視覚障害がある人もない人も一緒に遊べるボードゲーム「アラビアの壺(つぼ)」を、国分寺市のデザイン事務所が開発した。一日から三日まで、すみだ産業会館(墨田区)で開かれる視覚障害者のための総合イベント「サイトワールド2014」に出展、販売する。アラビアの壺は、三月に立ち上げたこの事務所の商品第一弾。代表の浜田隆史さん(30)は「需要は多くなくても、本当に欲しいと思ってもらえる商品を作っていきたい」と意気込む。
アラビアの壺は、二十センチ四方のボードに九個の壺を並べて数人で遊ぶ。壺は三種類あり、それぞれビー玉、鈴、BB弾が入っている。見た目は全部同じだが、振ると「コトコト」「シャカシャカ」と違う音がする。ゲームの参加者は「壺の音を聞く」または「隣同士の壺を入れ替える」という動作を順番に繰り返していき、三×三のマスの縦、横、斜め、いずれか三個の音を最初にそろえれば勝ち。音を聞き分ける力と記憶力が鍵になるという。
試作品を視覚障害者支援のNPOなどに持ち込んで遊んでもらったところ「面白い」と好評。ゲームのイベントで販売してみると、十セットがあっという間に売り切れた。手応えを感じ、今回は千百セットを用意する。
浜田さんは五年前に武蔵野美大を卒業後、ゲーム会社でビデオゲームの企画を手掛けた。「うちの会社のゲームは『全人口向け』と言っているけれど、視覚障害者は楽しめないじゃないか」と感じ、ボードゲームの企画を温め始めた。
企画だけでなく製造、販売まで手掛けたいと二月に退職し、自分の事務所を設立。同じ武蔵野美大卒の佐藤仁さん(29)、梶川晴香さん(26)も加わった。視覚障害者も楽しめるゲームの第二弾も企画しており、玩具(がんぐ)に限らず幅広く商品開発していきたいという。
アラビアの壺は通常版六千八百円、音声説明CD付きユニバーサル版八千八百円。一日からホームページ(「アラビアの壺」で検索)でも購入できる。
「少数派ユーザーのための製品を作っていきたい」と話す浜田隆史さん=国分寺市で
2014年11月1日 東京新聞