◇補助犬は目や足や耳 普及活動をライフワークに−−中山君江さん=宝塚市
「10〜20年前に比べ、補助犬の同伴拒否は減った。だが、理解が広がったとは言えませんね」。盲導犬の使用歴28年の宝塚市、中山君江さん(64)は語る。3代目のパートナー、エレナと一緒に補助犬の普及活動に取り組んできた。16日のシンポジウムの補助犬トークでは、パネリストの1人として意見を述べる。
中山さんは30代半ばに病気で失明。当時、2人の娘はまだ幼かった。娘がけがをしても気づかなかったこともある。だが「1人で歩きたい」との思いは強く、ヘルパーや家族に頼りきりになることはしたくなかった。36歳で使用者になった。
その頃は飲食店などを訪ねても、同伴拒否が常だった。抗議もしたが、受け入れられずに帰ることが多く、歯がゆい思いを重ねた。
02年に身体障害者補助犬法が成立。不特定多数の人たちが訪れる施設などでの同伴受け入れが義務化された。理解は進みつつあるが、十分とは思えない。中山さんは「確かに同伴拒否は以前の10分の1ぐらいに減ったが、レストランなどで拒否されるケースはなくならない」と訴える。
今年7月には埼玉県で盲導犬が何者かに刺されてけがをしたとされる事件が起きた。中山さんによると、報道されることは少ないが盲導犬が蹴られたり、いたずらをされるケースは時々ある、という。中山さんは「もし、盲導犬に近付く不審者を見つけたら、そっと使用者のそばに立ってほしい」と求める。「代わりに使用者の『目』となってもらうことで、不審者を追い払うことができるのではないか」と話す。
娘2人を育て上げた後、06年に障害者の社会参加を応援するNPO法人「とことこ」を設立した。作業所の運営やヘルパーの派遣などに力を入れる。その一方で、ライフワークとしているのが補助犬への理解を求める活動だ。10月下旬には小学校での講演で、児童らにこう語りかけた。「みんな、『目』や『足』や『耳』を家に置いて、外に出掛けられへんやろ。それが補助犬の役割なんや」。子供たちへの講演では、分かりやすい言葉を心がけている。そして続けた。「だから、同伴拒否されると私たちは困る」−−。
歓声や拍手が聞こえると、まぶたの裏に熱心に耳を傾ける子供たちの顔が浮かぶ。未来を担う子供たちに補助犬を理解してもらうことで、社会が変わっていくと信じる。
第23回障害者週間記念事業・第16回身体障害者補助犬シンポジウムは16日(日)午前10時20分〜午後4時、宝塚市逆瀬川1の「アピア1」一帯で開かれる。補助犬トークや鈴木凜太朗さんのピアノコンサート、補助犬デモンストレーションなどがある。無料。市障害福祉課(0797・77・2077)。
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毎日新聞 2014年11月14日 〔阪神版〕