今日は、東京に 雪が降りました。
「境界に生きた心子」 から 抜粋します。
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葬儀の二日後、東京に 雪が積もった。
心子の好きな 雪が。
心子に 見せてあげたかった。
窓から 心子の写真と並んで 雪景色を眺めたあと、
写真を抱いて 雪の中を歩いた。
心子の上にも 白雪は降り注いだ。
「しんこ……見えるか?
真っ白い雪だよ。
きれいだね……」
この雪が もう少し早く 降っていたら、
心子を 思い止まらせることが できただろうか……?
その晩、僕は心子と 雪見酒を飲んだ。
心子が 一緒に飲みたいと 言っていた。
涙酒だった。
しんしんと、雪は降り続けた。
永久の旅路に発った 心子を弔うかのように……。