映画というのは名作イコール面白いとは必ずしもならない事が多いのは衆知の事実。俺も20年以上前の学生だった時に、この映画は名作だという評判を聞いてワクワクしながら観たのに、ワケがわからずひたすら退屈だった映画が今回紹介するミツバチのささやき。当時、大した知識も無く、血気盛んな若者だった俺が観て楽しめるタイプの映画ではないのは確かだ。しかし、20代前半の時に観ても楽しめなかった映画も数年後に観返してみると、けっこう良い映画じゃ~ん!なんて思える映画もたくさんある。今やすっかり知識も経験も豊富な四十代も半ばを迎えて本作を再見したら、アラ、ビックリ!流石は名作と呼ばれるだけの奥深さがある。
これまた映画の法則だが、たいていの人は予備知識無しで映画を観た方が面白いと思っている人が多いと思うが、本作の場合は少々予備知識を持って観た方が少しは感動できる。ちなみに本作はスペイン映画だが、1940年のスペイン内戦の直後が時代背景にして描かれており、公開された1973年はまだフランコ独裁政権だったことを頭の片隅にでも置いて観ると、非常に深読みのしがいがある映画だ。世界史の苦手な日本人の多くは、スペインと聞いてもサッカーが強い国というイメージしかない人が殆んど。しかし『スペイン内戦』『フランコ独裁政権』この2つのキーワードをちょっと勉強すると、つい最近までスペインという国は普通の人々が暮らすには大変だったということが理解できる。
さて、俺も後で知ったのだが、実は本作のテーマは制作当時のスペイン政権の批判映画。そんなことに気付かせないようなストーリー紹介を簡単に。
1940年、スペインの小さな村が舞台。ある一家において、父フェルナンド(フェルナンド・フェルナン・ゴメス)は自分の部屋に籠ってミツバチの研究に没頭し、母テレサ(テレサ・ジンペラ)は誰宛てなのかはわからないが手紙を書いている日々を過ごしている。彼らにはまだ幼い姉イザベル(イザベル・テリェリア)と妹(アナ・トレント)の娘2人がいる。
ある日のこと、この小さな村に移動映画がやってきた。上映される映画は『フランケンシュタイン』、イザベルとアナの姉妹は映画を観るが、そのことは妹のアナに心理面で様々な影響を与えるのだが・・・
さて、何の予備知識も無く観てしまうと、本作がスペインの独裁政権に対する批判映画だと気付く人はまず居ない。本作はアナを中心に彼女の家族の出来事が淡々と描かれているだけだから。しかし、当時のフランコ独裁政権の最中のスペインで、露骨に当時の政権を批判するような映画は撮れないし、撮れても公開されない。だからかんじんのテーマに気付かない人が殆んどであることは当たり前なのだ。しかしながら、前述した予備知識を持って本作を観ると、非常にメタファーに満ちた作品だということに気付けるだろう(実際は気付けない人が殆んどだが)。
タイトルの『ミツバチのささやき』が表わす意味は何なのか?、冗談好きの姉イザベルと純粋な妹アナの対比するところの意味は?母テレサの手紙を書く意味?そして上映される『フランケンシュタイン』は何を意味するのか?その他にも色々と暗喩的な表現を用いられているはずだが、このような描き方が映像詩を感じさせる。
ストーリー的にはドラマチックなことが起きるわけでもないので、途中は非常に退屈。しかし、最後の方でフランケンシュタインの効果が抜群に効いてくる演出はなかなかの感動を味わえる。
冒頭からアニメチックに始まるシーンはちょっと驚くが、その後は静かな音楽と、少ない台詞、ヨーロッパ映画らしい暗めの渋い画調と全体的に静かな印象を受ける映画。しかし、意外にこの静寂さが、政権批判という内容が込められている作品に感動を与える効果を発揮しているような気も今観れば思ったりした。
ハリウッドのド派手なアクション映画に飽き飽きしていた人、ヨーロッパ映画の名作を観たいと思っている人、そして何よりスペインという国に対して熱い気持ちを持っている人にはミツバチのささやきを今回はお勧め映画として挙げておこう
監督は本作が長編第一作であるビクトル・エリセ。今まで長編映画はたったの3作という超寡作ですが、エル・スールもスペイン内戦をテーマにしていてお勧めです。
これまた映画の法則だが、たいていの人は予備知識無しで映画を観た方が面白いと思っている人が多いと思うが、本作の場合は少々予備知識を持って観た方が少しは感動できる。ちなみに本作はスペイン映画だが、1940年のスペイン内戦の直後が時代背景にして描かれており、公開された1973年はまだフランコ独裁政権だったことを頭の片隅にでも置いて観ると、非常に深読みのしがいがある映画だ。世界史の苦手な日本人の多くは、スペインと聞いてもサッカーが強い国というイメージしかない人が殆んど。しかし『スペイン内戦』『フランコ独裁政権』この2つのキーワードをちょっと勉強すると、つい最近までスペインという国は普通の人々が暮らすには大変だったということが理解できる。
さて、俺も後で知ったのだが、実は本作のテーマは制作当時のスペイン政権の批判映画。そんなことに気付かせないようなストーリー紹介を簡単に。
1940年、スペインの小さな村が舞台。ある一家において、父フェルナンド(フェルナンド・フェルナン・ゴメス)は自分の部屋に籠ってミツバチの研究に没頭し、母テレサ(テレサ・ジンペラ)は誰宛てなのかはわからないが手紙を書いている日々を過ごしている。彼らにはまだ幼い姉イザベル(イザベル・テリェリア)と妹(アナ・トレント)の娘2人がいる。
ある日のこと、この小さな村に移動映画がやってきた。上映される映画は『フランケンシュタイン』、イザベルとアナの姉妹は映画を観るが、そのことは妹のアナに心理面で様々な影響を与えるのだが・・・
さて、何の予備知識も無く観てしまうと、本作がスペインの独裁政権に対する批判映画だと気付く人はまず居ない。本作はアナを中心に彼女の家族の出来事が淡々と描かれているだけだから。しかし、当時のフランコ独裁政権の最中のスペインで、露骨に当時の政権を批判するような映画は撮れないし、撮れても公開されない。だからかんじんのテーマに気付かない人が殆んどであることは当たり前なのだ。しかしながら、前述した予備知識を持って本作を観ると、非常にメタファーに満ちた作品だということに気付けるだろう(実際は気付けない人が殆んどだが)。
タイトルの『ミツバチのささやき』が表わす意味は何なのか?、冗談好きの姉イザベルと純粋な妹アナの対比するところの意味は?母テレサの手紙を書く意味?そして上映される『フランケンシュタイン』は何を意味するのか?その他にも色々と暗喩的な表現を用いられているはずだが、このような描き方が映像詩を感じさせる。
ストーリー的にはドラマチックなことが起きるわけでもないので、途中は非常に退屈。しかし、最後の方でフランケンシュタインの効果が抜群に効いてくる演出はなかなかの感動を味わえる。
冒頭からアニメチックに始まるシーンはちょっと驚くが、その後は静かな音楽と、少ない台詞、ヨーロッパ映画らしい暗めの渋い画調と全体的に静かな印象を受ける映画。しかし、意外にこの静寂さが、政権批判という内容が込められている作品に感動を与える効果を発揮しているような気も今観れば思ったりした。
ハリウッドのド派手なアクション映画に飽き飽きしていた人、ヨーロッパ映画の名作を観たいと思っている人、そして何よりスペインという国に対して熱い気持ちを持っている人にはミツバチのささやきを今回はお勧め映画として挙げておこう
ミツバチのささやき HDマスター [DVD] | |
アナ・トレント、イザベル・テリェリア、フェルナンド・フェルナン・ゴメス | |
IVC,Ltd.(VC)(D) |
監督は本作が長編第一作であるビクトル・エリセ。今まで長編映画はたったの3作という超寡作ですが、エル・スールもスペイン内戦をテーマにしていてお勧めです。