もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

治に居て乱を忘れず

2020年04月16日 | 歴史

 現在ではどうなったか知らないが、現役だったころ「危険予知訓練」が盛んだった。

 危険予知訓練とは、現場作業者の労働災害局限のために作業員間で作業に潜む危険を予想・指摘して安全行動の目標を立てるもので、KYT訓練・活動とも呼ばれていた。訓練は作業の写真やイラストを基に、作業員間で危険を回避する具体的な行動を共有することを目標としているが、行動目標が上からの指示ではなく自発的と認識することで、指示よりも効果的とされている。正しい訓練方法は後に知ったことであったが、自分が所掌する機関室でも、拾い読みした米海軍での紹介記事に倣ってツールボックスミーティング(道具箱に腰かけて話し合う)と称して当日の作業安全を図っていた。ミ―ティングは停泊中の平易な時期に限ってベテラン海曹の発言を禁じて、概ね実務経験2~3年の若年隊員をリーダーに指名して当日の作業安全策を議題としたが、回数を重ねることによって航海中の緊急作業にあっても安全対策を若年者が自ら行う等、効果があったのではと思っている。アルピニストの野口健氏が「平時に様々なケースを想定し有事に備える。そのための平時と心得た方がいい。」と書かれていたが、前述した自分のささやかな経験からも同感である。野口氏の発言は中国ウィルス禍の教訓を今後の法整備に生かせということが主眼であるが、国民一人一人の意識改革の方がより緊急であるように思える。強制力がない要請とは言え、外出禁止を「御上の意向に”しぶしぶ従う”」のと「自発的に危機感をもって従う」のでは、実効性は大きく異なってくるのではないだろうか。現場が引き起こした不祥事に対して「教育は十分に行っていた」との言い訳が随所になされるが、教育が訓示・指示・講義形式をとる限り、趣旨が完全に末端まで浸透することは期待できないと思う。現に横浜市役所が、保育士の感染を知った保育園の保護者への通知と休園要請に対して、保健所の対応が終わるまで現状を維持するよう回答した例が報じられている。幸いにして保育園が市役所の判断に反して通知と休園を断行したために園児の感染は局限されたが、市役所の回答がどのレベルの判断であったのか報じられないものの危機意識が末端まで浸透していない状況と観るべきではないだろうか。

 危険予知訓練には、現場写真やイラストで討議参加者にテーマを与えるが、中国ウィルス対処についてはメディアから多くの画像が提供される。映像を見るのに飽き飽きした感があるが、その映像は多くの危険要因と対処を与えてくれると思う。キング・カズは「セルフ・ロックダウン」と自戒し、古人は「人(他人)の振り見て我が身を直せ(「正せ」若しくは「質せ」とするべきか?)」と諭している。昨日、市役所から無料配布される「次亜塩素酸水500ml」を貰った序に余分な行動をしそうになった自戒を述べて、口演終了。