第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会5回戦
2006年12月16日(土)13:00キックオフ
埼玉スタジアム2002
浦和レッズ 3-0 アビスパ福岡
前半終了と同時にブーイングが起こった。ふがいない攻撃がこれだけ続けば無理もない。そして後半途中、ゴール裏のサポーターが控え選手の名前を叫んだ。こんな状況を打破してくれるのは彼しかいないだろう!なぜ彼を出さないんだ!さあ、早く彼を出してくれ!選手にとってこれほど嬉しいことはないんじゃないかと思う。双眼鏡を覗くと、当人はいつもと変わらぬポーカーフェイスでアップを続けていた。しばらくするとギドは彼を呼び、ピッチへと送り出した。永井コールの轟くスタジアムに背番号9番が登場した。
どうもお祭り騒ぎというのは苦手である。6万人が熱狂したリーグ最終戦から2週間。今日はスタジアムも比較的のんびりとした空気が漂っていた。人もまばらな天皇杯5回戦の入場者数は1万7千人。こんなに空席がある埼玉スタジアムは滅多に見ることができない。いいよねえ、電車も自由席も混雑しないし、そして何より優勝だけを見に来たような浮かれた人がいないし。
まあ楽勝ってことはないだろうと思っていたけど、まさかこれほど苦戦するとは。確かに、優勝を決めた直後の試合だし、相手がJ2降格となった福岡というのもやりにくい。モチベーションをどこへ向ければよいのか。前半は相手のペースに合わせてしまい、後半は逆に相手に攻め込まれる始末。終了間際にかなり危ない場面もあった。相手のミスに救われたから良かったものの、番狂わせが起こっても決しておかしくなかった。
ようやく目が覚めたのは延長に入ってから。途中出場の長谷部と永井が攻撃に絡み始めてからだ。やはりこのチームには長谷部が絶対に必要なのだ。暢久からキャプテンマークを引き取った啓太と2人が並び立てば、ふらついていた中盤がグッと引き締まる。そして、今日は何と言っても永井である。トップ下に入って効果的なパスを繰り出すばかりではなく、自らも得意のドリブルで仕掛ける。これだ、これが永井のプレーだ。永井が起点となってポンテとワシントンのゴールが生まれた。そして、とどめの3点目を自分で決めてみせた。すばらしい。
内容は決してほめられたものじゃない。結果にしたって、ようやくベスト8に進んだだけだ。それでも優勝を決めた試合と同じくらい感動してしまった。サポーターはみんなわかっているのだ。苦しい状況を救えるのが誰なのかを。チームを支えてきたのは誰なのかを。そしてその期待に応えた永井もまた立派である。こういう長い時間をかけて築き上げた信頼関係というのは、優勝だけを見に来るようなサポーターには理解できないだろうなあ。実に深い価値ある何かが見えた試合であったような気がする。
2006年12月16日(土)13:00キックオフ
埼玉スタジアム2002
浦和レッズ 3-0 アビスパ福岡
前半終了と同時にブーイングが起こった。ふがいない攻撃がこれだけ続けば無理もない。そして後半途中、ゴール裏のサポーターが控え選手の名前を叫んだ。こんな状況を打破してくれるのは彼しかいないだろう!なぜ彼を出さないんだ!さあ、早く彼を出してくれ!選手にとってこれほど嬉しいことはないんじゃないかと思う。双眼鏡を覗くと、当人はいつもと変わらぬポーカーフェイスでアップを続けていた。しばらくするとギドは彼を呼び、ピッチへと送り出した。永井コールの轟くスタジアムに背番号9番が登場した。
どうもお祭り騒ぎというのは苦手である。6万人が熱狂したリーグ最終戦から2週間。今日はスタジアムも比較的のんびりとした空気が漂っていた。人もまばらな天皇杯5回戦の入場者数は1万7千人。こんなに空席がある埼玉スタジアムは滅多に見ることができない。いいよねえ、電車も自由席も混雑しないし、そして何より優勝だけを見に来たような浮かれた人がいないし。
まあ楽勝ってことはないだろうと思っていたけど、まさかこれほど苦戦するとは。確かに、優勝を決めた直後の試合だし、相手がJ2降格となった福岡というのもやりにくい。モチベーションをどこへ向ければよいのか。前半は相手のペースに合わせてしまい、後半は逆に相手に攻め込まれる始末。終了間際にかなり危ない場面もあった。相手のミスに救われたから良かったものの、番狂わせが起こっても決しておかしくなかった。
ようやく目が覚めたのは延長に入ってから。途中出場の長谷部と永井が攻撃に絡み始めてからだ。やはりこのチームには長谷部が絶対に必要なのだ。暢久からキャプテンマークを引き取った啓太と2人が並び立てば、ふらついていた中盤がグッと引き締まる。そして、今日は何と言っても永井である。トップ下に入って効果的なパスを繰り出すばかりではなく、自らも得意のドリブルで仕掛ける。これだ、これが永井のプレーだ。永井が起点となってポンテとワシントンのゴールが生まれた。そして、とどめの3点目を自分で決めてみせた。すばらしい。
内容は決してほめられたものじゃない。結果にしたって、ようやくベスト8に進んだだけだ。それでも優勝を決めた試合と同じくらい感動してしまった。サポーターはみんなわかっているのだ。苦しい状況を救えるのが誰なのかを。チームを支えてきたのは誰なのかを。そしてその期待に応えた永井もまた立派である。こういう長い時間をかけて築き上げた信頼関係というのは、優勝だけを見に来るようなサポーターには理解できないだろうなあ。実に深い価値ある何かが見えた試合であったような気がする。
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