今回の密室を解く上で、最も重要なのは、動機だと思います。
犯人が何故、殺人を犯してしまったのか?それは本来、容疑者を絞り込んだり、犯行の裏付けを行ったりする際に考えることで、密室と直接関連付ける意味はあまりないと言えるでしょう。
しかし、この部屋で起きた殺人事件においては、この鍵やドアに掛けられたチェーンと同じように、動機そのものが密室を構成する一つのアイテムとしなっているのです。(榎本径)
≪以下、いきなり密室トリックのネタばれですので、お気をつけ下さい≫
今回の密室トリックは、被害者自身が密室を完成させてしまうというパターン。
この場合、よくあるのが、被害者が犯人を庇って、死ぬ直前に最後の力を振り絞って密室を完成させるということが多いが、この事件はダイイングメッセージを保持するための行為だった。
犯行の動機は、不正対局で強請られていた犯人・来栖奈穂子女流三段(相武紗季)が、その証拠品の携帯電話を取り戻すためというものだった。
しかも、その携帯電話が犯人に直結する証拠となっており、ダイイングメッセージはその携帯電話の存在を示すものだった。
そのダイイングメッセージは、竜王戦の毒島竜王(貴志祐介)が妙手を指した局面のマグネット将棋盤。被害者が犯行時刻にこの局面を並べるには、ネット中継をパソコンや携帯電話で知ることしかできないという状況であった。現場にそれらがないことから、携帯電話を或いはノートパソコンを犯人が持ち去ったということが推測されるというもの。
将棋ファン以外だとちょっと理解できない推理かもしれない。
しかし、死ぬ間際にとっさにマグネット盤がダイイングメッセージになると考え、それを犯人が気づくと考え、それを保持するためにドアチェーンを掛けるとは、何という悪知恵、知恵の働く奴。
さらに、殺人を犯すというギリギリの状況で、マグネット盤が竜王戦の局面が並べられていると気づき、それがダイイングメッセージになると気づき戻ってくるとは、来栖奈穂子も恐るべし。
そこまでの洞察力や頭の回転があるのなら、将棋ソフトによるカンニングなどせずとも奨励会を突破できると思う。被害者の竹脇伸平五段(ゆうぞう)にしても、もう少し実績を残せたのではないのだろうか。
さて、今回は書くことが多くなりそう。
まず、ドラマとは離れてしまうが、この不正行為(将棋ソフトや協力者によるカンニング)は、実際に充分可能なのでちょっと怖い。
ご存知の方も多いと思うが、将棋ソフトの実力はプロレベルにまで達していて、特に終盤、とりわけ詰みの検証については速さも正確さも人間はかなわないレベルである。さらに、最近は携帯電話(スマートフォン)モバイルPCの発達によりトイレなどで将棋ソフトを使用が容易である。
私は過去に2009年11月14日記事「『週刊将棋』驚きの記事」、2010年11月15日記事「ソフト指しについて」で、この不正行為について書いているので、興味のある方はご覧ください。ただ、現在、対局に置いて、そういった不正行為防止について、将棋連盟がどのような対策や処置を取っているのかは把握していません。
それにしても、原作者の貴志さん、将棋が好きなんでしょうね。奨励会やネット中継やソフト指しなどに詳しいそうです。しっかり毒島竜王として出演していますし。
★今回はさらに榎本(大野智)の独壇場
将棋が強く、将棋界(情勢)に詳しくないと、解明できない密室(もちろん、鍵についても)だった。榎本の将棋に詳しいことが更に彼の活躍度を高めたと言える。
さらに、今回は芹沢(佐藤浩市)が捜査にほとんど関わっておらず、ドラマの面白さは半減。彼の見せ場は自分が窮地に陥っても守秘義務を貫いたが、美人には洩らしかける。しかも、守秘しようとした依頼というのが仕様もない内容だったということぐらいか。
青砥(戸田恵梨香)も、早とちりと来栖奈穂子に入れ込み過ぎと稚拙な推理ぐらいしか活躍?できなかった。
★感想、疑問点
・青砥に「彼女、います?」と聞かれ、榎本はうろたえ、彼女の有無と事件とが関係あるのか尋ねる。
心酔していた来栖奈穂子の不正行為と殺人に落ち込む青砥に、「青砥さん、彼氏いますか?」と突然話題を変える。それは、以前、女性は何故恋愛話をするのかと聞いた時に、青砥が面白いからだと答えたのを思い出したからだった。青砥に、その妙な榎本の気の利かせようを面白がられ、げんなりして「もういいです」と言う榎本が面白かった。
・青砥が来栖を弁護したいと言いだしたが、芹沢が「たとえ殺人を犯したとしても、君には弁護は頼まないよ」と言うように、依頼する気にはならないだろう。
・事件直前に通話記録があったということだけで、あそこまで疑うものなのだろうか?
・来栖が被害者の持ち物確認に来た時、マグネット盤をいじったのは、滅茶苦茶怪しい。もっとも、この行為がないと、榎本が密室の秘密にたどり着くのが困難になってしまう。
・棋士や奨励会員の着手の手つきが素人っぽい
・級位者と有段者は持ち時間が違うので、対局時刻にずれはあるが、完全に別時間に指すことはないと思う。
・最後の榎本と来栖の対局は来栖の勝ちだったが、その局面を見ると、あまりに榎本の指し手(攻め方や守備)がヘボ過ぎ。
・将棋ソフト「激指」の宣伝をし過ぎ。スポンサー?
・不正行為をすることで、棋力の伸びはストップしてしまう。不正とプライド、その辺りを厳しく追及するのが、青砥の役目だと思う。あるいは、冷静に本末転倒の行為だと榎本が指摘してもよいと思う。
今回の記事でも、棋士の不正行為の可能性を指摘したが、棋士のプライドがその不正を抑止すると考えたい。
【ストーリー】(番組サイトより)
榎本径(大野智)は、青砥純子(戸田恵梨香)と刑事・鴻野(宇梶剛士)とともに、プロ棋士・竹脇伸平五段(ゆうぞう)が殺害されたホテルの一室にやってきた。そこはビジネスホテルで、竹脇は背中を包丁で一突きにされドアを頭にして倒れていたという。現場は、窓もドアも施錠されチェーンまでかけられた密室で、室内には携帯用の将棋盤、棋書、将棋新聞、飲みかけのコーヒーカップが残されていた。
榎本は、部屋を開けた時ドアが遺体に触れたかどうかを遺体発見者のスタッフに尋ね、スタッフはチェーンがかかっていたため遺体までは届かなかったと証言した。
そこへ、来栖奈穂子女流三段(相武紗季)が入ってきた。鴻野は竹脇の恋人だという奈穂子に遺留品の財布などを見せていると、奈穂子は将棋盤にあった駒をひとつ動かした。
奈穂子が最近話題の女流棋士だと知った純子は盛り上がる。そして名刺を差し出すと、自分の上司・芹沢豪(佐藤浩市)が竹脇から法律相談を受けていた関係で、今回の事件の捜査協力をすることになったと説明した。
その後、女流四段昇格をかけたリーグ戦がはじまり奈穂子が勝ち進む。美人棋士の勝利とあって報道陣の注目も奈穂子に集まる。その様子を見ていたプロ棋士・中野秀哉四段(忍成修吾)は、竹脇の死後ますます奈穂子の人気が高まり、竜王戦で八連覇を成し遂げた毒島薫竜王(貴志祐介)がかすんでしまい気の毒だ、と漏らした。
依然、犯人像が浮かび上がってこないなか、榎本と純子はプロ棋士・谷二郎八段(児玉頼信)を訪ねると、谷は竹脇を恨んでいる人間は腐るほどいて、毒島もそのひとりだと証言。それを聞いた榎本は…。
犯人が何故、殺人を犯してしまったのか?それは本来、容疑者を絞り込んだり、犯行の裏付けを行ったりする際に考えることで、密室と直接関連付ける意味はあまりないと言えるでしょう。
しかし、この部屋で起きた殺人事件においては、この鍵やドアに掛けられたチェーンと同じように、動機そのものが密室を構成する一つのアイテムとしなっているのです。(榎本径)
≪以下、いきなり密室トリックのネタばれですので、お気をつけ下さい≫
今回の密室トリックは、被害者自身が密室を完成させてしまうというパターン。
この場合、よくあるのが、被害者が犯人を庇って、死ぬ直前に最後の力を振り絞って密室を完成させるということが多いが、この事件はダイイングメッセージを保持するための行為だった。
犯行の動機は、不正対局で強請られていた犯人・来栖奈穂子女流三段(相武紗季)が、その証拠品の携帯電話を取り戻すためというものだった。
しかも、その携帯電話が犯人に直結する証拠となっており、ダイイングメッセージはその携帯電話の存在を示すものだった。
そのダイイングメッセージは、竜王戦の毒島竜王(貴志祐介)が妙手を指した局面のマグネット将棋盤。被害者が犯行時刻にこの局面を並べるには、ネット中継をパソコンや携帯電話で知ることしかできないという状況であった。現場にそれらがないことから、携帯電話を或いはノートパソコンを犯人が持ち去ったということが推測されるというもの。
将棋ファン以外だとちょっと理解できない推理かもしれない。
しかし、死ぬ間際にとっさにマグネット盤がダイイングメッセージになると考え、それを犯人が気づくと考え、それを保持するためにドアチェーンを掛けるとは、何という
さらに、殺人を犯すというギリギリの状況で、マグネット盤が竜王戦の局面が並べられていると気づき、それがダイイングメッセージになると気づき戻ってくるとは、来栖奈穂子も恐るべし。
そこまでの洞察力や頭の回転があるのなら、将棋ソフトによるカンニングなどせずとも奨励会を突破できると思う。被害者の竹脇伸平五段(ゆうぞう)にしても、もう少し実績を残せたのではないのだろうか。
さて、今回は書くことが多くなりそう。
まず、ドラマとは離れてしまうが、この不正行為(将棋ソフトや協力者によるカンニング)は、実際に充分可能なのでちょっと怖い。
ご存知の方も多いと思うが、将棋ソフトの実力はプロレベルにまで達していて、特に終盤、とりわけ詰みの検証については速さも正確さも人間はかなわないレベルである。さらに、最近は携帯電話(スマートフォン)モバイルPCの発達によりトイレなどで将棋ソフトを使用が容易である。
私は過去に2009年11月14日記事「『週刊将棋』驚きの記事」、2010年11月15日記事「ソフト指しについて」で、この不正行為について書いているので、興味のある方はご覧ください。ただ、現在、対局に置いて、そういった不正行為防止について、将棋連盟がどのような対策や処置を取っているのかは把握していません。
それにしても、原作者の貴志さん、将棋が好きなんでしょうね。奨励会やネット中継やソフト指しなどに詳しいそうです。しっかり毒島竜王として出演していますし。
★今回はさらに榎本(大野智)の独壇場
将棋が強く、将棋界(情勢)に詳しくないと、解明できない密室(もちろん、鍵についても)だった。榎本の将棋に詳しいことが更に彼の活躍度を高めたと言える。
さらに、今回は芹沢(佐藤浩市)が捜査にほとんど関わっておらず、ドラマの面白さは半減。彼の見せ場は自分が窮地に陥っても守秘義務を貫いたが、美人には洩らしかける。しかも、守秘しようとした依頼というのが仕様もない内容だったということぐらいか。
青砥(戸田恵梨香)も、早とちりと来栖奈穂子に入れ込み過ぎと稚拙な推理ぐらいしか活躍?できなかった。
★感想、疑問点
・青砥に「彼女、います?」と聞かれ、榎本はうろたえ、彼女の有無と事件とが関係あるのか尋ねる。
心酔していた来栖奈穂子の不正行為と殺人に落ち込む青砥に、「青砥さん、彼氏いますか?」と突然話題を変える。それは、以前、女性は何故恋愛話をするのかと聞いた時に、青砥が面白いからだと答えたのを思い出したからだった。青砥に、その妙な榎本の気の利かせようを面白がられ、げんなりして「もういいです」と言う榎本が面白かった。
・青砥が来栖を弁護したいと言いだしたが、芹沢が「たとえ殺人を犯したとしても、君には弁護は頼まないよ」と言うように、依頼する気にはならないだろう。
・事件直前に通話記録があったということだけで、あそこまで疑うものなのだろうか?
・来栖が被害者の持ち物確認に来た時、マグネット盤をいじったのは、滅茶苦茶怪しい。もっとも、この行為がないと、榎本が密室の秘密にたどり着くのが困難になってしまう。
・棋士や奨励会員の着手の手つきが素人っぽい
・級位者と有段者は持ち時間が違うので、対局時刻にずれはあるが、完全に別時間に指すことはないと思う。
・最後の榎本と来栖の対局は来栖の勝ちだったが、その局面を見ると、あまりに榎本の指し手(攻め方や守備)がヘボ過ぎ。
・将棋ソフト「激指」の宣伝をし過ぎ。スポンサー?
・不正行為をすることで、棋力の伸びはストップしてしまう。不正とプライド、その辺りを厳しく追及するのが、青砥の役目だと思う。あるいは、冷静に本末転倒の行為だと榎本が指摘してもよいと思う。
今回の記事でも、棋士の不正行為の可能性を指摘したが、棋士のプライドがその不正を抑止すると考えたい。
【ストーリー】(番組サイトより)
榎本径(大野智)は、青砥純子(戸田恵梨香)と刑事・鴻野(宇梶剛士)とともに、プロ棋士・竹脇伸平五段(ゆうぞう)が殺害されたホテルの一室にやってきた。そこはビジネスホテルで、竹脇は背中を包丁で一突きにされドアを頭にして倒れていたという。現場は、窓もドアも施錠されチェーンまでかけられた密室で、室内には携帯用の将棋盤、棋書、将棋新聞、飲みかけのコーヒーカップが残されていた。
榎本は、部屋を開けた時ドアが遺体に触れたかどうかを遺体発見者のスタッフに尋ね、スタッフはチェーンがかかっていたため遺体までは届かなかったと証言した。
そこへ、来栖奈穂子女流三段(相武紗季)が入ってきた。鴻野は竹脇の恋人だという奈穂子に遺留品の財布などを見せていると、奈穂子は将棋盤にあった駒をひとつ動かした。
奈穂子が最近話題の女流棋士だと知った純子は盛り上がる。そして名刺を差し出すと、自分の上司・芹沢豪(佐藤浩市)が竹脇から法律相談を受けていた関係で、今回の事件の捜査協力をすることになったと説明した。
その後、女流四段昇格をかけたリーグ戦がはじまり奈穂子が勝ち進む。美人棋士の勝利とあって報道陣の注目も奈穂子に集まる。その様子を見ていたプロ棋士・中野秀哉四段(忍成修吾)は、竹脇の死後ますます奈穂子の人気が高まり、竜王戦で八連覇を成し遂げた毒島薫竜王(貴志祐介)がかすんでしまい気の毒だ、と漏らした。
依然、犯人像が浮かび上がってこないなか、榎本と純子はプロ棋士・谷二郎八段(児玉頼信)を訪ねると、谷は竹脇を恨んでいる人間は腐るほどいて、毒島もそのひとりだと証言。それを聞いた榎本は…。