褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 殺意の瞬間(1956) 男は騙されやすいです

2022年03月21日 | 映画(さ行)
 数多くの傑作を遺したジュリアン・デュヴィヴィエと名優ジャン・ギャバンだが、映画史に遺る名コンビと言っても良いと思うのだが、本作もなかなか派手さは無いがフランス映画らしい渋いサスペンス映画になっている。冒頭から流れるシャンソン風の音楽が非常に心地良いのだが、あまりにも恐ろしい歌詞に俺は凍りついてしまったが、その時だけ目をつぶって聴けば良かった。
 ジャン・ギャバン演じる50歳を超えているように見えるオジサンが主演だが、礼儀正しく思いやりのある良い人なのだが、こういう役を本当に彼は上手く演じる。特に本作の彼はマフィアの親分ではなく有名料理店のコックの役だから、尚更良い人に見える。しかし、いつもジャン・ギャバン演じる主人公の欠点はすぐに女性を好きになってロクな結末にならないこと。本作でも20歳ぐらいの可愛い女性に痛い目に遭わされる。

 男って若くて綺麗な女性には騙されやすいと改めて知らされるストーリーの紹介を。
 アンドレ(ジャン・ギャバン)は離婚をしていて子供はいないが、パリの有名料理店のオーナー兼料理長。毎日、有力者が訪れる有名な店だ。そして、彼には息子以上に年齢が離れているが、ジェラール(ジェラール・フィリップ)という知り合いがいるのだが、まるで本当の父親のように面倒をみてやっている。
 ある日こと、アンドレの元嫁であるガブリエル(リュシエンヌ・ボガエル)の娘であり18歳のカトリーヌ(ダニエル・ドロルム)が、マルセイユからアンドレを訪ねてやって来た。20年も前にガブリエルとは離婚しているので、アンドレとカトリーヌは全く血の繋がっていない他人。しかし、カトリーヌは数日前に母のガブリエルが亡くなって、行く場所も無いのでここにやって来たと告げる。どことなく水ぼらしい姿をしたカトリーヌが可哀想に感じ、彼の家に泊めることにし、仕事も与えるようにしたのだが、実はカトリーヌは結構な悪女であり・・・

 離婚して独り者のアンドレだが、お手伝いのおばさん、そしてディスコを経営している母親が近くにおり、この2人の年配の女性が非常にしっかりしているし、巧みなキャラクター設定で重要な役を演じている。この年配の女性がしっかりしているので、もう50歳の中年以上のオジサンが人生の失敗を繰り返さないように止めている。
 しかし、やばいのが小悪魔的美少女であるカトリーヌ。我々のようなオジサンになると、みっともないのだが、少し若い女の子から声を掛けられると大喜びでウキウキしてしまう。本作のジャン・ギャバンもすっかりカトリーヌのあらゆる嘘に騙されて、息子のように仲の良かったジェラールとは完全に仲違いしてしまい、危うく自分の命だけでなく全財産を乗っ取られそうになる。こういう映画を観ると、全く知らない若い女性から声を掛けられると、喜んでばかりいないで少しは相手の企みを考えるようにしなければいけないと思った。
 少し苦い味がするようなサスペンス映画であり、最初は性格の良さそうな可愛い女の子が次第に本性を見せていく展開にスリルを感じさせる。サスペンス映画とはいえ、中年男の悲哀を感じさせる殺意の瞬間を今回はお勧め映画に挙げておこう。

 監督は前述したジュリアン・デュヴィヴィエ。ジャン・ギャバンとのコンビでは望郷が素晴らしいし、地の果てを行くもお勧め。他にオムニバス風に展開される舞踏会の手帖、幻想的な雰囲気が漂うわが青春のマリアンヌ、アラン・ドロン主演で遺作の悪魔のようなあなた等お勧め多数です。
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