現実の一部にしか 目を向けないために、 感情に圧倒されてしまうことがあります。
この考え方を 「フィルタリング」 といいます。
例を挙げます。
・ XさんはオールAで、 第1志望の大学の 奨学金を得ています。
しかし数学のテストで 悪い成績をとったとき、
「私は駄目な人間だ」 と思い、 感情に圧倒されてしまいました。
・ Yさんの両親は親切で、 彼女にベストなことをしてくれました。
しかしYさんが5才のとき、 彼女の父親は、 彼女が口答えしたのを叱り、
1週間外出禁止にしました。
Yさんが大人になって、 子供時代を考えるとき、
思い出すのはそのでき事だけでした。
思考のバランスと 感情のバランスをとり始めるには、
でき事の両面を 検討するのが必要です。
・ 自己批判を支持する証拠と、 あなたが良い人間だという証拠
・ 誰もあなたのことを気にかけていない という証拠と、
人々があなたを 気にかけているという証拠
・ 何もまともにできない という証拠と、 過去の成功の証拠
・ ひどい状況だという証拠と、 思ったほどひどくはない という証拠
・ 概して、 悪いことの証拠と、 良いことの証拠
苦痛な思考と感情に 反する証拠を検討することによって、
全体像が見えるようになるでしょう。
練習を積めば、 それほどフィルターをかけなくなり、
感情に圧倒されることも少なくなります。
(次の記事に続く)
〔「弁証法的行動療法 実践トレーニングブック」星和書店
(マシュー・マッケイ,ジェフリー・C・ウッド,ジェフリー・ブラントリー)
訳/遊佐安一郎,荒井まゆみ〕より
[星和書店の許可のうえ掲載]