「将棋界(順位戦)の歪み その3」
「将棋界(順位戦)の歪み その2」
「将棋界(順位戦)の歪み その1」の続きです。
【訂正の報告】
ある棋士の通算成績が100勝多く入力していたことが、2013年3月8日に判明し、本記事の全棋士の通算総合計勝数を訂正いたしました
前回の「その3」が10月26日だったので、皆さんは忘れていると思います。私も覚えていません。
簡単に復習すると…
順位戦C級2組順位6位の菅井五段が9勝1敗で昇級を逃したことに、不運以上のものを感じ、それが勝負の世界の「実力のない者は去る」の掟が甘くなっている将棋界の現状に起因しているのではないかと考えた。現状の問題点としては、順位戦システムの問題と棋界の構造の問題が考えられる。(その1)
念のため、きっかけのC2の昇級争いを精査する必要があると考え、昇級者3名と菅井五段の対戦相手を分析すると、難易度にかなりの差があった。これが、くじ運の範囲かもしれないが、順位戦システムそのものの問題と棋界全体の問題が大きく関与していると思われる。
そして、その分析過程で、C級2組の実力分布にかなりばらつきがあることが判明した。(その2)
このばらつきこそが、現状の将棋界の歪みによるものではないかと考えたが、バラツキを分析するのに、棋士にとって大変失礼な作業であるが、棋士をランク分けする必要がある。その一つの目安(基準)として、通算勝率がある。(2012年3月末時点) トップ棋士(タイトルホルダー)のボーダーラインとして、通算勝率で6割4分が妥当ではないかと考えられる。(その3)
その3では「超一流棋士」「一流棋士」「一般棋士」「底辺棋士」という言葉を用いたが、今後分析するうちに、もっと適切な区分けや名称が出てきそうなので、その3での名称は暫定的なものとしておきます。
とにかく、
その3の結論として、
通算勝率6割4分以上がトップ棋士となるが、これだけだと、実績が不十分な若手が入ってしまうので、
「且つA級経験者、タイトル獲得経験者」を条件に加えることにする。(この基準だと、.628の谷川九段と久保九段が外れてしまうが、この二人は例外としてトップ棋士に加えたい)
その次の区分けを考えていく。
頭に浮かぶのは、
「タイトル挑戦者決定リーグ戦やトーナメントのベスト4以上の常連」あたりだろうか。
それを念頭に置いて通算勝率を見ると、
三浦八段が.596、藤井九段と鈴木八段が.597、高橋九段が.576で、ここら辺りの5割7分5厘をボーダーライン、名称は「一流棋士」としておく。
それより下は5割がボーダーラインと考えられる。ちなみに、.505~.500にいる棋士は、小林健九段、石川七段、神谷七段、浦野八段、勝又六段、藤森四段。藤森四段に関してはこの時点では3勝3敗、現時点(12月12日)では16勝17敗とやはりボーダー付近。
惜しくも5割にわずかに届いていない棋士は、岡崎六段、福崎九段で.497。
この.575~.500が一つのランクと考えるのが妥当であるように考えられるが、このランクまで来ると、この五割というラインは現状の実力に即していない。(棋士個人の視点で言えば、勝ち越しか負け越しは大きな違いであるが)
それはどういう事なのかというと、5割丁度の藤森四段の順位は121位。この時点(2012年3月末)の現役棋士(昨年度中に引退した棋士も含む)は165名。ということは、
5割以上が121人、5割未満が44人と分布に大きな偏りがある。ちなみに、165名の中間の83位は平藤七段で.552。加藤一二三九段が.547(90位)、内藤九段が.544(91位)、桐山九段が.541(94位)と大豪の面々が連なっている。
なので、
.575~.540がひとつのランクと考えるのが妥当かもしれない(仮称として「堅調棋士」)。.540~.500を「一般棋士」、5割未満を「底辺棋士」と暫定的に呼ばせて頂く。
このような偏りが生じた訳は、底辺棋士が大きく負け越して、その他の棋士に白星を配給しているからというわけではない。(単年度的にはそういう傾向は大いにあるが、これは、他の項で後述したい)
単純に、全165名の勝数、敗数を合計すると、62345勝53186敗、勝率.5396(堅調棋士のボーダーラインと一致している)。勝数が実に9159も上回っている。
この理由はいくつか考えられる。
①棋士の成績には対女流棋士、対アマチュア、対奨励会、が含まれている。昨年度は対女流棋士(23勝5敗)、対アマチュア(19勝8敗)、対奨励会(不明)で、全棋士の合計成績は2334勝2295敗で勝率.504。
しかし、勝率が.504なので、この要素だけでは通算成績の勝率.540を説明できない。
②(フリークラス導入など)制度改正によって、負けが込んでいた棋士が一時期にまとめて引退した。(確証はありません)
③まだ、他に要因があるかもしれません。誰か教えてください。
ここまで通算成績に考察したが、大まかな棋士の区分けが出来る程度に留まった。(後に考察する「引退基準」で通算成績も関係してくるので、通算成績も再考察します)
次回は年度勝率について考察します。