ドイツ人のビム・ベンダースが監督し役所広司が主演の「Perfect Days」は、久々に観たい映画だった。「ららぽーと富士見」のTOHOシネマで上映していると聞いたので、ネットで予約して妻と二人でさっそく観に出掛けた。
映画の主人公の平山(役所広司は、都内の公衆トイレ清掃員として働いている。一人暮らし寡黙な彼の暮らしは単調だ。安アパートで目を覚まし歯を磨き植木に水をやった後、軽トラックでアパートを出る。
一日中トイレの清掃に精を出し、仕事を終えると駅地下の安食堂で一杯飲みつつ夕食を摂る。その後街の浴場で仕事の汗を流し、アパートへ戻ると就寝前の読書が彼の唯一の楽しみ、そして床に就く。
平山は毎日こんな生活の繰り返しで、盛り上がりも無く物語としてはちっとも面白く無い。だけど映画を観ていると、何故だか心が惹きつけられる。それは役所広司の演技力のせいなのか、それともビム・ベンダース監督の演出力のせいなのか、そこんとこはよく分らない。
又映画の舞台となる都内の公衆トイレも、それぞれ個性的なデザインでユニーク造りが面白い。ひょっとしてドイツ人の監督はこれらのトイレに魅せられてこの映画を作ろうと思ったのだろうか?
淡々と描かれるこの映画は、主演の役所広司無くして成立しなかったのではと思うほど、内から滲み出る彼の演技は素晴らしかった。カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したのも当然の事と思えた。
厳しい環境の中で小さな自然の芽生えや暖かな朝陽の輝きに喜びを見出す禅修行者のような彼の暮らしぶりを、「Perfect Days」という映画の題名にしたのだろうか。味わい深く心にジンと滲みる映画でした。