アメリカには多くのポリティカル・サスペンス映画(政治サスペンス)の傑作がある。しかし日本の映画には政治映画というのはあるが政治サスペンス映画というのがなかなか思い当たらない。個人的には映画に娯楽を求めてる人間として、重い内容の映画でもサスペンスタッチで描いてしまうハリウッドの観客を楽しませるというサービス精神は本当に貴重だと思っている。
実は今回紹介する映画
コンドルは若くて、ハンサムな時代の
ロバート・レッドフォード主演であるが、観ていてマット・デイモン主演の大ヒットアクション映画
ボーン・アイデンティティと非常に似ているように思ったのだが。巨大組織から逃げまくろうとしたり、女性を無理矢理巻き込んでしまったり、腕利きの暗殺者に狙われそうになったり、逆に巨大組織に対して反撃に打って出るところなど同じ。明らかに違う点はロバート・レッドフォード演じる主人公はマット・デイモン演じるジェイソン・ボーンのように、やたら物忘れが激しいこともなければ、超人的な格闘能力など持ち合わせていないごく普通の人間ということ。
ごく普通の人間が巨大組織、ハッキリ言って世界中に悪さを仕掛ける
CIA(アメリカの情報機関)のことだが、こんな恐ろしい組織から狙われたら、もちろんマット・デイモンよろしくジェイソン・ボーン以外の人は助かる見込みが無いと考えるのが普通だろう。
当然のことながら本作はサスペンス映画として充分に楽しめる作りなっている。しかし、普段からアメリカという国を注意深く見続けている人にとっては本作がバリバリのリベラルの視点から描かれている事に興味が惹かれるはずだ。だいたい
CIAについて、チョッと知っている人ならばこの映画で描かれているような卑劣なことを世界中で行っていることぐらいは知っているはずだが、ラストシーン近くでCIAで働いているおっさんがロバート・レッドフォード演じる主人公に面白いことを言っている。『我々はアメリカを守るために存在しているんだ』と。確かにCIAはアメリカと敵対する国の情報をコッソリ入手する機関。それによって自国アメリカ人を守っているという理屈だが、この映画を観ているとある矛盾に気付く。アメリカを守るためと言っている割に、この映画でCIAが殺害しているのは自国のアメリカ人。市民を守るはずの警察が、市民を目掛けて拳銃で狙い撃ちしているようなものだ。
日本のリベラルを自称する人が言っていることを耳を済まして聞いてみると、何だかまるで日本の役に立たないことばかり言っているだけでなく、お前ら日本を滅ぼしたいの?なんて思わせるようなことばかり言う奴が多いが、この映画を観ると、アメリカのリベラルと呼ばれる人達の凄みがよくわかる。だいたいハリウッドが作る社会派映画なんていうのはリベラルが立ち位置の作品が多いが、それによって権力の監視する役目を担っているのが個人的に凄いと思う。
さて、CIAってワル~イ組織だな~、なんて思えるポリティカル・サスペンス映画のストーリーとはいかなるものか。
ニューヨークにおいて、白昼堂々とアメリカ文学史協会が武装した3人の男たちに襲われ、その場に居た職員達はマシンガンで撃ち殺されていた。実はアメリカ文学史協会というのは仮の姿で、実際はCIAの末端組織。たまたま昼飯の買出しに出かけていたコードネーム”コンドル”ことターナー(
ロバート・レッドフォード)は帰ってきて、あまりの惨状に吃驚仰天。慌てて近くの公衆電話に駆け込み、CIA本部に連絡して救助を頼み込む。
CIAの偉いさんと落ち合うことになったターナー(ロバート・レッドフォード)だったが、なんと助けに来たはずの人物から銃撃を受けてしまう。すっかりパニックに陥ったターナー(ロバート・レッドフォード)は、偶然見掛けたキャサリン(
フェイ・ダナウェイ)を強引に拉致して、彼女の住んでいるアパートに身を隠そうとするのだが、彼の元に暗殺者ジュベール(
マックス・フォン・シドー)の影が忍び寄る・・・
ハッキリ言ってCIAから狙われて逃げ切ることなんて不可能も同然。しかも狙われる理由が不条理過ぎるし、無駄に周りの人物が殺されていくからシャレにならない。だいたいロバート・レッドフォードが逆に反撃に打って出るが半ばヤケクソに見える。確かにサスペンス的な盛り上がりは見せるものの、その手法は特に目新しい物を感じることも無い。
しかし、この映画の価値は最後まで観ればわかる。そしてアメリカのリベラルの真髄をまざまざと実感させられる。しかし、このような政治映画が広く受け容れる事ができるアメリカってナンダカンダ言っても羨ましい気分になれる
コンドルは社会派サスペンス映画が好きな人にはお勧めだ
| コンドル [DVD] |
ロバート・レッドフォード,フェイ・ダナウェイ,マックス・フォン・シドー |
ジェネオン・ユニバーサル |
監督は社会派作品からコメディまで幅広い分野に渡り傑作を撮った
シドニー・ポラック。ダスティン・ホフマン主演の
トッツィーはかなり笑える。ポール・ニューマン、サリー・フィールド競演の
スクープ 悪意の不在が社会派作品としてお勧め。他にロバート・レッドフォード、バーブラストライサンド競演の
追憶は女性にはお勧め。
主演のコンドルを演じるのが今さら説明不要の大スター
ロバート・レッドフォード。シドニー・ポラックとは多くの作品でコンビを組んでいます。ポール・ニューマン競演の
明日に向かって撃て!、
スティングは2つは有名すぎるぐらいの作品でお勧め。ダスティン・ホフマン競演の
大統領の陰謀、バリー・レヴィンソン監督で野球映画の傑作
ナチュラル、ラッセ・ハルストレム監督、モーガン・フリーマン、ジェニファー・ロペス競演の
アンフィニッシュライフ・・・等などお勧め作品が多過ぎです。
ある意味ロバート・レッドフォードに拉致されて嬉しそうなのが
フェイ・ダナウェイ。1970年代の作品を並べれると、この時代はまさに向かうところ敵なしの感がただよう女優。ウォーレン・ベイティ、ジーン・ハックマン競演の
俺たちに明日はないに始まり、ロマン・ポランスキー監督、ジャック・ニコルソン競演の
チャイナタウン、シドニー・ルメット監督の
ネットワーク、スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン競演の
タワーリング・インフェルノ、ジョン・ヴォイト競演の泣かせる映画
チャンプがお勧め。
なかなか渋くて、良い味を出している殺し屋役にスウェーデン人の名優
マックス・フォン・シドー。ホラー映画の
エクソシストで有名ですが、個人的にはイングマール・ベルイマン監督の作品で強烈な印象が残っています。
処女の泉、
第七の封印がお勧め。他にピレ・アウグスト監督の
ペレは超お勧め。スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ競演の
マイノリティ・リポートもお勧めです。
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