かつて、日本で行われたボクシングの試合で
ネコパンチを披露して大いに笑わせてくれた
ミッキー・ロークだが、なんと去年の11月にロシアで62歳にしてボクシングに復帰。29歳の選手を相手にダウンを2回奪うなどの完全無欠のKO勝ち。これは、恐るべきミッキー・ロークのタフネス振りを褒め称えるべきなのか、それとも相手の29歳の選手にボクシングを今すぐにでも辞めるようにアドバイスすれば良いのか、それとも他に何か真実が隠されているのか!?
あのネコパンチ以来、すっかりソッポを向かれ公私共にどん底を味わったミッキー・ロークが主演したボクシング選手ではなくて、落ち目になったプロレスラー役で出演している映画が今回紹介する
レスラー。
最初、彼がプロレスラー役で主演すると聞いた時はギャグ映画かと思って笑う場面が多数出てくるのかと思っていたのが、さにあらず。俺の想像力の浅はかさを思い知らされるほどの当時56歳のミッキー・ロークの役作りが完璧。かつての美形だった頃の面影はすっかりなく顔はデコボコだが、体型は56歳だと思えないと言うか、そこら辺にいるプロレスラーと大して変わらないほどのビルドアップ振り。さらには自らのこれまでの生き様を投影したかのようなキャラクター作りは、彼の背中から男の哀愁が漂ってきて感動的。しかも実際のプロレスをするシーンにおいても、56歳とは思えないぐらいのパワフルで俊敏な動きを見せてくれる。
その結果として、本作品において男ミッキー・ローク健在を印象付けた。
そして共演者で興味深いのが、かつて
いとこのビニーで見た目からして処女っぽい愛くるしさで注目を集めた
マリサ・トメイ。さすがに彼女も何時までも永遠の処女のイメージのままでは長く女優人生が続くわけがない。そんな彼女が40歳半ばを迎えた時に、本作品にシングルマザーのストリッパー役で出演しているのだが、まさに女優としてのプライドが伝わってきて涙が出そうになる。確かに年齢の割りに普通の人よりも見た目は綺麗だと思うが、かつての清純そうだった頃を知る者にとって、映っているシーンの顔の表情は角度によっては、やっぱり老けたよな~と思ったり、40歳代半ばの体を晒してストリップダンスをしているシーンを見せられて、なぜかショックを受けたり。俺なんかは彼女が登場するたびに心が寂寥感に包まれてしまったのだが、なぜなんだろう。
しかし、彼女の自虐的チャレンジは決して無駄ではなかったのは、今や個性派女優として貴重な存在感を示していることが証明している。
過去の栄光がはるか昔の物になり、すべてを失った男の物語とはどのようなストーリーなのか。
20年前には人気レスラーであったランディ(
ミッキー・ローク)だが、今はすっかり落ちぶれて、トレーラーでその日暮らしの日々。週末はスーパーでバイトをして、平日は昔の最盛期では考えられないようなキワモノ的興行を行っているプロレス団体に所属し、色々な意味で痛い試合をしている。
そんなランディ(ミッキー・ローク)の唯一の心の拠り所は、安物のストリップ劇場に出掛けて、ひそかに思いを寄せるキャシディ(
マリサ・トメイ)に会いに行くことだった。
そんなランディ(ミッキー・ローク)だったが、かつての名勝負から20周年記念の企画としてランディVSジ・アヤトラ戦が組まれることが決定。多くの観客を抱えるメジャー団体での活躍のチャンスが巡ってきたと喜ぶランディ(ミッキー・ローク)だったのだが、ある試合の終了後に、長年に渡る筋肉増強剤を使用してきた影響がたたり、心臓麻痺を起こして倒れてしまう。
何とか一命を取り留めたランディ(ミッキー・ローク)はプロレスから引退することを決意。長く疎遠になっていた娘ステファニー(
エヴァン・レイチェル・ウッド)とはキャシディ(マリサ・トメイ)の協力もあり、再び父娘との関係が結ばれ新しい人生を歩めるかと思ったのだが、ランディ(ミッキー・ローク)は全てを台無しにしてしまうような失敗をしてしまい・・・
本作が非常にユニークなプロレス映画になっていることとして、その舞台裏が描かれていることがある。対戦相手と試合の流れを確認したり、また額から流血する用意のために小さい刃物を手首のテープに巻きつけて隠したりするシーンが出てきたりする。さらには『どこかでその筋肉増強剤を安く手に入れることができないか?』なんてレスラー同士での会話が出てきたり、試合中でも『早く、俺をフォールしろ!』なんて会話が飛び出したり、プロレスファンにとっては知りたくもないことを懇切丁寧に教えてくれるシーンが多く登場してくる。
しかし、そのようなレスラー同士のやり取りが非常に感動させる。メインの座を掴み取るレスラーとは決して自らの力だけで主役を得たのではない。脇役に徹するレスラーのおかげもあってメインの座を張れるのだ。そこには尊敬される側と尊敬する側の友情がこの映画では描かれている。プロレスラー同士の友情とはこのように美しい物だったのか!まさに目からうろこが落ちたような気分だ。
ミッキー・ローク演じるランディはプロレス以外は何をやっても駄目な男。肉体が限界に来ているのに彼の最後の選択は本当に正しかったのだろうか?しかし、彼の目の前には既に選択に悩むような分かれ道など無く、茨の道がまっすぐに一本あるだけ。それはあの偉大なイエス・キリストが全ての罪を背負って、十字架に向かって行く姿と重なる。
その人の価値はどん底状態の時にこそ真価を問われることを知り、男には自らの命よりも大切な物があることを教えてくれる映画
レスラーは、全ての男性は必見だし、男とはここまでブキッチョな生き物なのかを知りたい女性にもお勧めだ
監督は鬼才中の鬼才
ダーレン・アロノフスキー。この人の映画の魅力はテクノロジーを活かした映像ですが、時々CGを使いすぎて失敗することもある。しかし、本作の
レスラーでは、ほとんどCGなんか使わずに、ミッキー・ロークという素材だけで勝負した印象があり、まさにそれが大成功を収めた。
この人のハイテクノロジーを活かした傑作として彼の長編デビュー作であるサスペンス映画の傑作
π(パイ)、麻薬、薬物の怖さを描いた
レクイエム・フォー・ドリームがお勧め。
ハイテクノロジーを使いすぎて失敗したと個人的には思っている
ファウンテン 永遠につづく愛はレイチェル・ワイズが綺麗だという理由だけでお勧めです。
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