「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

常識で考えるのをやめる

2010年04月18日 20時56分19秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人の 親は、

 常識的な価値観や体面で 子供を縛っていることが 少なくありません。

 子供は 親に認められたいために、 親が望むことを捨てられず、

 本人自身が 自分を縛っている場合もあります。

 境界性パーソナリティ障害は そのように、

 自己を確立する過程の障害 という側面を持ちます。

 境界性パーソナリティ障害は 常識的な価値を 覆す症状として 現れますが、

 それは その人を縛ってきたものに対する 命懸けの異議申し立てなのです。

 親から与えられた自分を 一旦否定することが、 回復に必要な過程です。

 親の期待を裏切ることは 罪悪ではなく、

 本人が選んだものをこそ 祝福するべきなのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の父親は、 かなり 常識はずれの人だったようです。

 幼い心子の 才能を見込んで、 勉強や礼儀作法, 社会の表と裏を 教え込みました。

 父親は 心子には完璧を求めました。

 心子を学校へはやらず、 家や実地で教えましたが、

 学校の試験は 満点でなければ許さず、

 99点だと 答案用紙を目の前で 破り捨てたといいます。

 100か0かという 心子の性質は、

 こんなところからも 植えつけられたのだろうと思います。

 心子の父親は 世間体を気にする人間では なかったと思われますが、

 完璧を要する価値観で 心子を縛りつけていたでしょう。

 心子は 父に愛されるため、 完全な良い子である もう一人の自分を作り出し、

 休むことも許されず 馬車馬のように突っ走りました。

 しかし それは本来の 自然な自分ではなく、

 無意識下に抑えつけていた 矛盾は、 いつしか噴出してくるのでした。
 
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出発点は、 一旦 ご破算にすること。

2010年04月17日 22時05分22秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 本人も周囲も、 状況が悪化して どん底になったとき、

 何もかも諦めて 全てを投げ出してしまう 時期を経て、

 回復へ向かっていくようです。

 この時期まで辿り着かないと、 過去の栄光や 未練を捨てきれず、

 ネガティブな考えや 恨みに囚われ続けます。

 どん底を極めると、 今までの路線に 見切りを付け、 生まれ変わりを容易にします。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 「BPD家族の会」 でも、 BPDの子の親御さんが、

 子供の自殺のそぶりに 及び腰でいるうちは うまくいかないといいます。

 あらゆる手を尽くし、 最悪の場合 この子が死んだとしたら、

 それがこの子の 寿命なのだと諦め、  「覚悟」 を決めたとき、

 そこから改善し始めるという 話を聞きます。

 僕自身も、 20才代の 人生最大の挫折の時期、

 地獄の底をのたうち回ったとき、 そこから這い上がり始めました。

 遅々として、 逆戻りを何回も 繰り返しながらではありましたが、

 どん底まで行けば、 あとは上がっていくしかないのでしょう。

 筆舌に尽くしがたい 苦悩であり、 あがき苦しむしかないとしても、

 決して 明けない闇はない、

 生きていれば 必ず再生していけるということを、 僕も実体験したのです。
 
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境界性パーソナリティ障害からの回復

2010年04月16日 19時38分04秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害は 克服できます。

 自己確立が 難産だったようなもので、

 普通より多めの 時間と苦労を要しますが、 早晩 落ち着くのが自然の経過です。

 どんなに辛くても、 とにかく生き続けさえすれば、

 必ず克服され、 本来の自分に 辿り着いていきます。

 「よくなりたい」 という 回復の意志が、 何よりも重要なのです。

 本来の人生を歩みたいと、 心から思うようになったとき、

 回復のプロセスは 半分まで成し遂げられています。

 悪い状態のときは、 ある意味、 よくなりたくないのです。

 よくならないことによって、 苦痛を表現し、

 分かってもらおうとしているのですから。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子も、 心理学を勉強していた立場から、

 よくなりたくないという面が あったのかもしれません。

 「私はこの世で最悪の 大変さと向き合っている。

 私以上に大変な状況はない。

 だからこそ、 私は 他の大変な人の気持ちが すべて理解できる。」

 世の中で一番の 大変さを抱えていることが 誇りであり、

 頑張るエネルギーにもなるといいます。

 なので、 大変さを捨てることができません。

 「この激しい感情がなくなったら、 苦しんでいる人に 共感できなくなってしまう。

 そんな鈍感な人間に なるくらいなら、 感情と共に 討ち死にした方がまし!」

 そうして、 感情をコントロールするのを 怖がる傾向があるというのです。

(参照:http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/16085103.html
    http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/16134670.html )
 
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過去と現在を 結びつける

2010年04月14日 22時52分31秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 自分の 悪い反応のパターンは、 過去の自分が 身に受けたことに 一因があり、

 しかも それが、 今も親に抱いている 屈折した思いと 関係があることが、

 だんだん分かってきます。

 こうして、 いま起きている問題を、

 過去に体験したことに つなぎ直し、 再統合する段階を迎えます。

 断片が 次第につなぎ合わさり、 自分の物語ができていきます。

 マイナスの体験を 表現し尽くすと、

 プラスの体験も 語られるようになってくるのです。

 否定されていた過去は、 現在につながる歴史として 受け入れられるようになります。

 自分の人生に 新たな意味を見つけ、

 転落と絶望の物語は、 危難と再生の物語に 変貌していくのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は出産時、 足に障害があり、

 親は 心子を抱かないようにと 医者から指示されました。

 心子の愛情飢餓の 根本的な原因は、 ここにあるのではないかと考えられます。

 最もスキンシップが 不可欠な幼児期に、 それを全く与えられなかった。

 自分が無条件に愛され、 大切にされる存在なのだということを、

 体で知ることができなかった。

 それは心子にとって、 致命的な愛情の欠乏と なったに違いありません。

 愛情の存在を 信じることができず、

 この世に生きていていいんだという 肯定感を、 無意識に育めなかったきでしょう。

 しかし 心子の母親は、 このことを何よりも 悔いているといいます。

 親のほうも、 愛したかったのに 愛せなかった。

 どれだけ我が子を抱き、 慈しむことをしたかったか。

 苦しいのは 心子だけではなかった。

 そういう物語が 紡がれてくると、 彼女の底知れない傷も、

 癒されていくことができたかもしれません。
 
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囚われを解除する テクニック (2)

2010年04月13日 19時56分48秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 さらに  「中核信念」 である思い込みについて、

 子供の頃、 そう感じることはなかったか、 過去に遡って聞いてみます。

 思い込みが、 親や 重要な人物との関係から 生じていることが分かると、

 その呪縛力は弱くなり、 行動や考え方が 次第に変化していきます。

 もちろん 一筋縄ではいかず、 ネガティブな感情が 強まることもありますが、

 それはより根本的な 改善に必要な段階なのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子を呪縛していた  「中核信念」 のひとつは、

 父親との関係から 生まれたものでした。

 心子は、 心臓病の父親と 一緒に死ぬという 約束をしていましたが、

 父が発作で倒れたとき、 あとを追うことが できませんでした。

 自分は 死ぬために生まれてきた、

 死ななければならないという 信念ができてしまいました。

 心子が召されたあと、 父親との約束は、

 心子の心の中だけの 事実だったらしいことが 分かってきました。

 それは単なる 思い込みのレベルではなく、

 主観的には 間違いなく存在した 「心的事実」 だったので、

 修正は より難しかったかもしれません。

 父親もすでに 鬼籍に入っていたので、 父親に真相を 確認することもできません。

 でも、 生きているうちから、

 その部分に焦点を当てて 治療することができたとしたら……。

 かなり困難な 道のりだったとは思いますが、

 新たな展開が 期待できたかもしれません。
 
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囚われを解除する テクニック (1)

2010年04月12日 20時51分18秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60516159.html  からの続き)

 見つけ出した 悪い反応パターンを 意識しやすくするために、 名前を付けてみます。

 「 『また厭なことを言われた』 病」 というように、

 ユーモアを備えるのもいいですが、 本人を傷つけるものにならないよう 配慮します。

 そして重要なのは、 悪い反応パターンの 背後にある気持ちなどを 語ってもらい、

 さらにその根底にある、 偏った思考を 解明することです。

 思い込みの中核的な部分、  「中核信念」 が浮かび上がってきます。

 「誰も 自分を愛してくれない」 「人は 隙あらば攻撃してくる 敵である」

 といった、 不適切な確信です。

 その信念は 本当にその通りなのかと 問いかけ、 本人に 言葉で語ってもらいます。

 そうして検討していくうちに、

 一面的な思い込みだったことが 徐々に分かっていきます。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子はユーモアがあり、 何にでも ニックネームを付けることが 得意だったので、

 面白い名前を 付けることができたかもしれません。

 心子も 消沈したときには、

 「誰も自分を愛してくれない」 「生きている価値がない」 という、

 誤った 「中核信念」 に 捕らわれてしまいました。

 落ち着いているときに語れば、 別の見方もあると言うことが できたかもしれません。

 そういうことを 丹念に積み重ねていったら、

 或いはその信念を 少しずつ修正していくことができたでしょうか。
 
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100点か0点ではなく、 50点を

2010年04月08日 19時14分54秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 事実と解釈を 一緒くたにしてしまうのも、 認知のワナです。

 推測したことが、 いつの間にか 事実のように見なされてしまいます。

 記録カードを見ながら、 他に受け止め方や対処法は なかったかと問いかけ、

 考えを語り合います。

 こういう方法もあると 提案したり、 話し合いを重ね、

 ロールプレイをすることもあります。

 記録カードを つけ続けていくうちに、

 落ち込むときのパターンや、 怒りが爆発するときの パターンが見えてきます。

 それが自覚されると、 行動や感情の コントロールが改善していきます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60532375.html

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 解釈 (頭の中の考え) が いつの間にか 事実になってしまうことは、

 心子にもありました。

 心子が友だちから ピュアだと言われたそうで、

 心子は  「あたし、 ピュアじゃないんだけどォ」 と 冗談めかし、

 僕もふざけて  「じゃ、 汚れてんの?」 と 口が滑ってしまったのです。

 むろん、 汚れてないでしょ という前提です。

 けれども 心子は急に、

 「どうせ あたしはけがれてる」 と 落ち込んでしまいました。

 それから約1ヶ月に渡り、 心子は自宅に 閉じこもることになってしまいます。

 その間に、 「じゃ、 汚れてんの?」 という 僕の失言は、

 「しんこ、 穢れてるじゃん」 という言葉に すり変わっていました。

 「穢れ」 という言葉は、 クリスチャンにとって 生きる価値もないことだそうです。

 その言葉によって、 心子はより一層 苦しめられてしまうのです。
 
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悪いパターンを 見つけ出す (3)

2010年04月05日 21時30分11秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60492469.html からの続き)

 認知療法の 優れた点のひとつは、

 トラブルがすべて 教材として活用できるということです。

 まさに 逆転の発想で、 トラブルに意味があり、

 問題を解決する手がかりとして 役立てることができます。

 嫌なことがあっても、 記録カードに 書くことができたと、

 得したような気に なることさえあります。

 気を付けることは、 本人の偏りのパターンに 自分自身で気付いてもらうことです。

 こちらが決めつけるのではなく、 さり気なくヒントを与えたりします。

 もうひとつの優れた点は、

 書いた方が整理しやすく、 経験が蓄積されるということです。

 境界性パーソナリティ障害の人の 移ろいやすい傾向を、

 話し言葉は 助長してしまいますが、

 書くことで統合されやすくなり、 第三者的な目を 養うことができるのです。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子とこの方法を 試してみたらどうだったでしょう。

 落ち着いているときなら、 ある程度冷静に 自分のことを見られたかも知れません。

 或いは、 自分のネガティブな 反応パターンを見て、

 自己否定的に なってしまうかもしれません。

 または、 トラブルが起きたときの感情が 甦ってしまうこともあるかもしれません。

 でも 最初は失敗はあったとしても、 それらを重ねていくことによって、

 少しずつ 自分の反応パターンを認識し、 修正していくことができただろうか、

 試みてみたかったと思います。
 
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悪いパターンを 見つけ出す (2)

2010年04月02日 21時00分07秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 治療の現場で 行なわれるのは、

 トラブルがあったときの状況を 記録カードに記してもらう方法です。

 「認知療法」と呼ばれ、 以下の項目について

 境界性パーソナリティ障害の人に 書いてもらいます。

① きっかけになった出来事。

② あなたは、 それをどう受け止めたか。

③ あなたは、 それにどう反応したか (感情および行動)。

④ 後で冷静なったとき、 考えたこと。

⑤ その後、 どうなったか。

 例えば、 順に 次のように記入します。

① 携帯電話を使いすぎると、 親に文句を言われた。

② 妹には甘いのに、 自分だけには厳しい。

  なぜ、そんなことばかり 言われないといけないのか。

③ イライラした。

 親に暴言を吐いて、 それでもモヤモヤして、 リストカットをした。

④ 親と暮らしたくないが、 暮らすしかない。

  それがつらい。

  親の言葉に、 過度に傷ついてしまう。

  黙って流せばよかった。

⑤ 親とは、 翌日も口を利かなかったが、 今は普通にしている。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60504693.html

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 上記に加えて、 前回書いたように、

 きっかけになった出来事には、 違う受け止め方の 可能性はなかったか、

 別の反応の仕方は 考えられないか、 すると どういう結果が予想されるかなども、

 書いてみると いいのではないかと思います。

 それを積み重ねていくことで、

 悪い反応のパターンを 少しずつ修正していくことが できるのではないでしょうか。

 認知療法は 効果的な方法ではないかと思われます。
 
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悪いパターンを 見つけ出す (1)

2010年04月01日 22時33分01秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人の、 認知, 感情, 行動の反応に見られる

 特有の癖を、 自覚して 修正していく必要があります。

 例えば、 カッとして 暴言を吐いてしまう 人の場合、

 どういう状況で どういう反応をしたかを、 細かく語ってもらいます。

 そして、その人がそう感じ、受け取ったことをまず尊重して、共感するように努めます。

 そのうえで、 冷静な視点で もう一度 振り返ってもらうようにします。

 カッとしたときの 相手の言葉は、 別の意味である 可能性はなかったか?

 どうして そのように感じたのか? 

 他にも 同じ反応をしてしまったことは なかったかなど、

 心の謎解きをしていくのです。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の主治医の先生は、 心子に 人格障害であるとは 言っていませんでしたが、

 その認識を 心子と僕とで共有し、 自分を見つめ直していく 作業はできないかと、

 先生に質問したことがあります。

 先生は 一瞬考え込み、

 僕は恋人として 支えることをしていったほうがいいと 言われました。

 恋人の立場で、 治療的な向き合い方は 難しいということだったのでしょう。

 当時は情報も少なく、

 上記のような方法を 心子との間で 取ることはできませんでしたが、

 トライしたらどうだったか、 今となっては 心残りな気がします。
 
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発症のきっかけと 本当の原因を区別する (2)

2010年03月23日 21時44分58秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 目の前に生じたトラブルは  「きっかけ」 に過ぎず、

 「本当の問題」 は、 それに対して 不適切な反応をしてしまうことです。

 心子も きっかけに囚われて、 一挙に絶望して 生きる価値を失ってしまったり、

 僕に対する 全面的な信頼が 最低の裏切りに 変わってしまったりしました。

 それは 一面的な見方であり、 囚われないことを伝えるのが 必要だといいます。

 あるとき 心子の症状が悪化して、 心子は全く悲観的になり、

 もう別れようと 涙ながらに言い出したことがあります。

 そのシーンを、  「境界に生きた心子」 から引用します。
 

「 『マーのためを思って 言ってるんだよ。

 今はできることをやって、 どうしようもなくなったら 捨てるのは残酷だよ。

 それだったら 今捨てて』

 僕は かぶりを振った。

 『どうして こんな大変なのに付き合うの?』

 『大変だけじゃないからだよ。

 いいことも悪いことも、 全部あって しんこだから……』

 心子は 僕を見上げ、 強い視線で 見つめ続けた。

 とても、 きれいに見えた。

 髪をなでた。

 キスをした……。」
 
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発症のきっかけと 本当の原因を区別する (1)

2010年03月21日 21時46分42秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 弁証法的行動療法の 「認証」 と並ぶ もうひとつの戦略は、

 「問題解決戦略」 です。

 しかし、 そもそも 「問題」 とは何かが 問題なのです。

 例えば、 自傷の原因は、 友だちの冷たい態度だと 本人は感じていますが、

 それは 「きっかけ」 であって、  「本当の問題」 ではありません。

 「問題」 には 二種類あります。

 ひとつは、 目の前に生じた トラブルで、

 これは 生きている限り 避けられないものです。

 もうひとつは、 こうした問題に対して、

 不適切な解決の仕方を してしまいやすいという問題です。

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 「きっかけ」 のほうを 問題だと思ってしまい、

 「本当の問題」 には なかなか目が向きません。

 トラブルを過度に 悲観的に受け止め、

 自分が 生きる価値のない人間だと 思ってしまう、

 自己否定的な認知が 共通して見られます。

 本人の苦しみを 受け止めるだけでなく、 それが一面的な見方であり、

 それに囚われないことを 教えるのが、 次のステップとして 必要なのです。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 
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ピンチをチャンスに変える 言葉を使う

2010年03月19日 21時47分02秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 弁証法的行動療法の柱のひとつに、  「認証」 というものがあります
 
 これは ピンチをチャンスに変える 関わり方で、 東洋的な発想です。
 
 どんな悪いことにも、 必ず 良い面や学ぶ点が あるという受け止め方です。
 
 境界性パーソナリティ障害の人は 二分法的な認知で、
 
 些細な悪い点も すべてを台無しにされたように 感じてしまいます。
 
 回復していくには、 その逆の 発想が必要です。
 
 それを 頭で理解するだけでなく、 心から実感して 身に付けていくことです。
 
 「それには何か 意味があるはずだよ」
 
 「それが分かっただけでも、 すごいじゃないか」
 
 周囲の者は、 本人も気付いていない プラスの意味を、
 
 見つけ出す名人に ならなければなりません。
 
 ところが現実には、 ダメな点を発見する 名人になってしまっています。
 
〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 
 
 以前 テレビでやっていましたが、 エジソンの母親は、
 
 幼いエジソンが 何かをやろうとして、 思う通りにいかず 泣いた時、
 
 「失敗したけれど、 そこから ~~ということが 分かってよかったね」
 
 と言って慰めたそうです。
 
 そしてエジソンは、
 
 「失敗してもいいんだ」
 
 ということを 学んだといいます。
 
 偉大な業績は 99の失敗と ひとつの成功からなる、
 
 というようなことも言われます。
 
 ボーダーの人は 失敗を恐れて、 何かを行なうことから 逃げてしまいがちですが、
 
 こんな言葉かけを 重ねていけば、 トライする姿勢が できてくるかもしれませんね。
 
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「聞く」 テクニックを磨く (2)

2010年03月16日 20時08分34秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 映し返しは、 その言葉が 真意を正確に表しているかが 重要なことです。

 それが 良いか悪いかの 判断はしません。

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 自分をありのままに表現することを 肯定される感覚を 味わうことができます。

 また 境界性パーソナリティ障害の人は、

 自分の言動が そのまま映し返されることで、 第三者的な目で眺めることができます。

 言われただけでは分からない 自分の癖を、 改めようという 動機付けになります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子が落ち着いているときに、

 不安定なとき述べた言葉を  “映し返し”たら どうだったでしょう? 

 落ち着いている心子とは 別人の彼女が 言ったことですから、

 その真意は 心子にも分からないかもしれません。

 そして、 そんなことを言ってしまった自分を 責めて落胆したり、

 その時の怒りが 甦ったりしてしまうかもしれません。

 映し返しは、 心子には有効でなかったかもしれない とも考えてしまいますが、

 どうだったでしょう。
 
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「聞く」 テクニックを磨く (1)

2010年03月15日 20時18分40秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 共感しながら 傾聴するのが基本ですが、

 「映し返し」 というテクニックがあります。

 大事なことは、 批判や評価を含めず、 鏡のように映し返すことです。

 「それは ~~ということ?」

 と話を要約し、 「違う」 と言われれば 説明してもらいます。

 行動や考え方も、 映し返すことができます。

 「~~したいということ?」

 と確かめてから、

 「それは、どうして?」

 などと尋ねます

 うまく答えられないときは、

 「もしかして ~~という気持ち?」

 と言葉にしてみせ、 次は本人に 自分の言葉で語ってもらうように 水を向けます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は 言葉が達者だったので、

 映し返しのテクニックは 必要でなかったかもしれません。

 心子が 不安定になっているとき、 その気持ちは 受け止めるようにしました。

 しかし、 心子が攻撃的に ぶつけてくる言葉は、 客観的なものではなく、

 その場限りのものなので、 真意を確認することもしませんでした。

 時間が経てば、 口にした言葉も気持ちも どこかへいってしまい、

 意味はなくなってしまいます。

 僕への非難に対しては、 気持ちは受け止めても、 共感・ 傾聴するのではなく、

 真に受けず、 巻き込まれないようにすることに 努めていました。

(次の記事に続く)
 
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