英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『ストロベリーナイト』 第8話「悪しき実2」

2012-02-29 13:42:45 | ドラマ・映画
「確信」ではなく「確証」を挙げろ
 今回のエピソードのひとつのテーマである。

 玲子(竹内結子)は直感重視でそれに突き進む捜査、日下(遠藤憲一)はすべての事象を調べ上げその事実を総合的に考え結論を導き出す捜査。前回(前編)では、互いに認め合っているフシや、逆を実行するような傾向が見られたが、今回は真っ向から対立。
 対立と言っても、日下は玲子の手腕を認めつつ、その捜査方法の危険性を危惧している大人の態度、対して玲子は「大嫌い」という感情剥き出し。日下に言い負かされて、部下の前であれまくる始末でお嬢様っぷり。さらに、屋上で騎士・菊田(西島秀俊)に慰められるお姫様ぶり。


 事件の真相は、ほぼ先週の予想通り。細部については暴力団の背景は日下が補足、岸谷(松田賢二)の心情については美津代(木村多江)の告白で補完。
 岸谷と美津代の心の機微については、半身の死後硬直の差から玲子が推測したぐらいで、ほとんどは美津代の告白のみ。まあ、この二人の心情とそれを玲子が聞き出すのがこの話の見せ場だと(無理やり)思えば(木村多江さんだし)、仕方がないと思うが、ほぼ予想通りの真相で2週間またがられるのは、つまらなかった。

★「確信」ではなく「確証」を挙げろ!と言われたのに
 玲子は「確信」と言い切るだけの確証がない。つまり、調べてないと日下に指摘されていたが、まさにその通りである。
 玲子が(推理以外で)捜査したことと言えば、美津代の告白を引き出したことと、美津代の居所を「勘(直感)」と「運」だけで突き止めたことだけ。
 写真の秘密は現場資料の鬼と言われる林さんに聞いただけ。せめて、この部分を掘り下げてくれれば、見どころがあったと思うが……。
 玲子の考える「確証」というのは美津代の証言だけのようで、凶器の拳銃など、岸谷の犯行の証拠を挙げようとはしない。

 結局、被疑者死亡でこれ以上の捜査はしないということらしいが、未解決の9件の殺人はどうなるのだろうか?それらを立件するのが玲子の使命だと思うのだが。
 岸谷の犯行を立証しても、被疑者死亡で不起訴になるらしいが、起訴できなくても、立件しなければ、過去の未解決事件は宙ぶらりんのまま。被害者や被害者の遺族が浮かばれない。

★悩める日下
「あいつは明らかに俺を嫌っている。その理由が分からん。判断するにも、その材料がない」
 いえ、日下さん、あれだけ理詰めで正論で言い負かせば、そりゃ嫌われますよ。

★「悪しき身」
樒(しきみ)……常緑小高木・高さは2m~10m、杖や葉を切ると一種の香気がある。本州、四国、九州、沖縄、台湾、中国に分布する。この木の皮や葉を乾燥し粉末にしたものを仏前の焼香や線香等に用いる。抹香臭いという言葉はこのシキミの香りの事でぁる.仏前や墓に木を供え、寺院の境内等にも植えられ、「コゥノキ、(香ノ木)」、「ハナノキ」と呼ばれるが、これは花が美しいのではなく、墓前や仏前に供花するからで、上代から日本人の 間で親しまれてきた木である。 
  果実には毒成分があり、和名の「シキミ」は悪しき 実の意味で“ア”が略され「シキミ」になったと言われている。材は念珠、洋傘の柄、寄木、木象験に使用される。
 3月から4月にかけ、直径3cm前後の淡黄色の花を葉のつけ根につける。果実は袋果で扁平で2~2・5cmになる。外部柔かく秋に熱してそれぞれ内側から裂開し黄褐色で光沢のある種子を勢いよくはじき出す。

              『百話@木のこかげ』より

【疑問点】
①長時間添い寝したのなら、その痕跡は残ると思うが、ここはスルーしないとドラマにならない。
②未解決の事件が今回の他に9件。これがすべて射殺だとしたら、今まで捕まらなかったのが不思議である。拳銃が凶器だと、なおさら足がつきやすいし。
 


【ストーリー】(番組サイトより)
姫川玲子(竹内結子)は、岸谷清次(松田賢二)の私書箱にあった写真を特設現場資料室で照会。春川美津代(木村多江)以外、13枚の写真に映る人物はいずれも射殺された暴力団関係者であることを知る。アパートに残されていた13個の木片と併せて、岸谷が殺し屋であったと踏んだ玲子は、今泉春男係長(高嶋政宏)に暴力団組長連続射殺事件の捜査本部に加えて欲しいと頼む。しかし、今泉は証拠が薄いといぶかしむ。それでも玲子が食い下がっていると、話を聞いていた日下守(遠藤憲一)に確信ではなく確証がなければ捜査にならないと一蹴されてしまった。今泉からも推測ではなく、もう少しネタを埋めろと忠告され、玲子たち“姫川班”は連続射殺事件の捜査本部に加えてもらえなかった。

玲子は美津代の身柄を確保することを姫川班のメンバーに命令。また、私書箱にあった美津代の写真背景に注目し、その場所に行かせて欲しいと今泉に持ちかける。今泉は手ぶらで戻って来るなと、玲子を送り出した。

玲子は菊田と一緒に写真の温泉街へと向かい、間もなく美津代を探し当てるのだが…。
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Wリーグ セミファイナル(トヨタ-デンソー、JX-富士通)

2012-02-28 14:40:00 | スポーツ
 トヨタ×デンソーは、デンソーがディフェンスをマンツーマンからゾーンに切り替えたことがゲームの流れを変えたと言える。かなり、マンツーマンディフェンスに苦しんでいたトヨタだったが、ゾーンに替えられて「楽になった」という感じが強かったと思う。
 トヨタの勝因は、何と言っても矢野の活躍である。得点はもちろん、高田に対してしつこいディフェンスで押さえていた。
 デンソーの高田も良い選手で、矢野のマークにあいながらも得点を上げるのは流石である。デンソーとしては、高田のマークがきつくなった時、それを補い、得点出来る選手がいなかったこと(途中出場の大沼が頑張っていたが)。
 あるいは、ポイントガードの小畑がもっと相手ディフェンスをかきまわすプレーをしてくれれば、高田ももっと楽にプレーができたはず。
 とにかく、もう一人、ポイントゲッターがいるか、久手堅タイプの選手がいるか、強力な3ポイントシューターがいるか……あと一枚駒が必要だと感じた。
 あと、トヨタは池田が本調子でないのが気になるところである。

 JX×富士通は、富士通に充分、勝機があった。
 JXの苦戦の因は、けが人が多いこと。具志堅の離脱はもちろんだが、第1戦は故障上がりの大神が精彩を欠いたこと、諏訪も出場1分弱。田中もファールトラブルで出場21分、得点0。ほとんど間宮ひとりに頼ったオフェンスでは、苦しすぎる。
 第2戦も第3クォーター途中、37-28とリードし、その後も点を取られたら入れ返し、富士通ペースでゲームを進め、間宮が4つ目のファールを犯したところでは、JXに暗雲が立ち込めた。
 しかし、そこから大神、吉田が奮起し、第3クォーター終了時には、43-42と1点差まで追い上げたのは流石で、これが大きかった。
 第4クォーターに入り、田中のミドルシュートで逆転。一旦逆転したのが大きく、山本に3ポイントシュートを許すも、大神、田中、吉田が決め、勝負の流れを引き寄せまた。
 富士通は、終盤失速、名木が孤軍奮闘する状態になってしまった。三谷、篠原が不調で、控えの木村が頑張ったが、ゲーム中盤から攻撃が停滞気味になってしまった。
 この因は、立川選手には申し訳ないが、彼女を中盤から起用し続けたことにあると思う。
 彼女は大神に対するディフェンスと、持ち前のスピードで攻撃のテンポを変えるというのが役割だと考えられるが、アシスト能力は低く、カットインなどの局面を打開する能力も乏しく、ロングシュートも確実性が低い。
 短時間の起用ならともかく、長時間、彼女を起用することはオフェンスの停滞を招いてしまう。残念ながら、一番の敗因だと思った。
 諏訪は腰が痛そうだったし、間宮のファールトラブルもあり、JXは綱渡りの勝利であった。

 第3戦は、とにかく、両チームのゴール(ボールではない)に向かう気持ちの差が出た。ジャッジの偏りがあったかどうかはわからないが、フリースローによる得点がJXの23点に対し、富士通は3点と大差がついた。
 その分、3ポイントシュートがJXが1-6に対し、富士通が12-32と、3点対36点とこちらも大差だが、確実さでは劣る。
 とは言え、これだけ3ポイントを決められると、精神的には痛いと思うが、JXはへこたれなかった。
 ゲーム終盤、人が変わったように立川選手が燃えて、ゴールしていたのはちょっと驚いた。
 ただ、これだけ決められてしまったのは、ファイナルへの課題ですね。私が思うに、田中選手のディフェンスに問題があるように思う。とにかく、マークしていた選手をすぐフリーにしてしまう。相手チームのスクリーンなどオフェンスシステムによるものでなく、単純にボールだけに目がいき、マークが甘くなることが多かったようだ。
 彼女のオフェンス能力は凄い。彼女がデビューしてきた時は、矢野選手の跡継ぎだと思った。故障が痛かったが、彼女の復活は嬉しい。
 個人的には、吉田選手が好きである。ルーズボールやリバウンドなど、ボールへの第1歩のスピードが違う。それから、プレー中の視野も広い。

 ファイナルですが、キーポイントの選手は、JXは諏訪選手、トヨタは池田選手のような気がします。
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王将戦第1局 佐藤九段×久保王将・棋王⑤「細心」

2012-02-27 19:20:56 | 将棋

 久保二冠の思惑通り進んだと思われる局面だが、先手の佐藤九段も7七に銀を上がって壁銀を解消し、玉も6八に引いて先手玉も安定してきた。5六を突破されたが、こだわらずに一歩引いたため、後手の大駒がつんのめり気味である。
 前回記したように5六の地点を死守する▲2六飛も成立したようだが、5六にこだわらず悪形を解消し遊び駒を働かせた▲7七銀は目立たぬ好手であった。とは言え、3歩得が1歩得まで後退し、さらに図では銀の行き場がないので、▲2三銀と突入するしかなくなった。
 もちろん、それは佐藤九段も織り込み済みで、△2三同金に▲2四歩△1四金(第4図)と、金を僻地に追いやり、と金を作れば釣り合いが取れると見ている。


 そして、本局で一番感心したのが図より▲5七歩△5二飛▲3八金(第5図)と自陣を整備した点。銀損を補うため、早くと金を作りたいが、▲2三歩成△1五金の手の交換をすると、△2六飛▲同飛△同金と飛車交換をされる上、遊ばせた金を働かされてしまう筋が生じてしまう。


 金を3八に上がったのも細心の一着。▲5八金と玉に寄せて上がりたいが、それだと、△5四角▲同角△同飛とされ、ここで▲2三歩成とすると△6四角▲3七角△同角成▲同桂△6四角(変化6図)で桂取りが受けにくい(佐藤九段自戦記)。
 さらに、▲5八金には△5四角だけでなく、△5五飛と浮き、▲6六銀なら△3五飛▲3六歩(△3九飛成を受ける)△2五飛▲同飛△同金▲6五銀△3九飛(変化7図)と暴れられる手がある(中継サイト)。


 これらの変化を抑えるため、▲3八金と上がったのである。本譜も、△5四角▲同角△同飛と進んだが、▲3八金の効果で堂々と▲2三歩成(第6図)を着手でき、と金作りが実現した。

 「この▲2三歩成では▲4三角も映るが、△5五飛▲2一角成△4二銀で大変、以下▲2三歩成は△3五飛▲3七歩△2五飛(変化8図)とぶつけられて自信がない。よって第6図では▲2三歩成が正解である。この時怖いのは△5五飛と浮いてくる手だが、この場合はかまわず▲2四とと引き、△3五飛▲3六歩△同飛▲3七歩△2七歩▲同金(変化9図)で問題ない」(佐藤九段自戦記)


 つまり、この局面では後手飛車が2筋に回って捌いてくるのを押さえるのが最優先事項で、と金を作って2四に引く準備を急ぐ必要がある。
 先の局面ではと金作りを急がず、今度はと金作りを優先させる。なんと細心な手順なのだろうか。

 ▲2三歩成(第6図)以下、△6四角▲3七角△同角成▲同桂△3六銀(第7図)と久保二冠は必死の手作りだが、歩切れで3六に銀を打つのでは苦しい。ここで、佐藤九段に豊川七段なら「味良し九段の手」と言うであろう手が着手された。その手は?
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『平清盛』 第8話「宋銭と内大臣」

2012-02-26 20:52:46 | ドラマ・映画
「そなたの料簡(了見)を知りたかっただけじゃ。これだけの証拠を突き付けられながら、ひるみもせず、詫びもせず、それどころか、法を罵り、浅はかな考えにて、国の仕組みを変えよと求める。
 私はこれより、そなたのようなものを粛正するべく、法を整え、政(まつりごと)を行う」(藤原頼長(山本耕史))
「言い返さなかったのではない。言い返せなかったのじゃ。言えば言うだけ、おのれの青臭さ、浅はかさを、思い知らされそうな気がして。何かを変えたいという思いだけでは動かぬこともある。
 あのような男とやり合うには、俺はまだまだ力が足りぬ」(平清盛(松山ケンイチ))
「(清盛の料簡を見極めるため)違いますな!たとえ、偽の院宣であったとしても、院は平氏をお咎めにはなりませぬ。今や、平氏の財は、院にとって欠くべからざるものです。それほどまでに院は、いや、王家は乱れ切っておる。それをあなた様は、見抜いておいでだ」(高階通憲(阿部サダヲ))


 この3人の言葉が、今回の内容を端的に表している。(3人を並べて挙げると、通憲も「星飛雄馬・花形満・左門豊作」の左門の様な立ち位置に思われるが、そうではなく、彼は常に、清盛の思想を具体的に表現したり、補足したりするために、脚本家に利用されているだけのよう)
 ライバル・頼長、登場!
 サブタイトルは「宋銭と内大臣」であるが、「宋銭」は貿易や商売を自由に行い民が潤い、生き生きとした面白き世の実現の清盛の思想の象徴で、「内大臣」は、貴族が潤う世の維持しようとするために、平氏やそういう思想を抹殺する頼長の粛清の意志を表している。
 ただ、「内大臣」というのは役職なので、「宋銭」とは対比させるのは、いまひとつピンとこない。
 それはともかく、頼長は、切れ者で手強く、清盛のライバルとして申し分がない。ライバルも光らないと主人公も輝かない。それにしても、証拠品を並べ、アリバイを吟味する頼長、刑事ドラマみたいだ。

 今回の騒動、院宣を偽るのは、密貿易より大罪だと思うし、忠盛(中井貴一)や一族も迂闊で、更に、それを露見させてしまう清盛はもっと迂闊。
 ただ、通憲が明かしたように、院内における平氏の実質的な権力は揺るがないものになっていたようだ。それに、頼長の言葉には、清盛の度量の大きさを認めているようなニュアンスも感じられる。

 あと、清盛が、急にやたら大人になって「何かを変えたいという思いだけでは動かぬこともある。あのような男とやり合うには、俺はまだまだ力が足りぬ」と謙虚なことを述べるのには、違和感を感じた。「言い返さなかったのではなく、言い返せなかったのじゃ」だけでいいように思う。


長男の奔放さのしわ寄せを喰らう次男
 長男が奔放な分、長男が担うべき責任や期待を背負わされてしまう家盛(大東駿介)は、素直で優しいだけに、気の毒だった。

帝にもモテル、モテ男
 文武両道の男前の佐藤義清(藤木直人)、帝(井浦新)の寵愛も受け、ヤキモチまでされてしまう

そのころ、もう一人のライバルは?
 父に心配を掛けない為、見栄(嘘)の手紙を読むだけ(実質、台詞なし)、その分、「ひとりコント」の由良御前(田中麗奈)が奮闘……と、父が申しております!

今週の璋子(檀れい)VS得子(松雪泰子)
 璋子の好きな水仙を菊に植え替えさせた得子。しかし、もともと水仙と菊では、咲く時期が違うのでは?

【ストーリー】(番組サイトより)
 保延2年(1136年)、宋から運ばれてきた貴重な品々が並ぶ博多の市に清盛(松山ケンイチ)たちはやってきた。
 大宰府を通さなければならないはずの宋との取り引きが自由に行われていることに驚く清盛。
 家貞(中村梅雀)は忠盛(中井貴一)が朝廷を通さず密貿易をしていることを清盛に明かす。
 一方、藤原忠実(國村隼)の次男・藤原頼長(山本耕史)は内大臣に昇格する。なにごとにも妥協をゆるさない頼長が内大臣となったことで、混乱した朝廷がさらにかき乱されていくことになる。頼長は、都の市で清盛の配下の海賊・兎丸(加藤浩次)が宋の品々を商売していることから平氏が密貿易をしているのではないかと見抜き、清盛を屋敷によびつける。頼長の問い詰めに清盛は、この国の仕組みが間違っている、と言い、宋銭を見せながら、豊かな宋を手本にするよう進言する。
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王将戦第1局 佐藤九段×久保王将・棋王④「久保二冠の思惑」

2012-02-25 23:33:03 | 将棋

 封じ手は△4四歩だった。この手も候補手に上げられた手だ。
 この手は、先手の4五の角を引かせ△6五角と5六の歩を狙った手で、後に△3三歩で銀を捕獲する含みもある(角を引かすことで2三の利きをなくしている)
 損得勘定をしてみると、
①先手の角は4五にいる方が働きが強いが、1八の遠見の角の方が安定していると言える。
②歩を打ったので再び歩切れだが、5六の歩を取って補充できる。
③さらに歩を取ることができれば、先手の防衛ラインの5六の地点を突破したことになる。
④△3三歩と打てれば、銀を取ることができる。(4五に先手の角がいると、△3三歩と打っても▲2三銀成△同金▲同角成で、銀金交換の上、馬まで作らせてしまう)

 ①②はプラスマイナス0(ゼロ)
 ③④はプラスポイント
なので、封じ手の△4四歩は少なくとも悪い手ではないように思える。しかし、③のポイントは、実戦でも実現できたが、あっさり6八に玉を引かれてみると、かえって玉形が安定したように思える。さらに、④のポイントは、実戦の経緯を見ると、意外にポイントが低かったようだ。

 △4四歩以下、▲1八角△6五角と進む。△6五角はもちろん5六の歩を狙っている。5六を死守するなら▲2六飛であるが、▲2六飛△5六飛▲同飛△同角で、これを▲同玉と取ると、△7六飛(王手金取り)があるので、普通はここで読みを打ち切る(佐藤九段も)。ところが、△5六同角に角を取らずに▲5一飛(変化図9)とする手があると久保二冠。

 図の▲5一飛は△6五角なら▲5三歩と垂らして受けがなく、△6二金を咎めている意味があり、有力だったと佐藤九段は述べている。
 ただ、猜疑心が強い私はあれこれ考えてしまう。▲5三歩の垂らしに△5六飛と王手で受ける手はないか、或いは、受けずに△6九飛と攻め合うのはどうか。また、変化図9で△5二歩(△5三歩)と角取りと歩の垂らしを同時に受ける手や、△6九飛と打ち▲5八金に△8九飛成▲7九金△同龍▲同銀△3四角▲同歩△5二金打とし、千日手に逃げる手もあるかもしれない。
 いろいろ考えたが、全般的には後手の角が負担になることが多いのと、後手の左翼の駒が働いていないので後手が苦しそうだ。タイミング良く△3三金、或いは△4二銀▲2一飛成△3三金と強引に捌きたいが、なかなかうまくいかない。

 話を戻します。実戦は久保二冠の思惑通り、△4四歩以下▲1八角△6五角▲7七銀△5六飛▲6八玉△3三歩と進み、先の①~④を実現させた。
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王将戦第1局 佐藤九段×久保王将・棋王③「封じ手の周辺」

2012-02-24 23:22:52 | 将棋
 前記事で、難解な局面で久保二冠の封じ手になったが、緊張感がある戦いだったので疲れ、そのおかげでぐっすり眠ることができたそうだというような事を書いたが、更に、『将棋世界』3月号の佐藤九段の自戦記を読むと、封じ手の本命を△5四角と考え、その対策をかなり練ったようで、タイトル戦第一日の夜の過ごし方としては当然かもしれないが、疲れを感じていたという割には、しっかり考える辺り、将棋が好きな佐藤九段らしいなあと思ってしまう。


 封じ手の各人の予想は、中継サイトでは青野九段は△3三歩、神谷七段は△5三金、坂井三段は△5五歩。『週刊将棋』では△3三歩や△5三金が本命視、『将棋世界』の自戦記の佐藤九段は△5四角を本命に考え、他に△4四歩、△5五歩を予想していたとのこと。
 特に△5四角を警戒していたようで、かなり掘り下げて調べたようだ。その辺りを自戦記でも詳細に記されていて、それをここで紹介するのは気が引けるが、あとで読み返した場合、とても自力で納得する棋力はないので、参考にさせていただきます。参考と言っても引用に近いですが、出来るだけ自分の意見も付け加えたいです。

 封じ手図で△5四角には▲同角△同飛▲4五銀△5一飛(変化7図)が順当。

 感覚的には、▲7七銀と壁銀を解消しつつ、上部に働かせたいところだが、△5五歩がうるさく▲同歩△同飛▲5六銀に△3五飛(変化8図)で、

次に△3九角が残り後手を引いてしまう。それを受けていると、△3三桂などドンドン後手の駒が働いてきてしまう。
 なので、△5一飛(変化7図)には▲4六歩と突いて4五の銀に紐を付け、△5五歩に▲同歩△同飛に▲5六歩と受けられるようにするが、今度はその時に△4五飛と飛車を切られ、▲同歩に△3三桂(大変図)と強引に決戦を挑まれると、局面を収めるのが大変。


 まず、①▲4七玉が考えられる。変な手だが、この手はあらかじめ玉をかわしておき、△4五桂には▲4六歩と桂を取ろうという狙いだ。しかし、かまわず△4五桂と跳ね、▲4六歩に△6九角(先手苦戦図1)が決まってしまう(△4五桂▲4六歩を決めないと▲4六玉と受ける手がありそう)。

 この変化では、先に▲7八金と立った手がマイナスになっている。

 そこで、初日の夜は②▲4四歩と③▲7九銀を中心に考えていたそうだ。
 ②▲4四歩は取られそうな歩を伸ばし後手に歩を与えず、さらに上部への厚みを少しでも残しておこうという手であろう。それにしても、桂跳ねを防がない上、さらに隙間を作るような気がする。強気な手である。
 しかし、▲4四歩以下△4五桂▲4六玉に△5四銀(先手苦戦図2)と打たれると、次の△6四角の受け方が難しい。

▲8六角と受けても、△4二角で困る。

 再び大変図に戻り

 ③の▲7九銀を考える。この手は、浮き駒になりそうな7八の金(現在は2八の飛車が利いている)に紐を付けつつ壁銀を解消し自陣を引き締めている。
 この手には△4五桂▲6六玉に△5七角(先手容易でない図)がうるさい。

 この変化は、先手玉も8八まで逃がせるので勝負ではあるが、自信がなかったそうだ。

 更に、大変図では、④6八金も考えている。この手も自陣の整備で、浮き気味の金を落ち着かせるのと同時に5七に利かせ、▲5八玉と引きやすくしている(先手容易でない図で生じた△5七角も消し▲6六玉も可能に)。ただ、8八の銀が離れ駒になるというマイナスもある。
 この手には、△3六歩▲4七玉△6四角▲5五角△同角▲同歩△3七銀(勝つ気がしない図)でどうかと佐藤九段は述べているが、私は勝つ気がしない。


 そもそも、大変図で△4五桂を防ぐ手はないのだろうか?

 一番うまそうなのが▲1八角だが、△6四角と打たれると角筋が防げない。では、△6四角と打たれても1八に飛車をかわせるよう▲2七角や▲3六角はどうだろうか?
 ▲2七角だと△2六銀や△2五桂が生じるので△6四角と絡められると持ちそうにない。
 ▲3六角は△3四歩と角頭を攻められると困る。▲3四同歩には△3五銀と打たれ△4六角の王手飛車を狙われる。
 かと言って、大変図で桂跳ねを防ぐため飛車を打つ気になれない。▲4八飛打と辛抱しても、△3六歩(次に△3七銀)や△3六銀(次に△4五桂)などがあって、却って後手からの攻めの当たりが強くなってしまう。

 どうも大変図は大変なので、△5一飛の変化図7まで戻って、ここで▲3六銀と引き、以下△4二銀▲7七銀(初夜の結論図)の展開を選ぶことになるかというのが一応の結論だったようだ。

 先手は妥協した感があるが、後手も2歩損なので嫌かもしれないという佐藤九段の形勢判断(感触)。

 久保二冠の封じ手は△4四歩だった。
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『ストロベリーナイト』 第7話「悪しき実」

2012-02-23 17:48:20 | ドラマ・映画
 今回は、玲子(竹内結子)と日下(遠藤憲一)が自他殺不明の事件と暴力団狙撃殺人事件の別々の事件を追っていくが、その二つがリンクしていくという仕立てである。
 しかも、玲子は直感重視でそれに突き進む捜査、日下はすべての事象を調べ上げその事実を総合的に考え結論を導き出す捜査と、捜査方法の対比もひとつのテーマであろうか。
 それに加え、石倉(宇梶剛士)の「畑を耕す」(普段から住民と付き合い、街の様子を把握すると同時に、捜査時に情報を引き出しやすくしておく)も絡めた。自他殺不明死体の岸谷(松田賢二)の女・春川美津代(木村多江)が働いていたスナックを、石倉が突き止めたのは、その成果というわけか。


事件に関する疑問・謎
 主人公の玲子サイドの情報が多く、日下サイドは少ない。(日下には興味が湧かない私が見落としただけかも)
組長殺人事件
・暴力団同士の抗争か?
自他殺不明事件
・自殺か他殺か?他殺なら誰が?何故?
・何故、片側半分だけ早く死後硬直の解けたのか?
・13個の木片、私書箱に残された写真は何を意味する?
・岸谷と美津代の喧嘩の原因は?

などなど、疑問が浮かび上がるが、その謎の解明がほどよくされていたように思う。
以下、ネタバレ(と書いたものの、外れていたら恥ずかしい)
・岸谷は殺し屋で、写真はターゲット、木片は供養の仏像の代わり
・片側半分だけ死後硬直の解け方が遅かったのは、岸谷の遺体に美津代が寄り添っていたため。(なぜ、エアコンを掛けたかは分からない)


 個人的には、不幸な女性を演じる木村多江さんを観ることができ、満足。


【ストーリー】(番組サイトより)
捜査一課の大部屋で姫川玲子(竹内結子)たちの“姫川班”のメンバーはゲームなどをしながら暇そうに待機。そんな時、玲子は監察医務院の國奥定之助(津川雅彦)のもとへ行くようにと暴力団組長射殺殺害事件の特別捜査本部にいる今泉春男係長(高嶋政宏)から連絡を受けた。死因不明の遺体が医務院に運び込まれたようだ。

玲子が菊田和男(西島秀俊)を伴って医務院を訪ねると、國奥は早速遺体の説明を始める。発見された遺体の首にはロープが巻かれていたため、自殺のようにも見えるのだがそれだけでは断定できないと國奥。さらに遺体の片側半分の死後硬直が解けた時間がやけに早いのだそうだ。國奥は他殺の可能性を疑っていた。


玲子たちの訪ねた、遺体が発見された署轄には『暴力団組長殺害事件特別捜査本部』が設置されている。そのため、玲子たちへの署轄の人員協力は刑事が一名だけ。刑事に発見時の事情を聴いた玲子は、村田一夫という遺体が発見されたアパートへと向かう。これという手がかりはないのだが、何かで削られた箸置きのような13個の木片と鍵が見つかった。そこに遺体の指紋から前科者が割れたと葉山則之(小出恵介)から連絡が入る。村田は偽名で、本名は岸谷清次(松田賢二)という元暴力団の構成員だった。岸谷の死は女性によって報告されている。そのため“姫川班”は岸谷がアパートで女と暮らしていた可能性を考えて捜査を始める。


地道な捜査の結果、石倉保(宇梶剛士)が岸谷の女が働いていたスナックを突き止める。女の名は春川美津代(木村多江)。スナックのママは、美津代は岸谷が死亡した夜、誰かからの電話を受けるとすぐに帰ったとの証言。岸谷の死亡推定時刻には十分間に合う時間だ。電話の主はいったい誰なのか? そして、美津代はどこに消えてしまったのだろうか?

玲子が科捜研に木片の鑑定を依頼していると菊田から連絡が入る。岸谷のアパートで見つかった鍵が私書箱のものと分かったのだ。私書箱の中には宛名のない封筒と缶。封筒の中には、美津代と思われる女性の写真が一枚。缶には、数十枚の写真が入っていた。姫川班の捜査員が検証していると、日下守(遠藤憲一)たちが捜査する射殺された2人の暴力団組長の写真があり…。
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王将戦第1局 佐藤九段×久保王将・棋王②

2012-02-22 23:00:42 | 将棋

 驚愕の▲5七玉である。しかし、「この局面では玉を上がるしかない。▲5八飛は△2七角、▲4五銀は△3三桂がある。また▲5五角は△同飛▲同歩△5六角。先手は3歩得なので局面を収めたいのだが、そうなると本譜の▲5七玉しかない。いかにも怖い形なので、ほかの棋士は▲3四銀と指さないだろう。ただ私はこれでどう悪くなるのかわからなかったのだ」(将棋世界)と佐藤九段は述べている。
 佐藤九段にとって▲5七銀は当然の一手だった。数手前の▲3四銀と指せば必然の局面で、超速の▲4六銀と指す時には想定の局面、いや、事前の菅井流対策のテーマ図であったように思える。

 ▲5七玉に△6五角と打ち、▲4五角と打って5六の歩を守るのも予定。ここで後手がどう指すかが判らなかったそうだ。
 ちなみに、▲4五角で▲5五角は△5六角▲同玉△5五飛▲同玉△6四角の王手飛車が掛かる。
 また、控え室では▲4五角では▲6六玉があるのではないかと言われていた。以下△5六角ならば▲5三歩△同飛の後、▲5四歩△同飛▲5五歩の三連打や、▲3五角がありそうだと。
 しかし、△5六角▲5三歩△同飛▲3五角△4四歩▲5四歩△同飛▲5五歩△同飛▲同玉△6七角成(参考1図)で、先手は飛車得だが、3つの駒が当たりになっていて収拾不能とのこと(将棋世界、佐藤九段自戦記)。


 実戦は▲4五角と▲5七玉の意を次いで5六の歩を守り、△7六角とこちらの歩を取らせ、▲3五歩(第3図)と角の動きを楽にする。

 第3図では後手からの手段が多く、流石の佐藤九段も不安に感じた局面だったらしい。中継サイトでは①△5五歩②△3三歩③△4二飛④△5四角と候補手が挙げられていた。
 このうち②の△3三歩が、『週間将棋』で掘り下げられている。この△3三歩に対し、三者三様の手順が紹介されている。
 佐藤九段は▲2三銀成△4二飛▲3六角△2三金▲2四歩(変化2図)の進行に不安を感じ、久保二冠は▲2三銀成△4二飛に▲3二銀成△4五飛▲3一成銀△6七角成▲同玉△4七飛成(変化3図)は駒損でよく判らないと述べている。

 さらに、副立会人の神谷七段が▲2三銀成に対し△4三金▲7八飛△5四金▲1八角△6五金の手順を提示。

 佐藤九段は「ちょっと自信がない」、久保二冠も「こうやるんだったか」とうなづいたとのこと。
 確かに2三の成銀はそっぽの感が強く金を4三→5四→6五に働かす感覚は肯定できるが、対する先手の手段は他にありそうな気がする。それに変化4図自体、後手良しに疑問を感じる。
 例えば、変化4図から▲7六飛△同金▲4三角(変化5図)と打つ手はないだろうか?

 △5三飛打が目につくが、▲2一角成△5六飛▲4八玉(変化6図)で

先手が良さそう。後手は3一の銀や7六の金の始末と▲6四桂と打たれる傷もあり忙しい。
 変化5図では△2六飛が手強い。▲4六歩と受けるのなら、そこで△2八飛成とする方が、単に△2八飛と打つより△1九龍の含みがあるだけ得であるし、変化6図路線で▲2一角成には△5六飛行と5二の飛車で行けるのが強みである。
 それでも▲4六歩△2八飛成▲2一角成、あるいは、▲3八金(2八飛成の防ぎ)△5六飛行▲4八玉(▲6八玉)で指せると思う。
 

 久保二冠は、第3図でじっと△6二金。久保二冠の将棋は捌きがクローズアップされるが、戦いの途中に自陣の手を入れる。緩むようであるが、こうすることによって強い華麗な捌きが可能になるのである。
 捌いてくると構えていた佐藤九段も、ありがたいと思ったが、手を渡されてみると容易でない。長考後、▲7八金と整備する。ただ、△6二金と▲7八金の手の交換は先手が損をしたかもしれないと考えていた(後に△6九角が生じる)。
 そういう心理状態、しかも難解な局面で久保二冠の封じ手になったので、その夜は眠れないのではと思ったが、自戦記では「緊張感がある戦いだったので疲れを感じていた。そのおかげか夜はぐっすり眠ることができた」そうだ。
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王将戦第1局 佐藤九段×久保王将・棋王①

2012-02-21 21:53:41 | 将棋
 この対局が行われてから、既に1ヶ月以上経っています。言い訳すると、山崎七段の来福、大雪、スポーツ中継観戦、ドラマレビューと盛りだくさんの一ヶ月でした。間が空いてしまいましたが、やはりこの将棋は採り上げておきたいです。
 このひと月の間に、幸か不幸かネット中継のほかに、『週刊将棋』『将棋世界』さらに、菅井流の実戦など、情報量が増えました。ただ、残念なことに、私の解析力が追いつかず、まとまりそうもありません。という訳で、いつものように、細切れの記事になりそうです。気長におつき合いください。


 後手の久保二冠のゴキゲン中飛車に先手が超速4六銀を選択。そして、第1図の△4四歩が菅井流と呼ばれる最新の対抗策を繰り出してきた。超速は4六に銀を繰り出し後手の5五の歩を攻めようという積極戦法だが、菅井流は▲4六銀には△4五歩と突いて強引に4五に銀を呼び込んで、5五の利きをそらすと同時にその銀自体を攻めようという指し方。とは言え、1歩損で銀を呼び込み、3、4筋もほぼノーガード状態なので、後手としても不退転の覚悟が要る。
 まず、この菅井流について久保二冠は『将棋世界』2月号で
「△4四歩は面白い新工夫と言える。詳しい評価は今後の研究次第だが、新しい手はどんどん出ている。王将戦に続いて棋王戦の挑戦者も間もなく決まる。私もそろそろ何か用意しなくてはいけないと思っている」
と述べている。
 ちなみに、菅井流1号局は▲長岡五段×菅井五段戦で△4四歩以下▲3五歩△同歩▲4六銀△4五歩▲3五銀△5六歩(参考1図)と進み、菅井五段の勝ち。


 また、佐藤九段も『将棋世界』3月号の自戦記で菅井流に関して述べている。
「超速は後手の5筋位取りを直接咎めにいくのが骨子。先手の右銀が4六で安定すると後手は簡単に手を出しづらくなる。そこで、先手の右銀に早めに働きかけ、4六からどいてもらおうというのが△44歩型の基本的な狙いだ。
 最初△4四歩を見た時は驚いた。自分から角道を止めるので5五の歩が取られやすくなる。金銀が前に出ていかない形なので、パッと見でうまくいくとは思えなかった」
 と述べている。さらに、「4四銀型か菅井流(△4四歩型)のどちらかと予想し、ある程度の対策を練ってきた」とも。

 佐藤九段は△4四歩に▲4六銀と上がった。この▲4六銀には68分考慮している。▲4六銀と上がれば、100%△4五歩なので、その後の変化を考えたとのこと。ちなみに、1号局の▲3五歩の展開も有力そうだが、即決戦となってしまい、もう少し落ち着いて指したかったので▲4六銀を選択したとのこと。(落ち着いて指すと言っても、あとの指し手が凄かった)
 ▲4六銀△4五歩▲同銀と進み、ここで①△3二金と②△3二銀の2手段がある。本譜の久保二冠は①△3二金を選択。この手に佐藤九段は▲3四銀と踏み込んだが、▲7八玉も考えたとのこと。実際、この対局の3日後、A級順位戦の羽生二冠×久保二冠戦で羽生二冠は▲7八玉と指している。この将棋は、▲7八玉以下△4三金▲3八飛△3二銀▲3五歩△同歩▲同飛(参考2図)と進み

以下、△7二玉▲5八金右△8二玉▲3八飛△7二銀▲6八銀と進んでいる。この将棋、羽生二冠が恐ろしく丁寧に指し、久保二冠の捌きを完封して、中押し勝ちという内容だった。

 さらに、羽生二冠は朝日杯の準決勝で菅井五段と対局し、菅井流と対決している。
 この時は、△4四歩に対し羽生二冠が▲7八銀と新手をぶつける(菅井五段はこの手はまったく考えていなかった)。以下、△3二銀▲7七銀△5六歩▲同歩△同飛▲6六銀△5一飛▲3五歩△同歩▲3四歩△4二角(参考3図)と進み

以下、▲4六銀△3六歩▲3八飛△7二玉▲3六飛△4三銀▲7八玉△3二金▲5五銀左と進み、羽生二冠が勝利している。

 さて、佐藤九段は自戦記で、この▲7八玉も有力で迷ったが、歩を取る▲3四銀が成立するなら、▲7八玉より得するはずと思い、△5六歩の捌きがあり怖いが、踏み込んだとのこと。後手が暴れてくるのは目に見えているので我慢の展開と腹をくくったとのこと。

 そして、その通りの展開になったのが、第2図の▲5七玉。

 先の▲3四銀以下、△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△7二銀と進み、ここで▲5七玉と玉自ら5六の歩を死守しようとしたのだ。直前の△7二玉は、あらかじめ▲4四角の玉香両取りを避けた手である。

【以下続く】
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『平清盛』 第7話「光らない君」

2012-02-20 17:20:11 | ドラマ・映画
 「光らない君」と緩やかに時子(深田恭子)は称したが、「汚い」は言い過ぎかもしれないが「汚れた君」は言っても良いと思う。もう少し小奇麗にしたほうがいいぞ、清盛(松山ケンイチ)。

今回のメインは清盛の恋愛話。
 明子(加藤あい)には、一目で魅かれたようで、もう一度会いたいと神頼みをしていた。
 明子も清盛に悪くない印象を持ったよう。特に、海や船の話への食いつきは良かった。しかし、身分の違いと父の自分への思いを負担に感じ、清盛への思いを封じ込めた。
 明子の父・高階基章は格式の低く貧乏貴族だったようではあるが、平氏とは身分の差を感じさせるほど、平氏は武士ではありながら破格の出世をしていたらしい。
 武士と言っても、ドラマでは平氏と源氏しか出てこないが、当時はどのくらい武士がいてその身分はどのようなものであったか、また、貴族も身分の差があって、どのような暮らしぶりであったのか、番組の最後に解説して欲しい。名所や史跡の案内もいいけれど。

 清盛も明子の気を引こうと、親友?の佐藤義清(藤木直人)に歌の代筆(代作)を頼んだが、つれない返歌をもらう。
 返歌の内容が、やんわりとしかもすっぱりと切って捨てる内容で面白かった。こういう振られ方なら、あとくされがないかも。当時の貴族は生産活動をしないので、もっぱら故意の駆け引きをしていて、このくらいの返歌にはめげないものかもしれない。(最初はつれないそぶりをするものというのが、慣わしだったとも)
 清盛もめげず、自分らしく面と向かって心をぶつける。

「見くびるでないぞぉ!! 俺は、そなたと会うたとき、なんと清げなる女かと思うた! そなたの夕餉を食い、毎日食いたいと思うた! 海賊や唐船の話に目を輝かせているそなたを見て、生涯、俺のそばにいてほしいと思うた。
 俺は俺の心に従い、そなたを妻にしたいと申しておるのじゃ!」


 いいねえ、ストレートの真っ向勝負。女心は良く分からないけど、心にズシンと響くよね。身分や父の思いで作られた篭を、清盛の直球が打ち破って、明子の心は大海・大空に放たれたよう。海や船の話に魅かれたのも、解き放たれたかったからかもしれない。

 ところで、この時、清盛は何歳だったのか?海賊討伐の時が17歳だったようなので、20歳にはなっていなかったのだろう。非常に即決だったように感じるが、当時の平均寿命からすると若過ぎるということはなかったのかもしれない。
 演じる松山ケンイチの実年齢の関係もあるかもしれないが、主人公の年齢はドラマを観る上で大事な要素なので、明示して欲しい。


 一方、源氏物語の世界にあこがれる時子(深田恭子)は、便意を堪える清盛に最悪の印象を持つ。
 しかし、清盛の明子への一途なプロポーズを目の当たりにして、自分は恋にこがれていたけなのだと悟る。

璋子(檀れい)の犠牲者その2
 さすがに学習したらしく鳥羽上皇(三上博史)は璋子に近づかないご様子。その代わり、得子(松雪泰子)が血祭りにあげられていた。

明子との結婚は平氏一門に新たな波紋をもたらすらしい
 更なる出世を望む忠盛(中井貴一)であるが、清盛の気持ちを尊重し、明子との結婚を許す。しかし、その背中には落胆が漂っていた。
 忠盛の弟・忠正(豊原功補)は、兄の気持ちを思い、口には出さないが不満げにその場を立ち去る。他の家臣も複雑な表情。

文章をしゃべった!
 藤原家成(佐藤二朗)は清盛に格式ある家の娘の縁談を持ってきた。
 そうか、宗子(和久井映見)と従兄弟だったのか。台詞が短くて、何を考えているのか分からなかった彼だが、今回初めて文章を話したような気がする。

台詞と言えば、平維綱(尾美としのり)は……
「家盛(大東駿介)の守役として、彼の我慢する姿を見守る」という説明見出しが付いている彼だが、ほとんど台詞がない。と言うより、主題歌時の登場俳優の字幕で「尾美としのり」の名を見て、「尾美さん出るんだ?でも、どんな役?」と頭をひねる。彼が話しているシーンが記憶にないんだけど。好きな俳優さんだけに、ちょっと気の毒。
 「家盛の我慢する姿を見守る」とあるので、今後も台詞は少ないかも。

【ストーリー】(番組サイトより)
 犠牲は出したものの海賊を討伐した平氏一門。清盛(松山ケンイチ)の乳父・平盛康(佐戸井けん太)は亡くなったが、清盛は生前の盛康に、漁師出身の鱸丸(すずきまる:上川隆也)を養子にするよう頼んでいた。晴れて鱸丸は武士となり、平盛国と名乗ることとなった。
 源氏物語の世界にあこがれる貴族の娘・時子(深田恭子)は、琵琶の稽古に向かう途中も光源氏のようなすてきな男性との出会いを夢みる。そこで偶然、粗暴な清盛と最悪の出会いを果たす。この時はまだ、平家一門を担う夫婦になるとは、二人とも知る由もなかった。
 海賊退治の戦功で、清盛は従四位下の位を授けられたが、棟りょうである忠盛(中井貴一)は念願の公卿(くぎょう)にひきたてられなかった。御所に挨拶に出向いた清盛はその帰り道、雨でぬかるむ道で転んだ父子を助けた。下級貴族・高階基章(たかしなのもとあき:平田満)とその娘・明子(加藤あい)であった。基章はひとめで清盛のことが気に入り、娘を妻としてくれないかと申し出る。清盛はとまどいながらも明子に心を奪われていた。
 御所では得子(なりこ:松雪泰子)が鳥羽上皇(三上博史)の娘を産んだ。璋子(たまこ:檀れい)は周囲の思いをよそに、大量の産着(うぶぎ)を持って得子のもとへお祝いに行き、赤子を育てる苦労を語った。璋子の邪心のない悠然とした態度が許せない得子は、鳥羽上皇を「皇子を産みたい」とたずねる。
このころ、佐藤義清(のりきよ:藤木直人)は歌の才により、崇徳天皇(井浦新)からも一目置かれる存在になっていた。清盛は義清に明子のことを相談しようと訪ねるが、義清には既に妻がいると聞かされて驚く。
 一方、父の暴走にとまどう明子は、琵琶の弟子であり、親友の時子に相談すると、時子はまるで源氏物語の「明石の君」のような良縁と明子に進言、明子を連れて神社で縁結びを祈ろうとする。そこでふたりは、明子との再会を祈る清盛と出会う。時子は明子の相手が以前会った下品な男と知って落胆する。明子は思わず立ち去るが清盛は追いかけ、明子に海の話や大きな夢を語る。明子は清盛にひかれながらも身分違いの縁だと気後れしていた。
 そのころ、藤原家成(佐藤二朗)は宗子(和久井映見)をたずね、清盛に格式ある家の娘を嫁にとるよう勧めていた。家成はいとこである宗子が、血のつながらない清盛を育てる気苦労を案じていた。
 ある日、明子に清盛から文が届く。義清が清盛に代わって恋の歌を贈ったのだ。しかし明子から届いた返歌は断りの内容だった。あきらめきれない清盛は明子を訪ねて真意を問う。明子はこの身分違いの縁は、父のすがる住吉明神の力によるものにすぎないと改めて断った。しかし、清盛は明子への思いは自分自身の心によるものであると率直な思いを語った。明子はやがて涙とともに清盛を受け入れるのであった。
 清盛は忠盛の館に基章と明子を連れて行く。家格の違いから一門は結婚に反対するが、清盛の純粋な明子への思いを聞いた忠盛はふたりの結婚を認める。だが、この結婚は平氏一門に新たな波紋をもたらすのである。
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