来年1月の阪神大震災20年を前に、震災後の障害者を取り巻く環境や福祉行政を検証しようと、県聴覚障害者協会は県内の聴覚障害者らを対象にアンケートを実施した。災害発生時の情報入手や避難に不安を感じている障害者が半数近くに上るなど、地域で孤立しがちな実態も浮き彫りになった。
県内の聴覚障害者や家族ら1115人を対象に、同協会のメンバーらが2013年度、訪問による聞き取り調査を行った。
聴覚障害者に対し、「災害などいざという時に頼る人」を尋ねた設問(複数回答)では、653人(73・5%)が「家族や親戚」と答え、「近所の人」は226人(25・5%)、「福祉事務所や役所の職員」は65人(7・3%)にとどまった。近所付き合いが希薄な障害者が大半で、いざという時に家族に頼らざるを得ない現状が浮かび上がった。
また、コミュニケーション面で困ることとして、「災害の時の情報入手方法や避難方法が不安」と回答した人は402人で障害者全体の45・3%を占め、「病院や医者にかかる時の会話」も350人(39・4%)に上った。
今後、必要な施設やサービスとして、384人(43・2%)が「災害時にも聴覚障害への配慮があり、地震が起きても安心して避難生活できる制度」を挙げ、258人(29・1%)が「様々な災害時の対応や地域が学べる制度」を求めている。
聞き取り調査の中では、阪神大震災などでの被災体験談も多く寄せられ、「避難所で食事の配給情報が伝わらなかった」「避難所が分からず、1週間ワゴン車内で過ごした」「仮設住宅を転居するたびに人間関係を築くのが大変だった」などの声もあったという。
同協会の本郷善通理事長は「震災から20年になるが、聴覚障害者に対する福祉は思ったほど進んでいない。聞こえない人の思いをしっかり受け止め、課題を提言していきたい」と話している。