区を除く。)

 ③1日当たりの片道断面輸送量が15万人以上の線区であって、貨物運送を行う列車又は運賃のほかに特別の料金の定めがある旅客運送を行う列車が運行する線区(一定の鉄軌道事業者の線区を除く。)」

 ここ数年の間に多発し、鉄道・軌道の存廃問題にすら至ってしまう激甚災害ヘの対処ということでしょう。そのことは、「1日当たりの片道断面輸送量が1万人未満の線区」などと書かれているところからわかります。実際に必要とされるのは①であることが多いと考えられますが、1万人未満であるということは、現在存廃議論の対象となる輸送密度1000人/日未満の路線・区間も対象になるということでしょう。なお、気になるのは「一定の鉄軌道事業者の線区を除く」で、12月20日の与党税制改正大綱40頁でもあげられているものの、具体的なことは書かれていません。

 政府税制大綱25頁以下では、固定資産税の特例措置のうち、適用期限の延長を行う予定であるものについて次のように掲げられています。

 「(18)鉄軌道事業者が政府の補助を受けて取得した車両の運行の安全性の向上に資する一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。

 (19)鉄軌道事業者が取得した新造車両で高齢者、障害者等の移動等の円滑化に資する一定の構造を有する車両に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。

 (20)都市鉄道等利便増進法に規定する都市鉄道利便増進事業により取得した鉄道施設に対して、次の措置を講ずる。

 ①鉄軌道事業者又は一定の第三セクター若しくは独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が取得した駅施設の用に供する一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。

 ② 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が整備した線路設備等のうち市街化区域のトンネルに係る固定資産税の非課税措置の適用期限を2年延長する。

 (21)地域公共交通の活性化及び再生に関する法律に規定する鉄道事業再構築事業を実施する路線において政府の補助を受けて取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。

 (22)鉄道事業者等がその事業の用に供する鉄道施設等を高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に規定する公共交通移動等円滑化基準に適合させるために実施する一定の鉄道駅等の改良工事により取得した一定の家屋及び償却資産に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。」

 「(27)鉄軌道事業者が首都直下地震・南海トラフ地震に備えた鉄道施設等の耐震補強工事によって新たに取得した一定の償却資産に係る固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限を2年延長する。」

 固定資産税は、その性格上、鉄道・軌道に関係の深い地方税となっています。おそらく、上記の特例措置の多くは地方税法の本則ではなく、附則に規定されることでしょう。よく講義の場で言うのですが、租税法や財政法の場合は他の法分野と異なって当該法律の附則を見なければ正確なことがわかりません(国税の場合は租税特別措置法です)。このことは地方税法について特に妥当しますし、地方財政法や地方交付税法についても同様です。注意しなければなりません.

 鉄道・軌道は、固定資産税だけに関係するものではありません。続いて、政府税制改正大綱の64頁です。軽油引取税(都道府県税)の特例措置について、次のように記されています。

 「(3)免税軽油を使用する鉄道事業又は軌道事業を営む者(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律に基づき国土交通大臣が指定する特定旅客輸送事業者等に限る。)が、非化石エネルギーへの転換のための措置として、鉄道用車両又は軌道用車両の燃料タンクにバイオディーゼル燃料等を給油し、当該鉄道用車両又は当該軌道用車両の動力源の燃料として消費する場合について、次の措置を講ずる。

 ①製造の承認を受ける義務を免除する。

 ②軽油引取税のみなす課税を適用しないこととする。

 ③その他所要の措置を講ずる。」

 バイオディーゼルは、以前、何処かの鉄道会社で盛んに宣伝されていたような記憶があります。自動車の世界であればフォルクスヴァーゲンのゴルフが何かの本で紹介されていました。ただ、JRグループで採用されていたことがあったのかはわかりませんし、JR東日本やJR九州では蓄電池電車やハイブリッドディーゼル車が投入されていますので、実際のところ「バイオディーゼル燃料等を給油し、当該鉄道用車両又は当該機同様車両の動力源の燃料として消費する場合」がどの程度広がるのかはわかりません。

 また、ここの「等」は具体的に何を意味するのかが明らかにされていません。「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」を参照すると、第2条(多くの法律と同様に定義規定です)において次のように規定されています。

 第1項:「この法律において『エネルギー』とは、化石燃料及び非化石燃料並びに熱(政令で定めるものを除く。以下同じ。)及び電気をいう。」

 第2項:「この法律において『化石燃料』とは、原油及び揮発油、重油その他経済産業省令で定める石油製品、可燃性天然ガス並びに石炭及びコークスその他経済産業省令で定める石炭製品であつて、燃焼その他の経済産業省令で定める用途に供するものをいう。」

 第3項:「この法律において『非化石燃料』とは、前項の経済産業省令で定める用途に供する物であつて水素その他の化石燃料以外のものをいう。」

 第4項:「この法律において『非化石エネルギー』とは、非化石燃料並びに化石燃料を熱源とする熱に代えて使用される熱(第五条第二項第二号ロ及びハにおいて「非化石熱」という。)及び化石燃料を熱源とする熱を変換して得られる動力を変換して得られる電気に代えて使用される電気(同号ニにおいて「非化石電気」という。)をいう。」

 第5項:「この法律において『非化石エネルギーへの転換』とは、使用されるエネルギーのうちに占める非化石エネルギーの割合を向上させることをいう。」

 第6項:「この法律において「電気の需要の最適化」とは、季節又は時間帯による電気の需給の状況の変動に応じて電気の需要量の増加又は減少をさせることをいう。」

 こうしてみると、政府税制改正大綱の64頁における「等」は、水素燃料、燃料電池、ハイブリッドディーゼルを含むものではないかと考えられます。そうすると、鉄軌道用車両のための現実的な選択肢としてハイブリッドディーゼル車ということになるのではないでしょうか。

 また、「非化石エネルギー」ということでは蓄電池電車も選択肢となりえます(厳密に考えれば、蓄電池に充電する電気が化石エネルギーの産物ではないかと思われますが、そこまで考える必要はないということでしょう)。ただ、蓄電池電車はディーゼルカーではないので、軽油引取税の対象にはなりません。だからこそ、路線の条件次第では蓄電池電車ということになります。

 問題は、JRグループ以外の鉄道会社でしょう。関東地方を例に挙げるならば、関東鉄道、小湊鉄道、いすみ鉄道、鹿島臨海鉄道、真岡鐵道、わたらせ渓谷鉄道、ひたちなか海浜鉄道といったところです。会社の規模、営業成績にもよりますが、ハイブリッドディーゼル車などの導入が難しいところがあるはずです(これらの鉄道会社の路線の場合、蓄電池車両は現実的な選択肢とは言えないと思われます)。

 鉄道や軌道の維持・発展に、税制改正がどの程度寄与するのかは、少なくとも私にとっては不明であり、検証の必要はあります。とは言え、全く何らの手をも打たないよりはよいということでしょう。

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結婚・子育て資金に関する贈与税の特例は2年延長されることに

2024年12月30日 00時00分00秒 | 国際・政治

 2024年12月27日に、令和7年度税制改正の大綱が閣議決定されました。しかし、財務省のサイトに掲載されたのは12月29日のことです。

 いかに与党税制改正大綱の決定が遅かったとしても、年内に政府の大綱が閣議決定されるはずだと思っていました。越年するならば一大事である、という訳でもないのでしょうが、珍しい話にはなるからです。ただ、12月27日中には財務省のサイトに掲載されず、28日になっても掲載されなかったので、「もしや」と思っていました。

 与党税制改正大綱には既に掲載されていることですので、御存知の方も多いとは思います。ただ、与党税制改正大綱と政府の大綱とで内容が違うこともありえない話ではないので、待っていました。そう、このブログで2024年12月1日付で取り上げた、結婚・子育て資金に関する贈与税の特例です。

 廃止の方針という報道もなされていましたが、結局、適用期限が2年延長されることとなりました。令和7年度税制改正の大綱の20頁に明記されています。また、与党税制改正大綱の13頁から14頁にかけて、次のように書かれています。

 「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、令和5年度税制改正大綱で『制度の廃止も含め、改めて検討する』とされた後も、利用件数が低迷する等の状況にあり、関係省庁において、子育てを巡る給付と負担のあり方や真に必要な対応策について改めて検討すべきである。他方、現在、『こども未来戦略』の集中取組期間(令和8年度まで)の最中にあり、こども・子育て政策を総動員する時期にある。このため、本措置は、特に集中取組期間であることを勘案し、適用期限を2年延長する。」

 何処かズレているような気がします。「こども・子育て政策を総動員する時期にある」ことはわかるのですが、贈与税の特例を利用できるのは富裕層である、と言えるのではないでしょうか。もっとも、富裕層という言葉の具体的な意味が問われることとなりますので、ここではあまり厳密に考えず、或る程度は資産を持っていて自分の子や孫に結婚や子育てのための資金を支出するだけの余裕がある人々の意味くらいで捉えておきましょう。その上で、改めて、結婚・子育て資金に関する贈与税の特例を活用できる国民がどの程度存在しうるのかを、調査の上で検討すべきではないでしょうか。「利用件数が低迷する等の状況にあ」ることは政府も与党も認めている訳ですから、その原因を探ることくらいは容易に行えるはずです。

 

(二子玉川駅にて。)

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臨時財政対策債の発行額が零に

2024年12月29日 00時00分00秒 | 国際・政治

 2025年度予算の案が決まりました。そのような中で、私が気になった記事が、朝日新聞2024年12月26日付朝刊⒋面14版に掲載されていました。「地方自治体の借金 臨時財政対策債 初の発行額ゼロ」という記事です。サイトには「臨時財政対策債、初の発行額ゼロ 地方自治体の借金」(https://digital.asahi.com/articles/DA3S16114476.html)として掲載されています。

 何故目に止まったかといえば、私が地方交付税法や地方税法の研究に取り組んでいるからです。また、臨時財政対策債にはいくつかの問題があるからです〔この点については「地方交付税法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律(平成30年3月31日法律第4号)」、「地方交付税法等の一部を改正する法律(平成31年3月29日法律第5号)」および「地方交付税法等の一部を改正する法律(令和2年3月31日法律第6号)」を御覧ください)。

 2001年度に設けられてから初めて、新規発行額が零になる見通しとのことで、その理由は地方税収が増えたことです。

 12月25日、総務大臣と財務大臣との折衝が行われ、方針が固まったそうです。そして、12月27日、総務省自治財政局が「令和7年度地方財政対策のポイント」および「令和7年度地方財政対策の概要」を公表しました。

 「令和7年度地方財政対策のポイント」には「通常収支分」として次のように書かれています。

 「1 一般財源総額の確保等

 ・一般財源総額(交付団体ベース)を63.8兆円(対前年度比+1.1兆円)確保

 ・地方交付税総額を19.0兆円(対前年度比+0.3兆円)確保」

 一般財源総額は、不交付団体を含めると67.5兆円で、対前年度比+1.8兆円となっており、交付団体ベースで「給与改善費(仮称)」計上分を除いた場合には対前年度比+0.9兆円となります。

 そして、一般財源総額(交付団体ベース)の内訳を見ると、地方税・地方譲与税が48.4兆円で対前年度比+3.0兆円、地方特例交付金等が0.2兆円で対前年度比▲0.9兆円、地方交付税が19.0兆円で対前年度比+0.3兆円、そして臨時財政対策債が0円で対前年度比皆減となっています。

 また、「いわゆる『103万円の壁』に係る令和7年度の地方交付税の減収影響(0.2兆円)を含めても、上記のとおり適切に地方財源を確保」とされています。

 「2 地方財政の健全化

 ・臨時財政対策債は、平成13年度の制度創設以来、初めて新規発行額ゼロ

 ・交付税特別会計借入金について、これまで償還を後年度に繰り延べてきたもののうち、令和6年度までの繰延べ分2.2兆円について、令和7年度に償還」

 余程のことであるということなのか、「初めて新規発行額ゼロ」の部分には太字および下線での強調もなされています。たしかに、臨時財政対策債の新規発行額が零になったことは良いと思われます。地方公共団体の財源不足について国と地方公共団体が「折半」で補塡するもので、元利償還金相当額が基準財政需要額に算入されるものですが、借金であることには変わりがないからです。地方交付税法第6条の3第2項による措置であるとはいえ、根本的な解決とは程遠いものでした。また、令和7年度すなわち2025年度に新規発行額が零となったのは地方税収が増えたことによるのですが、それは2024年度の実績(といっても見込みでしょう)の結果であって、2025年度にどうなるのかわからず、2026年度も新規発行額が零になるとは限りません。ここで、地方交付税法の2019年改正で削除された附則第4条の3(臨時財政特例加算に関する規定)が2020年改正で復活したことを想起すべきでしょう。

 一方、「3 DX、防災・減災対策の推進」の中で「自治体DX・地域社会DXを推進するため、『デジタル活用推進事業費(仮称)』(0.1兆円)を創設(地方財政法の特例を設け、地方債の発行を可能とする)」という部分は気になります。「デジタル活用推進事業費(仮称)」は「令和7年度地方財政対策の概要」のほうに書かれており、次のように書かれています。

 「担い手不足が急速に深刻化するおそれがある中、デジタル技術を活用した行政運営の効率化・地域の課題解決等に向けた取組をしていくため、「デジタル活用推進事業費(仮称)」を創設。地方財政法の特例を設け、情報システムや情報通信機器等の整備財源に活用できるデジタル活用推進事業債(仮称)の発行を可能とする。」

 まず、対象事業は「デジタル活用推進計画(デジタル活用による効率化の効果等を記載)に位置づけて実施する以下の事業」とされており、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律に基づく標準化のために必要な経費を除く」という注意書きも加えられています。その上で、次のように説明されています。(なお、写真などもありますが、その部分は省略します)。

 「(1)行政運営の効率化・住民の利便性向上を図る自治体DXの推進

 ①システムの導入(初期経費)

 ア 住民サービスの提供に必要なシステムの導入

 イ 共同調達によるシステムの導入

 ②情報通信機器等の整備

 ア 住民利用の情報通信機器、住民サービスの提供に必要な職員利用の情報通信機器の購入

 イ 工場施設のネットワーク環境の整備

 (2)地域の課題解決を図る地域社会DXの推進

 地方団体及び公共的団体等による地域の課題解決に資するシステムの導入及び情報通信機器等の整備

 (地域の課題解決)

 ・医療、交通等日常生活に不可欠なサービスの確保

 ・農林水産業、観光など地域産業の生産性向上等

 ※公営企業が実施する事業については、一般会計からの補助を対象とするほか、公営企業債(資金手当)も可能とする。」

 次に、地方財政措置は「地方債充当率:90% 償還年限:5年」、「交付税措置率(地方単独事業):50%」となっています。

 続いて、事業期間は「令和11年度までの5年間」とされており、事業費は1000億円となっています。

 以上は、2024年通常国会(第213回国会)において成立した「地方自治法の一部を改正する法律(令和6年6月26日法律第65号)」を受けて地方自治法に第2編新第11章「情報システム」として第244条の5および第244条の6が追加されたこと、および第2編第16章に第260条の49が追加されたことを受けたものでしょう。これらの規定については、実のところ、私にも意見はありますが、ここでは記さないこととします。ただ、事業費として十分なものなのかという素朴な疑問だけを示しておきます。

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世田谷美術館に展示されている模型

2024年12月28日 01時30分00秒 | まち歩き

 2024年11月30日から2025年2月2日まで、世田谷区は砧公園内にある世田谷美術館にて「東急 暮らしと街の文化――100年の時を拓く」という企画展が開かれています。或る事情によって招待券を入手したので、妻とともに12月某日に訪れました。

 一部だけ撮影可能であったため、私のiPhone15 Proで撮影しました。

 幼い頃から東横線や田園都市線を使い続けている私にとって、非常に興味深い内容でした。もう一度行こうかと思っているくらいです。勿論、世田谷美術館を訪れた日には、用賀駅まで田園都市線の電車に乗り、用賀駅から歩きました。やはり幼い頃から何度となく行った砧公園を歩くのは心地よいものです。すぐそばに東名高速道路と環状8号線が通っていますが、そんなことを忘れてしまうかのようです。

 

 展示の中に、何故か目黒駅、蒲田駅および溝の口駅の模型がありました。手前の建物が何なのかわからないのですが、おそらく、田園都市線溝の口駅から長津田駅までの区間の開業を前にした時期の模型なのでしょう。模型では「溝ノ口駅」となっていますが、1966年1月20日に現在の「溝の口」に改名されているからです。また、同年4月1日、溝の口駅から長津田駅までが開業し、あざみ野駅以外の駅が開業しています。

 模型が何処まで忠実かはわかりません。私が子どもの頃、東急の駅には「東京急行電鉄」か「東京急行」という表示がなされていたと記憶しているからです。ただ、小学校中学年時まで、溝口の街に行くことがあまりなかったので、実のところはよくわかりません。高津駅がまだ高架化されていなかった頃のことは覚えていますが、それも断片的なものです。

 溝口によく行くようになってから、駅の周囲も歩いたりするようになりました。私の大学院生時代まで、基本的な構造は変わっていなかったので、次のようなことを思い出しました。その場で妻に言ったかもしれません。

 「そうそう、国民相互銀行(後に国民銀行になり、経営破綻)があったよ。でも、大学院生時代(1992年4月から1997年3月までです)にあったかな?」

 「小学生時代(1970年代後半です)に東急ストア(模型では「東光ストア」)は長崎屋(現在はドン・キホーテ)の地下1階にあったよ。」

 「一時期、島崎文教堂の本店もあった。ぼくが小学生の時には商店街の交差点のそば、マルエツB館の真向かいにあったけどさ。しょっちゅう移転してた。」(どうでもよい話ですが、私が最後に、ヴァイオリンのレッスンのために通ったカワイ音楽教室は、島崎文教堂の本店があったビルの4階に、現在もあります。)

 「溝の口駅前にあったヤストモの珍来軒の弁当は美味しかった。だから大学院生時代にはよく買っていた。」

 今回は完全に地元ネタでした。

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鉄道は通学需要の面からも見放されるか

2024年12月26日 07時00分00秒 | 社会・経済

 JR東日本にも赤字の鉄道路線は多く存在します。関東地方、甲信越地方および東北地方に路線網を拡げるJR東日本ですから、或る意味では当然のことでもあります。ただ、ここに来て極端なくらいに輸送密度が低い路線が増えており、いわゆる内部補助によってどうにかできるような状況ではなくなっています。

 今回は、北関東の群馬県の話です。朝日新聞社が2024年12月25日10時45分付で「JR吾妻線に並行バス運行なら…高校生ら『利用』7割超 検討会議」(https://www.asahi.com/articles/ASSDS41TTSDSUHNB001M.html)として報じており、「これはもしや?」と思わされたので、紹介しておきます。

 吾妻線は、上越線の渋川駅から嬬恋村の大前駅まで、55.3kmの路線です。JR東日本が公表している「路線別ご利用状況(2019~2023年度)」によると、渋川駅から長野原草津口駅までの区間の平均通過人員は1987年度に4506人/日であったのが2023年度に2468人/日まで落ちており、長野原草津口駅から大前駅までの区間の平均通過人員は1987年度に791人/日であったのが2023年度に260人/日となっています。つまり、2023年度の平均通過人員は、渋川駅から長野原草津口駅までの区間で1987年度の約59%、長野原草津口駅から大前駅までの区間で1987年度の約33%にすぎないということになります。少子高齢化、人口減少が大きな要因ではあるものの、それだけはないでしょう。

 JR東日本は「ご利用の少ない線区の経営情報(2023年度分)の開示について」も公表しています。吾妻線については長野原草津口駅から大前駅までの区間しか掲載されていませんが(平均通過人員が2000人/日未満の路線・区間を対象としているためです)、それを見ると、かなり厳しい数字が並んでいます。2023年度については、次の通りです。

 運賃収入:1700万円。

 営業費用:5億1200万円。

 収支:4億9400万円の赤字。

 営業係数:2870円。

 収支率:3.5%。

 こうした状況では、JR東日本も存続か廃止かを決定せざるをえないということになるでしょう。

 問題の長野原草津口駅から大前駅までの区間について、JR東日本の高崎支社が、2024年12月24日、長野原町役場で検討会議を開いたそうです。この検討会議の場で、高校生およびその家族を対象としたアンケート調査の結果が報告されました。何故、対象者が高校生およびその家族かというと、この区間の主な利用者は高校生であり、およそ8割を占めているからです。つまり、他のローカル線と変わらない訳です。

 アンケート調査は、今年の7月から8月にかけて「JR吾妻線(長野原草津口・大前間)沿線地域交通検討会議」が実施したもので、長野原町および嬬恋村に居住する高校生およそ330人およびその家族、県立長野原高校および県立嬬恋高校の在校生およそ80人およびその家族に対して、利用状況、および別の交通手段の利用意向などを尋ねています。

 回答率が低く、高校生146人で36%、家族177人で44%にすぎませんが、参考にはなります。主な交通手段は高校生の約8割(回答者の約8割ということでしょう)が鉄道であり、しかも通学に2時間以上をかけている生徒が半数以上になっていました。

 このアンケートには、仮に長野原草津口駅から中之条駅や渋川駅までをノンストップで結ぶバスが運行されたら利用するか、という趣旨の設問が入っていたようです。すると「回答者の7割以上が利用する意向を示したことが明らかになった」とのことでした。もう少し厳密に言えば、是非とも利用したい、あるいは「ちょうど良い時間に運行していれば利用してみたい」という回答を合わせると7割以上であったということです。是非とも利用したいという回答と「ちょうど良い時間に運行していれば利用してみたい」という回答は、毛色が多少とも違うのではないかと思われるのですが、いかがでしょうか。

 また、検討会議は長野原草津口駅から大前駅までの区間について検討する場のはずですが、何故に長野原草津口駅から中之条駅や渋川駅までをノンストップで結ぶバスを想定し、質問したのでしょうか。意図がわからないという部分もあるのですが、長野原草津口駅から大前駅までの区間が、通勤需要どころか通学需要の面からも見放されているからでしょうか。少なくとも、同区間の廃止が前提となっていなければ、渋川駅から長野原草津口駅までの区間についてノンストップのバスを走らせることなど想定しないでしょう。場合によっては吾妻線の全区間を検討の対象とするのでしょうか。記事には「アンケート結果を受けて、今後は作業部会を設けて交通体系のあり方を協議することになった」と書かれていますので、気になるところです。

 もっとも、一つの記事だけではわからないのも当然のことです。注意しなければならない点は多いでしょう。ただ、事情によっては、鉄道路線が高校生の通学需要に合わない、あるいは需要から外されているということなのかもしれません。

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上用賀にて(2)

2024年12月23日 00時00分00秒 | まち歩き

上用賀5丁目、環状8号線の内回りのそばに上用賀五丁目いらか道市民緑地があります。紅葉があまりに美しかったので、久しぶりにCANON EOS R50を使って撮影してみました。

 環状8号線がすぐそばにあるのに、上用賀5丁目は閑静な住宅街となっています。バス通りともなっている西用賀通りには、春ともなると見事なまでのトンネルを作ってくれる桜並木があり、その中を車で通るのが、季節における楽しみの一つでもあります。

 西用賀通りから用賀三条通りを歩き、環状8号線に出ると上用賀五丁目いらか道市民緑地があります。何度かそばを歩いたことがあるのですが、恥ずかしながらこの緑地のことは今回初めて知りました。環状8号線と東名高速道路・首都高速道路3号渋谷線との交差地点からも近い場所ですし、用賀駅から歩いても10分ほどで着くでしょうか(時間を計ったことなどないのですが)。

 世田谷美術館に行くには、用賀駅から東急バスで行くのが最も楽な方法でしょう。それはそれで楽しいかもしれません。ただ、私は、世田谷美術館に行く度に歩きます。用賀二条通り、西用賀通り、用賀三条通りを歩く訳です。歩く楽しさを演出するように工夫が凝らされており、閑静な住宅街であるだけに、心も落ち着きます。ただ、時々車が通るので、そこだけは惜しいところです。

ちなみに、環状8号線を軸として、この上用賀五丁目いらか道市民緑地の真向かいにあるのが砧緑地とも言われる砧公園であり、世田谷美術館も公園内にあります。

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上用賀にて(1)

2024年12月22日 22時35分00秒 | まち歩き

用賀駅から世田谷美術館まで歩きました。その途中、上用賀5丁目で撮影した写真です。

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埼玉県議会がインボイス廃止を求める意見書を可決した

2024年12月21日 10時20分00秒 | 国際・政治

 今日(2024年12月21日)に報じられたことですが、これには驚きました。それとともに中途半端にも思えました。朝日新聞社が今日の6時付で「インボイス廃止求める意見書、自民県議団が主導し可決 埼玉県議会」(https://digital.asahi.com/articles/ASSDN3QTPSDNUTNB00BM.html)として報じています。

 昨日の午後、埼玉県議会でのことです。インボイス制度の廃止を求める意見書案が提出され、埼玉県議会自由民主党議員団、埼玉民主フォーラム、日本共産党埼玉県議会議員団、無所属改革の会の各会派、および無所属議員のうちの3氏が賛成し、成立しました。なお、埼玉県議会公明党議員団および無所属県民会議は反対しています。

 意見書では、上記朝日新聞社記事によると「経理事務などが小規模事業者に過大な負担となっていることや、国の支援措置が不十分なことなど」が理由としてあげられています。また、上記朝日新聞社記事の表現を借りるならば「意見書では、エネルギー価格や原材料費の高騰によって小規模事業者などの経営は厳しさを増していると指摘。インボイス制度にかかる負担を求めることができる状況にないとして、『経営の持続化や県内の経済活性化の重要性を考えると、制度そのものを廃止することが最良の策と言わざるをえない』としている」とのことです。付け加えるならば、埼玉県議会自由民主党議員団の白土幸仁政調会長は、おそらく本会議終了後の記者会見か何かの席であると考えられますが「中小企業の負担は政府が思っている以上に大きい。政府への批判ではなく、地方の声を届けるべきだという判断だ」と語ったそうです。

 しかし、記事でも指摘されていますが、自由民主党は政権与党として消費税・地方消費税の税率引き上げやインボイス制度の導入を推進してきました。国レヴェルだけでなく、地方レヴェルでもそうであったはずです。それが、県議会であるとは言え、廃止を求めるという立場にまわったことは、実のところ票田からの反発が大きく、これを受け止めざるをえない状況になったということなのでしょう。

 それだけではありません。実は、現在開かれている埼玉県議会には、インボイス制度廃止の「意見書の提出を求める請願が共産2県議の紹介で先に出されていた。だが、委員会で自民から動議が出て、継続審議になった」とのことでした。つまり、請願の趣旨と意見書の趣旨とは同じものであったということになります。敢えて、という表現がピッタリであると思われますが、埼玉県議会自由民主党議員団は今月12日ひ開かれた議会運営委員会に意見書の案を出しました。この委員会には17人の委員がいますが、埼玉県議会自由民主党議員団が主導した上で「4会派14人の議員の連名」により本会議に提出されたということです。それなら最初から請願の採択に賛成すればよかった話で(これは意見書に反対した議員のコメントとしても掲載されています)、面子なのかな、などとも考えました(あれこれあるのはわかります)。

 記事には意見書に反対した議員の意見も掲載されています。引用しながら紹介しますと、まず、埼玉県議会公明党議員団の萩原一寿議員が本会議で「廃止となると、これまで定着に向けて進めてきたところから一転して困難をきてしてしまうのではないか。廃止ではなく丁寧に現場の声を聞きながら改善を求めていくべきだ」と述べています。また、無所属県民会議の松坂喜浩議員は「負担が増えたとの声は把握している」としつつ「制度廃止は政治への信頼を大きく損ねる。小規模事業者の厳しい経営環境は、エネルギー価格や原材料費の高騰などさまざまな要因がある。県議会は省力化や価格転嫁の支援を国に求め、経営悪化の要因の解消のためにこそ声を上げるべきだ」と述べました。両者の意見は、埼玉県議会が2022年および2023年に「小規模事業者の負担軽減策などを求める意見書」を採択したことと関連があると思われます。

 賛成、反対のどちらにも一理があるでしょう。ただ、肝心なことを忘れてはいけません。

 一つは、インボイス方式の廃止を訴えるのであれば、軽減税率の廃止も訴えることこそ合理的です。インボイスは、消費税の中核と言える仕入税額控除を確実に行うために必要とされます。軽減税率のない、つまり税率が一つしかなければ、インボイス方式でなくても(そう、かつて日本で行われていたアカウント方式であっても)よいかもしれませんが、複数税率となると正確な仕入税額控除が難しくなります。それなら、税率を一つに戻すほうが事業者にとっても楽ですし、消費者も混乱しないでしょう。

 もう一つ、実はこちらのほうが重要なのですが、日本と同じように付加価値税型の消費税を導入している国の圧倒的多数はインボイス方式を採用しており、事業者の規模を問わずインボイス発行業務を行っています。慣れていますし、こなしてきたのです。日本だけは、消費税を導入してから長らくアカウント方式を続けていましたし、最初からインボイス方式を採用できなかったのです。事務負担がどうのこうのという声がこれほど大きく叫ばれているのも日本だけでしょう。

 私は、このブログで何度か、日本人には付加価値税型の消費税を扱うだけの能力がないと書いてきました。残念ながら厳然たる事実であることを、埼玉県議会の意見書採択は示しています。ただ、埼玉県議会は消費税に関する日本国民の無能を自覚していないと思われます。だからインボイス方式の廃止という中途半端な意見書に賛成したのでしょう。

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第10世代iPadで撮影してみました

2024年12月20日 23時50分00秒 | 写真

購入したばかりの第10世代iPadで撮影していました。場所は高津駅(DT09)、車両は東急2020系2144Fクハ2044で、1番線を準急中央林間行きとして通過するところです。

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大東文化大学法学部「税法B」および「法学特殊講義2B」受講者に

2024年12月19日 00時00分00秒 | 受験・学校

 「税法B」の最終課題および「法学特殊講義2B」の第3回中間課題で「令和7年度税制改正大綱を参照するように」という趣旨のことを記しています。

 まだ令和7年度税制改正大綱は決定されていませんが、時事通信社は、2024年12月18日20時38分付の「『123万円』に引き上げ明記へ 年収の壁見直し、税制改正大綱ー政府・与党」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2024121800994&g=pol)において、「政府・与党は18日、所得税が課される年収の最低ラインである『103万円の壁』の見直しについて、自民、公明両党が国民民主党に提案した123万円への引き上げを2025年度税制改正大綱に盛り込む方向で調整に入った。20日にも大綱を決定する」と報じています。

 税制改正大綱が公表されたら、すぐに大東文化大学のmanabaでお知らせします。

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