十一月一~三日に長崎県で開かれる第十四回全国障害者スポーツ大会に、共に障害がある東京都品川区の高校生姉妹が、都代表として初出場する。三年生の姉はボウリング、一年生の妹は車いす短距離走(100メートル)。都障害者スポーツ協会によると、きょうだいそろっての全国大会出場は同じ団体競技ではあるが、別々の個人競技では珍しい。
「全国大会で二人そろってメダルを取りたい。二〇二〇年東京パラリンピックでは、お姉ちゃんの声援を受けて走る」。妹の山口晴加(はるか)さん(15)=都立六本木高=が声を弾ませる。姉の碧海(あおみ)さん(18)=都立港特別支援学校=と共に、五~六月に行われた都障害者スポーツ大会に出場。全国大会代表の座をつかんだ。
姉は生まれつき知的障害で言葉が不自由、妹は両脚の障害でずっと車いすの生活だ。
スポーツとの出合いは、晴加さんが小学生のころ。横浜市内の障害者スポーツ施設を紹介され、母親の恵(けい)さん(45)に付き添われて通い始めた。目標タイムを目指してトラックを車いすで走り、練習に来る目上の人に、こぎ方を教わった。
中学生になり、同市の競技会で上位入賞。本年度は、パラリンピックのメダリストらが名を連ねる日本身体障害者陸上競技連盟の強化指定選手(育成枠)に選ばれた。
「妹のようになりたかった」。生き生きとした姿をうらやましく思った碧海さんの興味を引いたのが、ボウリングだった。施設職員の勧めもあり、中学三年から取り組んだ。最初はボールを持つのもひと苦労だったが、週一回の練習でスコアを170まで伸ばした。
「同じ施設で練習し、互いを意識してきた」と恵さん。自分に自信がなかった碧海さんも、内気だった晴加さんも、スポーツを通じて活発になった。父親の栄二さん(47)は「地道にやってきた。全国から来る人との交流を大切に」と喜ぶ。
仲の良い姉妹だ。言葉を十分に話せない碧海さんは中学生の時、上級生にいじめられた。小学生だった晴加さんは「ひどいことを言わないで」と食って掛かった。今夏は、家族でよく行く川崎駅近くのショッピングモールに、初めて二人だけで出掛けて写真を撮った。晴加さんはそれを大切に持っている。
大会が迫った三十日、二人が通った品川区立伊藤学園(当時は原小学校)に、「祝出場 おめでとう」の横断幕が掲げられた。姉妹をよく知る同区知的障害者育成会の大上好江(よしえ)会長(67)は「晴加ちゃんは活発。碧海ちゃんは根気強い。頑張って」とエールを送る。
都の選手団は二百二十六人。ボウリングなど個人は六競技、ソフトボールなど団体は七競技に出場する。ボウリングは二〇年東京パラリンピックでは種目になっていない。
都大会で獲得したメダルを胸に、全国大会での健闘を誓う山口碧海さん(右)と晴加さん=29日、東京都品川区で
2014年10月31日 夕刊 東京新聞