『三人姉妹』を上演した「じゆう劇場」の団員たちの障害はさまざま。プロデュースした「鳥の劇場」主宰の中島諒人さん(48)らスタッフが、彼らと劇を作る過程で心掛けたのは「できる範囲を勝手に決めない」、そして「お互い分かろうとすることを諦めない」(中島さん)ことだった。
中島さんいわく、人には2通りある。「分かってないけど『分かった』って流す人と、分かるまで聞き続ける人」
スタッフも団員も“流す”ことなく取り組み、スタッフは団員が理解に苦しんでいそうなら、いろいろな言葉で言い換えた。演出の提案に対して答えが出るまで待った。
肢体不自由と軽度の知的障害がある島田ひかるさん(23)は陸軍中佐役。「分からなかったら何回でも聞きたくなる」タイプで、言葉や所作の意味を正確に知りたいと議論が長引くこともあったが、とことん応じた。「演劇は本来こういうもの。一生懸命何かを作るために障害の有無は関係ない」と中島さん。
団員たちは、本気で分かり合うことを積み重ねて役を理解すると同時に、劇でも日常でも、自分の代わりは誰にも利かないことを意識できるようになった。本番で一人一人が気持ちを乗せてせりふが言えたのは、その結晶。「役になりきれた。あしたからも自分の暮らしや子育てを頑張れそう」と井上正美さん(40)は話す。
「障がいを知り、共に生きる」が大会テーマだが、舞台で「あるべき未来の姿の先取りができた」と中島さん。「きょうをスタートに、鳥取からこの姿を発信し続けたいと思う」と力強く語った。

チェーホフの「三人姉妹」を演じる「じゆう劇場」のメンバーら=2日、鳥取市のとりぎん文化会館
2014年11月3日 日本海新聞