「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

BPDの要因

2013年07月11日 21時05分27秒 | 「BPD最新ガイド」より
 
○ 性差

 DSM-Ⅳ-TRによると、 BPDの男女比は 1:3とされています。

 診断の偏りの可能性か、 男女の生物的・ 社会的要因の違いの 可能性があります。

 性差別のために、 女性患者のほうに BPDの誤診が多いとしたら、

 診断的偏りが生じることになります。

 怒り以外のBPD診断基準が、 若干女性に特徴的と見なされてしまいますが、

 男女の罹患率の違いを 充分説明できていません。

 罹患率に性差があるとすると、 生物的・ 社会的要因の結果でしょう。

 遺伝的影響による傾向

 (感情的であること, 衝動性の強さ, ストレスに対する弱さ) は、

 女性において頻繁に見られます。

 性的虐待は、 女性が男性より 10倍多くあります。

 育てられ方の違いによって、 ストレスに対して

 男の子は外向き・ 行動的に、 女の子は内向き・ 感情的になるようになるのです。

○ 生まれと育ち

 BPDの確定診断が 一致する確率は、

 一卵性双生児では35%ですが、 二卵性双生児では7%です。

 感情的であることや衝動性も 遺伝します。

 不安, 感情不安定, 認知的統制不全, 同一性障害, 不安定な愛着なども、

 かなりの遺伝性が認められます。

 これらから、 BPDは 遺伝的影響が強いことが窺えます。

 幼少期の不遇な経験 (養育放棄, 過剰なコントロール) も、

 BPDを含むパーソナリティ障害に 関係があるとされます。

 しかしこれらは BPDだけに認められることではありません。

 幼少期の外傷的体験も BPD特有ではなく、

 虐待された体験のある成人の 80%は 何の精神障害も発症していないのです。

 遺伝的素質が環境的要因と 相互に関係していると考えられます。

 脆弱性がある人は、 ストレスに対して BPDを発症しやすくなります。

 また、 素質的特性によって ますます環境的ストレスに 晒されることもあります。

 衝動性や感情不安定の気質があると、 その子は虐待されたりし、

 衝動や感情の障害を生じる 可能性が高まるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする