○ 性差
DSM-Ⅳ-TRによると、 BPDの男女比は 1:3とされています。
診断の偏りの可能性か、 男女の生物的・ 社会的要因の違いの 可能性があります。
性差別のために、 女性患者のほうに BPDの誤診が多いとしたら、
診断的偏りが生じることになります。
怒り以外のBPD診断基準が、 若干女性に特徴的と見なされてしまいますが、
男女の罹患率の違いを 充分説明できていません。
罹患率に性差があるとすると、 生物的・ 社会的要因の結果でしょう。
遺伝的影響による傾向
(感情的であること, 衝動性の強さ, ストレスに対する弱さ) は、
女性において頻繁に見られます。
性的虐待は、 女性が男性より 10倍多くあります。
育てられ方の違いによって、 ストレスに対して
男の子は外向き・ 行動的に、 女の子は内向き・ 感情的になるようになるのです。
○ 生まれと育ち
BPDの確定診断が 一致する確率は、
一卵性双生児では35%ですが、 二卵性双生児では7%です。
感情的であることや衝動性も 遺伝します。
不安, 感情不安定, 認知的統制不全, 同一性障害, 不安定な愛着なども、
かなりの遺伝性が認められます。
これらから、 BPDは 遺伝的影響が強いことが窺えます。
幼少期の不遇な経験 (養育放棄, 過剰なコントロール) も、
BPDを含むパーソナリティ障害に 関係があるとされます。
しかしこれらは BPDだけに認められることではありません。
幼少期の外傷的体験も BPD特有ではなく、
虐待された体験のある成人の 80%は 何の精神障害も発症していないのです。
遺伝的素質が環境的要因と 相互に関係していると考えられます。
脆弱性がある人は、 ストレスに対して BPDを発症しやすくなります。
また、 素質的特性によって ますます環境的ストレスに 晒されることもあります。
衝動性や感情不安定の気質があると、 その子は虐待されたりし、
衝動や感情の障害を生じる 可能性が高まるのです。
〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より