英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

羽生王座失冠に思う その7

2017-10-31 23:47:43 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」 の続きです。

 羽生棋聖の昨年度からの不調は、年齢的なものによる頭脳の衰え(読みの精度や速さや記憶力の低下)や体力の衰えと見て、ネット界隈では「羽生オワタ(終わった)」と言われる向きもある。確かに年齢的な衰えは羽生棋聖と言えども避けることができない。こういった衰えは個人差もあるが、十代後半をピークに緩やかに下降し、ある年齢を過ぎるとその降下のスピードが増してくる考えられる。
 羽生棋聖の場合、もともと純粋棋力が高く降下も緩やかで、それが勝敗に直結することはなかった。しかし、この2年弱の不振、さらに王位、王座と続けて失冠するに至り、≪流石の羽生棋聖も棋力の衰えが顕著になってきたのでは?≫という危惧を否定しづらい状況だ。
 けれども、私はその純粋棋力の降下が不振の主因とは考えていない。では、原因は何か?……

 不振の原因は≪将棋感覚(大局観)のズレ、あるいは、自分の将棋感覚への自信の低下≫にあると私は考える。
 羽生棋聖の将棋感覚を揺るがした一番の事象は、やはり昨年度の名人戦。
 羽生ファンにとっては忘れられず、そして、思い出したくない第2局の詰み逃し。大激闘の末、ようやく勝ちが見えた処での転落はショックも大きく、佐藤天八段(当時)にとっては大きな自信となった一局。名人交代劇に繋がった。しかし、この第2局、あるいは、名人位失冠が原因かというとそうではなく、このシリーズ全体を通じての内容が大きな影響を与えたと考える。
 佐藤天名人の将棋は丹念な読みで丁寧な指し回しが特長。優勢でも結果(勝ち)を急がず、劣勢の時は差を広げられないよう辛抱を重ねる。相手と密着するような柔軟な中にも切れ味鋭い攻めを睨んでおり、それを振りほどいて勝ち切るのはなかなか容易ではない。先述の名人戦第2局がまさにそれである。
 羽生棋聖はこれまで様々な棋士と相対してきたが、その中でも異質な棋風と言える。異質な棋士と言えば、糸谷八段や山崎八段が頭に浮かぶが、糸谷八段は劣勢時には外連味たっぷりの意表手を指すが、思考過程は読みやすい。また山崎八段は別方向からの将棋の造りを見せるが、これは羽生棋聖の好みの指し方で視野の範囲内のような気がする。

 このシリーズを簡単に振り返ると
第1局……横歩取り(先手・羽生)。若干、後手の指しやすそうな封じ手局面から羽生名人(当時)が難解な局面に引きずり込み、長く手将棋の形勢不明の局面が続いたが、羽生名人が抜け出し勝利。
第2局……矢倉戦、先手の佐藤八段(当時)は早囲いから矢倉矢倉に。佐藤八段の攻めを羽生名人が耐え続ける局面が延々と続き、羽生名人が凌ぎきり押し返し、ようやく勝ちになったかという局面で、詰みを逃し大逆転。
第3局……横歩取り。封じ手局面で後手・佐藤八段の2筋のと金作りを絡めた攻めへの対応が難しいという状況。佐藤八段の完勝。
第4局……横歩取り。封じ手局面では、先手の佐藤八段が指しやすそう。難解な指し手が続くものの、佐藤八段が確実に勝ち切った。
第5局……横歩取り。先手の羽生名人が▲7四歩と角道を通し、飛車角総交換の大決戦もありえる封じ手局面。実戦は角交換だけに留まり、第二次陣立て戦に。この後、羽生名人が中段に打った角があまり機能せず、その角を囮に斬り合う変化に持ち込んだが、佐藤八段の△2五桂の只捨ての名手もあり、佐藤八段が押し切り、新名人に。

 第1局、第2局では佐藤八段の手強さ(読みの丹念さ、将棋の持久力)を感じ、第3局、第4局では序盤の研究の周到さ、中盤の将棋の構想力・展開力、優位を勝ち切る終盤力を感じた。第5局では羽生ファンとしてはあるまじき思考ではあるが、“勝てない感”を抱いていた。
 5局中4局戦われた横歩取り戦は、研究もさることながら、大局観と読みの精密さが要求される(第2局は横歩取りではないが、あの大激闘の末の勝利は何より佐藤天彦の強さを物語るものである)。そういった横歩取り戦は羽生名人の強さがモノを言う戦型で、抜群の強さを発揮していたが……


 羽生名人が勝利した第1局と第2局の矢倉戦も含めて、第1日や封じ手の段階で羽生名人が指しにくさを感じることが多かった。直前にも書いたが、佐藤八段の研究と大局観と読みの精密さによるものであるが、羽生名人側の感触から言うと、今まで羽生名人が「指せる」あるいは「互角」と考えていた変化が、実は、「指しにくい」「やや不利」だった。「そんな局面に誘導された」と言うのは考えすぎかもしれないが、指しにくい局面に陥り、≪これまでの自分の将棋観(感覚)が誤っていたのではないか?≫、≪新世代の新感覚に遅れてきたのではないか?≫という疑念が生じたのかもしれない。
 とは言え、名人失冠後、棋聖戦3勝2敗(挑戦者・永瀬六段)、王位戦4勝3敗(挑戦者・木村八段)、王座戦3勝0敗(挑戦者・糸谷八段)、今年度に入っても棋聖戦3勝1敗(挑戦者・斎藤七段)と防衛を果たしていたのは流石と言えた。
 しかし、昨年度は27勝22敗、勝率.551と最低勝率で6割を初めて、しかも大きく割ってしまった。これまでは1996年度の26勝17敗、勝率0.605が最低で、1990年度の31勝18敗.633、2003年度の33勝19敗.635、2005年度の40勝22敗.645、2009年度の30勝18敗.625、2015年度の30勝17敗.638が低調な年度と言えるが、2勝1敗を下回ったのが32年中7年のみ。それも6割を超えており、並の棋士なら「好調」と言われる勝率。しかも、羽生棋聖の場合、タイトル戦や対A級が殆どなので、数値以上に恐るべき成績なのである。
 とは言え、2015年度からは低率が続いており、先述した序盤で作戦負け(指しにくい)になる頻度が増えたように思われる。それによって、羽生棋聖の将棋感覚に対する自信が揺らぎ、今まで以上に丹念に読みを入れることになり、終盤に余力が残らず、勝ち切れないことが増えた…………
 体力の衰え、読みの精度の低下もあるとは思うが、この悪循環が最近の不振の主因だと考える。

(もう少し続きます)→続いていません(2021年5月25日記)
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2時間サスペンス メモ 『十津川警部シリーズ43 伊勢志摩殺人迷路』

2017-10-29 10:21:42 | ドラマ・映画
10月25日のサスペンスメモ と同じ趣旨の記事です)
 TBSの渡瀬恒彦さん主演の方です。(現在は十津川警部・内藤剛志、亀井刑事・石丸謙二郎の新コンビで新シリーズに引き継がれている。私は未見)

 十津川・亀井のコンビありきで、≪十津川警部は格好よく、亀井刑事は人情味あふれる≫ということに主眼が置かれていて、サスペンスドラマとして視聴してはいけないようだ。もちろん、サスペンス風な盛り上がりはあるが、それは論理性や必然性に乏しく、前半部の犯人包囲、追撃のシーン(ほとんどは失敗)は≪それはないだろう!≫という疑問が多々生じ、“十津川警部の失態”と非難されても仕方ない状況である。
 しかし、非難されることはほとんどなく、十津川本人も全く意に介していない、というか、その自覚さえない。

 捜査もふたりの閃きによるものが多い。そもそも捜査も自由。この回も私用で訪れた志摩で事件に遭遇し、地元の捜査に介入し、警視庁のメンバーも呼び寄せる。
 今回の場合は、事件関係者が都内に住み、拉致されたという形跡があったので、メンバー介入は自然とは言えるが、通常、十津川警部の行動は自由。

 今回の事件、監禁されている夫の妻が、誘拐メンバーに呼び出されたスペイン村に刑事を総動員させた。係員や掃除夫に変装したが、妻を怖い眼で凝視、犯人と思しき人物が会場入りしたのを見つけ、これも怖い眼で凝視しながらストレートに尾行。まるで気づいてくださいという無配慮さ。
 結局、失敗。しかし、十津川警部は全く意に介さない(非難されない)。

 骨董業界のドンとそのライバルが登場。このライバルが妻の方を拉致し、目当ての円空法師の色彩画を要求。その妻を救出しようとした刑事にナイフで襲いかかり、腕に怪我を負わせる。
 確保され取り調べの際、
「人殺しまではしない。小田(骨董業界のドン)とは違う」
と言うが、どの口が言えるのだろうか?そもそも、小田にしろライバルにしろ誘拐やナイフを振り回した時点でアウトだろう。

 実は、拉致されたというのは狂言で、一味の人相も空想で円空の仏像がモデル。似顔絵が円空仏にそっくり。似顔絵を描いた十津川の部下は凄いが、これを見た十津川、亀井は「どこかであっている気がする」というのみ。人間離れした3つの似顔絵が揃えば連想できると思うが……
 真相は、夫婦の復讐劇(円空の色彩画の噂を聞きつけた古物商の方から近づいてきた)。

 録画して視聴して……後悔(大後悔)というパターン…(今回の脚本は土屋保文氏、初回放送2010年3月29日

十津川警部シリーズ50 『消えたタンカー』
十津川警部シリーズ53 『伊豆・踊り子号殺人ルート~消えた一億円の謎~』

【ドラマ情報】
渡瀬恒彦主演「十津川警部」シリーズ第43弾。江戸時代に全国行脚して数多くの仏像を彫った僧侶・円空が残したという幻の色彩画が殺人事件を招く。伊勢志摩で偽名を名乗っていた男女が刺殺された。名前を使われた実際の夫婦も行方不明と判明し、十津川は殺人事件と行方不明事件の関わりを推理する。やがて二つの事件には、円空が描いたとされる幻の色彩画が関わっていることが分かる…。中山忍、笛木優子、金子賢、西田健らがゲスト出演。
十二万体もの仏像とわずかな数の墨絵を残した円空だが、実際には色彩画は発見されていないという。果たして幻の色彩画は存在するのか? 史実とフィクションを巧みに織り込んだストーリーとなっており、殺伐とした事件の謎を追う十津川が随所で出会う、円空仏の穏やかな微笑が印象的だ。

【ストーリー】
休暇を利用して伊勢志摩を訪れた十津川警部(渡瀬恒彦)が殺人事件に遭遇した。死体発見の知らせを受け、十津川や三重県警の剣持紗江子警部補(笛木優子)、鳴海信隆刑事(金子賢)も現場に向かう。
 男女は刺殺され、崖から落とされたらしい。二人は宿には東京の鈴木明・京子夫婦と名乗っていたが、実際の鈴木夫婦とは別人だった。そして警視庁の小西刑事(中西良太)から、本物の鈴木夫婦が行方不明だと情報が入る。
 亀井刑事(伊東四朗)が伊勢志摩に合流し、鈴木夫婦は円空に関する地を訪ね歩いていたことが分かる。円空はわずかな墨絵以外に絵画を残しておらず、もし円空の色彩画が発見されれば、高値で売買されるだろうと、美術界では噂されている。十津川は円空に関する史実を確かめながら事件の真相に迫る。
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羽生王座失冠に思う その6

2017-10-27 23:05:33 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」 の続きです。


 第6図は、一見、“やられ形”で、羽生王座も悲観していたようだ。局後の感想では「△4五銀(第4図)と桂を取られて困ってますね。▲4五同銀だと飛車を回られて(△8六飛~△7六飛~△4六飛)しまうし」と羽生。△4五銀に▲同銀△8六飛▲8七歩△7六飛▲7七歩△4六飛▲2三銀△3一金▲3二銀△同金▲同銀成△同玉で「余されてちゃうかな。でも△3二同玉に▲5五角と打つ順をやるんだったか」と述べている。

 第4図で困っており、さらに、4図では▲4五同銀と指すべきだったとさえ言っている。

 しかし、第6図は▲8四角でほぼ互角だった (「その3」 参照)。
 羽生王座は、何故、悲観したのだろうか?
 それは第6図が中村六段の研究の網の中であると感じていたからである。
 中村六段の着手の仕方や面持ちからも研究範囲であると伝わってきたと思われるが、何より短時間で指し進めてきていることが、中村六段の思惑通りの局面に進んでいることを物語っている。(25日のNHKの『シブ五時』にゲスト出演した中村新王座も「第4局は研究にハマった」と語っていた)

 こういう展開は本局だけではない。

 参考図は今期の竜王戦挑戦者決定トーナメント準々決勝の対村山七段戦。
 横歩取り戦で先手の羽生三冠が“佐々木勇気流”を採用。これに対し後手の村山七段が飛車交換を挑んだ。
 参考図1は飛車交換に応じた直後、▲3八銀と後手の飛車打ちに備えたのにも関わらず2八に飛車を打ち込んだところ。以下▲2七歩△2六歩▲3九金△2七歩成▲2八金△同と△4九銀△3九と▲5八銀△3八と▲4五桂△8八角成▲同銀△4八と(参考図2)と進んだ。

 「▲3八銀とかやってる将棋じゃなかったのかもしれませんね」
 「そうか、これ飛車打たれて悪いんですかね? なんか全然、途中から一本道になっちゃって」「いきなり打たれるとは夢にも思ってなくて」
 と局後の羽生三冠の感想。
 村山七段は研究会で経験済みで参考図2まで通算の考慮時間は23分(羽生三冠は1時間23分)。

 上記のように、参考図2の局面を悲観していたが、実際はほぼ互角の形勢だった。実戦はこの後、羽生三冠はほぼ最善手を刺し続け、形勢不明を維持したが、参考図2から27手後に羽生三冠が誤り、敗勢に陥った(この後、村山7段が誤り、羽生三冠の勝ち)。
 中村戦でも村山戦でも相手の研究の網の中に入り込んでも互角を維持するのは流石の羽生三冠であるが、数年前の羽生三冠なら形勢判断を誤ることはなかったのではないだろうか?
 確かに第6図、参考図2は互角でも、羽生三冠の指し手が難しく、形勢が悲観的なものになりやすいということはあるが、原因はそれだけではない。

 その理由、原因を語るには、時間を遡らなければならない。
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相棒 season16 第2話(15分拡大SP)「検察捜査~反撃」

2017-10-26 22:29:01 | ドラマ・映画
特命係を追い詰めていく田臥検察官⇒急転直下のオチ(決着)
平井の3人の妻の死の真相⇒“そうだったのか”という真相
   ――――――二つの事象を絡めて、観ていて面白かった……
しかし!

 特命係のピンチは副総監の≪甲斐峯秋を追いやりたい≫という思惑によって回避された。「田臥VS特命係」の及ばぬところでの決着というのが気に入らない。
 平井事件の真相についても、突っ込み処が多かった。
 視聴し終えてみると、がっかり感に覆われた。


★3人目の妻殺害事件の突っ込み処
①頭が切れ、計算高い慶子が、衝動的殺害の事故偽装の要請に応じるのは不可解。慶子によるその心境の告白もなかった。
②衝動的に殺害してしまってから、慶子を呼び出し偽装を考え、浴衣の調達などの細工をするのは、時間的、物理的に無理。死体に浴衣を着せるのも大変だが、単に着替えさせたのでは、浴衣に転落の痕跡が残らない。かと言って、浴衣を着せてからもう一度転落させるのも、傷跡に不自然さが生じる。

③真相が暴かれるまでの慶子の態度は堂々としすぎていた。右京のネチネチさに苛立ちぐらい見せても良かったのでは?
④平井の律儀な性格が災いして、浴衣は自分のものでないので焼却しなかったというのは、若干苦しい
⑤平井の悪あがき(特命係との取り引きや裁判員買収)は無駄というか、ないほうが良かった
⑥平井が変態と言われたくらいで逆上して手を上げるというのも不自然。そもそも、平井は何を以って“変態”となじられたのだろうか?気になる。

 
 洒落た皮肉の使い手の弁護士の慶子は言い味を出していたので、今後も登場して欲しかった。
 偽装工作に積極的に協力(偽装を考案し浴衣を調達)したのは不可解なので、偽装を考えたのは平井で、何も知らずに浴衣を用意した方が自然じゃないのだろうか?

 平井に巻き込まれしまった慶子は気の毒。そして、もう一人気の毒だったのは、用意周到に特命係を追い込んで行ったのに、副総監の横槍で水の泡となってしまった田臥検察官か


 特命、田臥、弁護士の慶子、平井との虚々実々の応酬(ラグビーボールの見え透いた口実、捜一コンビを使った警告)や魂胆の探り合い(会話)は面白かった。


【ストーリー】番組サイトより
特命係、消滅へのカウントダウン!
証拠なき連続殺人と権力者の陰謀が右京と亘を追い詰める!


 事故死に見せかけて3人の妻を殺害したとされる平井(中村俊介)は、自白が強要されたものだったと、無実を主張し続けていた。
 法務事務次官の日下部(榎木孝明)を後ろ盾に、その事件の捜査指揮権を掌握した検察官の田臥(田辺誠一)は、特命係の右京(水谷豊)と亘(反町隆史)を捜査から閉め出す。真の狙いは、捜査権を持たない特命係が指示に反して捜査を行った場合、それを違法行為として立件することにあった。田臥は捜査一課の伊丹(川原和久)と芹沢(山中崇史)にも接近し、特命係を追い詰める算段を進めていく。
 いっぽう右京と亘は、決定的な証拠が見つからない中、平井の弁護士・慶子(中村ゆり)とコンタクトを取り、事情を聞くと共に平井邸を見て回り始める。しかしそこに、伊丹たちも姿を現し、違法捜査への警告を発して…!?

連続殺人の捜査をめぐって交錯する思惑
特命係を消滅へと追い込む包囲網が狭まる中、
決定的証拠のない完全犯罪に挑み続ける特命係の運命は!?


ゲスト:田辺誠一 中村俊介 中村ゆり

脚本:輿水泰弘
監督:橋本一
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2時間サスペンス メモ

2017-10-25 21:28:54 | ドラマ・映画
 2時間サスペンスが好きなので、地上波・BSを問わず、番組欄で面白そうなタイトルがあるとついつい録画してしまいます。もちろん、再放送を含むのでレコーダーに溜まりっぱなし。時間を見つけて視聴していますが、言葉は悪いが“駄作”が多いです。
 これではHDの容量と時間の無駄なので、ダメダメなサスペンスをメモとして残しておけば、そのシリーズは録画しないという対策が取れます。


『女検視官江夏冬子』シリーズ(原作・山村美紗、脚本・中岡京平)
TBS系の2時間ドラマ「月曜ミステリー劇場」(月曜日21:00 - 22:54)で1997年から2001年まで放送されたテレビドラマシリーズ。全6回。主演は萬田久子。共演:布施博、横内正

(フジテレビでも江夏冬子シリーズ(かたせ梨乃)が放映されている)

 視聴したのは、第2作「京都冬化粧殺人事件」(1998年)と第3作「京都奥嵯峨殺人絵巻」(1998年)。
 まず、萬田さん演じる江夏冬子の立場(役職)が疑問。タイトルにあるように検視官なのだが、この検視官の立ち位置がよく分からない。
 検視官というと内野聖陽さんが演じた『臨場』(原作・横山秀夫)の倉石検視官。刑事部鑑識課、班長。階級は警視。この倉石は、殺害現場で検視(検死?)し、「自 殺」「他殺」「事故」「判別不能」などの所見を述べ、それを基に捜査方針が決まる…という立ち位置だったと思う。
 しかし、この江夏さん、スーツ姿で現場に現れ、簡単な検視を行い、推測を含む所見を述べる。さらに、指令めいたものを出しながら、捜査班の刑事と共に捜査を行う。管理官兼検事のようなスーパーな存在。しかも、刑事からも煙たがれていない。
 遺体の検死を詳細に行うわけでなく、「検死官」というタイトルを冠するのには大きな疑問を感じる。

【参考】(ウィキペディアより)
刑事訴訟法229条によって、検察官が変死者又は変死の疑いのある死体(変死体)の検視を行うことにされている。しかし、同条2項によって、検察事務官または司法警察員にこれを代行させることができるとされており、一般的に司法警察員である警察官が検視を行っている。検視、検死とは、もとの表記は検屍と書かれていたが、屍(しかばね)という漢字は当用漢字に入っていなかったため、検視または検死に書き換えられている。

そのため、検視を担当する警察官のことを「検視官」と呼称している。「検視官」はあくまで組織上の名称であり、こういった資格が存在するわけではない。

警視庁・道府県警察本部刑事部の捜査第一課あるいは鑑識課に所属している。警察大学校において法医学を修了した警部または警視の階級を有する者が刑事部長によって指名される。



 ドラマとしては、山村美沙原作らしく、遺恨を絡んだ人間関係やアリバイ工作の解明が主。第3作では暗号が出てきたが、鑑識課(分析班?)が解いてくれたし、本題とはほとんど関係なかった。
 あとは、冬子と橋口刑事の恋模様(ほとんど“はぐらかし”)ぐらい。
 このシリーズに限ったことではないが、山村原作には付いてくる山村紅葉はドラマの質を落としているように感じる。

 萬田さんの演技で気になったことがある。
 容疑者(男性)が犯行の告白を兼ねた遺書めいた文面を残していたが(真犯人の偽装)、それを読み上げる際、「私」が「あたし」と聴こえてしまうこと。何度も繰り返し聞いたが「わたし」と「あたし」の中間の発音だった。
 夏子としての会話なら文句を言うことではないが、男性の遺書として読むのなら、気をつけて発音すべきである。

 視聴して腹の立つ作品ではないが、録画する価値はないだろう。


『広域警察』シリーズ(脚本・安井国穂 他)
2010年からテレビ朝日系の2時間ドラマで放送されている刑事ドラマシリーズ。製作は朝日放送(ABC)と国際放映。主演は高橋克典。
 放送枠は「土曜ワイド劇場」(第1作 - 第8作)、「土曜プライム・土曜ワイド劇場」(第8作)、『ミステリースペシャル』(第9作)。


 視聴したのは、第6作『殺人犯は美人妻?! 夫殺しの容疑者が逃亡か!残された2000万円と謝罪の手紙
「山梨〜熊本〜天草」連続殺人に渦巻く女たちの執念と復讐!』(2015年6月27日)脚本・安井国穂


【第9作番組サイトより引用】
広域警察とは、二つ以上の都道府県にまたがる事件で地方警察間の調整および捜査を行う、いわば日本全国を担当に持つ警察庁・広域捜査課の通称。そんな特殊な部署に属する東圭太(高橋克典)が、上司の高村順一郎(大杉漣)とともに事件解決に奔走する


 立ち位置は『十津川刑事シリーズ』と似たようなもので、高橋克典演じる東刑事が全国各地を飛び回る。
 事件に真正面に取り組み、関係者(容疑者や被害者、加害者周辺)にも偏見を持たず誠実に対応する好漢。

 しかし、ストーリー展開にご都合主義が多く、録画するほどではないかもしれない。第6作以外も観たような気がするが、同じような感想を持ったような気がする。
 第3作と第9作(最新作:9月21日放映)を録画してあるが、どうしたものか……
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2017衆議院選挙 自民圧勝

2017-10-25 17:15:16 | 時事
 選挙前の情勢予想では「自民優勢、大勝」で、結果もその予想通り、いや、予想以上の圧勝だった。

 前原民進党代表の迷走、小池都知事の失言による希望の党の失速、3局化による論点の拡散など原因はいろいろあるが、民進・希望のゴタゴタにより“大義なき日和見タイミング解散”が有耶無耶になってしまったのが痛かった(個人的感想で、これが大きく論じられても大勢に変わりはないものと思われる)。
 安倍総理の解散の思惑は、憲法改正を実現するため確固たる足固め(衆議院の絶対的数の優位)をするためだと思われるが、“大義なき解散”が有耶無耶になってしまったため、国民の意識が憲法改正に反対賛成について向かわなかったことが残念である。
 自民党は公約では「憲法改正」に触れていたが。安倍首相自体はそれを口にせず、「与党圧勝で国民の信託を得られた」という論拠を得てしまった。


 さらに、消費税率アップ分の使い道を「教育の無償化」に変更するという聞こえの良い主張を展開し、これも国民の理解が得られたと解釈できてしまう。使い道の変更の是非は良く分からないが(個人的には反対)、これにより「消費税率アップの国民の承諾」を得られたということになってしまった。


 さて、今回の選挙結果で、世論や政策、政治家としての資質というものを超えた“自民党の選挙の強さ”をつくづく感じた。
 公示から2、3日後の情勢調査(確か共同通信だったと思う)で各選挙区の情勢を見たが、殆どの選挙区で“自民優勢”“自民が他候補を圧倒”という調査結果が出ており、残り地区も伯仲の戦いとなっており、自民が圧勝の気配に満ちていた。
 つまり、政策論など戦わせる以前に、自民党は選挙地盤がしっかりしていて、準備態勢が整っている。野党は選挙地盤が弱いうえ、解散時期がはっきりしないので充分な準備をしていない。衆議院の任期満了での選挙で自民が苦戦するのも、準備においては野党も十分に備えられるからであろう。


 衆議院が解散されると、各党が政策を主張、報道もそれを取り上げるが、地方においては政策論などまったく関係ないようである。

 福井県は1区では稲田議員、2区では高木議員が初めから当選確実と言われており、結果もその通りであった(特に稲田議員は圧勝)。
 もともと福井県は保守が強い地域で、民主党が政権交代を果たした時も、福井県は3区(当時)とも自民が苦戦しながらも議席を独占した。自民後退期での福井県自民党の踏ん張りが評価されたのに加え、稲田議員は“口の悪い女性議員の三羽烏”に入れられるほど強気の口調が評価されて、党の要職に抜擢された。
 自衛隊日誌の改ざんは大問題(その他、いろいろ失策あり)なのだが、福井市民にとっては、そんなことよりも、防衛大臣にまでなった英雄ヒロインという評価なのである。

 2区の高木議員も“パンツ大臣”と揶揄されたが(本人は否定)、危なげなく当選。
 この2区であるが、高木氏出身地の敦賀市を含む嶺南地方は選挙区の42%(選挙人名簿登録者数)である。この嶺南地方は原発が多数あり、自民党は原発維持を主張している。嶺南地方では高木氏が強い(今回の選挙結果は意外と他候補者の投票数も多かった)。
 対抗馬の斉木氏は民進党から希望の党の公認を受けており、本来なら“原発ゼロ”を掲げるべきなのだが、それは口にはしない(できない)。正当の主張よりは、“地元に利があるかどうか”が重要なのである。
 嶺北住民にとっては、嶺南出身の高木氏が当選しても利は少ないが、それでも自民党は強いのである。なにせ、新聞や報道キャスターが“保守王国福井”という表現をするのである。そんな主観を含んだ表現を公正であるべき報道機関がしてもいいのだろうか?

 とにかく、選挙のたびに自民党は強いなあとがっかりしてしまう。
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2017竜王戦第1局

2017-10-21 21:04:55 | 将棋
将棋の第30期竜王戦の第1局が20、21の両日、東京都渋谷区のセルリアンタワー能楽堂で指され、挑戦者の羽生善治棋聖が渡辺明竜王に95手で制しました。終局時刻は16時28分。

 即行で記事アップしました。王位と王座失冠、日本シリーズ準決勝敗退(山崎八段には申し訳ありませんが、山崎八段に敗れるとは思いませんでした)と暗い敗局が続いたので、かなり嬉しい。そんな思いもあり、この記事をアップしたのですが、実はzoranさんが、私に気を使ってコメントを書き込んでくださるのではないかと……コメントを書きやすいように、記事をアップしたわけです(まるで、催促です)。

 将棋は、先手の羽生棋聖がかなり早い段階で仕掛けましたが、端を突き捨てたにもかかわらず、飛車を引き上げるのでは、仕掛けは失敗気味なのではと心配していました。
 しかし、中盤以降、彼我の攻めの急所を見極め、制勝。終わってみれば快勝と言っても良いくらいです。

 どんな勝ち方でも構いませんから、4勝していただきたいです。 
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羽生王座失冠に思う その5

2017-10-21 20:47:30 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」 の続きです。


 “人の手”の▲8二銀以下、△9四歩▲7一銀成に△4一玉とかわしたのが上図。
 ここで継続手が難しい。(詳しくは「その4」参照。“人の手”の意味も「その4」で)

 「△4一玉に手がないです。ここからはダメですね。序盤の作戦が危険だったかもしれない」(局後の羽生王座のコメント)
 先の▲8二銀に40分の考慮(夕食休憩をはさんだので実質はもっと長い)で、残り28分となっていて、この9図でその28分を全部つぎ込んだが、難局打開の手はなかったようだ。▲2三銀と打ったが、これは形作り。(▲2二桂成の方がアヤがありそう)
 以下、△2三同歩▲同歩成と後手玉に迫るが、△3七角▲5八玉に△2三金とされて、ここで▲同飛成とできない(△5九金の1手詰)。


 羽生王座はさらに▲7三角成と迫る。これを△7三同桂と取ってくれれば▲3二銀以下の頓死だが、△5九金が先手にとって悔しい一着。

 ▲5九同飛と取るよりなく、悠々△7三桂と取られると、先手の手負けは明白。肝心の飛車が2筋に利かなくなり、しかも、いつでも△5九角成と取られてしまう。
 以下投了図までは、王座継承の手続き。



 残念ながら、1勝3敗で王座失冠。中村新王座、おめでとうございます。




 実は、「その1」から「その5」のここまで長々と書いてきましたが、このシリーズ、本題はこれからです


 まず、34手目・新手(新展開)の△3五歩と指した時点で、後手の中村六段の通計の消費時間は19分。△3五歩自体にも4分しか費やしていない。もちろん、研究の一手で、≪この手で行ける≫と結論付けていれば、時間を要する必要はないのだろう。先手の羽生王座もここまで29分、△3五歩に対する▲2四歩にも3分しか要していないので、この△3五歩は想定内だったのだろう。ただ、この▲2四歩の取り込みは≪ここはこう指すところ≫という類の手で、△2二歩と受けた手に対しては▲4五桂と▲3五歩の2つの有力手があり、▲4五歩を選択するのに37分費やしている。
 一方、中村六段は第2図から第4図に至るまでも澱みなく指し手を進め、第4図の時点で通計時間は32分。△4四銀とかわす手や、△8六歩と仕掛けるのは必然に近いので、己の研究を踏襲し終盤に時間を残した方が合理的という考えなのだろう。
 第4図の△4五銀は6分の小考。先に桂銀交換の駒損することになるので、もう少し時間を掛けたくなるところだが、自信ありの展開なのだろう。
 対する羽生王座は、第4図で1時間15分の長考に沈む。▲4五同歩か▲4五同銀の二択だが、この後の展開が大きく異なり、局勢を左右しそうな選択でじっくり読まなければならない。とは言え、昼食休憩をはさんでいるので、実際は1時間15分より長い考慮。通計の消費時間も2時間29分対32分と約2時間の差。持時間が5時間なので、かなりの差である。羽生王座のこの長考は、想定局面ではあったが、この局面を迎えて考えてみると、思った以上に対応が難しい……苦慮に近いものだったのではないだろうか。


 8六の地点で銀交換を果たし、その足で△7六歩と横歩を取り、▲7七歩と受けられた第5図で、ようやく中村六段が思慮に入る。ここは銀交換と横歩を取れたことに満足して一旦△7四飛と引く手と、△5六飛と飛車を切って先手玉に激しく迫る手があり、大きな分岐点だ。
 それでも、考慮時間は22分と長考というほどの長さではない。飛車を切れば、△4六銀(第6図)までは一直線で、第5図から第6図までの消費時間は先手・羽生王座は1分の消費しただけ(通計2時間30分)、中村六段は消費時間は0分(通計1時間3分)。


 第6図は素人目からすると“やられ形”。第4図で▲4五同歩と歩で銀を取れば、第6図は想定できた。この図が拙いと思えば▲4五同銀と銀で取ったはず。以下△8六飛▲8七歩△7六飛▲7七歩△4六飛がかなり嫌。これと比較して、第6図を選んだと思われる。
 ここから羽生王座は▲3四桂△5一玉▲6八金と進める。▲3四桂に21分、▲6八金に31分とこの2手に51分費やした(通計3時間21分)。
 この▲6八金では▲8四角でほぼ互角だったようだが(「その3」参照)、この手を見て中村六段が長考に沈む。

 この▲6八金周辺の両者の思惑を、「その6」以降で考察します。
コメント (2)
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世にも奇妙な物語「夜の声」

2017-10-19 22:40:12 | ドラマ・映画
 今回はパラレルワールド(並行世界)がテーマ。
 最後のストーリーについて考えてみる。

 
 主人公(藤原竜也)とその彼女の両者が望んだ生活、そして、選択した現実のズレがあり、悲劇が起こる。
 その悲劇の後、各々の選択を後悔する………
 ………最後に浮浪者仲間(小市慢太郎)が見たふたりの楽しそうな姿は、一体?………

 このラストシーン、どう解釈すればいいのだろうか?



主人公と彼女の気持ちを整理すると、

 主人公 非常な企業経営者……現実
     浮浪者生活……空気のように透明な存在(夢、現実逃避、安らぎ)→彼女と暮らすようになり、楽しい時間

 彼女  浮浪者のおじさんとの同居……幸せ
     社長秘書……おじさんに勧められたから(極言すれば“義務”)

ふたりの結婚生活は?
 主人公……「現実の裕福さ+ふたりの生活」なので楽しいはず
 彼女……あまり楽しくない、おじさんと一緒に居たい


 主人公にとって、浮浪者生活は休憩の場で、現実が主。現実の世界で彼女を幸せにしたい。彼女が慕うおじさんの正体は自分なのだから、彼女の恋心が満たされ、生活も金銭的に満たされるので、彼女は幸せになるはず。
 彼女にとっては、借金に追われて窃盗までしていたた生活に比べると夢のような金持ちになったが、おじさんがいない生活は楽しくない。社長夫人の生活は窮屈。彼女にとっては、おじさんとの生活が主だった。



【解釈・その1】
 現実的に考えると、社長を刺してしまった彼女はその罪を逃れる為、逃避行を続け、おじさんの棲家には近づかない。主人公は死亡したので、当然、棲家には行くことは出来ない。
 となると、仲間が見たのは幻。ふたりの楽しかった思いの残像。主人公の強い思いが籠もった手紙を持っていたので、その残像を見ることができた。

【解釈・その2】
 ≪社長夫人にならなければよかった≫、≪おじさんとずっと一緒にいればよかった≫……そんな後悔とおじさんに会いたいという強い思いが、おじさんと一緒に過ごすことを選択したパラレルワールドに迷い込んだ。そのパラレルワールドが一瞬だけ、こちらの世界と繋がり、主人公の強い思いが籠もった手紙を持っていた浮浪者仲間がそれを見た。

【解釈・その3】
 おじさんの≪彼女が好き≫、≪あの生活は楽しかった≫、さらに≪彼女を幸せにしたい≫という強い思いが、自分を刺してしまったことによる逃避行の彼女を、一緒に暮らしているというパラレルワールドに連れて行った。主人公の強い思いが籠もった手紙を持っていた浮浪者仲間がそれを見た。


 その3だといいなあ。
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相棒 season16 第1話(初回拡大スペシャル)「検察捜査」

2017-10-19 17:35:41 | ドラマ・映画
検察官・田臥(田辺誠一)が手強い!
(今回の感想は、この一言でもいいような気がする。あとの部分は……)

 鋭い観察眼を持ち、客観的に分析し、的確に判断し、緻密な策略で特命係を追い詰めていく。
 しかも、人当たりは良いが、冷静で心の内を明かさない。
 それでいて(今のところ)黒い部分はなさそうで、まっとうに職務を果たす。味方にすれば心強く、敵に回すと厄介である。


 この「特命係vs田臥・日下部」のエピソードは続くのだろうか?
 “平井(中村俊介)事件”は次回で終了するにしても、ゲスト扱いに成ってはいるが、再登場してほしいキャラである。


 この特命係包囲網は緊迫感と危機感があって面白かったが、田臥のキャラを立たせるため、平井事件が田臥の聴取による回想となってしまい、臨場感に欠けてしまった。重々しさ、ジワジワ感を出そうとしたせいか、ストーリー全体として冗長感が強かった(そういえば、前シーズンの初回も冗長感が強く、「退屈極まりなかった」と書いている。今回はそこまでではなかったが)。
 この特命係包囲網を敷くに当たって、関係者の特命係への評価や思惑が描かれていた。特命係の立ち位置の「おさらい」という意味もあったのかもしれない。

 そんなわけで、平井事件の描かれ方が残念なものとなり、せっかくの中村俊介が勿体なかった。
 捜一コンビに誘導されて、「取り調べの録音・録画拒否の上申書」を書かされたのも、平井のキャラとしては迂闊すぎであるし、意味深だった「脅迫に対する告訴」も腹立ちまぎれの行為だとしたら、「特命係vs田臥・日下部」を発動させるための脚本の便利キャラである(今のところ)。


 今回、なぜか中途半端な90分枠。先に述べた冗長感に加えて、完結しないモヤモヤ感が残る。
 完結しなかったため、現段階で判明している材料でレビューするのは書きづらい。
 残念な初回スペシャルであった。

 


【ストーリー】番組サイトより
連続殺人犯が右京と亘を脅迫罪で告訴
権力者の陰謀が特命係を追い詰める!


 自身の妻を相次いで殺害した連続殺人事件の容疑者である大富豪の平井(中村俊介)が、弁護士の慶子(中村ゆり)を通じて警視庁を告訴した。自分は無実で、右京(水谷豊)や亘(反町隆史)らの脅迫によって自供を迫られたというのだ。
 特命係に敵意を抱いている法務事務次官の日下部(榎木孝明)は、旧知の検察官・田臥(田辺誠一)に、東京地検で告訴状を受理するよう指示。狙いは、脅迫罪の立件ではなく、「特命係を違法捜査で立件する」というものだった。密命を受けた田臥は、特命係を訪れると共に、美彌子(仲間由紀恵)や幸子(鈴木杏樹)にまで事情を聞き、ジリジリと包囲網を狭めていく。
 いっぽう、その状況を知った副総監の衣笠(大杉漣)は、かねてから敵視している峯秋(石坂浩二)を、特命係もろとも葬り去ろうと謀略を巡らせていた。

特命係を潰すために動き出した権力者たち
組織内で孤立無援となった右京と亘は
包囲網をくぐり抜け、連続殺人事件の真相を解明できるのか!?


ゲスト:田辺誠一 中村俊介 中村ゆり 芦名星

脚本:輿水泰弘
監督:橋本一
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