さて、『ジャイアントロボ』です。アニメです。
普通なら三十路を前にしてアニメかよ、となるのだけど、おもしろいんだから仕方がない。
とはいえ、僕は特にアニメ好きというわけではないのです。テレビアニメは、おおよそ『ドラゴンボールZ』のフリーザ編前後で見なくなったし(中学生頃か)、一時ブレイクした『エヴァンゲリオン』や『鋼の錬金術師』はもちろん、ジブリ系やルパンなどの世間的にも浸透している類のものですら、むしろ見ててヘドが出るというか。ファンが多いらしい『ガンダム』も(全盛期に沖縄に住んでいたため見れなかったこともあり)今ひとつピンと来ません。アキバ系とかいうのは、もはや論外です。
(や、これは作品がどうこうじゃなくて、僕のひねくれた価値観に問題があるせいなので、そこんとこご了承をば。)
そんな中、過去僕が見て心ゆらいだアニメが『北斗の拳』『キン肉マン』『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』(以下『ジャイロボ』)の3作品。前の2作品は今更説明が不要でしょう。当時の小中学生男児の90%は教科書代わりにして育っているはずです。友情・努力・勝利・強敵・自己犠牲・筋肉。男にとって必要不可欠なものが全て揃っている贅沢な作品です。正直、女が見ておもしろかったり同意できちゃう作品なんざ、少年漫画・アニメとしては最低だと思うのですよ(言いすぎ)。今の少年漫画には本宮ひろ志、宮下あきら、ゆでたまご、原哲夫&武論尊、平松伸二が足りない!
もっとも、漫画やアニメにそこまで求めている僕の知能レベルもどうかとは思いますが。
まあいい、ここは俺様のブログだ。
話を元に戻しましょう。で、『ジャイロボ』です。もともとこの作品の原作は、『三国志』や『魔法使いサリー』『バビルII世』なんかで有名な故横山光輝の同名漫画である。子供向けに実写ドラマ化されたこともありました。今年2007年には、最新の技術で再アニメ化もされています。が、特筆すべきは1992年~1998年の7年間にわたり作成されたビデオアニメ『地球が静止する日』編です。
この作品を手がけた監督、かなりクセが強くて業界では有名らしいのですが、そのせいか基本的に原作は完全無視、キャラこそジャイアントロボと主人公草間大作などを登場させていますが、ストーリーは完全にオリジナルで、脇を固めるキャラも他の横山光輝漫画のものを無理やり登場させていて、もうはちゃめちゃです。
さらに全7話にして足掛け6,7年かけての作成。ビデオアニメとしては異例の製作期間。恐らく途中で待てずに離れた視聴者も多かったことでしょう。
ダメダメな要素は限りない。なのに、やたらおもしろい。なぜか。
まずアニメーションの高クオリティさ。ビデオアニメのため、テレビでは放映されなかった。にも関わらず案外高額な予算をかけたらしく、劇場版アニメと同等、とまでは言わないけど、素人目にもわかるクオリティの高い技術で作られています。昨今のアニメはかなりCG処理されているみたいですが(いや、見てないから知らんのよ)、この作品は昔ながらのセル画をふんだんに使用して作られているので、正直見ていてほっとします。
次に音楽。天野正道を作曲&総指揮に招き、ポーランドの国立オーケストラに演奏させているやたら豪華な劇中曲は、ひとつひとつが震えるでき映え。それが効果的に使用されているもんだから、臨場感はアニメとは思えないくらいです。例えば1巻の列車上での銃撃戦シーン。できあがったアニメーション(絵コンテだったっけ?)の進行にに合わせて作曲されているため、下手な映画顔負けの完成度となっています。もう思わずサントラ買ってしまったよ(全7巻)。
そしてキャラクター。横山キャラオールスターズがジャンジャン登場。元ネタがサリーちゃん、三国志や水滸伝の武将、鉄人28号に出てくるヤ○ザなどの、濃ゆいキャラばかりです。。そんな彼等がなぜか繰り広げる、シリアスかつ破天荒なアクションシーン。そのギャップたるや、『キン肉マン』などで“日頃三枚目でもやるときはやる”的美学を刷り込まれた僕らには、もうたまらないのです。
また、声優陣も実に豪華(らしい)。どうも、アニメ系の声優よりも、洋画系の声優を中心に起用しているらしく、どおりで耳ざわりないわゆる“アニメ声”が少ないはず。もっとも声優系に関しては全く知識がないので(キン肉マンとケンシロウの声が同じ、くらいは知っている)、他のサイトからの情報なのだけど、たしかに他のアニメよりも若干骨太感が感じられる気もします。
また、少年漫画の王道中の王道、「死天王」「南斗六星拳」「7人の悪魔超人」などに代表される、かっちょいい集団構成名もきっちり登場する。まず主人公側には「九大天王」。そして敵側には「十傑集」。一気に勢ぞろいするのでなく、じわじわと正体が明かされていく様は、少年の頃、『キン肉マン』王位争奪編や『聖闘士星矢』の十二宮編などで、次はどんな奴が出てくるのだろうとわくわくしていた当時を思い起こさせます。『伊賀の影丸』はいるわ、『仮面の忍者赤影』はいるわ、マニアックなところでは横山光輝作品最初で最後の学園硬派モノ『あばれ天童』や、『鉄人28号』の署長さん、『三国志』の十常侍なんかも登場し、もうつっこむ気すら億劫になる勢いでドラマチックに活躍します。
そしてストーリー。キャラがキャラなだけに、中にはコミカルな雰囲気を予想する輩もいるかもしれませんが、逆にやや重めなテーマ(あくまでアニメ的にだけど)で進行するので、大人でもそこそこ観賞に耐えうる仕様になっています。マニアから見ると矛盾だらけらしいが、所詮はアニメ、そこまで目くじらたてんと、肩の力抜いてぼんやり見よう。
現在、ビデオ全7巻とDVD全4巻が発売中。全部集めようとすると少々高くついてしまうので、TUTAYAにでも行ってレンタルしてみてください。
でも、いい年になってから、アニメコーナーうろうろするのって、AV借りるより恥ずかしいんだよなあ。・・・はっ。いや、あくまで想像ね。想像。AVなんて僕が借りるわけないのです。ましてや、レジがかわいい女性だったりして、通り過ぎてそのままその子の交代時間まで売り場を何周もした、なんてことがあるわけがないのです(きっぱり)。
ともあれ『ジャイロボ』。最初の方で書いたように、今年リメイクされてアニメ化されているみたいだが、こちらは別物なので注意。
なお、今回紹介した『地球が静止する日』編のストーリーの少し前を描いた漫画『ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日』の単行本が3月下旬に発売されるらしいです。こちらも要チェックや。
製作開始から16年、終了から9年立つのに未だ根強い人気をほこるこの作品。未見の方は、ぜひ一度お試しあれ。(ちょこっとだけようつべ【1】【2】【3】リンク切れご容赦)
ちなみに、このレビューを書いたあと、気分が盛り上がったので久々にDVD版を見たところ、さすがに年を取ってしまっているせいか、昔ほどときめかなかったのだけれど、すでに散々ほめ倒しちゃったあとなので、内緒にしておきます。
ジャイアンとロボ