中国ウィルスの猖獗に伴い、個人情報と公益の関係を再検討すべきではなかろうかと考える。
2013年にマイナンバー制度が導入された際には、野党から徴兵をし易くするための制度と反対されたこともあり、マイナンバーは徴税等の行政の場での活用に留まり市民生活の利便性向上という目に見える形で活用されることは無く、2018年からの本格運用と用途拡大に伴って若干の利便性向上が図られたようであるが、中国ウィルス対処に対して思ったほどの効果を上げていないのではと思っている。これは、2003年に施行された個人情報保護法の拡大解釈が壁になっているのではないだろうか。同法の趣旨を踏まえて、感染が拡大するまで感染例は県単位でしか発表されなかったため、多くの国民は感染を実感することは無かった。また、クラスター感染対処が始まった当初も感染源は「大阪府のライブハウス」や「千葉県のスポーツクラブ」と発表されたため、情報として全く生かされることは無かったと思われる。これらは、公益よりも個人情報を優先すべきという解釈に依ったためであろうが、このことが危機管理のうえでは大きな阻害要因であることに漸く気付いた行政は、感染例を市区町村単位、クラスター感染源の固有名まで公表することになって、ようやく国民も危機を実感・共有して不十分ながらも外出自粛や学校閉鎖に応じるようになった。公表された施設等では周囲から誹謗中傷や村八分的な扱いをされているのかとも推測されるが、公益維持のためにはやむを得ないと思われる。これまで個人情報保護法で保護されていたは「のり弁」と称されるように個人名を黒塗りした官庁提出の資料であり免職未満の懲戒処分で済まされた「いじめ教員」等であり、法は善人を保護するよりも悪人の隠れ蓑と化していた感がある。
中国ウィルスの医療対処と並行して休業補償や個人所得補償が取り沙汰されているが、その査定や事務処理にマイナンバーがどれほど活用されるのだろうか。韓国・台湾・欧米等での迅速な対応が評価されているが、その背景には個人の動向や経済活動を行政が全て把握していることが考えられる。それらの国々ではホストコンピューターのキーを押せば、一定の条件に当てはまる市民をたちどころに抽出できると思われる。マイナンバー制度導入時にはIT先進国を目指した日本であったが、今回の危機で図らずもIT後進国であることが露呈した。ある程度のリスクがあったとしても、個人情報を行政に委ねることは必要ではないだろうか。まして危機に於いてスピーディーな行政支援を期待するならば、このことは避けて通れない道で、それでも声高に個人情報厳秘を叫ぶ人は、それほど政府を信用していないのか、はたまた余程の後ろ暗さをお持ちなのかと勘繰られるゾ。