英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

歪んだままの2三の歩 と 時間攻め

2014-12-31 17:10:09 | 将棋
「『将棋世界』12月号  ~竜王戦展望対談……森下九段×中村太六段~ その2」
のコメント欄でStanleyさんから

英さんの一押しのものぐさ将棋観戦ブログに、竜王戦の記事が出ていました。一読して、なかなか面白い。それで英さんにも、この記事の感想を書いてもらおうと考えコメントしました。

①糸谷が着手する際に、森内の2三歩にふれてしまったことに関する考察
②糸谷の時間責めに関する考察。

さて、英さんはこの記事に対して、どのように考察および放言されるのでしょうか?よろしく!



 「よろしく」と言われてしまいましたが、「ものぐさ」さん(shogitygooさん)と同じテーマで書くのは、非常に厳しいものがあります。それに、ほとんど同じ感想を持っています(特に森内九段に関する考察は)。正直、非常に書きづらいです。

歪んだままの2三の歩
 まず、状況説明から。
(中継サイトの棋譜中継での実況・解説を引用すると)

 (11手目・▲2二角成と)角を交換する。糸谷の手が2三の歩に当たり、やや斜めを向いてしまったが、糸谷は気にするそぶりを見せない。
 森内は2三の歩を直さないまま2二の金を取る(12手目)。早くも盤上の勝負以外での戦いが勃発した感じだ。
 (14手目・△6二銀)「直さない、直さないねー」と控室。また森内の顔は少し怒っているようにも見えると控室では言われているが、「ここまで来たら森内さんは直せないですね。問題は糸谷さんに直す気があるかどうか」と、対局以外のところでの雑談が始まった。
 (22手目・△1四歩)禁断の地点と言われている2三を森内の手が通過し1筋に手を伸ばす。もちろん2三に触れるそぶりは見せない。森内にとって、そのときが来るのは△2四同歩、または△2四歩と応じるときのみとなりそうだ。

 中継ブログ記事(49手目)で「森内竜王が傾いていた2三の歩を直し、駒の向きが綺麗に揃った」(記事アップ時刻は午前10時20分)


 結局、森内竜王が歩の歪みを直したが、記事アップ時刻が10時20分なので、少なくとも1時間以上は歪んだままだったと考えられる。2日制対局という視点で考えると、ほんの一部かもしれないが、やはり1時間以上歪んだままという状況、しかも、手数はこの間に38手も着手されている。



 さて、この状況を考察するに当たり、まず両者の性格を考える必要がある。
 森内九段は、几帳面で周囲への気配りも忘れない。なので、周囲の不用意な言動も敏感に察知してしまう。もちろん、『自分には厳しく、他人には優しい』タイプなので、自分の常識を他人に強いることはしない。言わば、『クレヨンしんちゃん』の風間君タイプである。
 敏感でデリケートな故、周囲からのストレスをどんどんため込んでしまうきらいがある。
 これに対して、対局相手の糸谷七段(当時)は、しんのすけタイプだ。合理的に物事を考え(しんのすけの場合は己の本能や常識のままに)、これまでの慣習に囚われずに異を唱え、自分の考えを実践する。糸谷七段は周囲への気遣いをするが、常識や物事の考え方が一般のそれとは異なることがあるように思われる。
 森内竜王も、糸谷七段のそういう人間性を理解しており、≪ん?≫と感じる糸谷七段の言動も、≪悪気はない≫と許容しようと務めていた。しかし、不運なことに、竜王戦は二日制。糸谷七段が中座が多いと言え、丸二日間、顔を突き合わす。一つ一つのストレスは微小であっても、徐々に溜まるストレスが大きくなっていったのではないだろうか。
 ボーちゃんタイプ?の羽生名人だったら、糸谷七段にストレスは感じないように思われるし、森内竜王ほど周囲に気を遣わないタイプの棋士だったら、直接、文句を言うか、周囲に不満を漏らし、ストレスをためないだろう。
 せめて、人並みに森内竜王が表情を曇らせるとかしていれば、ストレスも小さかったのだろうが、そういうことも律してしまう森内竜王である。
(ここら辺りの考察は、ものぐささん(こちらの呼称の方が言い易いです)のものとほとんど同じです)
 第4局、第5局の逆転負けも、ここら辺りのことが遠因になっているのではないだろうか?

 さて、駒の歪みの件であるが、羽生名人だったら≪おや?駒が曲がっているな≫とさっさと直すような気がする。郷田九段だったら、「君が歪めたのだから、君が直すべきだ」と主張するような気がする。
 いや、森内竜王も平常だったら、上記のどちらかの行動を取ったであろう。しかし、そうしなかったのは、これまでの鬱積があったからなのだろう。
 そして、38手、1時間強のストレスは大きかったのではないだろうか?


 駒の歪みを直さなかった糸谷七段であるが、もしかすると、駒が歪んだ原因が自分にあると思っていなかった可能性も考えられる。≪なぜ、森内竜王は駒の歪みを直さないのだろう≫と訝しんでいたのかもしれない。
 そう言えば、駒の歪みについて、両対局者への質問はなかったのだろうか?中継サイトや『週刊将棋』では、真相に触れられていなかったように思う。タイトルが移動してしまったので、訊きづらかったのだろうか?
 もちろん、自分の着手の際に駒が歪んだという自覚があった可能性も強い。この場合、≪歪んでいるが、実戦的には影響がないので、ことさらに直す必要はない。森内竜王が気になるのなら、自分で直すんじゃないのかな≫と考えていたのかもしれないし、≪直すべきなのだけれど、機会を逸してしまった。今さら直すのも変だし、どうしようか?昼食休憩のときに直せばいいか≫などと考えていたのかもしれない。
 実は、駒の歪みを直すか悩んでいて、劣勢に陥ったのかもしれない。


糸谷七段の時間攻め
 「劣勢の方が最善を尽くしても、優勢の方が間違えなければ逆転はできない」
という将棋の性質を考慮すると、合理的考えの持ち主の糸谷七段は、真剣に最善手を考えるのはナンセンスなのだろう。
 それよりも、ざっと自分が考えて、「負けにくい手」や「決定打を与えない手」を選択するほうが賢明だ。相手に考えさせる時間を与えないという利もあるし、自分が考えて“(負けが)分からない手”であればいいのだから、思考エネルギーも少なくて済む。
 これは、特に森内竜王に対しては有効だった。優勢なので勝ちを読み切ろうとする。当然、相手の指し手も最善手と考えられる手を中心に読むことになる。しかし、糸谷七段の着手は、最善手ではなく、予想外の手であることが多い。その度に新たに読み直すことに……どんどん時間とエネルギーを消費していった。

 さて、この時間攻め(時間責め)の是非であるが、当然、勝負としては有りである。
 昨年の森内竜王なら苦も無く勝利したであろうし、おそらく、通常レベルの森内竜王であっても、勝ち切れたのではないだろうか?
 しかし、上述したようなストレスが溜まっていた森内竜王にとって、読みの中心にない粘るだけの手を指し続けられ、ついには、暴発してしまった……

 あと、大きかったのは、タイトル戦初登場で糸谷七段の正体が良く掴めていなかったこと。
 今期の竜王戦で、糸谷新竜王の将棋の考え方が明らかになってきた。なので、これからの対局者は、そういった指し方を理解していれば、読みにない粘りの手を指されても、冷静に対応できるのではないだろうか?
 私は、糸谷新竜王の将棋を評価していないし、将棋(棋譜)の質としても疑問に感じているので、次年度の挑戦者には、時間攻めを含めて糸谷将棋を粉砕してくれることを期待している。
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本末転倒の経済対策

2014-12-28 12:33:38 | 時事
 政府の経済対策が決定した(閣議決定)……総額3兆5000億円
ねらいは
・消費の喚起…1兆5000億円
・地方活性化…6000億円
・災害復旧・震災復興…1兆7000億円

政府は臨時閣議(27日)で「自治体が地域の事情に応じて柔軟に使える交付金を創設すること」などを盛り込んだ総額3兆5000億円の経済対策を決定した。

 消費税率の引き上げや円安による輸入物価の上昇が、家計や中小企業などに影響を及ぼしているとして、
 脆弱な部分に的を絞りスピード感を持って対応することで、経済の好循環を確かなものとするとともに、
 地方にアベノミクスの成果を広く行き渡らせることを目指す
、、、らしい


特に
消費の喚起と地方活性化の施策の柱として、「自治体が使える交付金」(総額4200億円)を設けることにした
・プレミアム商品券、低所得者への灯油購入などへの女性、子どもの多い世帯への支援などの消費喚起や生活支援のために2500億円
・Uターンなどを推進する、地方での起業支援など、地方創生の推進に役立つ事業のために1700億円

 さらに具体的には
【消費喚起】
低迷している住宅市場や円安によるエネルギー価格の高止まりへのへの対策
  ・「住宅エコポイント」制度の復活、住宅ローン金利を一段と引き下げる
  ・輸送業者への割引の延長、政府系金融機関から新たに融資を受ける際の金利の引き下げ
【地方の活性化】
  ・地域の特産品の開発や販路の開拓に取り組む中小企業に費用の一部を補助
【災害復旧、震災復興】
  ・被害を受けた施設の復旧や火山の観測施設の整備
  ・除染で出た土などを保管する中間貯蔵施設の建設に伴う交付金


 内閣府の試算では実質GDP0.7%程度押し上げる効果が見込まれるそうだが、これは“机上の計算”。

 アベノミクスは経済全体のつじつま合わせ(大企業が潤うだけの政策)でしかなく、“経済の循環”など初めからない。
 「消費税率の引き上げや円安による輸入物価の上昇が、家計や中小企業などに影響を及ぼしている」と政府自身も認めている。
 その原因を作ったのは政府なのだから、速やかに消費税率を元に戻し(廃止でもよい)、円安是正の金融政策をした方が、はるかに効率が良い。

 確かに、上記の経済対策は部分的には必要であるが、間接的なものが多く、無駄も多く出てきそう。制度を悪用される可能性もある。
 低所得者、子どもの多い世帯への支援は必要だが、大企業を優遇(円安誘導、法人税軽減)して、多くの一般家庭から消費税で搾り取るのは不合理である。住宅建築補助や地方起業の支援も2次的な景気への還元はあるが、ちょくせう恩恵を受ける者は限られている。

 そもそも、消費税率のアップの目的は社会保障の維持・確立だったはず。そのために多少の出血は仕方がないと国民は受け入れたはずである。
 消費税アップは大企業を優遇する施策の為の財源確保で、それをごまかすための経済対策としか思えない。
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『将棋世界』12月号  ~竜王戦展望対談……森下九段×中村太六段~ その3

2014-12-26 23:15:48 | 将棋
『将棋世界』12月号  ~竜王戦展望対談……森下九段×中村太六段~
『将棋世界』12月号  ~竜王戦展望対談……森下九段×中村太六段~ その2
 の続きです。
(それにしても、決着して20日以上も経った竜王戦“展望”対談の記事に、未だに噛みついている私って……)


 「その1」では、森下九段の世代交代観についての検証と反論、
 「その2」では、森下九段の過去の言動についての考察
をしてきましたが、今回はこの記事を書く動機となった『将棋世界』の対談記事での氏の発言について述べます。


「自分自身を鑑みても、もって生まれた才能と運は厳然と存在します。私の弟子である増田(康宏四段)を見ても、才能と環境に恵まれた運は大きいと思いますね。ただ恵まれたすべての人間がトップに立てるかどうかは別の話です。
 中村さんも言いましたが、情熱を持ち続けるのことが難しいんです。自分も嫌というほどわかります。情熱が薄れたときは自分がいちばん敏感に感じるんです。それなりに頑張ってはいますが、やはり違っています。
 振り返ると私は24歳くらいのときに情熱が薄れました。27歳になるとはっきりダメだとわかっていました

(--森下九段の20台半ばというと、当時の谷川竜王へ挑戦(1991年)した頃ですよね)
「そうなんですよ。こんなことではダメだとわかっていても、一度情熱が薄れてしまうとそれは前の自分とは別の存在になってしまうんです。
 ただ自分は奨励会入会からそのときまでずっと将棋一筋で打ち込んできたという下地がありました。この20年間はその貯金でごまかしてきました。
 もし情熱が薄れたのが37歳だったらもっと強かっただろうし、逆にもっと前に薄れていればどうなっていたか」

(横道に逸れますが、記事の文章そのまま引用していますが、「とき」「いちばん」は平仮名が一般的なのでしょうか?)

 いやぁ~、びっくり!
 森下氏の情熱の希薄さについては感じることはあった(解説の中で洩らしていた気がする)が、将棋連盟が発行する『将棋世界』誌の対談で語ってしまうとは……
 対談での言葉というのは、基本的にすべて記事(文章)になると考えられる。それなのに、堂々と≪私は20年以上前からやる気がなくなってしまい、その後は惰性で将棋を指してきました(仕事をしてきました)。でも、若い時の精進と才能で何とかごまかしてきました≫と公言してしまったのである。しかも、森下氏は連盟の元理事である。

 いきなり言いたいことを言ってしまおう。(書き連ねていくと、感情が高まって何を書いてしまうか分からない)
情熱を失ったのなら、さっさと棋士などやめてしまえ!

 法を犯していないし、人にも迷惑をかけていないし、私の氏を糾弾する資格も権利もないのは承知しているが、この『将棋世界』の記事を見て、頭に血が上ってしまった。かなり、間を於いて記事を書いているのだが、それでも興奮してしまう。
 もちろん、他人に言えない苦労や葛藤はあったと思うが、現役棋士が「情熱がなくなった」と口が裂けても言ってはいけない。しかも、こともあろうか、機関誌の記事になることをが前提の対談で。
 先の電王戦では、リップサービスかもしれないが「ぜひ私を七冠王にするプログラムを作ってください」という『“将棋連盟の命運を懸ける”とは掛け離れた』コメントを発していたが、情熱を失った人ゆえのコメントだったのだ。情熱を失った人が、将棋連盟の看板を懸けて将棋ソフトと戦ってはいけない。
 また、電王戦において「情熱を取り戻すために竜王戦に名乗りを上げた」とも述べているが、そういう個人的気持ちで戦って欲しくはなかった。


 ここで、少し冷静になって、氏の言葉を分析してみよう。

「情熱が薄れたときは自分がいちばん敏感に感じるんです」
「一度情熱が薄れてしまうとそれは前の自分とは別の存在になってしまうんです」


 不思議な言い回しである。
 引用した全文を解釈すると、「20代半ばで情熱を失い、その後は惰性ですませた」はずなのだが、上記の2文は、「今までに何度か情熱を失ったことがあり、それを敏感に感じた。また、そういう時は、自分と違う存在になってしまっていた」というような印象を受ける。
 あるいは、これまでの前世の記憶をいくつも持っており、その経験を踏まえての言葉とも解釈できる。

 まあ、こんな分析はともかく、氏の言葉(この対談だけでなく)は、どこか他人任せのように感じることが多い。奨励会やC級2組時代を“地獄の苦しみ”と述懐したと、「その2」でも述べたが、森下氏にとっては将棋を心底好きではなく、自分のために将棋を指していないように思えてしまう。


「もし情熱が薄れたのが37歳だったらもっと強かっただろう」
 これも他人事の言い方である。
 ダメな人のひとつの言い訳として「自分がやる気になったらすごいよ」という負け犬の遠吠えがあるが、それに近いものを感じる。


 この森下氏が大晦日にひと騒動。
「電王戦 リベンジマッチ」
ニコニコ動画の特設サイトには
「『将棋電王戦リベンジマッチ 森下卓九段 vs ツツカナ』は、「第3回将棋電王戦 第4局」小田原城で戦った、森下卓九段とコンピュータ将棋ソフト“ツツカナ”の再戦イベント。第3回将棋電王戦では森下卓九段が自分の将棋を貫き、相矢倉で真っ向勝負を挑んだが、苦戦の局面で大悪手を指し惜しくも敗れた。
 その後行われた記者会見で継盤を使っての対局を提案し、再戦のチャンスが与えられた。森下九段が自ら考えたルールでツツカナに勝利することができるのか…」

とある。

森下式対局ルール
持ち時間
3時間(チェスクロック方式)、秒読み10分。継盤使用可
対局時間
番組開場 10:00 対局開始 10:15 終局予定 22:00
(休憩 13:00~14:00、17:00~18:00、21:00~21:30)

 プライドをかなぐり捨てた森下氏。
 確かに、≪氏の言う“ヒューマンエラー”をなくせば、コンピュータ将棋と互角以上に戦える≫ような気がする。
 “ヒューマンエラー”とは、肉体的精神的疲労や時間切迫によって生じるミスと解しているが、休憩を充分に取り疲労を軽減させ、終盤に時間に追われないような対局システムであれば、ヒューマンエラーをかなり防げるはずである。
 また、コンピュータ将棋は盤駒を使用しているのと同じであるので、人間が継盤を使用できないのは不公平のような気もする。
 人間の頭脳コンピュータ」の勝負ならそれで良いが、「棋士」として戦うと考えた場合はどうなのだろう?
 “秒読み”と言うが、これでは“分読み”である。継盤使用する図は、棋士としては格好悪いぞ。
 そんな格好悪い画で負けたら、本当に格好悪い。
 そんな格好悪さが、将棋界に及ぼす影響を考えたのだろうか。
 情熱云々は置いていても、「負けたら引退」ぐらいの覚悟を持って勝負に臨んでほしい。(あっ、そうすると、ヒューマンエラーが生じてしまうか)



【蛇足】
 ところで、本当に22時に終局するのだろうか?
 持ち時間がチェスクロック使用の3時間なので、両者が同じような時間の使い方をすれば、実際の対局経過時間が6時間で秒読みに突入する。その時刻が18:15。その時点での局面が中盤か終盤か寄せの段階かは予測できないが、仮に終盤戦に入った辺りと仮定しよう。
 昨日の順位戦B級1組10回戦において、6対局のうち3番目と4番目に終局した豊島七段-松尾七段、畠山七段-木村八段を見ると、終盤に入ったと思われた局面から終局までに30手ほど指されている。
 1手平均8分費やすとして、8分×30=240分=6時間で、リベンジマッチの対局システムに当てはめると、24:45となる。
 まあ、これは両者のペース配分によって大きく変わるが……
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『すべてがFになる』 第9話&最終話「有限と微小のパン」

2014-12-24 23:19:47 | ドラマ・映画
「これは夢ではないですよね。“現実”ってなんでしょうか?」(萌絵)
「“現実とは何か?”…そう考えた瞬間にだけ、人間の思考に現れる幻想だよ。
 そもそも、そんなものは存在しない」
(犀川)
「現実なんてものに意味はないってことですか?
 真賀田博士も同じようなこと、おっしゃっていました。
 似ていますね、先生と博士は」
(萌絵)


 持って回った犀川の言い方なので分かりにくいが、
「現実は自分が思う以上にあやふやである」
さらに言い換えると
「(自分が見た)事実は、必ずしも真実ではない(虚構であることもある)」

 これが今回のテーマであり、
“不可能な殺人”を、虚構な事実を現実(真実)だと思わせることによって成立させたのだった。「まさに僕らは夢を見させられていたということか」(by犀川)
 その誤認の手段が壮大だった。
①地下通路と秘密のエレベーターとそっくりな二つの教会の部屋
②偽の県警、ホテルや施設の従業員総出の芝居
③ホログラムやバーチャル空間
 ①は推理物好きにとってはすぐ思いつくトリック、③のホログラムは真賀田四季が使用したほぼ万能なホログラムだったらなんでも可能となってしまう。②にしても、ほとんど反則技である。
 しかし、これらがうまく融合されていたので、楽しめるものとなっていた。


 残念なのは、塙が計画した壮大なドッキリに秘書・新庄が便乗して実際に殺人を犯してしまい、その上、真賀田四季と萌絵と犀川の三角関係を絡めてしまったため、複雑になり過ぎてしまったこと。
 四季のキャラは魅力的だし、一連の出来事を四季が誘導していた絡ませるのは面白い。
 「萌絵のトラウマを解消させ、萌絵を守ることに縛られていた犀川を開放する」という今回の騒動の四季の動機(目的)も悪くはない。

 四季は「萌絵を救うことは手段で、目的は犀川」と語っていたが、ふたりのために動いたと解釈したい。ふたりをからかうという悪戯心もあって、塙に加担したのだろう。四季は、萌絵と犀川が好きなのである。
(ただ、犀川と四季が浜辺を歩くシーンは良いとしても、犀川が四季の“純粋思考世界”への誘いに乗ってしまうような振りし、萌絵が悲しむという要素は要らない)

 やり過ぎだったのは、新庄が犯した実際の殺人。
 単に、壮大なドッキリ大作戦にした方がスッキリしたのではないだろうか?



 さらに、今話の大きな問題点として、
「両親が飛行機事故で萌絵の目の前で亡くなったことによるトラウマで、死に対して麻痺している」
という設定。

 伯父・西之園が心配し、犀川に萌絵のことを託していたが、萌絵のコナン張りの“出しゃばり捜査”を大目に見るよう視聴者にお願いしているように思えて仕方がなかった。


【その他の感想】
・第二の殺人に関しては、「完全な密室」⇒「秘書・新庄の狂言(死んだふり)」という推論したが、「新庄の自殺」という推論も成り立つ。
・「城田優&鈴木一真の社長・副社長コンビ」は「“いかにも怪しい”強力コンビ」だと、つくづく感じた。
・ドラマ冒頭の回文暗号や、四季の存在を仄めかす暗号などの言葉遊びは、難解すぎるが面白かった。


 いろいろ難点はあったが、トリックそのものは面白かったし、四季のキャラも魅力があり、主役二人のコンビも悪くなく、楽しめたドラマだった。
 


【ストーリー】脚本・黒岩勉
『前編』
 スーツケースを手にした西之園萌絵(武井咲)は、ナノクラフト社が運営する「ユーロパーク」に到着した。パーク内の貸別荘で犀川ゼミの旅行が計画されていたが、大株主である萌絵は前乗りしてナノクラフト社長の塙理生哉(城田優)と食事の約束をしていた。塙は現在のIT業界で一番の成功者と言われる人物で、かつて萌絵との縁談が浮上したこともあった。
 事情を知った儀同世津子(臼田あさ美)は、犀川創平(綾野剛)に萌絵が心配ではないのか、と聞く。

 萌絵を出迎えたのは、塙の秘書の新庄久美子(青山倫子)だった。久美子は萌絵をパーク内のホテルに案内すると、343と部屋番号の記された鍵を渡した。早速、部屋に入った萌絵は、電話の横のメモに書かれた不可思議なメッセージに目を留める。すぐに犀川に電話をし、それが自分の死を予告するものではないか、と話すが、犀川は単なるいたずらだから気にすることはないと答える。
 塙との会食の時間になり、萌絵は久美子とエレベーターに乗り込む。久美子がエレベーターにカードキーを差し込むと、表示パネルにはなかった「B1」のボタンが現われた。地下にナノクラフトの研究施設があるが、その存在を知っているのは社内でも限られた人間だけだ、と久美子は話した。地下に着くと通路を歩き、さらに別のエレベーターで今度は1階に上がる。地上に戻ったと思いきや、エレベーターホールの外に出ると、そこは教会の内部だった。すると、塙が現われて…。


≪第七話 事件のおさらい≫
 滞在中の「ユーロパーク」で女性の悲鳴を聞いた西之園萌絵(武井咲)が教会に駆けつけると、そこにナノクラフト社の新庄久美子(青山倫子)がいて、側には同じく社員の松本卓也(小久保寿人)が倒れていた。久美子によると、松本は天窓を突き破って落ちてきたという。萌絵が見上げると、窓が大きく割れていた。萌絵はすぐにスタッフを呼びに行き戻ってくる。すると、松本の遺体は消えていて、代わりに腕が一本落ちていた。
 警察の取り調べを受けた久美子は、遺体は天窓から引っ張られて行き、そのときに腕が落ちてきたと証言。しかし、その後の調べで窓の外に人がいた形跡や引き上げるために道具が使われた痕跡はなかった。忽然と消えた遺体に納得がいかない萌絵は、警察に教会に通じる秘密のエレベーターがあることを教える。それは、萌絵が久美子に連れられて教会に来たときに使用したものだ。しかし、エレベーターの扉があるべきところに行っても、倉庫があるだけだった。
 真相が知りたい萌絵は、警察とともに、休んでいた久美子を訪ねる。ドアを開けて顔を出した久美子は着替えるから待っていてくれ、とドアを閉めた。そこへ、パークを運営するナノクラフト社の社長・塙理生哉(城田優)と副社長・藤原博(鈴木一真)も久美子に事情を聞こうとやってきた。そのとき、久美子の部屋から悲鳴と争うような音が聞こえた。マスターキーを使って部屋を開けると、久美子が胸部から血を流して倒れていて、警察が死亡を確認した。室内に入った萌絵は、各部屋を確認したが、犯人の姿はなく、すべての窓には内側から鍵がかかっていた。萌絵は、教会のように秘密のエレベーターや隠し扉があるのでは、と警察に訴えるが、聞き入れられない。
 塙と対峙した萌絵は、昨夜、自分が塙に教会で会ったとき、自分は地下の通路を通ってエレベーターに乗って教会に到着したはずだ、と力説。しかし、塙は、萌絵は地上の正面入口から入ってきたと主張する。

 そこへ、萌絵を案じた犀川が現われる。犀川は、これは真賀田四季(早見あかり)が自分たちに用意した問題だと言う。さらに、犀川は今回起きたふたつの殺人の最大の命題は、「物理的に不可能な殺人」であることだと伝えた。
 パークのどこかに四季がいるに違いない、と確信する萌絵は、塙の誘いに応じて社長室を訪ねる。対面した塙に四季のことを訪ねるが、塙ははぐらかし、もしも自分のプライベートなパートナーになってくれれば、教えてもいい、と答える。そんなとき、萌絵の意識が朦朧となり倒れ込む。
 目を覚ました萌絵は教会にいて、そこには四季が立っていた。見上げた萌絵は、天窓のガラスが割れていないことに気づいた。四季は、また人が死ぬと言い…。


『後編』
 西之園萌絵(武井咲)はホテルのベッドで目を覚ますと、ふらつきながら教会へとやってくる。警察の規制線をくぐって見上げた天井のガラスは割れたままだった。
 萌絵は、犀川創平(綾野剛)に会いに行くと、自分は夢を見ているのではない、と確認するようにつぶやいた。
 ホテルに戻った萌絵は、鵜飼大介(戸次重幸)に電話し「ユーロパーク」に真賀田四季(早見あかり)が潜伏しているから捜索要請をしてくれ、と頼む。やがて、鵜飼から連絡を受けた愛知県警の芝池護(小林隆)がやってくる。萌絵は芝池に、自分とともに塙理生哉(城田優)のところへ行き、四季の居場所を聞き出して欲しいと言う。
 萌絵と芝池は、ナノクラフト社で塙と藤原博(鈴木一真)と面会する。萌絵は、自分に睡眠薬を飲ませ四季のいる場所に連れていったはずだ、と塙を問いただすが、塙は萌絵の妄想だと言って取り合わない。

 同じ頃、犀川はホテルの公衆電話から国枝桃子(水沢エレナ)に電話をかけると、他愛もない話をして電話を切る。すると、ほどなくその電話が鳴った。受話器を取った犀川が名乗ると、相手は四季だった。
 塙に相手にされなかった萌絵がロビーに戻ると、藤原がやって来る。藤原は、ナノクラフトを世界一のソフトウェア会社に成長させた塙が、ユーロパークを作ったのは、ここで萌絵に会いたかったからだと話す。さらに、いい物を見せると言って、萌絵を地下へと案内し…。


【萌絵と犀川による事件の推論】
さまざまな不可解な事件が起ったが、事実は「地上の教会に松本卓也(小久保寿人)の遺体があり、その後、萌絵(武井咲)が見たときに消えていた」ということだけ。松本の遺体が天窓を突き破って落ちてきたとか、次に遺体が天窓から出ていき腕が落ちてきた、という新庄久美子(青山倫子)は、ほかの誰も確認していないことから偽証の可能性がある。さらに、久美子が殺害されたのはホテルの密室だった。部屋に犯人は隠れておらず、すべての鍵が内側からかかっていたとなれば、導き出せる答えは、久美子は殺害されていないということだ。久美子の死亡を確認したのは愛知県警の刑事・芝池(小林隆)だが、犀川創平(綾野剛)は、芝池だけでなく、現場にいた警察や鑑識、救急隊員も偽物だったと考えれば、すべての現象に説明がつく、と話した。さまざまな現象は、塙理生哉(城田優)が、萌絵の興味をひくために大勢のスタッフを巻き込んで演じた壮大な芝居だったのだ。

なぜ、松本と藤原博(鈴木一真)は殺されたのか?
 当初の塙の計画では、松本、久美子、藤原の殺害もすべて芝居のはずだった。予定外の行動に出たのは久美子だった。松本に個人的な恨みがあった久美子は、芝居を利用して本当に松本を殺害したのだ。死んでいるはずのない松本が死んでいるのを萌絵に確認されてしまった久美子は、計画を変更。殺害を隠蔽するために、藤原の殺害を思いつき実行に移す。社内の2人の人間が殺害されたと分かれば、塙は事件を隠し通すはずだ、と久美子は踏んだのだ。

真賀田四季(早見あかり)との関係は?
 壮大な殺人の芝居を計画したのは、四季だった。四季は、萌絵の「ユニークな構造を検証するため」だと理由を説明。萌絵は、両親の死亡事故以来、自己防衛の手段として、人の死に対する感情を遮断しているが、心の奥底では死を望んでいる、と四季は分析。その萌絵がどうやってバランスを取っているのかが知りたかったのだという。結果、死の対極に犀川を置くことで、不完全な自分を補おうとしているのだ、と判明したという。

四季は「ユーロパーク」にいたのか?
 ユーロパークに潜伏していると思われた四季だが、実は犀川の妹・儀同世津子(臼田あさ美)の隣人を装い、そこから隔離操作でホログラムとして萌絵や犀川の前に現われていたのだ。事実、四季が前日まで住んでいた部屋には、萌絵と犀川がユーロパークで目にしていたマリア像と食べかけのパンが置かれていた。
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『軍師官兵衛』 第50話「乱世ここに終わる」(最終話)

2014-12-22 21:06:31 | ドラマ・映画
関ヶ原の戦い九州制圧
 関ヶ原の戦いは小早川秀秋の寝返り(優柔不断で決められなかった秀秋だが、家康が大砲を撃ち込む恫喝が決定打となった)で、拮抗していた戦い(やや西軍が押していたが息切れの気配もあったらしい)の均衡が破れ、西軍総崩れとなり、1日で決着
 九州を制圧し引き入れた軍勢を以って、天下取りを目論んだ如水であったが、天下分け目の一戦がわずか1日の決着で、野望は潰えた………

 主人公の見せ場を作るため、如水に天下取りの野望を持たせ、無理やり九州制圧を関ヶ原の戦いに絡ませたが、その野望が1日で潰えるのを知っているせいか、得意気に“天下取りの秘策”を口にし、輿の上でふんぞり返る如水が滑稽に思えてならなかった。
 そもそも、如水が天下取りの野心は全くなく、天下泰平を願い、ひたすら秀吉の下で動いてきた。秀吉臨終の際にも天下取りを否定していた。
 それが、家康が更なる争乱を起こそうとしていると知るや、(家康を封じるのならいざ知らず)自ら天下を欲っさせ、終盤近くまで描いていた官兵衛の生き方を180度方向転換させてしまった。
 それに、今大河では、関ヶ原の戦いには如水の誘導が多分に影響しており、関ヶ原は如水の計画の中核を成していたはず。それなのに、決戦が一日で終了してしまい、まったく天下取りが間に合わないのでは、格好悪過ぎである。

 真剣に天下取りを狙うのなら、一応、誘いのあった三成方に与するポーズを取り、開戦を遅らす工作をしなければならなかった。しかし、それだと西軍派の九州を制するのは反三成になってしまうなあ……
 とにかく、三成へ牽制(嫌がらせ)と勝利するであろう家康の手土産で九州制圧に動いたとする方が自然であろう。
 

さて、関ヶ原の戦いであるが…
 
「宇喜多勢に福島正則が撃ちかかりしてございまする」という注進で戦闘シーン突入。
長政「よいかぁ!今こそまさに、天下分け目の決戦じゃぁ!」
又兵衛「後れを取るなぁ!ここが命の捨て所ぞぉ!我に続けぃ」
 と勇ましく黒田勢も突入!

 と、盛り上がったものの、“天下分け目の決戦”というのに、登場した武将が少なすぎ。
 宇喜多秀家も福島正則も注進(伝令)の台詞だけで処理。大谷吉継の奮戦、島津勢の敵陣突破の退却は今ドラマの主流でないので描かないのは仕方がないが、毛利軍の不動については描くべきなのではないだろうか(斬首間際の恵瓊の「まさか、吉川、小早川、共に調略していたとはなあ……さすが如水殿の息子、あっぱれじゃ」で済ませてしまった)

 小早川秀秋の腰抜け振りは、なかなかだったが……


三成の最期
 処刑前に長政と対峙
「憐みは無用。我が思い、如水殿だけは分かってくれる」と。
 家康の回想(如水との会談時に明かす)
「武運拙く敗れ、天下を正すこと叶わず、無念でございます。
 されど、天下を争うことができたこと、本望にございました」


 三成の人生観については後述するとして、
 無理やり、三成と如水をリンクさせた上記の会話より、
処刑前の三成、小西行長、安国寺恵瓊の3人に、家康が小袖を与えた際、他の二人は受け取ったが、三成は「この小袖は誰からのものか」と聞き、「江戸の上様(家康)からだ」と言われると、「上様といえば秀頼公より他にいないはずだ。いつから家康が上様に成ったのか」と言って受け取らなかった(『常山紀談』・『武功雑記』)
 とか、
「三成が処刑直前に喉が乾いたので警護の者に水を所望した際、「水は無いが、柿がある。代わりにそれを食せ」と言われたのに対し、三成は「柿は痰の毒であるのでいらない」と答えた。これを聞いた警護の者は「もうすぐに首を切られる者が、今から毒断ちをして何になる」と笑ったが、三成は「大志を持つ者は、最期の瞬間まで命を惜しむものだ」と言い、泰然としていたという(『茗話記』・真田増誉の『明良洪範』)」

 を入れてほしかったが、今回の三成の扱いようでは、期待はしていなかった。


如水、長政に文句を言う
「長政、(長政を讃える為)内府殿がお前の手を取ったと言うたが、それはどちらの手じゃ?」
「右手でございますが」
「その時お前の左手は何をしておった」
「左手……………………………………………!」
 如水の意を解した長政を、見下すように立ち去る如水。
 有名な逸話だが、長政がちょっと気の毒(笑)


家康、如水の会談
「天下は一人の天下に非ず、天下は天下の天下なり」(by家康)
 自分が死んでも争いの起こらぬ太平の世を創る。
 私利私欲の為ではないと如水に約束する家康。

 官兵衛の方向転換は、家康が再び争乱を起こそうとしたことが原因であったが、如水の早とちり?
 それはさておき、家康に天下を託して、官兵衛は表舞台から去った。


(家康が江戸に幕府を開いた後)
如水とおね、世間話
「今田豊臣の天下を夢見ているのは…淀殿、そして清正、正則くらいです。
 清正、正則は今になって、徳川殿に味方したことを悔やんでおる(笑)」

<おねの回想>
「まさか、このまま徳川の天下になろうとは……」
「秀頼君だけは、なんとしても守らねば」

 関ヶ原に参戦した正則はまだ出番があったが、清正は九州制圧に一役買ったはずだが、この台詞だけ。
 この二人、大坂の陣では何かしたのだろうか?

 それにしても、おねは変わらないなあ。
 江戸幕府が倒れるまで生きたのではないだろうか?


如水、長政を讃え、善助に感謝
4年前、関ヶ原の折、九州で天下の夢を見た。だが、その夢もわずか1日で破れた。
 他ならぬ、お前(長政)の働きによってじゃ……
 ……見事であった。お前は、立派に黒田家を守った。

 あれでよかったのだ。
 長政、お前は…………あの時お前はワシを超えた。うれしかったぞ」

 長政、やっと官兵衛に認められた。


 さらに、善助に自身の兜を授け、感謝の意を伝える。
 この頃の兜って、実用性はないよね。
 特に、長政の兜って、足(頭)を引っ張りそう…


如水の最期
 皆に感謝し、息を引き取る。
「光……お前が妻で良かった」
 最後はやはり、光に対しての感謝が主。
 回想シーンも挿入。
 あ、そう言えば、テーマ曲でのクレジットで、「福島リラ(回想)」とあったが、官兵衛・光が赤子(長政)を抱くシーンで、遠くの廊下で侍女3人と善助が見守っていたが、親子3人にピントを合わせているため、廊下の4人はピンボケ。
 ……これでも、出演と言うのだろうか?

 なんだか、ダラダラ感が強いなあ。
 大坂の陣も挿入し、淀と又兵衛の最期も。
 官兵衛が長政を認めた際、家臣を大事にせよと言っていたが、結局守れなかった。どういう経緯があったのか気になるが、如水が主人公なので描くのも変。この際、又兵衛の最期は描かなくても良かったのでは。
 思い切り、説明台詞を同僚の兵士が語ってくれたが……


【総評】(と言うと大袈裟ですが)
 官兵衛と深く関わった人物は……
  ……ドラマ序盤では、父・職隆、小寺政職、中盤は竹中半兵衛、荒木村重らがいるが、全編を通して考えると、光や家臣団を除くと、秀吉三成であろう。

 秀吉については、官兵衛の才に怖れや嫉妬を抱き遠ざけた心情、淀に執着、天下人となった故、徐々に狂い始めた様などは納得に近いものであった。(三成を重用した理由は描写不足)

 しかし、三成の描写に関しては、非常に不満である。
 最終回において、「天下を正すこと叶わず、無念。されど、天下を争うことができたことは本望」と語っていたが、ここまで、三成の心情についての描写は不十分、と言うより、私の視聴力が不足しているのか、まったく、読み取れなかった。
 ①「秀吉に認められたい」
 ②「天下を取りたい」
 ③「淀の喜ぶ顔を見たい」
 ④「天下は要らないが、官僚としての自分の才覚を発揮したい」
 ⑤「官兵衛が嫌い」
などが考えられるが、おそらく、比重に偏りはあるがすべてなのだろう。
 ⑤については感情的(感覚的)なものや理論(何を第一に考えるか)が合致しないこともあるが、①~④の目的を果たそうとすると官兵衛が邪魔をする(官兵衛にはその意思はないが)ので嫌いになったということもあるだろう。

 そういう複合的なものは良いのだが、三成の心情の柱がないのと、心理描写がないのが問題。
 このドラマにおいては、三成の心情から起因した行動はなく、三成は“官兵衛と相反する存在”として描かれ、“意思を持たない単なる敵役”に陥ってしまった。三成の行動は、官兵衛の邪魔をするためのものだけになってしまった。
 そのせいで、ほとんど魅力なしの嫌われキャラで演じた田中圭さんが気の毒だった。(主人公を際立たせるには、敵役を貶めるという手法もありで、三成を魅力的に描くのが必須ではない)
 しかし、私の好みだけなのかもしれないが、やはり敵役に魅力があった方が主人公も光るし、ドラマも面白い。もちろん、敵役に魅力がなくてもいいが、せめて、行動に一貫性を持たせてほしい。
 そのため、クライマックスである関ヶ原の戦いも盛り上がりに欠け、三成の最期に何の感慨もなかった。

 官兵衛に関しては、九州制圧の項で書いたように、官兵衛の信念が180度方向転換してしまったことに、大きな不満を感じる。
 この大転換は、三成の人物像がぐらついてしまったことに起因しているような気もする。


 で、最後まで観て感じたことは、
≪“(官兵衛を通して)何を描きたかったのか”を全く感じられなかった≫
残念さであった。
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相棒 season13 第9話「サイドストーリー」【補足あり】

2014-12-18 21:30:29 | ドラマ・映画
 タイトルは“サイドストーリー”(この言葉は右京も口にしていた)。
 確かに、殺人事件と直接かかわっていない佳枝・茂樹親子であったが、
 サイドストーリーと言うよりも“裏ストーリー”、しかも、核心に触れるものであった。
 しかし、この親子にスポットを当てたため、「被害者・奈々が命を奪われた」という事実が軽いものになってしまった


まず、
相反する被害者の人物像が一つの焦点
【A面】
・介護士として真面目に務めていた
・気難しい佳枝ともうまくやっていた
・介護福祉士になるため勉強をしていた
【B面】
・客の家に泊まり渡る淫らなキャバクラ嬢
・食事などの世話もいい加減で、佳枝に暴行をしていた

 そんな二面性を感じさせる被害者なので、いくつかの疑問が生じた。
・SNSでの書き込みはデタラメ(居場所に関して)……鑑識・米沢が疑問を提起
・被介護者にあるべき介護ノートを奈々がなぜ持ち出していたのか?……右京の疑問

 それらを出発点に調べていくと……更なる疑問
・“いい加減な介護士”なのに、気難しい佳枝の担当を長く続けていた
・レシピの食事量が多く、味も介護用ではなく普通の濃さ
・いとこを名乗り、奈々の居所を探ろうとした男の存在

結局
 奈々の居所を探していたのがドメスティックバイオレンスで別れた夫で、ストーカー行為をしていた。
 茂樹から奈々の居所を聞き、復縁を迫ったあげく死に至らしめてしまった。奈々が住居に戻らず、お客の所を転々としていたのは、元夫から逃げていたのだ。
 茂樹は佳枝の介護を放棄しており、それに疑いを持った奈々を遠ざけようとして元夫の浪岡に居場所を知らせた

というのが真相だった。


右京の捜査手法
 「非日常(殺人)の周辺には、非日常(いつもと違う行動や遺留品)がある」という法則から
 「ないはずの物(非日常)」=「介護ノート」に目を付けた
 介護ノートの持ち出しが、殺人を誘発したのではないか?
 そこで、そのノートについて調べていった……
    ……そして、茂樹の佳枝への介護放棄にたどり着いた。

 『相棒』としての享について考察すると、
 介護ノートを奈々が持っていたことを右京に気にならないかと尋ねられ、≪気になりますねぇ≫と米沢とハモるだけで、右京がなぜそこまでノートにこだわるのか疑問を持たず、何となく判ったふりして右京の捜査に追従するだけ。
 「師匠と弟子」の関係ですらなく、単なる「従者」に留まっている。


 しかし、これは右京も言っていたが「サイドストリート」
 正攻法は、二面性を持つ被害者・奈々の真実を追うべく、キャバクラの客や介護会社の同僚などに奈々の仕事ぶりや人柄を聞き込む。もちろん、ほぼ現行犯として取り調べられている被疑者の社会労務士との関係も調べ、殺人の動機があったかも調べるべきで、右京の捜査は、側面攻撃である。

 この側面攻撃のため、「佳枝・茂樹の親子関係」が主となり、親子を追求する時も
「このサイドストーリーが明らかにならない限り、あらぬ疑いを掛けられ、世間のバッシングを受けたままになります。奈々さんの御両親にも二重の苦しみを与え続けることになります。
 あなたにそのことを見過ごすことができるとは、僕には到底思えません」
と、説得。
 しかし、
「介護福祉士を目指し、昼夜の仕事を掛け持ちしながら必死に頑張ってきた奈々さん。
 そんな奈々さんを、ストーキングの末に殺害した犯人に、怒りを禁じえません」

 これは、これまでは奈々を糾弾していたワイドショーのレポーターの空々しい言葉であるが、本来はこの感情を右京たちが持たなければならないが、≪奈々の本当の姿が報道されて良かった≫で済ませてしまっている。
 まじめに一生懸命生きてきた奈々の生命があまりにも軽すぎる!


 享に関する考察、その2
「でも分からないなあ……
 ネグレクトまでされていたのに、どうして佳枝さんは息子さんのことをかばい続けたのか?」
「カイトくん、それが分かれば、君も苦労しないはずですよ」
「はいぃぃ?」


 かなりストレートに指摘されているのに、「はいぃぃ?」って………
 いやあ、ほんと、お子様ですね。
 これでは、いつまでたっても弟子以下だし、今回の事件、享の独力だと一生解明できないなあ



【些細な突っ込み】
・奈々が介護しない日の佳枝の食生活が異常、また、ノートのレシピの分量が多すぎることに、奈々が気がつくのが遅すぎる
・奈々がキャバクラの客のところを転々とするのは無理があり過ぎるし、昼夜働いて、夜間もその状態なら、いつ介護福祉士の勉強をするのだろうか?
・佳枝が茂樹を思うのなら、介護士に気難しい態度を取るのはおかしい(自分の首を絞めるようなもの)。
・二日に一日しか働かずに生活できるのか?


正月スペシャルの脚本家は真野勝成氏。
season12 第13話「右京さんの友達」はともかく、season13 第7話「死命」の出来を考えると、不安である。


【補足】
タイトルが「サイドストーリー」というだけあって、いろいろな揶揄が盛り込んであった。
①佳枝を通して、刑事ドラマの刑事(警察)の馬鹿さを指摘
 馬鹿な刑事がいないと、ストーリーが平坦になる
②マスコミや大衆を批判
 事件関係者の過去や私生活を取り上げ、大衆の興味を煽る。
 今回の事件で言えば、奈々がキャバクラに勤めていて、客の家を渡り歩いていようと、世間には迷惑をかけていない。
 大衆も残された家族を誹謗中傷するのはおかしい。(暇人としか言いようがない)
 真相が明らかになったら、手のひらを返したように奈々に同情する。「~に怒りを禁じえません」というレポーターに、≪それはお前(レポーター)に対してだ≫と思った視聴者は多かったはずである。
③介護家族の辛さ
 今回の真のテーマでもあったが、そこを正面から描くと、ストーリーが重くなるし、ネタバレにもなってしまうので、少し軽く流した感がある。
④峯秋と享の擦れ違い
 息子からネグレクトを受けていながら庇った佳枝の気持ちを享は理解できなかった。
 親の無償の愛を受けてこなかったからなのか?シャイな峯秋ゆえ享にうまく伝わらなかったのか?享が鈍いのか、お子様なのか?
 ただ、佳枝の場合、息子から見放されると今後の生活が成り立たなくなるという理由も考えられる。


【ストーリー】番組サイトより
 三塚奈々(まつながひろこ)という若い女性介護士が殺害される事件が発生。彼女はキャバクラ嬢という“別の一面”も持っていたため、ワイドショーなどでも大々的に取り上げられ、いわれのない中傷を受けていた。犯人は現行犯に近いかたちで逮捕されていたが、「真犯人は別にいる」という匿名の通報があり、特命係はその捜査を申しつけられる。早速、行動を開始した右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は、奈々が担当していた寝た切りの老婦人・佳枝(丘みつ子)のもとを訪れる。佳枝はかなり気難しいタイプで、面倒を見ている一人息子の茂樹(吉満寛人)も、仕事との板挟みで手を焼いている様子だった。そんな中、右京は奈々が殺された時に所持していた介護の記録ノートに引っ掛かりを覚える。その疑問を解き明かすため、右京は自ら佳枝の身の回りの世話を買って出るが…!?

美人介護士はなぜ殺されなければならなかったのか?
匿名の通報が示唆した“真犯人”とは?
特命係が、事件の陰に隠された意外な真実を解き明かす!

ゲスト:丘みつ子 吉満寛人

脚本:池上純哉
監督:池澤辰也
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948ヘクトパスカル! ~風雪(……暖冬って言っていたよね)~

2014-12-17 17:59:09 | 気象
948ヘクトパスカル!
   ………………“非常に強い台風”並


 低気圧で948ヘクトパスカルというのは記憶にありません。しかも、北海道付近で。(もっと離れたオホーツクで960台まで発達したのを見たことはあります。先週の嵐も、そのくらいでした)
 気象庁は“数年に一度”という表現をしていましたが、もっと稀有なのではないでしょうか。
 9人が亡くなった昨年3月の地吹雪でさえ、974ヘクトパスカルでした。

 北陸付近を通過した時は、それほど発達しておらず990台でした。それでも、低気圧が引き込む暖気と寒気が巻き込み合い強風(突風)が吹きました。
 その後もどんどん発達し、風を引き込み福井でも吹雪状態です。

こんな感じ。


 風雪の状況をうまく捉えられません。
 風と雪と地吹雪が一致するのをずっと待ち続ける根性はありません。



 上掲の写真は午前中の様子で主に強風でしたが、午後からは本格的に降り始め20㎝ほど積もりました。
 明日の朝が心配です。
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「腰掛け玉」(中田七段作詰将棋)の解答

2014-12-16 19:24:07 | 詰将棋
「腰掛け玉 ……中田七段作詰将棋 『将棋世界』2014年10月号」の解答です。



 初形の3六の桂と5四の馬の配置から、詰上がりは見えてきそうです。
 それはさておき、まずは変化(紛れ)から。
 初手で俗手の▲3二飛も考えられます。


 こういった俗手は序中盤の最前線の戦いでは重くなって攻め駒が停滞することが多いのですが、寄せの玉周を支配するという効果があり、見た目よりは効果的なのです。
 △3二同金と取ってくれれば、▲同とで嬉しいのですが、△1一玉とかわされると


▲4四馬としても△2二香であと一歩届きません。

 そこで、軽く▲3三とが好手。(上記に反しますが)やはり軽い手が有効ですね。

 これに1一や1二に玉をかわす手には、ズバッと▲2一馬と切って△同玉に▲2二金で詰みます。失敗図と違い、馬の利きが重くないのが良いのです。
 また、初手▲3三とに△3一玉とこちらに逃げる手には、(▲5一飛と玉の行く手を塞いでから、馬切り~頭金もありますが)▲3二飛で詰みます。

 そこで、▲3三とには△同玉と取ります。


 玉を呼び寄せて▲4四馬が狙いなのですが、3二に逃げ道があります。
 そこで、一閃▲3二飛が手筋の一着。


 △3二同金と取らせて


 ▲4四馬で詰みます。

 3手目の▲3二飛と捨てた効果で、▲4四馬に3二に玉を逃げることができません。

 説明が前後しますが、3手目の▲3二飛では▲3四飛と上から打って▲4四馬と玉の横腹に馬を付けるのも筋なのですが、今作では2五に逃げられてしまいます。(また、▲3四飛に△2二玉と逃げても詰みません)

 

詰手順……▲3三と△同玉▲3二飛△同金▲4四馬まで5手詰

 作品タイトルは、詰上がりの駒の配置です。
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選挙雑感 「群馬県民は……」など

2014-12-15 23:11:15 | 時事
 選挙の度に≪がっかり≫してきたのですが……今回も……

『群馬県民は……』
 正確に言うと「群馬5区」なのだが。(群馬だけではなく、同じシチュエーションなら、全国どこでも同じ反応だったかも)
 小渕氏の“楽勝”だった。いや、“楽勝”と言うと、当事者から異議が出そうなので、“圧勝”と言うべきなのかもしれないが、ドキュメント映像を見ると、やはり“楽勝”と言いたくなってしまう。
 なぜなら、“県民”というと範疇が広くなってしまうので、支持者(“ファン”と言った方がいい気もするが)はマスコミから「カネと政治」で「やり玉に挙げられた被害者」という風潮だった。「マスコミには負けない」と息巻いている支援者の言葉も聞かれた。
 有権者も小渕氏が行く先々で出迎え(「○時に△町◎▽通り」という情報が行き渡っていた)、温かい励ましの声を掛け、手を握る。サインなどを求めるシーンも見られ、≪政治と選挙は全く別物≫と強く感じさせた。
 当の小渕氏は、確かに“お詫び行脚”ではあった。しかし、単に「お詫び申し上げます」という言葉を繰り返すだけで、それが、「心配や迷惑を掛けたこと」に対してなのか、「政治資金の収支が一致しない事に対する説明責任を果たしていないこと」に対してなのか、「政治資金の運用に不正があったこと」に対してなのかは、全く言及していないのである。
 説明する間もなく選挙になったという事情もあるが、誠実に対処するならこの選挙期間に説明する機会はいくらでもあったはずだ。まあ、政治屋(政治家ではない)としては、当選するのが第一なので、まずは当選。その後、説明なのであろう(秘書や後援会に責任を押し付けてしまう可能性もあるが)。政治資金の収支の不整合やワイン問題など、納得のいく説明を求めたい。
 野党、特に民主党が情けなかった。あれだけ国会で追及しておきながら、対立候補を擁立できなかったのは、野党第一党の価値はないと言われても仕方がない

 小渕氏の他にも議員になって欲しくない人が多く、最高裁判所裁判官国民審査のように、「なって欲しくない立候補審査」もあるべきである。


『本当に聞く耳持たない安倍総理』
 『ZERO×選挙2014』(日本テレビ系)で、安倍総理が鉄壁の防御を見せた。
 村尾キャスターの質問に総理が答える形式であったが、予め質問の内容を聞いていたのか、質問を想定したマニュアルがあったのか、長々と都合の良い数字や理論を繋ぎ合わせた持論を展開した。横槍を入れさせないよう、息継ぎも瞬時に終える防御力。さらに、村尾キャスター何とか口を挟もうとするが、それに被せるように語調を強くする巧みさ。その上、イヤホンを外して雑音をシャットアウトする荒業も繰り出した。


『へこたれないと言うか…』
佐藤ゆかり氏
……郵政関連法案に反対した野田聖子元郵政大臣への「刺客」として岐阜1区に落下傘候補として出馬したが、野田議員も徹底抗戦した。選挙区では野田氏が勝利、比例で佐藤氏が復活当選。
 その後、野田氏が復党し、岐阜1区の自民党公認をめぐって対立。結局、次の選挙(“政権交代選挙”)では東京5区で立候補(落選)。
 2010年、参議院選挙には自民党公認で比例代表から出馬。比例順位2位で初当選。


 郵政民営化で造反した議員への刺客として起用されたが、自民党のゴタゴタ騒動に巻き込まれた感があったが、ウィキペディアを見ると、自らが“お騒がせ体質”のようだ。


 「大阪に身をうずめる」決意で、民主党の元官房長官・平野博文氏らを破り当選。
 確か、郵政選挙の時には「愛知に嫁に来た」という旨の決意を述べていたような……
 それに参議院議員を辞職しての鞍替え
 参議院は軽いんだね。やはり、一院政でいいのでは。


「民主大物、比例重複相次ぐ『覚悟ない』失望の声」という記事
 これは事実であるし、保険を掛けて良かった大物議員もいた(管元総理、川端元総務大臣、平野元官房長官)し、選挙区薄氷の思いで当選した大物議員も多かった。
 この記事では『海江田氏周辺は、「党首が落選すれば党へのダメージは大きい。『保険』をかけておくことはやむを得ない」』というコメントが載っていたが、党首の海江田氏は、保険さえも役に立たなかったとは……

 ただ、この記事、“印象操作”の疑惑もある。自民党の大物議員も重複立候補しているのだが……
 自民党では、前職で農相・西川公也氏が敗れ、比例で復活当選(閣僚としては唯一、選挙区で敗北)。“うちわのようなモノ”の松島元法相は選挙区で当選。

 そもそも“死に票を少なくする”という名目はあるが、選挙で敗れているのに復活なんておかしい。優勢な大政党が更に優勢になるようにできているのも問題。


 自民対象はもちろん、この他、任期があと5か月とは言え、県政を放り投げて出馬し当選した元佐賀県知事、踊りは軽やかだった沖縄2区の照屋氏、投票率の低さ、がっかりすることが多かった(毎度の事)選挙結果だった。
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『将棋世界』12月号  ~竜王戦展望対談……森下九段×中村太六段~ その2

2014-12-12 22:34:57 | 将棋
「『将棋世界』12月号  ~竜王戦展望対談……森下九段×中村太六段~」の続きです。

 前回、世代交代を検証するため、谷川名人誕生~羽生7冠独占までのタイトル戦を振り返りました。
 検証しながら、当時の思いなどが蘇り、それと森下九段の言葉が化学反応?を起こし、昂揚が過度になってしまったので、少し間を開けることにしました。
 さて、前記事では、「ここで森下九段から信じられない言葉が飛び出したのである」で締めたので、その言葉に対する私の感情をすぐにもぶつけたいのですが、それだと、この言葉に対して、あるいは、最近の森下九段の言動に対して、私が反応してしまったように受け取られるので、ずっと私が森下九段に抱いていた感情、そして、その素となる過去の言動と分析から述べていきます。

「…10秒」「ハイ」
 NHK杯の一コマ。秒読みの声にいちいち返事をする森下氏。彼の実直な人柄を示すシーンである。
 「誠実で他人に優しい」……そういう氏への評価は、今でも変わっていない。
 ちなみに、『Wikipedia』には「極めて礼儀正しく、知人をみつけると100m先であってもお辞儀をするという噂が出るほど将棋界一の律儀者と言われる」という表記がある。

「地獄の苦しみ」
 相当昔(タイトル挑戦やA級に昇級した頃)の話になるが、森下氏が過去(奨励会かC級2組時代)を振り返って、「地獄の苦しみでした」と述懐した発言(文章)を聞いた(読んだ)記憶がある。
 確かに、「四段に成れなければ、今までの努力や時間がすべて無になってしまうという恐怖」は、計り知れないものであろう。しかし、≪それを“地獄の苦しみ”と表現するのは、どうなのだろう?彼は名人、いや、タイトルを数期獲るような一流棋士にはなれないだろうな≫と、そういう言葉(文章)を聞いて(読んで)、そう思った。
 他人事だから言えるのかもしれないが、自力で道を切り開くことができる勝負の世界、しかも、それが好きな将棋である。それを、どうして“地獄の苦しみ”と言ってしまうのだろう?
 確かに大変だが、羽生名人や佐藤九段なら“試練”とは思っても、“地獄の苦しみ”とは思わないであろう。将棋を指していて苦しいと感じても、それと同時に充実感や喜び、楽しささえ感じるのではないだろうか。もし彼らが“地獄の苦しみ”と感じることがあるとしたら、それは好きな将棋が指せなくなった時であろう。

 私の記憶が間違っている可能性もあるので、「森下卓 地獄の苦しみ」で検索したら、「地獄の次はまた地獄」(将棋ペンクラブ)という記事がヒットした。
 将棋世界1998年6月号、森下卓八段(当時)の連載自戦記を引用した記事だが、私の頭に残っている“森下氏の地獄”がこれなのかは定かでないが、このブログ記事を読んで、≪彼は根っからの棋士ではないのだな≫と改めて感じた。

 森下氏を非難しているわけではありません。人間が苦しさを感じるのは当然のことなのですから。(しかし、このシリーズ記事の最終では、氏に対する非難といってよいモノとなりそうです)

「棋士全員にとって屈辱です」(羽生名人が七冠王を達成した時の発言)
 ≪なかなか、気骨のある発言だ≫と思ったが、森下氏の人間性とは合致しないように感じた。なので、気を利かせたマスコミ用のリップサービスかと思ったが、どうやら、羽生名人が七冠に登りつめる過程の名人戦と棋王戦で、森下氏が挑戦し羽生に退けられ、結果的に「羽生七冠」の手助けをしてしまった悔しさを表したものであった。
 おそらく他のトップ棋士も悔しさを感じていたのだろうが、≪それを口に出すのは羽生七冠の偉業にケチをつけることになってしまう。ここは素直に七冠の強さを認め讃えておこう≫と思ったのかもしれない。


「ぜひ私を七冠王にするプログラムを作ってください」(電王戦、記者発表会)
 大衆受けする言葉で柔軟な考え方をする森下氏らしい発言である。
 電王戦出場の動機として「コンピュータの強さを利用することで、若手と互角に戦える力を取り戻したい」という言葉も残している。
 確かに、こういった柔軟な考え方は人生においては有効なものであろう。世間では「棋士対コンピュータ」という対決に興味が集まっているが、「コンピュータを強くなる手段や道具として活用する」ことは、非常に有効であるし、おそらく、多くの棋士がコンピュータソフトに局面の分析や、コンピュータの発想を取り入れて活用していると思われる。
 しかし、この電王戦が世の中に及ぼす影響を考えると、「自分を七冠王にするソフトを」という温い考えで臨んでほしくなかった。
 まあ、「私を七冠王にするソフト」というのは森下氏のリップサービスかもしれないし、「コンピュータの強さを利用」という言葉も、「強いコンピュータと戦うことで」という意味にも解釈できるが。
 『将棋世界』7月号には、「こんなもので終わっていくのかという感覚が20年近くあり、コンピュータを研究に採り入れることで棋力を上げたいと思いました。
 プロが強くなるのは意外と難しいのですが、コンピュータと向き合うと贅肉と不純物が落ち、将棋に吸い込まれて行くような感覚になりました」という言葉がある。

 また、『電王戦 公式ガイドブック』のインタビューでは、「勝ちたいじゃない、勝たねばいかん」とも述べている。う~ん、これまでの発言とは趣が異なるが……これは私の想像だが、森下氏はその場の雰囲気や、相手の意図を読んで、発言をする傾向があるのではないだろうか。


 ツツカナとの対局では、中盤では優位に立った。
 棋士がコンピュータに対して中盤で優位に立つことは多い。しかし、さらに優位を拡大するとなると難しい。よくなりそうな手は多数見えるが、よく読むと意外に難しい。そんな局面が連続し……
 そして、一見ありがたいと思われる手(この将棋では▲7八玉や▲4四金)を指され、ふわっと指してしまった△8五桂(正着は△7五歩と突き捨てを入れてから△8五桂)が敗着となったらしい(森下九段の感想だが、その前に優位の決定づけられたような気もする)
 局後のインタビューでは「△8五桂と跳んだのが相当悪い手でしたね。なんかあると思って跳んだんですが、強く▲8六銀と上がられて。私は▲8八銀だと思っていたんですね。▲8六銀だと△5九角と行けると思っていたので」

 「コンピュータが背後からヒタヒタと付いてきて、こちらが転んだ瞬間抜いていくような将棋」(『将棋世界』7月号森下談より)……ずっと精密に読んできて、1、2手だけ、≪なんかあると思って≫というように緻密さを欠いてしまう……人間のコンピュータ将棋における一つの、そして、よくある負けパターンだった。
【続く】
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