英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

新型コロナウイルス その123「新型コロナ対策で5段階の新指標」

2021-11-10 08:22:56 | 時事
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は8日、感染状況を評価する新しい指標を決めた。従来は新規感染者数を重視して四つの「ステージ」に分けていたが、医療逼迫(ひっぱく)の状況に応じて五つの「レベル」に分けた。新規感染者数より医療が維持できているかを重視したのが特徴『朝日新聞デジタル』より引用)

 これまでも分科会は、「新たな指標」など細かい仕様変更を行ってきた。しかし、観点を増やしただけで、却って、分かりにくくなったり、広義に解釈(ある観点だけを取り上げる)対策を遅らせるようなことがあった。
 意地悪な見方をすると、《分科会は感染対策に頭を絞っていますよ》的なアピールとも考えられた。

さて、今回の新指標であるが…
 医療のひっ迫の度合いをより重視するものとのこと。
 《医療体制を重視したのは、ワクチンの接種が広がるなか、感染しても軽症で済む人が増えたためだ。治療薬の開発も進んでおり、医療が逼迫しないレベルに感染を抑えながら、日常生活の回復をめざすことを目的とした》ようだ(『朝日新聞デジタル』より引用)
 医療体制の重視や、現在のワクチン接種状況や治療体制を考慮しての判断は確かに妥当なものだと思われる。
 ただし、これも意地悪な見方だが、「重症化率も下がっており、医療体制がひっ迫する可能性も低いので、多少の感染者増には目を瞑って、経済回復を重視しよう」というものと考えられる。
 実際、各レベルでの対策もそうなっているようだ。以下は『新型コロナウイルス特設サイト』の記事より
レベル2 「警戒を強化すべきレベル」
「レベル2」は感染者の増加傾向が見られ、医療の負荷が起き始めているものの病床の数を増やすことで医療が必要な人への適切な対応ができている状況で「警戒を強化すべきレベル」としています。
 その時点での感染や医療の状況や予測を都道府県が示し感染リスクの高い行動を避けるよう呼びかけ、保健所の体制強化や病床の確保を段階的に進めることが求められるとしています。


 この文章だとはっきりしないが、記事内で示されている表を見ると、「保健所の体制強化」「病床の確保を段階的に」と示されており、《感染が拡大した場合の準備》が主な対策で、都道府県単位で感染予防を呼び掛けるのみということのようだ。
 私は、感染が拡大し始めた時の早めの対策を取れば、その後の感染の波の高さを押さえられる(感染の波自体も生じさせない)と考えている。もちろん、「経済が停滞してはダメだ」という考えも理解できる。しかし、感染拡大が起きてしまって社会全体が大ダメージを受けてしまう方が痛いと考える。

 とにかく、今回の新たな指標は、《多少の感染者増加では、政府は営業停止(時間短縮)などの協力要請や行動制限などの予防対策(政策)は取らない》という方針を明示している。
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新型コロナウイルス その122「選挙結果と給付金」

2021-11-10 07:54:58 | 時事
新たな経済対策の柱となる給付金について18歳以下に10万円相当を支給すると合意。先行して現金5万円を配り、来春をめどに残り5万円を原則クーポンで支給。

 限りある財源なので、すべての国民が納得する政策は不可能なので、有効な税金の投入が望まれ、それに沿うものならば、全然給付されなくても文句は言わない。
 で、「有効な税金の投入は何か?」と問われると、正解は難しい。個人的には消費税を下げるのが、皆の生活の補助になると考えている。
 まあ、選挙後の施策なので、与党の公約に沿ったものになるのが妥当かなとも思う。"与党の勝利”と見なされる選挙結果になってしまったのは残念。立憲民主党の枝野氏は、あまりにも与党批判が強くそれが前面に出過ぎて、政策が隠れてしまい、国を良くするという意思が感じられなかった。


 さて、政府は与党の選挙公約に沿って、18歳以下に10万円相当を支給することを決めた(所得制限をつけるかは、自民公明が協議中)
 でも、今回の給付金、恩恵を受けるのは18歳以下の子供がいる世代だけ。投票率が低い世代が恩恵を受けるのは、納得がいかないよね。

 「投票しても意味がない」と投票しない人がたくさんいるらしい。
 《投票する意味がある》と実感させるのだったら、自民・公明に投票した世代に給付するべきだろう。(私は他の党に投票したけれど…)

 
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全日本大学駅伝2021

2021-11-07 20:58:31 | スポーツ
情勢が何度も変転した大激戦、青山学院大学とのアンカー勝負を8秒差で制した駒沢大学が2連覇!

大激戦を詳細に振り返りたいのですが、そこまでの根性がないので、要点のみを記します。(敬称は略させていただきます)
1.アンカー勝負で明暗を分けたもの
 駒沢から遅れること18秒での2位でタスキを受けた青学・飯田は、落ち着いて8キロかけて差を詰め並走した。
 並走と言っても、やや後ろから走る力を使わずに走る有利なポジション。二人の表情や走力(5000mの記録はほぼ互角らしい)から、青学が有利と見られた。
 解説者も、《青学の飯田が仕掛けて勝負を決めるか》がポイントのような解説ぶりだった。

 私もそのようには思ったが、解説者ほど楽観はしていなかった。
 よく、2者が並走している場合、両者の持ちタイムを重視するが、最後の1~2キロに勝負が持ち込まれた時は、19km走った後のゴール直前のスプリントやラスト500mのロングスパート力が勝負の分かれ目になる。そのスパート力は、1500mや5000mの持ちタイムではなく、ランナーの特性によるものが大きい。
 ましてや駅伝のアンカー勝負で並走した場合は、知らず知らずに力んだフォームになり、普段より消耗してしまうこともある。

 なので、実際どちらがラスト勝負になった場合に分があるかは、何度も同走した間柄ならそういった要素も把握できて、勝負の仕方を選択できるが、そうではない場合は、一番自分が力を発揮できる走り方を選択しなければならない。
 走力(総合力)が自分の方が上の場合は、自分の上限に近いペースで走り続け、相手を消耗させるのが一番確実な方法だと考える。普段より遅いペースで走るのは、却って、普段のフォームとは違うエネルギーの無駄が生じることもある。
 また、ラストに相当の自信があれば、ひたすらラスト勝負に備えて、消耗をできるだけ抑えるのが最善だろう。

 今回の青学の場合は、前者の方法を取るべきだったように思う。
 飯田が見かけよりも余力がなかったのかもしれないが……

 駒沢のアンカー・花尾の追いつかれて並走されても、自分の走りを保ち続けたメンタルの強さと走りを讃えるべきなのだろう。

2.2区の順天堂大学・三浦の戦術に疑問
 東京五輪の3000m障の入賞の実力を見せつけた三浦の走りだったが、その戦術は大いに疑問を感じた。
 10位でタスキを引き継いだが、トップとの差は20秒差。追いつくのは容易に思え、実際、すぐに追いついた。
 20秒差はそれほど負担ではないと思うが、それでも20秒速いペースで走ったことと、まだ、残りが長かったことを考えると、集団の中で回復を待つというのは妥当だとも言える。
 しかし、力を温存しすぎで、スパートしたのは残り僅かになってから。そこから、2位(法政大)との差を一気に10秒差をつけたのは流石と言えるのかもしれない。
 ただ、早稲田大(3位)には11秒差、3区にヴィンセントを擁する東京国際大(6位)に21秒差と十分な差をつけたとは言い難い。駒沢、青学にはそれぞれ45秒、1分13秒と差がついたのは、区間10位、14位と両大学が不振だっただけ。

 順大の戦略としては「2区でトップに立つのは最低限で、有力チームに少なくとも30秒~1分は差をつけたかった」はず。
 その差を目指して2区中盤辺りからペースを上げて走れば、各大学のランナーに無理を強いて消耗させ、何チーム化はオーバーペースを誘発しブレーキを起こさせ、何チームかを優勝争いから脱落させたかった。

 テレビ朝日の解説陣は「冷静な走りだった」と高評価を与えていたが……アンカー勝負や個人レースではなく、駅伝の2区ということを考慮しないのだろうか?
 順大はトップと1分22秒差の総合3位。三浦が爆走していたら、優勝のチャンスもあったはずだ。


3.なぜヴィンセントを3区に?
 おそらく、参加選手最高の走力を持つ東京国際大のヴィンセント。なぜ、その彼を3区(11.9km)に配置したのだろうか?
 確かに、区間2位の拓殖大のラジニに35秒差をつけ、区間3位の岸本(青学)に1分9秒もの差をつけたが、ヴィンセントを最長区間の8区(19.7km)に配置すれば、もっとタイムを稼げたはずだ。調子が悪くなければ最長区間に配置するのが合理的だ。もしかすると、他のランナーの調子がよくなく、前半で下位に沈むのを避けたかったのかもしれないが、それなら、ヴィンセントではなく丹所を3区に配置すればよかったのではないだろうか?(丹所も故障上がりで、十分ではなかったらしいが)
 結局、長距離区間の7区、8区が区間6位、12位に終わり、総合5位に終わった。

4.その他の感想
・3区終了時に12位(トップと2分20秒差)の駒沢、2区終了時に14位(トップと1分13秒差)の青学。序盤、低迷した両チームがアンカー勝負を繰り広げたのは、さすがの自力だ。
・駒沢は、1区の佐藤はラストの走りのキレは抜群!。中央・吉居に競り勝ち区間賞。6区の安原の激走(区間2位)は勝因の大きな要素。5区田澤は大学長距離界のエースの走りを見せた。
・青学は3区岸本が区間3位の復活の走りを見せたのは嬉しい材料。4区高橋、5区佐藤の区間1位の快走、さらに田沢に引き離されなかった7区近藤の粘りの冷静な走りも光った。
・駒沢も鈴木芽吹の欠場などベストメンバーではなかったようだ
・青学6区の急遽の予定変更も痛かったかもしれない
・早稲田もよく走ったが、6区区間17位が痛かった。総合順位は6位。
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相棒 season20 第4話「贈る言葉」

2021-11-05 17:03:06 | ドラマ・映画
ゲームクリエイター・鴫野大輔(黒田大輔)に魅力がない
(婚約者の中村亜里沙(長谷川葉生)は彼のどこに惚れたのだろう?)
それどころか、鴫野の信条や心情がブレすぎ
(《視聴者に表向きはそう見えるが、実はこういう考えだった》という周到なストーリーではなく、行き当たりばったりのシナリオであった)

一応、鴫野の信条や心情を整理してみる
1.自分の考えを言葉にすることもできない冴えない男
  スピーチを指導していたスピーチライターの宮森由佳(瀬戸カトリーヌ)の8年前の評価
2.「世界中が待っているゲーム、妥協できないでしょぉうっ!」
  元部下の相島潤平のグラフィックデザインを何度もダメ出しをしたことについて
3.鴫野のスピーチに「もっと自由に」というキーワードが増えた(鴫野のアレンジ)
  宮森由佳は《鴫野は自分から自由になりたい》と感じた
  さらに、社長にも独立の意思を示していた。
  独立してもっと自由に作りたかった。それで、ゲーム製作が進まない。
  実際、ドール作家の婚約者・中村亜里沙がひとりで製作してしているのを、羨んでいた。
4.ゲーム製作そのものを辞めたい
  《歩いて思案に暮れるという鴫野だが、半年以上履き続けている靴の底が減っていない》と洞察した右京の推理
  鴫野はアイデアに行き詰まっていた。独立もその場しのぎだった。

鴫野は《もっと自由に作りたい》と強く思っていた(彼のスピーチで自信満々に語っていた)
しかし、実際はアイデアが出ず、問題を先送りにしていただけ。
しかも、アイデアを絞り出す努力もしない(歩いて思案することもしなかった)
そんな自分の怠惰を棚に上げ、相島のグラフィックにダメ出しをし続ける。その挙句、クビ。
そのくせ、「"もう作れない”なんていうのはダサい」と言う


 人間的にも低級
殺人の容疑を掛けられて、陣川(原田龍二)に助けを求めただけで、事情を訊く質問にもきちんと答えない。
そんな鴫野……ゲームを作れなかったら、何の価値があるのか?
他の道に進むという選択肢もあるが、そういうプランもないようだ。



スピーチライターの宮森由佳も意味不明
 ゲーム製作に直接かかわっていない由佳が、《彼を作り上げたのは自分だ》と思う根拠が分からない。せいぜい、虚像を作っただけ。
 その上、鴫野にこだわる理由もわからず、今回の犯行(殺人誘導、証拠捏造)に至る心情が理解できない



社長の江口稔(安藤彰則)の行動も矛盾
 ①鴫野の独立話を公表すると言う相島を撲殺
 ②鴫野が自分の犯行を目撃したのではと思い、相島の撲殺犯に仕立てて、自分の保身を図った
②を行っても、鴫野が死んではゲームは完成しない。
まあ、《会社が傾く》ことと《殺人犯として捕まる》こととで選ぶとしたら後者を避けたいと思ったのだろうが……

 相島の撲殺シーンと鴫野の絞殺未遂シーン……迫真の演技だったなあ


今話のミソ
 鴫野のイヤホンが殺害現場に落ちており、それが社長の心理を揺さぶったことと、由佳が社長を殺人に誘導した確証となったこと。

 この点は、評価できる(上から目線で申し訳ありません)

第1話「復活~口封じの死」
第2話「復活~死者の反撃」
第3話「復活~最終決戦」


【ストーリー】番組サイトより
『相棒』初代“第三の男”陣川公平(原田龍二)が登場!
親友の疑惑を晴らすため奔走する


 陣川(原田龍二)は、高校時代からの友人で、現在はゲームクリエイターとして活躍している鴫野大輔(黒田大輔)から結婚式のスピーチを依頼され、大張り切り。しかし、内容が今ひとつのため、鴫野が長年世話になっているというスピーチライターの宮森由佳(瀬戸カトリーヌ)を紹介される。興味を持った右京が、陣川に同行し、由佳から話を聞いていると、陣川の携帯に鴫野から連絡が。
 突然、殺人事件の容疑が掛けられ、警察から事情聴取を受けているという。助けを求められた陣川は、右京と亘(反町隆史)をともなって急行。殺されたのは鴫野の下で働いていた元社員の男性で、死の直前、『お前を絶対に許さない。全てを公にして謝罪しろ』というメールを鴫野に送っていたという。内容から、ゲーム開発に関して、鴫野に恨みを持っていたと思われるが、鴫野自身は容疑を全面否認。それを信じた陣川は、右京と亘を巻き込み、独自の捜査を始める。
 ところが、その矢先、鴫野犯人説を裏づける、決定的な証拠が発見されて…!?

人気ゲーム開発の裏に秘められた殺意
カリスマクリエイターが隠したい秘密とは!?
陣川の熱い思いが、意外な真相をあぶり出す!


ゲスト:原田龍二 瀬戸カトリーヌ

脚本:神森万里江
監督:橋本一
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報道すれば良いというものではない

2021-11-03 09:47:32 | 時事
「死刑になりたかった」「(殺すのは)誰でも良かった」
…………だったら、誰にも迷惑かけずに〇ねばいいのに……

 逮捕の際(今回は抵抗しなかったので、難しかったが)、腕の一本でも〇ってやればいいのに。
 人を傷つける、ましてや、殺そうとする者には、死や痛みを分からせてやり……



 さて、いつも思うのであるが、こういう事件が起こると、CGなどを駆使し、当事者の声なども入れて、詳細に事件の経過を再現する。
 さらに、犯人の生い立ちや性格、生活なども報じる。
…………これって、必要なの?


 こういう輩は、“カマッテちゃん”なので、報じれば報じるほど、満足するのではないだろうか?
 それに、今回の犯人もそうであったが(小田急線の事件を参考にしたと供述)、こういう報道に触発されて、事件を起こす……連鎖反応を起こす。
 《ああ、事件を起こせば、もてはやされる!》などと思ってしまう。

 今後、連鎖事件が起きないように、あまり良い策ではないが、“見せしめ“的措置が必要なのではないか


 あと、こういう犯人の家族が気の毒だ。
 誹謗・中傷・嫌がらせに遭わないよう願います。
コメント (6)
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藤井-豊島戦を観て、感じたこと その5

2021-11-02 17:31:43 | 将棋
「藤井-豊島戦を観て、感じたこと その1」
「藤井-豊島戦を観て、感じたこと その2」
「藤井-豊島戦を観て、感じたこと その3」
「藤井-豊島戦を観て、感じたこと その4」
の続き

 前回記事で、変化図1についての形勢判断や最善手順などを問いかけましたが、回答はありませんでした。

 希望はしましたが、期待はしていなかったので、まあ、いいんですけど…(笑)
 facebookの将棋関係のグループで問いかければ、すぐ反応はあると思いますが、何かと面倒なので……


王位戦 第5局
 本局を迎えた時点で、対戦成績は豊島9勝、藤井6勝。
 王位戦はこの時点で藤井王位(棋聖)の3勝1敗で、勝てば防衛が決まる一局。


 戦型は“相掛かり”。先手が7四の歩を飛車でかすめ取る最近見かける戦型だ。
 “先手の歩得”対“後手の手得”。先手の飛車がやや窮屈になっているのに乗じて、後手が主導権を取りに行くというような流れになり、“横歩取り戦(空中戦)”に近い感覚だ。

 歩の突き捨てや垂らしなど、大胆かつ細心の組み手争いで第2図。

 第2図以下、△4四角▲7七銀△3三桂▲2九飛△8五飛▲8八歩(第3図)と進む。
 中段で頑張る先手の飛車を下がらせて、△8五飛と歩を払ったが、単に△3三桂だと2二の角が一時的にではあるが陰になってしまうので、先に△4四角と角の働きを維持して桂を跳ねる工夫を見せた。
 第2図の▲5八金も飛車を下段に引いた時に、一段目に飛車の利きを通す準備で、後手の動きは織り込み済みだったのだろう。

 この第3図で、41分考えた豊島竜王は△7五銀!
 攻勢に出るのなら、△7五銀が第一感。40分の考慮とは言え、予定の一着だったのではないだろうか。ところが………

 △7五銀には▲9七桂がある
 控室でも、▲9七桂と跳ぶ変化を調べられており、
(A)△6六銀▲8五桂△7七銀成▲同金だが、そのあとの継続手が見えないという。
(B)△8七歩成▲同歩△6六銀や、
(C)△6六角▲8五桂△7七角成などが検討されたが、先手が飛車持つと、後手陣の3筋が壁でつらい形だという。
【中継解説より】


 44分の熟慮で、藤井王位は▲9七桂と着手。やはり……

 では、第3図では後手はどう指すべきだったのか?
※局後の感想※
代えて△2二銀は▲7六銀△8三飛▲4四角△同歩▲6六歩△4三角▲6五歩△同銀▲6一角△8二飛▲6五銀△同角▲8三銀△6二飛▲7二角成で、
「(後手が)まずいような気がします」(豊島)
「いやー、しかし、筋が悪い攻めなので」(藤井)
手順途中の☖8三飛に代えて☖8二飛でも同様に進めて、☖6五同銀のタイミングで☗4六角と打たれて後手が悪いという。
「先手の2九の飛車がいい形なので。後手は代えて☖9五歩と突いておくのが、いちばんアヤがあったかもしれませんね」(豊島)


 僭越ながら、書かせていただくと、
やはり、△2二銀と指したい。
 第3図では後手玉の壁形が気になる。後々、響いてきそうだ。
 壁形の解消もあるが、互いに3筋の桂頭の弱点があり、3筋が戦場になる可能性が大で、3筋の補強の意味もある。△2二銀の価値は高い。


 
 ▲9七桂を見て、豊島竜王が固まった(ように見えた)。
 やはり、見落としなのか?

 桂を端に跳ねるのは利きが1か所のみで、働きが弱いので、指しにくい手ではあるが、後手の飛車銀の弱点を突いており、すぐ視界に浮かんでくる手であろう。
 《その手を竜王が見落とすはずがなく、何か秘手があるのだろう》と上記の中継解説のようにいろいろ考えるが、思わしい局面にはならない。


 何とか勝負形に持ち込む……いや、大盤解説のため、勝負を長引かせる手を模索しているように思えた。(▲9七桂は10時33分の着手)
 70分後(それでも11時43分)、△8四飛!
 ………直前に指した7五の銀をほぼ無条件で差し出す……何という、辛抱!



 ……結局、投了を先延ばしにしたのみに留まった。
 終局は16時47分。▲9七桂以降、辛い6時間だったことだろう。
 ▲9七桂(第4図)以降は、局面図のみ。




叡王戦 第5局
 本局を迎えた時点で、対戦成績は豊島9勝、藤井7勝。
 この『豊島×藤井19番勝負』に限ると、豊島3勝、藤井6勝とダブルスコアだが、この一局に勝つと、タイトル戦としては1勝1敗。非常に大きな勝負である。

 本局は上述の王位戦第5局と同じ進行をたどったが

 第1図の▲8七歩で前局を離れた。
 本局の後手の豊島叡王は、二枚銀を繰り出していった。
 以下は、図面のみを示す。
 二枚の銀が連携を組んで動いていくが、僻地に進むことになってしまった。





 第8図の先手の金銀も逆形、角も隠居状態ではあるが、後手の2筋の屈伏形も大きい。
 この後、先手の藤井二冠は、8筋を攻め込まれ(攻め込ませた?)、飛車を取られる(取らせた)間に、7七の金をスルスルと繰り出し、急所に歩を成り込んだ。

 8筋を攻め込まれて歩が切れていることを逆用し、8三に歩を叩けたのも大きい。
 図の後手の飛車tと二枚の銀は、相当の愚形。

 4手後の▲9七桂(第10図)は控室をうならせた手だ。

 「将棋はこうやって勝つのか」と感嘆させた手だ。棋士の第一感は▲5五角で、この▲9七桂は見えないという。(奇しくも、前局の王位戦第5局で豊島竜王にとって激痛の▲9七桂と合致している)
 実は、控室の▲5五角が正着で、▲9七桂は逆転を誘引しかねない危険な一着だったという。
 実際、ABEMAのAIの評価値はほぼ互角の値を示した(実際は、もっと深く読ませると先手が大優勢と示すという‥‥『将棋世界』小暮克洋氏の観戦記)

 ▲9七桂には、△5六歩の勝負手があった
 以下、▲5六同銀なら△8七歩成▲同銀△7六銀▲同銀に△7八飛(変化図1)で逆転の雰囲気が充満。

 ただし、△5六歩には▲5六同銀ではなく▲4六歩が巧手で△同角とさせてから▲5六銀と歩を払えば、以下△8七歩成▲同銀△7六銀▲同銀△7八飛と同様に進んでも▲4七玉(変化図2)で先手良し。


 とは言え、豊島叡王も「△5六歩、あるいは△8七歩成▲同銀△5六歩と指すべきだった」と小暮氏にメールで答えている(『将棋世界』より)
 また、藤井二冠も「△5六歩~△8七歩成の筋は見えていなかったが、△5六歩に▲4六歩で先手が残している」とメールで答えている(『将棋世界』より)

 ▲9七桂で2分消費して、秒読みになっていたので、△5六歩と指されていたら、もしかしたら……。とにかく、△5六歩以降の展開が見たかったなあ。

 因みに、高見七段は「△4六歩は難易度が高すぎる手」だと言う。
「▲5六同銀の形自体、先手の中央が厚くなってお手伝いにも映る。運よく△5六歩が見えたとしても、▲同銀に△7六銀が▲7四金でダメと速断しちゃうと、そこでアウト。
 ▲5六同銀にスピーディーな△8七歩成~△7六銀がワンセットってことを見抜くには、ハードルはメチャクチャ高いです」と語っている。


 ‥‥そうなのかなぁ。確かに、△8七歩成~△7六銀は見えにくいが、▲9七桂(第10図)での△5六歩は選択肢としては△3六歩と同格のように思えるのだが……
 そして、もし、▲5六同銀と取ってくれて、その局面を前にしたら、△8七歩成~△7六銀~△7八飛の筋が見える可能性は低くないような気がする。


 実戦は、▲9七桂△3六歩で、起伏なく終局となった。


 これで、叡王を奪取。史上最年少(19歳1ヵ月)で三冠を達成した。

「その6」に続く
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