
にほんブログ村 映画ブログ


人気ブログランキングに参加しております。クリックお願いします

ギリシャのイメージと言えば、太陽の光が燦燦と降り注ぐ浜辺で女の人が裸で歩いているとっても綺麗なエーゲ海があり、文化遺産が多くある観光地であり、そしてギリシャ危機により怠惰な国民性が明らかになってきた。そんなイメージを全て味わえるギリシャ映画が今回紹介するエレニの旅だ、と言うのは全て嘘。
ほとんどが雨や雪が降っているシーンばかりだし、裸になっている女の人は出てこない。そして文化遺産らしき物なんて全く出てこないから観光気分を味わえるはずもなく、のん気なギリシャ人なんか1人も出て来ない。それどころか生きていくのに必死になっている人ばかり登場する。
はっきり言って、ひたすらノーテンキで楽しい気分を味わいたい人にとっては全く向かない映画だ。
さてストーリーは、ロシア革命のあおりを受けて、オデッサから逃れてきた逆難民としてギリシャ人たちが戻ってくる。その中にはロシア革命によって両親を亡くしたまだ幼いエレニ(アレクサンドラ・アイディニ)の姿もあった。
それから10年後、彼らはニューオデッサ村を築き、エレニ(アレクサンドラ・アイディニ)は村のリーダーであるスピロス(ヴァシリス・コロヴォス)の養女として育てられるのだが、彼女はスピロス(ヴァシリス・コロヴォス)の息子であるアレクシス(ニコス・プルサニディス)の子供を身篭り、双子の男の子をスピロス(ヴァシリス・コロヴォス)に隠れて産んでしまう。
やがて妻が死んでしまったスピロス(ヴァシリス・コロヴォス)だったが、彼はエレニ(アレクサンドラ・アイディニ)を妻として迎えいれようとするが、結婚式の当日、エレニ(アレクサンドラ・アイディニ)はアレクシス(ニコス・プルサニディス)と一緒に逃亡する。そして2人は音楽隊のニコス(ヨルゴス・アルメニス)と一緒に同行するのだが、スピロス(ヴァシリス・コロヴォス)は執拗なまでにエレニ(アレクサンドラ・アイディニ)を追いかけてくるのだが・・・。
実は観ている途中は、強欲なエロ爺いからの逃亡劇だと思っていたのだが、そんな部分は前半のハイライトにしか過ぎない。イデオロギー対立、ギリシャ内戦、新大陸への夢と挫折を背景に想像を絶する困難が次々とエレニに襲いかかって来る。特に何も悪いこともしていないのに自分の行動が災いを招き、しかも自分に降りかかってくる恐ろしいほどに理不尽な展開が最後の最後まで続く。自分はなんて不幸なんだと思っている人でもエレニの旅(人生)を観ていると、きっとそんな自分勝手な悩みを改めようとするはずだ。
特にせっかく困難の末に一緒になることができた家族が離散してしまう様子は哀れすぎて絶句する。集合離散する家族は、まさにギリシャの歴史を象徴しているのか?そのようについつい深読みしてしまうのが可能な映画だ。
時々、急に子供が何処からと無く現われたり、大きな木に羊がぶら下がっていたり、いきなり石を投げられたり、いきなり逮捕されたり等など、なんで?と思うシーンが出てきたりして一瞬悩んでしまうが、観ているうちに『ああ、あのシーンはそういうことだったんだ』と理解できるようになっていて、普段は使わない脳みそも自然と使うような構成がなかなか珍しい映画だ。
そしてア~マ、ポ~ラ~

3時間弱という非常に長い作品ながら、ひたすら悲しいエレニの人生に感動し、ちょっとだけギリシャの近代史を勉強した気分になれるエレニの旅はテオ・アンゲロプロス監督の作品が好きな人、またはテオ・アンゲロプロス監督が少しばかり気になる人、そして余韻が残る映画が観たい人にはお勧めです。
![]() | エレニの旅 [DVD] |
アレクサンドラ・アイディニ,ニコス・プルサニディス,ヨルゴス・アルメニス | |
紀伊國屋書店 |
![]() | エレニの旅 Blu-ray |
テオ・アンゲロプロス,トニーノ・グエッラ,ペトロス・マルカリス,ジョルジオ・シルヴァーニ | |
紀伊國屋書店 |
ちなみに監督はギリシャ人の巨匠テオ・アンゲロプロス。最近、この監督の作品ではこうのとり、たちずさんでを観ました。ちょっと詳しいことはそちらのブログを観てください。

にほんブログ村 映画ブログ


人気ブログランキングに参加しております。クリックお願いします
