英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『平清盛』 第38話「平家にあらずんば人にあらず」

2012-09-30 22:30:13 | ドラマ・映画
「平家にあらずんば人にあらず」

 今回は、この言葉に尽きる。
   この方針に対する平家のそれぞれの思いは……

時忠……言いだしっぺであり、実行犯
清盛……時忠に行動を指示(暗示)し、時忠の行動も必要であると容認
盛国……清盛のボケに突っ込みを入れるだけの役(上川ファンなのでもう少し活躍して欲しい)
重盛……もはや反抗する気力、体力なし
時子……やり過ぎでないかと疑念の念を持つ
兎丸……やり過ぎでないかと強い疑念の念を持つ

 後継ぎ(血筋)問題以外に、根本的な方針に分裂の兆しが見えてきた
 港の整備に目途が立ち、娘・徳子のも入内を果たす順風満帆ぶりだが、時子は権力に物を言わせ失脚した信西の末路が重なり不安を感じる。清盛は武力財力ともに兼ね備えた平家は信西と違うと言うが、清盛、平家一門には奢りが染み出してきていた(前回辺りから)。

 そんな中、とんち問答に得意になる後白河法皇、ますます、アニメ『一休』の将軍義満化が進行している。

 羊は当時、本当に不評だったらしい。
 「流行り病は羊(清盛)のせい」といううわさを流した八条院は、家政婦に粛清されたわけではなかった……

 粛清は禿たちの暗躍だったが、実際にあれだけ堂々とやったらまずいのでは?


     盃を沈める清盛が割箸(算段)を並べていた信西とダブる………

【ストーリー】番組サイトより
 清盛(松山ケンイチ)の夢は平家の流れをくむ天皇を誕生させることだった。そのため、宋から手に入れた羊を後白河法皇(松田翔太)に贈り、関係改善を試みる。そして建春門院(成海璃子)と共に福原に招き、高倉天皇(千葉雄大)に娘・徳子(二階堂ふみ)を入内させたいと清盛は頼む。
 そのころ、都では時忠(森田剛)が「禿(かむろ)」という集団をつくり、平家に異議を唱える者を取り締まっていた。平家の横暴が目立つ中、鬼若改め弁慶(青木崇高)が一人、禿に立ち向かおうとしていた。ある日、京・五条大橋で弁慶はある少年と運命的な再会を果たす。それは後の義経、遮那王(神木隆之介)だった。
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フェアな観客、アンフェアな中継 ~日本女子オープンゴルフ~

2012-09-30 20:16:04 | スポーツ
 深いラフ、速くて傾斜が意地悪なグリーン、それに加え強風が、選手を悩ませた。特に風の強かった2日目はプレイ終了後の選手たちの顔は疲労の色が濃かった。
 そういう難条件を一流プレーヤーがそれを克服、或いは、挫けるシーンは見応え充分であった。
 優勝したフォン・シャンシャンの困難を撥ね退けるパワー、2位の朴仁妃の困難を切り開く強靭さ、宮里美香の困難に対応する上手さと集中力、李知姫のホールにねじ込むしぶとさ、品格のある宮里藍のプレー、光を感じさせる木戸愛、天空を突き抜くような森田理香子のドライバーショット……などなど非常に面白かった。

 観客も素晴らしく、選手がアドレスに入るや否やさっと静まり、好プレーには称賛と拍手を惜しまない。優勝したフォン・シャンシャンは中国選手だが、まったく差別を感じさせない観戦マナーの良さだった。
 これが、もし日本選手が中国でプレーする場合、無事に済むのだろうか?実際、中国の黄石で21日に開幕する女子ワールドカップ(W杯)にエントリーしていた石川佳純(全農)の出場を断念した。尖閣諸島の領有権をめぐる中国国内での反日デモ拡大の影響で、19日午前に中国協会から日本協会に対し「安全を確保するのが困難な状況にある。出場について再考してほしい」と連絡が入ったのを受けての判断だった。北京で合宿し、大会の準備をしていた石川選手は参加の意思を示していたが、残念だったろう。

 これに対し、テレビ中継はフェアじゃなかった。あ、フォン選手に対してではなく、優勝争いに絡む選手のプレーしか映さなかったのだ。宮里藍選手さえ、同組で一次トップに並ぶなど優勝争いに絡んだ北田選手しか映さず、プレーしているかどうかさえ分からない状態だった(2、3度映った程度)。
 3日目まで上位にいて、最終日に崩れていった木戸選手、不動選手たちは、途中からまるでいなくなったかのような扱いだった。
 まあ、崩れていくプレーを映されるのも辛いかもしれないが、優勝に関係なくなると、とたんに冷たくなるのはどうかと思う。

 スコアを崩しても、そのピンチからのリカバリーショットやパッティングなど観るべきプレーはあるはず。

 ふたりで交互にプレーしているのに、片方のプレーヤーだけテレビカメラが寄ってきて脚光を浴びせ、もう一人には見向きもしない。これは、相当堪えるのではないだろうか
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A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その2

2012-09-30 09:58:00 | 将棋
A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その1 【追記あり】(9月26日記事)の続きです。


 香車を取るため角を打ち込んだが、香取りを受けつつ飛車当たりに▲4五角とされた局面。これに対し△8四飛とかわしたが、先に桂を取られたうえ後手を引くのでは、面白くなさそうな手順だ。
 先手の課題は1筋に退避している飛車の活用。そこで、さっそく▲3六飛と現場復帰させる。角が4五にいなければ▲2五桂から▲3三歩と絡んでいく手もあるが、4五に角がいるため△4四銀と銀をかわされた時、角当たりになってしまう。

 これにより1八の香車への利きが遮断されるが、迂闊には取れない。△1八馬には▲3三飛成がある(△3三同金なら▲1八角、また▲3三飛成に△同金とせず△4五馬としても▲同桂で3三の飛車に紐がついてしまう)
 なので後手も△4四銀と根本の角を攻める。角が逃げると1八の香車が取られるので、変則的な角香両取りになっている。
 ここで、▲3四飛がしゃれた受け方。

 △4五銀と角を取ると▲8四飛と飛車を抜かれてしまう。しかし、これには△9五角の王手飛車取りの返し技があるがどうなのだろう?
 一見、▲8六飛△8五歩▲9六歩(変化図1)で先手がうまくいっているように見える。

以下△8六歩▲9五歩で駒の損得はないが、4五の銀取りが残っている。
 ところが、変化図1で△8四角とされると飛車が詰んでいる。いや、ここで、▲8一飛と角取りに打つとその対応も難しい……
 それに、△9五角の王手飛車に対し素直に▲8六歩△8四角と飛車を取らし、そこで▲4五桂(歩)と銀を取り返すとどうなのか…………素人には分からないなあ………

 『将棋世界』の勝又教授の講座を調べなければならないかなあ。でも、その項目(場所)を探すのが大変そう。
【以下続く】
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強い、そして、忙しい羽生二冠

2012-09-29 23:24:46 | 将棋
 本日の日本シリーズ、後手の羽生二冠は角交換四間飛車から向かい飛車、対する深浦九段は穴熊に組み替える。羽生二冠が馬を作ったものの、深浦九段の反撃に会い、先に香損。その代償に得た歩を駆使し端攻めを敢行。端攻めもいったん小康状態。深浦九段が再び反攻。


 図の▲4六桂では本当は▲3五歩と歩で攻めたいところだが、△3七歩、或いは、△4四飛が気になったのだろうか。
 それはともかく、第1図、飛車が逃げると3三の銀が取られる。後手ピンチを思わせる。そこで、△9六歩と端をいじる。▲9六同銀は当然の応手だが、そこで、△4一香!(第2図)。

▲3四桂は△4七香成が飛車取りの先手だ。後手玉は堅いし、先手は飛車に弱い。「はー……。このタイミングでこの手。この手は見えませんね。どうやったら見えるんでしょうね」(島九段)(中継解説より)
 端に手を付けておいて4一に香打ち!秒読みの中でこんなことをやられると、目眩がするのではないだろうか?
 第2図以下、▲6五歩△4六香▲6四歩△4七香成▲3九飛△4八銀(第3図)と進む。


 図の△4八銀も打ちにくい銀だと思う。深浦九段もこの手に乗じて8筋に飛車を展開し玉頭に襲いかかる。
 その後、激しく斬り合い第4図。

 ここで自玉の危険を顧みず△9六桂と銀を取っての詰めろ。以下、深浦九段の猛攻をかわして勝利する。
 途中の形勢はよく分からないが、強いなあと思った。
 強い。七冠の頃より強さの絶対値は大きいのではないだろうか!


 強さもさることながら、多忙さも凄い。

8月29日 対渡辺竜王・王座 王座戦第1局  仙台市
9月 1日 対森内名人    達人戦(非公式)有楽町・朝日ホールマリオン
   5日 対渡辺竜王・王座 王座戦第2局  横浜市
  14日 対谷川九段    A級順位戦   将棋会館
  17日 チェスイベント          神戸市
  19日 対渡辺竜王・王座 王座戦第3局  盛岡市
  22日 チェスイベント          東京スカイツリー併設施設
  24日 対橋本八段    NHK杯    東京(将棋会館?NHK?)
  27日 対木村八段    棋王戦     将棋会館
  29日 対深浦九段    日本シリーズ  仙台市
  30日 チェスイベント          渋谷ヒカリエ
10月3日 対渡辺竜王・王座 王座戦第4局  秦野市(神奈川県)
   5日 棋聖就位式            明治記念館
   7日 世田谷区80周年記念式典・イベント 世田谷区

       太字…公式戦 赤字…地方

 タイトル戦や地方での対局、イベント。
 過密スケジュール、大丈夫なんでしょうか?
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無自覚

2012-09-29 17:40:57 | 日記
 意識的な悪意より、無自覚な無神経さの方が、タチが悪いのかもしれない……
 気をつけなければ(私も人のことは言えない)。
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大河ドラマ『平清盛』の清盛考

2012-09-28 21:33:40 | ドラマ・映画
 第37話「殿下乗合事件」の感想で「今までで一番面白かった」と書きましたが、少し早まったのではないかと後悔しています。
 いえ、実際非常に面白かったです。
 時忠の「されど、いささか正し過ぎましょう。正し過ぎるということは、もはや間違うていることに同じにござります」という台詞や、清盛「わしがこの福原で、新しき国造りに勤しめるよう、そなたは都でそなたの務めを果たしてくれ」と時忠「……………」の意味深な会話?や、棟梁・重盛誠実が故の苦悩、藤原基房役の細川茂樹の悪ぶりとヘタレぶりの見事さ、乗せられぶりがアニメ『一休さん』の将軍・義満を彷彿させる後白河法皇(松田翔太)の新し物好きさ、重盛・経子夫婦の仲の良さ、時政(遠藤憲一)の気の使うさま、平家のおごりの兆候など盛り込まれ、『相棒』のような濃密で緻密な構成が見事だったように思う。

 しかし、どこかモヤモヤしたものが残る。
 それは、ドラマが清盛を描いていない点である。確かに、タイトル通り清盛が主人公なのだが、清盛を描くことが目的ではなく、「もののけの血」「璋子、得子、鳥羽院の情念」「崇徳院の悲劇」「叔父の首を切る非情さ」「遊びをせんとや生れけむの唄や双六と人生の例え」など、あれこれテーマを描く際に、駒(登場人物)として使われているだけのように思えることが多い。
 放送1回(45分)で、最後のどんでん返しが好きなようで、主要人物(清盛や義朝など)の心の内をあまり明らかにせず、最後に唐突な決断をさせる。慟哭のシーンは時折あるが、人物を描かず、出来事を描いている。成長しているシーンを見て成長を知ることは出来たが、清盛の成長を感じることが出来なかった……などなど……
 だから、今回の清盛と宋の商人との駆け引き、清盛・盛国・時忠の深い絡みなど、面白いシーンであったが、私は「清盛っていつの間に出来る人間になったのだろう?」とか思ってしまう。そもそも、清盛を描いていない……出来事や各話のテーマを描くための駒として使われたので、清盛の人物像を描き方に一貫性がなく、私も清盛像が固められなかった。魅力も感じられないのである。
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『将棋世界』8月号 実戦に役立つ5手7手詰

2012-09-27 22:09:55 | 詰将棋

 小味の利いた作品です。



 打ち歩詰打開の小粋な作品です。
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A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その1 【追記あり】

2012-09-26 22:48:48 | 将棋
 竜虎の戦いとも言うべき両者の対局。この対局まで羽生二冠99勝、谷川九段62勝。順位戦では羽生二冠の8勝5敗。ただ、最近は羽生二冠が14勝1敗と圧倒している。これは、谷川九段の棋士会会長の重責が影響しているように思う。
 横歩取り戦で、後手番の羽生二冠は8五飛・4一玉型に構える。中座飛車が確立された当時は8五飛・4一玉型一辺倒であったが、最近は5二玉型、さらに8四飛と構える指し方も復活し、4通りの組み合わせがで指されている。本局の8五飛・4一玉型はやはり横歩取りの中でももっとも研究が進んでいる形とのこと。


 細かな変化はよく知らないのでスルーして第1図。
 ▲3四歩△同飛▲5六角と3五の歩を突き捨て飛車取りの角打ちに後手が飛車をかわしたところ。この5四のかわし場所であるが、「機を見て△5六飛と切る手も狙っている」のだそうで、過去の実戦もそうだったようだ。
 この後、▲3四歩△2八角(この局面は27局の前例があり、戦績は先手12勝、後手14勝、千日手が1局)▲1八香△1九角成▲3三歩成△同銀▲4五角(第2図)と進む。

 ▲4五角は飛車に当てながら、1八の香に紐を付けた攻防の一手。この手に対し、△8四飛と後手はかわしたが、ここで疑問が生じた。
 第1図、5四に飛車をかわしたが、はじめから8四にかわしておけば、第2図の▲4五角は飛車当たりにならないのではないか?
 でも、まあ、羽生二冠が5四にかわしたのだし、先例も△5四角なので、第1図の時△8四飛とかわすのは、きっと後手にまずい変化があるのだろう。

【追記】
記事をアップした後、第1図の△5四飛とした手について少し考えてみました。
 第1図の△5四飛では△8四飛としておけば、確かに実戦と同じ手順を踏めば第2図の▲4五角が飛車当たりにならない。しかし、△8四飛は空中戦(横歩取り戦)における定位置の一つではあるが、戦いが始まっているこの局面においては、ややへき地の感があり、▲3四歩△2八角の時、香を逃げずに(1八に逃げても▲4五角が飛車当たりにならないので▲1八香の意味はあまりない)、▲3三歩成△同銀▲2五桂と余裕を持って先手に攻められてしまう。
 この時、角が4五に居れば△4四銀とかわした手が角当たりになる。また、何かの時に1六の飛を2筋に戻した時、2八の角取りになる。
 飛車を5四に置いて、何かの時に飛車角交換で先手の攻めを断ち切ったり、角がいなくなれば飛車が5七に直射し技を掛けやすくしておかなければならないようだ。

 また第1図の△5四飛では、△3五飛として▲3四歩に△3六歩と攻め合う手も考えられるが、▲3三歩成△同銀に▲4七桂で困る。
コメント (3)
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『なかよしテレビ』 いじめ問題  一見正論に思えるが…

2012-09-25 21:58:12 | 時事
『なかよしテレビ』でいじめ問題が取り上げられた。

 その中で教育関係者が
「いじめで一番悪いのは(「問題があるのは」あるいは「責任があるのは」だったかも)、保護者である。中学に入学する段階で保護者は12年間、一番長い間、一緒に過ごしている。この間に、愛情を注いで、してはいけないこと、大切なことを教えてないから、いじめ問題が起こってしまうのだ」

という主旨を述べていた。

 一見、なるほどと思わせる意見だった。
 しかし、実際、いじめの加害者になるのは、一部の生徒だと思う。30人学級として、いじめの首謀者が5人で、引っ張られて加害者になる者や傍観者が多数だとして(多めに仮定しています)、首謀者がいなかったらいじめは起きない。もちろん、傍観者にも責任がある。この比率も妥当であるか分からない。
 親の立場として言わせてもらうと、私は子どもたちに、してはいけないこと、大切なことは教えてきたつもりだ。ただ、学校、学級という閉じられた場で、それに抗することができるだけしっかりと育ててきたかは自信がない。
 わたしはPTA活動に長年携わってきて、保護者の至らぬ点、中には相当おかしな保護者も存在したが、多くの保護者は常識をわきまえていたように思う。(中には居ましたよ、体育大会の後片付けをしている横で、たばこを吸っている親も)
 子どもたちとも接する機会が多く、腹が立って「親の顔が見たい」と思ったこともあったが、おおむね良い子たちだったように思う。私の見る目がないのか、甘いのかもしれないが、通常の常識を以て子育てしても、一部の生徒が悪い波長を放って、それに巻き込まれてしまったと考えるのが、妥当なのではないか。
 ちゃんと育てても、学校のような閉鎖された空間ではどうしようもないことがあるのではないか?


 それなのに、「保護者が一番悪い」と公の場で言い切ってしまうような教育者、しかも、代表としてテレビに出演しているのに、そんな断定的な、責任逃れのような発言をしていて良いのだろうか?大いに疑問、怒りを感じる。

 いや、もしかしたら、この人も、他の場面ではもっと建設的なことを発言しているのかもしれない。編集で極端な発言だけをピックアップされたという可能性もある
 実際、フジテレビのこの番組へのメッセージを読むと番組を肯定する意見ばかりだった。しかし、ページの最後の方に、
「ここに掲載されるメッセージは、フジテレビ・ホームページへ寄せられたものの中から選択されたものです」
とある。
 信用していいものだろうか?
コメント (6)
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『七冠・羽生善治 将棋の宇宙を語る』 1996年2月16日放送

2012-09-25 17:31:03 | 将棋
 先日、NHKのEテレで、羽生二冠が七冠当時のインタビュー番組が再放送されました。
 それについて、ものぐささん(shogitygoo氏)がブログ記事にしていました。その記事に対して、コメントしようとして書き込んでいたのですが、例によって長文となってしまい、気が引けるので、自分の所に載せます。


 羽生さん、若いかったですね(今も若いと思いますが)。声も細くて柔らかでした。
 私が一番心に残ったのは、
①「勝つことだけにこだわると指す手が制約される。プロの世界が進歩すればするほど、制約が大きくなって、つきつめると皆同じような将棋になってしまう」で、
現代将棋を予言したと思える言葉でした。

②また、この対談では、彼自身の将棋に対しての解明度はというと、「ほとんどわかっていない」という感じでした。

 一見矛盾するような、羽生さんの考えです。
 ①についてですが、このインタビュー後の羽生さんを考察してみると、この制約を、氏自身もかなり受けてしまっているそんな印象を受けます。
 たとえば、「可能ならば穴熊に組んだ方がよい」「囲いの最終地点は穴熊」という現代将棋のもっとも顕著な感覚は、氏の将棋にも多々見られます。過去の定跡手順を相当手数まで踏襲することも見られます。ただ、他の一般棋士よりははるかにその制約を抜け出している指し方をしています。
 ここで、②を合わせて考察してみると、定跡や過去の実戦例や研究は碁盤の目のような舗装された道路で、ここを車で走れば、速くて楽です。
 ただ、羽生さんは、その道路の間にある四角い部分(水田や畑、草地、あるいは住宅やビル)の中に、まだまだ沢山可能性が秘められている(車で走れる部分があるかもしれないし、自転車を使って横切った方り自力で走った方が早いかもしれない)と考えていたのではないでしょうか?
 で、羽生さんは、舗装道路を走りながらも草地などを観察したり、時には停まって足を踏み入れたりしていたのではないでしょうか?
 現在行われている王座戦は、いつもと違うアプローチで、いつもと違う将棋の作り方をしているような気がします。
 相手の渡辺竜王は、ガチガチの定跡派ではありませんが、現代将棋感覚においては先頭を走っていると言ってもいいでしょう。また、読みも正確です。羽生さんの新たな将棋観や疑問をぶつける相手としては最適です。


 私は、七冠王時代の羽生さんより、今の方が強いのではないかと感じています。「え?二冠しか保持していないのに?」とか、「名人戦で森内名人に勝てないじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、当時は渡辺竜王はまだいなかったし、森内名人もまだ完成されていなかったように思います。
 この二人だけでなく、棋界全体がレベルアップし、羽生さんも勝ち星を積み重ねることが以前より困難になってきました。この、棋界のレベルアップは、もちろん棋士それぞれが修練を積んだからだと思いますが、羽生さん自身の存在(打倒羽生、羽生将棋を研究)による処も多いように思います。さらに、羽生さん自身もそれを望んでいたように思います。
 もちろん、羽生さん自身も「勝ちたい」「負けると悔しい」でしょうが、それと同じくらい、「将棋を探求したい」という思いが強いように思います。

 当時と比べて、現在はどのくらい将棋を解明しているのかお聞きしたいが、「全然わかっていないことがわかった」と答えられるような気もします。
 今回の王座戦を前にして、エンジンを改良し、タイヤのグリップを強くし、サスペンションを安定させるなど一通りの強化を完了し、羽生さんがいよいよ荒れ地を走りだしたのではないかと期待しています。
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