私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

骨董市の付録が美品だった件

2015年04月15日 | 時空を超えて来たものたち

藤の花見る人を招く文



この消息文は、自宅の藤のお花見に知人を招待している文である。

何年か前の骨董市で買ったお茶碗の箱にクッションとして入っていたものだ。
その丸められた和紙を広げてみると、なんとそれは、候文の美しい手習いの紙だった。

* * *

待ちつけし花もいつしか散りてはや藤の時節と
は相成りまいらせ候 邸内のも躬恒の我がやどに
ふじなみと詠みつるまでにはまいらず候へども往来の
人の足を緩め候ほど咲きそろひ候間明日御一同様
御遊覧下されたく候

※凡河内躬恒(おおしこうしみつね)の
「わがやどにさける藤波立ち帰り
すぎかてにのみ人の見るらん」を引用している。

藤の花の宴

返辞



案内申上げまいらせ候
かしこ

* * *

右返辞

御庭前の藤の花最早見事ならんと推して
拝見を願はしく思ひつづけおり候をりから
わざわざ御招きに預り有りがたくぞんじあげまいらせ候
何事を捨置きても参上つかまつるべくかのたちかへり

* ~ * ~ *

藤のお花見の招待の文

あんなにも待っていた桜はいつの間にか散ってしまい
もう藤の花の季節になってしまいました
我が家の藤が、躬恒の「我がやどに咲るふじなみ、、」と
詠むほどではありませんが、道行く人々の足をゆっくりと
させるほどには咲きましたので、明日に皆様お揃いで
どうか御遊覧下さいますよう御案内申し上げます
かしこ

* * *

右のお返事

あなた様の御庭の藤の花はもう見事な姿になっていることと思い
拝見させて頂きたいと願っておりましたところ
この度御丁寧にお招きに預り有り難く思っております
この上は何事もさて置きお伺い致します


この美しい文に接して、自分の心の中に爽やかにやわらかい空気が広がったようでした。
手に入れたお茶碗もなかなかの物と満足していますが、さらに、この文が付いていたことによって
思いがけず得難いものを得たという喜びが広がり、益々骨董市への楽しみが増したのでありました。

※私なりの解釈ですので間違いや、読み切れていない箇所など多くあると思います。
自信のない箇所もそのままにしてありますので、御教え頂けましたら幸いです。

コメント (4)
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