「これからの日本の現実を考えると、若い人たちがより豊かになっていくとは考えづらい。シェアハウスは可能性のある暮らし方だと思います。」
おっ、何だか建築家っぽいこと言ってるぞ、この人。この湘南かぶれが。反湘南スタイルを貫いている自分にとっては、まあいろいろと気に障る雑誌である。幸せいっぱいの家族写真もちょっと鼻につくよね。ここ埼玉には海もないし、この部屋には家族もいない。だからといって、別に湘南スタイルに憧れたりしないよ。あれ?よく見るとこの人知ってる。北鎌倉のこの家にも行ったことあるぞ。
ヨネリ~ニョでした。
会社にはいろいろな人がいますね。好きな人もいれば嫌いな人もいます。人と人との付合いなので、そういうのは仕方ないです。
先日、今月で退職される方の送別会がありました。歓迎会には出なくても送別会には出るようにしています。なぜか、それが自分のルールです。好きな人の送別会には、多少無理してでも出ることにしています。それがお世話になった人への礼儀だと思っているからです。義理人情は大切です。だからもし送別会への出席を断ったら、その人のことは嫌いなんだと思ってください(笑)。
今回の送別会はとても良い会でした。たくさんの人から慕われているその方は、とても楽しく仕事ができたとおっしゃっていました。自分も楽しく仕事をしようと思いました。会社から好きな人がどんどん減って行くような気がして、何だかとっても寂しかったです。
というわけで、餞別に長野土産の七味唐辛子をプレゼントしました。餞別にふさわしかったかどうかはわかりませんが。本当にいろいろとありがとうございました。地下の書庫の管理は私にお任せくださいませ。
小澤征爾/サイトウ・キネン・オーケストラ
20 MAY 2009
UCCD-50034
http://www.saito-kinen.com/
松本で音楽といえば、サイトウ・キネン・フェスティバルであり、サイトウ・キネン・フェスティバルといえば小澤征爾である。というわけで、小澤征爾指揮、サイトウ・キネン・オーケストラのCDを聴きながら音文ホールの改修設計をしています。このCDは、1992年のサイトウ・キネン・フェスティバルから、岡谷カラノ・ホールで録音されたもので、かなり評判が良いものらしいです。まあ、雰囲気は大切です。ノリも大切です。今回ばかりはGASTUNKを聞きながらというのは、さすがにちょっと違うかなあと思います。
そういえば、クラシックのコンサートなんて、遥か昔に行ったきりです。コンサートホールの改修設計を担当する人が、コンサートホールを体験していないというのは問題あります。こりゃあいかん!ということで、有名なコンサートホールのスケジュールを調べてみました。改めて、クラシックやオペラのチケットって高いのね、ということがわかりました。設計というのは、ある程度の収入(あるいは資産)や社会的地位がある人でなければ務まらない仕事なのかもしれません。とりあえず、安い公演を探してみます。
竹山聖+アモルフ
JUN 2001
RC+5F / 968m2
http://www.amorphe.jp/
街外れのホテルを選んだのは、おそらくこの建築の前を通るだろうと思ったからです。建築というのは、昼と夜で表情を変える場合がほとんどで、特に商業ビルはライトアップがとても重要になります。打合せが終わって、すっかり日が暮れた松本市街の大きな通りを歩いていると、明らかに異彩を放つその姿が見えてきました。おおっ、かっこいい!やっぱりテンションが上がります。
アモルフの一連のコンクリート打放し建築の流れにあるデザインだと思います。このオープンスペースの取り方はどうなのか?という疑問を持つところも一緒です。容積率低そうだよなあみたいな感じ(笑)。空室も目立っていて、テナント募集の貼紙がちょっと寂しげです。理想と現実のギャップが見え隠れしています。やはりどこか無理があるような気もしますが、そんなことを差し置いて、その強烈なデザインの存在は圧倒的です。
音楽ホールや美術館とは明らかに趣が異なる商業ビルですが、今回の出張で多分この建築がいちばん時間をかけて見ていました。夜、朝、昼と光線の向きを変えたところだとか、近くから見上げたり、川を渡って眺めたり、ものすごく多彩な表情を持っているので、飽きることがなかったです。今どきこういうデザインは流行らないのかもしれないし、使い勝手だって決して良さそうではないけれど、何なんでしょうね、この魅力は。
自分はどちらかというときちんとした古めかしいデザインが好みです。一方で、こういう造形的なかっこよさにも惹かれたりします。遥か昔、卒業設計で提示したのは、こういう造形的なデザインでした。隙間がいっぱい、無駄な空間にこそ価値がある、みたいな。もしかしたら、そういう趣味の変化も理想と現実のギャップの表れなのかね?だとしたら、ちょっと問題あるよねえ。そんな気がしました。
宮本忠長
APR 2002
SRC+4F / 9,174m2
http://www.t-miyamoto.co.jp/
芸術館の道の反対側に美術館があります。こちらはさすがにうねうねしていません。よかったね。ただ、えび造から聞いて楽しみにしていた企画展「土門拳の昭和」が、終わっていました。ちぇっ。仕方がないので「スタジオジブリ・レイアウト展」を見ました。アニメの設計図を見ることができたので、まあそれなりに面白かったです。ジブリ映画見たことないけどね。
いわゆる中庭形のプランニングなのですが、その中庭が一般に開放されていて、緑の芝生が鮮やかでした。これはいろいろな意味で救われます。建築や芸術は緊張感をもたらしますが、自然は緊張感を和らげてくれます。いつだって共存すべき関係であるのです。だからといって、都心の建築に見られる屋上緑化や壁面緑化なんてものは、苦笑するしかない代物だと思っています。
後から写真を見てみると、中庭の芝生とディテールを撮影したものが多かったです。意識せずに目についたものを撮影していた結果なので、まあそういう建築ということでしょう。とても丁寧に造られているけれど、それが嫌味にならない節度が感じられます。節度がないと息苦しくてかないませんからね。素直に良い建築だなあと思いました。
常設の草間彌生展を見て、市内を走っている水玉バスの理由がわかりました。最初は何事かとビックリしたわ。
伊東豊雄
AUG 2004
SRC−2F+7F / 19,184m2
http://www.toyo-ito.co.jp/
今年の8月、小澤征爾氏が復帰のタクトを振ったのがこのホールです。世界的指揮者と世界的建築家のコラボは、それはそれは魅力的だと思います。言うことなし。
うねうねとうねった曲面と手作りガラスをはめ込んだGRC板の外壁が目を引きますが、圧巻はエントランスからロビーへと続くアプローチです。メディアテークでも感じたことですが、異次元の空間体験といった趣きです。その空間には「斬新」という言葉が似合います。設計者自身が「エレガントな空間」という主ホールを是非体験してみたいですね。写真で見ると、馬蹄形の舞台をピンクのグラデーションで覆っています。エレガントというよりセクシーです。
毎年開催されているサイトウ・キネン・フェスティバル松本の主会場となっているのが、このまつもと市民芸術館と長野県松本文化会館と松本市音楽文化ホールです。規模も趣向も異なるため単純な比較はできませんが、フェスティバルの時は音楽文化ホールもこのホールと同列に並ぶわけです。そういう意識を持たなければなりませんね。建築はそれぞれが果たすべき役割を担っているはずです。25年の歳月を背負ったホールには、「斬新」はなくても「歴史」があります。
ちなみに、個人的好みから言ったら、音楽文化ホールの方が100倍かっこいいと思いました。いろいろな意味で良かったよね。
音楽文化ホールの設計者の作品が、松本市にもうひとつある。ということを、打合せの帰りのタクシーで事務所の偉い人(笑)に教えてもらいました。自分だけ松本に留まることになっていたので、次の日、早速見に行くことにしました。
松本駅から真っ直ぐ伸びた道をただひたすら歩いて行くと、あがたの森公園に突き当たります。その公園の中、旧制松本高等学校の校舎の横にその建築はありました。重厚なデザインは、音文ホールと同じテイストと言えるでしょう。入口のドアハンドルは、まったく同じデザインのものが使われていました。こだわり。
ここまでの道中、まつもと市民芸術館や松本市美術館を横目に来たわけですが、まあ明らかにそれらの建築とは異なるものです。どちらが良いというものではなくて、どちらも在りということです。では、自分はどちらが好きかというと、圧倒的にこちらの方が好きです。自分の事務所の設計だからとかそういうことではなくて、自分が創りたいのはこういう建築だろうなあと思います。最近の流行ではないかもしれないけど、時代を超えて佇む価値を備えているような気がします。
新しい価値を否定する気はありませんが、新しくない価値を尊重することも必要であると思っています。時を重ねて尚存在し続ける意味を、もっとよく考えてみよう。もしかしたら、それは自分に課せられた使命なのかも知れない。な~んてね。今回の松本出張は、とても有意義なものになりました。
打合せが終わって外へ出ると、もう日が暮れかかっていました。雨はいつの間にか止んでいました。三角屋根の向こう側が、ほんのり赤みを帯びています。モノクロみたいなカラー写真。こういう風景、大好きです。もうすぐこの世が終わってしまうような切なさを感じます。さよなら世界。
さて、松本です。どういうわけか、松本出張の予定が入ると台風が来ます。なぜだろう?もう「あずさ」に閉じ込められるのはこりごりなので、新幹線を使って長野回りで行くことにしました。
言うまでもなく、今回のプロジェクトのテーマは「耐震」と「音響」です。ところがこの2つの要素は全く反対方向へそのベクトルを伸ばしています。相反する要素を両立させるためのバランス感覚が求められるわけです。難しい。本当に難しい。でも、絶対解決します。
プロジェクトを引き受けてから、この建物についていろいろと調べてみました。当時の新建築の記事なんかもチェックしました。そしてわかったことは、事務所の大先輩である設計者の偉大さと、奥深いデザインの素晴らしさです。そして思ったわけです。もしこのプロジェクトがコケたら、自分の首は飛ぶだろうなあと。そのくらいの覚悟を持って取組む必要があります。
残念ながら、自分はその設計者と直接面識がありません。近年お亡くなりになられたと聞きました。ご本人から直接お聞きしたかったことが沢山あります。でも今となっては、自分で想像するしかないのです。25年前の設計思想を探求する。そして烏滸がましくも自分の設計思想を重ね合わせる。改修設計というのは、とてつもなく意義深いものなのです。
事務所に残されていた資料の中から、当時の基本設計書を見つけました。表紙の事務所名のクレジットの横に、設計者ご自身のサインが書き込まれていました。すげえ!かっこいい!自分にはちょっと真似できませんわ。
夕方から目黒の某マンションの現地調査。エントランスと共用部のリニューアル設計を担当することになったので。土地柄オシャレな建物が多い。このマンションもその例に漏れずオシャレな雰囲気満載である。夜になるとその傾向は倍増する。何でも1LDKで家賃15万円という代物らしい。ウウム、もはや唸るしかない。こういうところに住みたかったなあ。多分、その夢は一生かなうことはない。他人の家の玄関をきれいにする。かっこよくする。オシャレにする。設計とは何と切ない商売であることか。
現地調査が終わって、すっかり日が暮れたオシャレな街を駅へと歩く。なるほどね、こういうところに住む人はやはり何かが違うような気がする。オシャレな雰囲気というのは、こういうところから培われるものなのだ。