2017年から新ルールが適応されている。
ウィキペディアによると、この世界選手権までの試験的にな導入で、この結果を検証した上で正式導入されるか決定されるらしい。
主な改正点は
①試合時間は男女とも4分とする。男子はこれまで5分だったが、東京オリンピックでの男女混合団体戦の採用を目指して試合時間を女子に合わせることに決めた。
②技の評価は一本と技ありのみにする。よって有効は廃止される。技あり合わせて一本も廃止となる。技ありには従来の有効相当の判断も含まれる。
③抑え込みは15秒で技ありだったが、10秒とする。一本は従来とおり20秒。
④従来は指導4まで積み重なると反則負けになったが、それが指導3までに変更される。
⑤本戦の4分間では技のポイントのみで勝敗が決せられる。そのため、従来のように指導差での勝利は認められず、その場合はGSに突入する(但し、本戦で指導3まで積み重なった場合は反則負けとなる)。
⑥GSでは技のポイントか、指導差が付いた場合に勝敗が決する(本戦で指導1を与えられた選手がGSで指導差による勝利を得るためには、指導2まで取り返さねばならない。本戦で指導2まで与えられた選手がGSで指導差による勝利を得るためには、指導3まで取り返さねばならない)。
⑦下半身に手や腕が触れる行為は従来一発で反則負けを与えられていたが、一度目は指導、二度目で反則負けに変更される。
⑧標準的でない変則組み手(クロスグリップやピストルグリップ、片襟や帯を掴む組み手など)になった場合、即座に攻撃しなければ指導を与えられる。
⑨攻撃を試みなかったり防御に徹するなど、柔道精神に反する消極的な姿勢が見られた場合は指導が与えられる。
⑩一挙に体を捨てた脇固めのみならず、相手の袖や腕を掴みながら肘を伸ばす形の袖釣込腰を仕掛けた場合も反則負けとなる。
⑪相手の組み手を嫌って場外に逃げの姿勢を見せるなどの柔道精神に反する行為が認められた場合は、即座に反則負けが言い渡される。
⑫返し技を仕掛けた際と仕掛け終わった際に相手をコントロールしていなければ有効な返し技とは認められない。
⑬時間稼ぎが目的で柔道衣もしくは帯を乱したと認められた選手には指導が与えられる。
指導による反則負けであるが、世界選手権の中継では「GS(ゴールデンスコア=延長戦)においては、指導2で反則負け」と表現されていたが、正確ではないようだ。例えば本戦で選手Aが指導0、選手Bが指導2の場合、Aは指導が3に成らないと反則負けにならないので「指導2で反則負け」というのは不適合。また、両者指導0の場合は、指導を受けた時点で勝負が決するので、この場合も不適合。
しかし、ウィキペディアの表現も的確ではない。
「ゴールデンスコア中に「指導」が与えられた場合、与えられた選手が相手よりも多くの「指導」を受けたことになる場合、その試合は終了する」国際柔道連盟試合審判規定(2017-2020)
(『改正の要点』国際柔道連盟発信)の方がスッキリしている。
話はそれるが、この“反則負け”という使用法は文意的におかしい。“指導負け”とか“警告負け”にすべきだと思うが…
★ルール改正についての考察
☆基本方針
「一本取って勝負をつけなさい」
この基本方針の実現を目指した改正と考えられる。
②「有効」の廃止
「不完全な技では勝ちを認めない」という意思。
しかし、技ありが甘くなったので、審判差が生じそう。
今大会の男子73㎏級決勝戦での橋本壮市選手の「技あり」は甘過ぎ。この技の決まり具合で「技あり」なら、この少し前に掛けられた技も「技あり」だった。個人差ならともかく、同一試合でのこの判定のブレは酷かった。
また、「合わせ1本」がなくなったのは疑問。「“技”認めた投げ」=「技あり」を2回も決めれば「一本」で良いのではないだろうか?(技ありの判定が甘くなっていることが関係があるかもしれない)
☆「技あり」について
“投げ”の判定基準は、『速さ』『強さ』『背中が大きく畳につく』が条件で、すべてを満たせば「一本」となっているが、一番のポイントは、「仰向けに倒したかどうか」で、他はかなり軽視されている。2段階で背中がついても、「一本」となることがほとんどである。
逆に言えば、「腹這い」なら無効。(従来の“有効”の判定の大きなポイントも「腹這いかどうか」であった)
熟練者であれば、技を掛けられても腹這いで逃れるのは可能である。……と言うより、「投げた後もキッチリ決め切れば腹這いに逃れることができない」と考えるべきなのだろう。
“技あり”は先述の3要素が完全でない場合となるが、“一本”に於いて既に『速さ』『強さ』が甘くなっているので、やはりポイントは『背中』になる。この背中の突き具合で“一本”“技あり”“無効”に分かれる。
本大会の場合、腹の方が畳に向いていれば、“技あり”にはならないようである。また、“尻もち”をついても背中が付かなければ、やはり、“無効”となっているようだ。
旗判定がなく、今までは“有効”であった技が、“無効”になってしまうというのも、すんなり納得はできない。この不納得さを拡大させるのが、“反則負け”である(後述)
ところで、特殊な“腹這い”がある。投げが強くて横回転し過ぎて、腹這いになってしまうことがある。この場合が“技あり”と判定されるのかもしれない。
⑤「本戦では技のポイントのみで勝敗が決せられ、指導数の差によっては決しない」
リオ五輪のリネール(フランス)が指導1つ差で原沢久喜を下し、物議を醸したリオデジャネイロ五輪100キロ超級決勝のような柔道の技を決めずに勝ってしまうケースがなくなって良い
④「指導4で反則負け」が「指導3まで」に変更
技のポイントを上げた選手の逃げ切り勝ちを防ぐためと思われる。
反面、「反則負け」の頻度が増えそうだ。
試合序盤、膠着状態になった場合、審判は試合を動かすため、割と簡単に“指導”を出す。片方の選手だけだったり、両選手に与える場合もある。
なので、「何故?」と疑問に感じることも多い。2回指導を受けても、本戦では負けには繋がらないとは言え、4回=負けに比べて、負担の割合は大きい。
⑥GSでは技のポイントか、指導差が付いた場合に勝敗が決する
“有効”がなくなり、本戦で勝負が決せず、GSに持ち込まれることが多くなる。
技のポイントと言っても、“技あり”以上なので、そう簡単には決着しない。そうなると、指導の差で勝負が決してしまう可能性が高くなる。
皮肉なことに、「一本を取って勝ちなさい」という理念の改正が、逆に「反則負け」を増やすことになっているのではないだろうか?
さらに、“指導”は「消極的」「組み合わない」「不用意に場外に出る」など、審判の主観に追うものが多い。
従来なら“有効”で優勢勝ちしていたはずの選手が、曖昧な基準の“指導”により、負けてしまう……
女子57kg級の芳田司選手は残念だった。
決勝の相手は、リオ五輪の銀メダリストのドルジスレン・スミヤ(モンゴル)。対戦成績は3勝1敗だが、地力は芳田よりありそう。
この試合、前半は押されていたが、本戦終盤、そして、GSでは内容はかなり上回っていた。従来の有効っぽい技が3回ほどあり、終始、攻勢。
対するドルジスレンは消極的で掛け逃げっぽい技が多くなっていた。GS3分過ぎに、消極的姿勢の“指導”が出されたが、本戦で吉田が場外の“指導”を取られていたので、勝ちとはならなかった。その後も、ドルジスレンに“指導”が出されても不思議ではない展開だった。
この“場外”にしても、「何故?」と思えるもので、これさえなければ芳田の勝ちだった。
結局、GS9分に達しようかと言う時に、ドルジスレンの腰車が決まり、死闘に終止符が打たれた。
審判の主観の差による“指導”と、“有効”廃止……二つの要素が芳田に不運に働いた。
ウィキペディアによると、この世界選手権までの試験的にな導入で、この結果を検証した上で正式導入されるか決定されるらしい。
主な改正点は
①試合時間は男女とも4分とする。男子はこれまで5分だったが、東京オリンピックでの男女混合団体戦の採用を目指して試合時間を女子に合わせることに決めた。
②技の評価は一本と技ありのみにする。よって有効は廃止される。技あり合わせて一本も廃止となる。技ありには従来の有効相当の判断も含まれる。
③抑え込みは15秒で技ありだったが、10秒とする。一本は従来とおり20秒。
④従来は指導4まで積み重なると反則負けになったが、それが指導3までに変更される。
⑤本戦の4分間では技のポイントのみで勝敗が決せられる。そのため、従来のように指導差での勝利は認められず、その場合はGSに突入する(但し、本戦で指導3まで積み重なった場合は反則負けとなる)。
⑥GSでは技のポイントか、指導差が付いた場合に勝敗が決する(本戦で指導1を与えられた選手がGSで指導差による勝利を得るためには、指導2まで取り返さねばならない。本戦で指導2まで与えられた選手がGSで指導差による勝利を得るためには、指導3まで取り返さねばならない)。
⑦下半身に手や腕が触れる行為は従来一発で反則負けを与えられていたが、一度目は指導、二度目で反則負けに変更される。
⑧標準的でない変則組み手(クロスグリップやピストルグリップ、片襟や帯を掴む組み手など)になった場合、即座に攻撃しなければ指導を与えられる。
⑨攻撃を試みなかったり防御に徹するなど、柔道精神に反する消極的な姿勢が見られた場合は指導が与えられる。
⑩一挙に体を捨てた脇固めのみならず、相手の袖や腕を掴みながら肘を伸ばす形の袖釣込腰を仕掛けた場合も反則負けとなる。
⑪相手の組み手を嫌って場外に逃げの姿勢を見せるなどの柔道精神に反する行為が認められた場合は、即座に反則負けが言い渡される。
⑫返し技を仕掛けた際と仕掛け終わった際に相手をコントロールしていなければ有効な返し技とは認められない。
⑬時間稼ぎが目的で柔道衣もしくは帯を乱したと認められた選手には指導が与えられる。
指導による反則負けであるが、世界選手権の中継では「GS(ゴールデンスコア=延長戦)においては、指導2で反則負け」と表現されていたが、正確ではないようだ。例えば本戦で選手Aが指導0、選手Bが指導2の場合、Aは指導が3に成らないと反則負けにならないので「指導2で反則負け」というのは不適合。また、両者指導0の場合は、指導を受けた時点で勝負が決するので、この場合も不適合。
しかし、ウィキペディアの表現も的確ではない。
「ゴールデンスコア中に「指導」が与えられた場合、与えられた選手が相手よりも多くの「指導」を受けたことになる場合、その試合は終了する」国際柔道連盟試合審判規定(2017-2020)
(『改正の要点』国際柔道連盟発信)の方がスッキリしている。
話はそれるが、この“反則負け”という使用法は文意的におかしい。“指導負け”とか“警告負け”にすべきだと思うが…
★ルール改正についての考察
☆基本方針
「一本取って勝負をつけなさい」
この基本方針の実現を目指した改正と考えられる。
②「有効」の廃止
「不完全な技では勝ちを認めない」という意思。
しかし、技ありが甘くなったので、審判差が生じそう。
今大会の男子73㎏級決勝戦での橋本壮市選手の「技あり」は甘過ぎ。この技の決まり具合で「技あり」なら、この少し前に掛けられた技も「技あり」だった。個人差ならともかく、同一試合でのこの判定のブレは酷かった。
また、「合わせ1本」がなくなったのは疑問。「“技”認めた投げ」=「技あり」を2回も決めれば「一本」で良いのではないだろうか?(技ありの判定が甘くなっていることが関係があるかもしれない)
☆「技あり」について
“投げ”の判定基準は、『速さ』『強さ』『背中が大きく畳につく』が条件で、すべてを満たせば「一本」となっているが、一番のポイントは、「仰向けに倒したかどうか」で、他はかなり軽視されている。2段階で背中がついても、「一本」となることがほとんどである。
逆に言えば、「腹這い」なら無効。(従来の“有効”の判定の大きなポイントも「腹這いかどうか」であった)
熟練者であれば、技を掛けられても腹這いで逃れるのは可能である。……と言うより、「投げた後もキッチリ決め切れば腹這いに逃れることができない」と考えるべきなのだろう。
“技あり”は先述の3要素が完全でない場合となるが、“一本”に於いて既に『速さ』『強さ』が甘くなっているので、やはりポイントは『背中』になる。この背中の突き具合で“一本”“技あり”“無効”に分かれる。
本大会の場合、腹の方が畳に向いていれば、“技あり”にはならないようである。また、“尻もち”をついても背中が付かなければ、やはり、“無効”となっているようだ。
旗判定がなく、今までは“有効”であった技が、“無効”になってしまうというのも、すんなり納得はできない。この不納得さを拡大させるのが、“反則負け”である(後述)
ところで、特殊な“腹這い”がある。投げが強くて横回転し過ぎて、腹這いになってしまうことがある。この場合が“技あり”と判定されるのかもしれない。
⑤「本戦では技のポイントのみで勝敗が決せられ、指導数の差によっては決しない」
リオ五輪のリネール(フランス)が指導1つ差で原沢久喜を下し、物議を醸したリオデジャネイロ五輪100キロ超級決勝のような柔道の技を決めずに勝ってしまうケースがなくなって良い
④「指導4で反則負け」が「指導3まで」に変更
技のポイントを上げた選手の逃げ切り勝ちを防ぐためと思われる。
反面、「反則負け」の頻度が増えそうだ。
試合序盤、膠着状態になった場合、審判は試合を動かすため、割と簡単に“指導”を出す。片方の選手だけだったり、両選手に与える場合もある。
なので、「何故?」と疑問に感じることも多い。2回指導を受けても、本戦では負けには繋がらないとは言え、4回=負けに比べて、負担の割合は大きい。
⑥GSでは技のポイントか、指導差が付いた場合に勝敗が決する
“有効”がなくなり、本戦で勝負が決せず、GSに持ち込まれることが多くなる。
技のポイントと言っても、“技あり”以上なので、そう簡単には決着しない。そうなると、指導の差で勝負が決してしまう可能性が高くなる。
皮肉なことに、「一本を取って勝ちなさい」という理念の改正が、逆に「反則負け」を増やすことになっているのではないだろうか?
さらに、“指導”は「消極的」「組み合わない」「不用意に場外に出る」など、審判の主観に追うものが多い。
従来なら“有効”で優勢勝ちしていたはずの選手が、曖昧な基準の“指導”により、負けてしまう……
女子57kg級の芳田司選手は残念だった。
決勝の相手は、リオ五輪の銀メダリストのドルジスレン・スミヤ(モンゴル)。対戦成績は3勝1敗だが、地力は芳田よりありそう。
この試合、前半は押されていたが、本戦終盤、そして、GSでは内容はかなり上回っていた。従来の有効っぽい技が3回ほどあり、終始、攻勢。
対するドルジスレンは消極的で掛け逃げっぽい技が多くなっていた。GS3分過ぎに、消極的姿勢の“指導”が出されたが、本戦で吉田が場外の“指導”を取られていたので、勝ちとはならなかった。その後も、ドルジスレンに“指導”が出されても不思議ではない展開だった。
この“場外”にしても、「何故?」と思えるもので、これさえなければ芳田の勝ちだった。
結局、GS9分に達しようかと言う時に、ドルジスレンの腰車が決まり、死闘に終止符が打たれた。
審判の主観の差による“指導”と、“有効”廃止……二つの要素が芳田に不運に働いた。