適年の移行先としては、中小企業の場合、確定給付企業年金・規約型、
企業型・確定拠出年金、中小企業退職金共済ということになります。
このうち、確定給付企業年金・規約型は、移行後の積立不足への対応の
問題を考えると、中小企業に果たして向いているかということで、現実的な
移行先は、企業型・確定拠出年金(=DC)か中小企業退職金共済というこ
とになります。
さて、中小企業退職金共済は、中小企業の適格退職年金の移行先に向い
ているでしょうか?
企業としての歴史の長いケースでは、退職金制度がかなり古い上に、複雑
な計算をしていることがあります。
適年で、上記の退職金を準備するのは、問題がないのです。
ここで問題というのは、退職金の支給を適年の積立金から行うということに、
問題がないということです。
適年は、従業員1人1人ごとのお金を分離して積み立てている制度ではなく、
ファンドとしてまとめて管理しているからです。
これを、中退共や企業型DCに移行すると、従業員全体の退職金のファンド
としてのお金から、従業員1人ずつの退職金に分けてしまうことになります。
古い複雑な退職金のルールを、中退共や企業型DCのルールによる積立
方法に変換することになります。
中退共の掛金は、5,000円から30,000円まで16種類です。
あまり複雑でない退職金の支給ルールは、対応できますが、複雑な要素が
あると、中退共の掛金パターンでは、『無理』があります。
対処方法としては、
①中退共の部分を可能な限り小さくして、後は保険商品を使う。
→この方法は、これまでこのブログで繰り返しお伝えしてきましたように、
お勧めできません。
では、お勧めの方法は、
②現状の退職金のルールを変更する。
→既得権を保証し、退職金制度の意義等を検討し、必要なら現在の退職
金の支給の考え方を踏襲して、退職金規程を変更する。
②は、移行先のルールに合わせるためということで行うと、もちろん失敗しま
す。適年の移行を検討する際、企業としての退職金の意義、財務戦略・人事
戦略との整合性といった観点から、退職金制度を見直すということが必要だ
と考えます。