私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

美しく捨てがたいものは

2015年04月17日 | 美術工芸

これは知人から頂いたお菓子の箱である。
白い箱に青楓の切り抜きの美しい帯が巻かれていた。



中のお菓子が空になってしまえば、たいていの場合捨てられてしまうものに
こんなにきれいな装飾を施すとは、このお菓子屋さんのお菓子作りに対する
情熱や自身のお菓子への愛情が伝わるような思いがした。




そっと抜いて見ると
大小の青楓が流れるように連なっていて、鮮やかな緑が今の季節にふさわしく
くっきりと切り抜かれたあとも清々しい、今までに見た帯の中で最も美しいものだった。

この青楓の帯を考えた人、デザインした人、作った人、
たったこれだけのものにどれだけの人の手がかかっていることだろうか、、
そう思うと、この努力の結晶のような緑の帯が尊いもののように思われるのである。




どう考えても捨てがたく、しばらく大事に仕舞っておいた。
そしてある時、全部は使えなくてもその一部だけでも使えればいいのでは、、
そうすれば、そっくりそのまま捨ててしまうという心の痛みが薄らぐだろう、、



そうこうして、ようやく考えついたのがこの「しおり」である。
ほんの一部だけど、こうして生まれ変わって、これからもずっと私の
読書の友として生き続けるわけだから、この帯を掛けたお菓子屋さんの
心意気が全て無駄にはならない、ということで私の気持ちが収まったのである。
ささやかなことながらも、めでたし、めでたし、の気分である。

コメント (4)
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