◇16年施行解消推進法向け 年度内に指針
「車いすはお断り」とタクシーの運転手が乗車を拒否したら、それは、差別にあたるのか。こうした疑問に答えようと府が、障害を持つ人の体験に基づく判断基準を盛り込んだ独自の指針作りを進めている。障害者への差別を禁じる法律が2016年4月に施行されるのに向け、どこまでが差別かを線引きするのが狙い。今年度中にまとめ、施行後のトラブルを防ぎたいとしている。(増田弘輔)
昨年6月に成立した障害者差別解消推進法は不当な差別を禁じ、民間事業者などに過大な負担にならない範囲で、障害のある人が利用しやすいような配慮を求めている。国は差別があった場合、勧告や指導などを行う。
ただ、同法には何が差別にあたるのかという具体的な規定はない。国は今後、指針をまとめるとしているが、府は「いち早く物差しを示すべきだ」として、昨年11月、有識者や障害者団体代表、企業経営者ら19人でつくる専門部会(部会長=関川芳孝・府立大教授)を設置。ホームページなどで差別の実例を募集した。
すると、「知的障害者がバスの運転手に『乗らないで』と拒否された」「障害者が賃貸住宅で同居する母親の死後、不動産管理会社から単身入居を理由に退去を求められた」「ジムで『健常者の同伴が必要』と言われ、利用できなかった」などと、昨年12月末までの2か月で約700件が寄せられた。
専門部会は各事例を分析し、今年9月、議論を集約して提言にまとめた。差別をなくすための対策として指針作りのほか、トラブルを防止、解決する態勢の整備や、理解を深めるための啓発活動を盛り込んでいる。
提言を受けて府は今後、差別にあたる事例を整理。受け入れ側に求められる配慮の具体例とあわせて紹介する考えだ。全国的にも珍しい取り組みという。
一方、指針に実効性を持たせるため、悪質な企業の公表などを盛り込んだ条例の制定や、差別かどうかを判断する第三者機関の設置も検討する。
昨年10月には、府内などで営業する理美容チェーンの大半の店舗が車いすでの入店を拒否し、障害者らから抗議を受けるトラブルも発覚した。府障がい福祉企画課の担当者は「事業者が混乱しないよう、わかりやすくまとめたい。障害を持つ人が嫌な思いをすることが、少しでも減ればうれしい」と話している。
内閣府共生社会政策担当では「地域の実情を踏まえ、差別をなくすために有意義な取り組みだ」と評価している。