境界性パーソナリティ障害の人の 親は、
常識的な価値観や体面で 子供を縛っていることが 少なくありません。
子供は 親に認められたいために、 親が望むことを捨てられず、
本人自身が 自分を縛っている場合もあります。
境界性パーソナリティ障害は そのように、
自己を確立する過程の障害 という側面を持ちます。
境界性パーソナリティ障害は 常識的な価値を 覆す症状として 現れますが、
それは その人を縛ってきたものに対する 命懸けの異議申し立てなのです。
親から与えられた自分を 一旦否定することが、 回復に必要な過程です。
親の期待を裏切ることは 罪悪ではなく、
本人が選んだものをこそ 祝福するべきなのです。
〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
心子の父親は、 かなり 常識はずれの人だったようです。
幼い心子の 才能を見込んで、 勉強や礼儀作法, 社会の表と裏を 教え込みました。
父親は 心子には完璧を求めました。
心子を学校へはやらず、 家や実地で教えましたが、
学校の試験は 満点でなければ許さず、
99点だと 答案用紙を目の前で 破り捨てたといいます。
100か0かという 心子の性質は、
こんなところからも 植えつけられたのだろうと思います。
心子の父親は 世間体を気にする人間では なかったと思われますが、
完璧を要する価値観で 心子を縛りつけていたでしょう。
心子は 父に愛されるため、 完全な良い子である もう一人の自分を作り出し、
休むことも許されず 馬車馬のように突っ走りました。
しかし それは本来の 自然な自分ではなく、
無意識下に抑えつけていた 矛盾は、 いつしか噴出してくるのでした。