『アンフェア』と言えば、
「アンフェア the movie……不覚だった。そして後悔、怒り 」の悲しみと怒りが煮沸した思い出がある。あの怒りの記事を書いたのが、4年前というのが驚き。そして、4年も前だというのに、いまだに怒りの感触が残っているのも驚きだ。
今回のSPドラマは、北乃きい主演の第3作。第1作か第2作を観た記憶があるが、ほとんど覚えていない。しかし、おぼろげに残念感だけ残っている。今回は、一応録画しておいたので、一応観てみた次第である。
で、感想は「やっぱり」であった。(やっぱり観るんじゃなかった)
まあ、『the movie』ほどの怒りは感じなかったが、記事に書こうと思うのに十分な材料はあった。
1.姑息な手段「雪平(篠原涼子)の“チラ見せ”」(第1項に持ってくる件ではないが、第2項の主役のキャラを語るため最初に持ってくる方が都合がよい)
「雪平の登場」でドラマへの興味を湧き立たせる。(『アンフェア』に限らず、常套手段ではあるが)
特に、ドラマ序盤で警視庁の廊下を雪平が歩くシーンを持って来れば、期待感は高まる。しかし、案の定、顔見せ程度。
一応、今ドラマの主役の望月刑事(北乃きい)と対峙し、クライマックスでの望月の決断に影響を与えるやや重要なポイントではあったが、そのクライマックスの望月の決断シーンも、意表を突くための盛り上げシーンに過ぎないように思えた。(後述)
それに、『アンフェアSP』と名乗っているのに、3作目にして初対面というのも、おかしな話だ(現存している他のキャラは出演していたが)。
2.主役が魅力不足 その1~雪平とのツーショット~
刑事ドラマのヒロインが、トラウマを抱え、それに苦しむという設定はよくあることだし、それも“あり”だろう。
そういう設定からか、望月は“雪平寄り”のキャラであるらしくドラマサイトのイントロダクションには「熱血漢で破天荒」とある。「勝手に単独行動を取るな」と上司からも釘を刺されていた。
しかし、演じる北乃きいの芸風(雰囲気)とは、合致しないように感じた。どんな役柄もこなせるのが、一流役者というものなのだろうが、一流役者といえど、顔つき、スタイル、声などで、無理を感じるキャラもありそうだ。
“雪平風”刑事というキャラは、北乃きいには無理があるように感じた。それを顕著に感じたのが、雪平と対峙するシーン。
検索すると篠原良子162cm、北乃きい157cmで、思ったより身長差はないが、どちらかというと丸っこい北乃きいと細身の篠原とのツーショットは、雪平との差を大きく感じさせてしまう。
3.主役が魅力不足 その2~捜査したという印象がない~
トラウマに苦しみ、それと克服するというヒロインであったが、事件の展開に流されているだけで、捜査したり推理したという印象が残っていない。
捜査したのは“ひとり科捜研”三上薫(加藤雅也)、事件の奥にあるモノを見つめたのは山地哲夫(寺島進)だった。(表面にに現れていない女児誘拐があったと気がついたのはヒロインだったが)
なので、女児誘拐に纏わる悲惨さや陰湿さと対峙するヒロインの行動が、ドラマの多くを占めるので、憂鬱で退屈さが大きくなってしまった。
4.望月が犯人を撃つシーン ~意表を突いただけ~
望月が犯人を撃つシーンは、雪平との会話を生かすためと、視聴者の意表を突くためであると考えられるが、「怒りや悲しみを堪えて引き金を引かないか、過去との決着をつけるため撃つか」は、ドラマの大きな見どころであるはず。
それを、防弾チョッキで大丈夫なのを分かった上で、引き金を引き、それで心に決着をつけてしまうというのでは、あまりにも短絡的ではないのだろうか?
引き金を引くか引かないか、一歩譲って、引き金を引いたが外すという選択であるべきだと思うが、感触的に犯人を撃ち抜いて、溜飲を下させるというのは、20年も抱えていたトラウマにしては中途半端な決断である。(視聴者の意表はついたが)
5.模倣犯の模倣犯という真相は評価できるが
その模倣の根本の女児誘拐の真相は明かされないままだった。
まあ、真相は明かさなくてもよいが(続編があるのだろうか?)、根本の事件周辺に不可解な点が多い。
女児(幼児)を誘拐し、その手首に刻印をつけるという猟奇事件。
こういう猟奇的な事件は、愉快犯か性的性癖による犯行であることが多く、そういう場合、1回で終わらないようのではないだろうか?
それに、当時、この誘拐事件について、上層部からストップがかかった理由もわからない。
模倣の犯行についても、うやむやになってしまったのも不可解。
真犯人をかばった管理官・浅野(中村俊介)が、当時、隠ぺい工作はできたかもしれないが、うやむやにできるほど権力があったとは思えない。
怒りを感じるほどではなかったが、残念なドラマだった。