Jリーグ・ディビジョン2 第28節
2005年8月27日(土)19:00キックオフ
三ツ沢公園球技場
横浜FC 3-4 ヴァンフォーレ甲府 試合前に行われた新加入選手紹介のセレモニーで、ピッチに登場した山口素弘が挨拶をしました。
「ただいま」
この日のスタンドは何か異様な熱気を含んでいました。そんな中に横浜フリューゲルスのユニフォームを着ているおじさんの姿を見つけました。今さら横浜フリューゲルスの消滅だとか、横浜FCの誕生だとか、そんなことについて書くつもりはありませんが、Mr.Fと呼ばれた山口が三ツ沢に帰って来たという事実を目の当たりにすると、やはり感慨深いものがあります。クラブの消滅というのは決してあってはならないこと。当時、全てのJクラブのサポーターにとって他人事ではない事件でした。もちろんレッズサポーターにとっても。そんなことを思い出していると、試合前からもう泣きそうです。
しかしそんな感傷に浸っている間もなく、試合開始から甲府に押し込まれる横浜FC。甲府の攻めがすばらしいのかと言えば、いやあ~そうとも言えないのが寂しいところ。チームとしての完成度の違いとか、そんなレベルではないようなゲーム展開。とにかく両チームともつまらないミスが多い。連携とか戦術とかの前にしっかり見方にパス出せよとか、ちゃんとトラップしろよとか。昨シーズンの川崎なんかは、J2でもかなり良いサッカーをしていましたよ。案の定、J1でもそれなりの結果を出していますけど。
後半5分までに4失点。せっかく盛り上がっていたスタンドもため息に包まれ始めた後半12分、途中出場した人気者シルビオがいきなりゴールを決めると、ここから一気にボルテージが上がりました。そして後半20分、城が倒されて得たFKを蹴るのはカズ。どえらい場面がおとずれました。もしここで決めるようなことがあれば点差は2点。しかもホーム横浜FCイケイケ状態で、ひょっとしたらひょっとするかもしれません。何より意気消沈していたチームが息を吹き返すはず。でもそりゃあいくら何でもできすぎだよ。ちょっとドラマティックすぎるんじゃない?見方の壁の位置をちょいちょいといった感じで修正すると、カズは右足でセットされたボールを蹴りました。次の瞬間スタンドは総立ち。ゴール!入ったよ!すげえ!鳥肌。感動。やべえ泣きそうだよ。
これでようやく横浜FCは目が覚めたようでした。技術や戦術よりまず気持ち。とられたボールは自分でとり返す。相手をなぎ倒しても、例えそれが反則をとられても、とにかく奪い返す。前半、カズや城が「前へ来い」というジェスチャーを繰り返してチームを奮起させていたのが嘘のよう。後半39分、トゥイードが押し込んでとうとう1点差。スタジアム全体が揺れるような興奮に包まれました。オイオイすごいことになってきたぞ。まだまだ追いつけるぞ。でもそんなに甘くはないのもサッカー。ロスタイムにも決定的なチャンスがありましたが、そのままタイムアップを迎えました。
終わってみればホームで3-4の敗戦。横浜FCのサポーターにとっては、決して受け入れられる結果ではなかったと思います。新加入選手がすぐにチームにフィットして結果を出すのはやはり難しい。これはあくまで部外者の意見になってしまいますが、でも何かが変わり始める予感は試合の後半に見えたような気がします。
しかしまあカズである。あそこで決めるからキング・カズなのか、キング・カズだからあそこで決めるのか。いずれにせよ超一流のプロの仕事を見せてもらいました。そんなカズの試合後のコメント。
「とにかくシュートを打つよ。打たないと何も起こらないから」