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”世界のクロサワ”と呼ばれる
黒澤明監督だけれど、そんな彼でもハリウッドでの映画撮影に挫折し、そして日本映画界に絶望し、自殺未遂を起こしている

彼の映画監督としての輝かしい経歴や数々の名作からは想像できないけれど、そんな彼でも挫折を経験しているところに人間は誰しも苦しみを抱えていることがわかる

そして、彼が
どですかでんから、やっと5年の空白を経て監督した作品が今回紹介したい
デルス・ウザーラ
黒澤明監督が日本で映画を撮れない時期に彼に助け舟を出したのが
ソ連(現・ロシア)
実は『デルス・ウザーラ』は殆どソ連の映画スタッフであり、キャストはソ連の人ばかり

まさに
ソ連映画の黒澤明監督作品なのだ

しかし、ハリウッドに招かれながらハリウッド映画を撮影することなく、そして日本でも映画を撮るチャンスが無く自殺未遂まで起こした彼に対して、社会主義国のソ連が黒澤明に映画を撮るチャンスを与えるとは皮肉な出来事である

そんな社会主義国で映画を撮ることは、様々な規制があったはずだ

しかし、そんな社会主義国家で撮った『デルス・ウザーラ』で黒澤明監督は1つの答えを出した
映画には国境が無いということ

この映画には彼の他の作品で感じる日本の伝統、文化、社会というものを全く感じさせない

この映画には厳しい大自然と異民族の交流が描かれている

『大自然』と『異民族』という日本人的発想ではないテーマを撮った感動作を今回は紹介します
1902年、当時のロシアの地図上において
シホテアリン地方は、空白で地図製作の命令をロシア政府から受けた
アルセーニエフは数名の兵士を引き連れ、森林(
タイガ)に覆われた、この地に来た

アルセーニエフたちが、夜営をしていると1人の老人がやって来た

見た目は背の低い老人でアジア系人に見える

その老人の名はデルス

このシホテリアン地方の原住民である
ゴリド族であり、デルスは妻や息子たちを天然痘で亡くし、今は一定の住む場所も無く、大自然と一緒に暮らしている

デルスは水、木、火、そして動物たちを人間と同じように呼び、1番の人間は太陽だという

彼にとって自然は人間と同格であり、またあらゆる物を差別無く考えるデルスに興味を持ったアルセーニエフはデルスを案内役として一緒に探検の旅に出る

自然と一緒に暮らすデルスの自然の中での危険を察知する能力は凄いものがある

アルせーニエフたちはそんなデルスに自然の災害から何回も助けてもらう

特に猛吹雪に襲われた時の、自然と一緒に暮らしているデルスならではの知恵によってアルセーニエフは命を助けてもらう

それ以来アルセーニエフはデルスに対して友情以上の畏敬の念を示すが、デルスはアルセーニエフと一緒に助かったことに対して純粋な喜びを示す

そしてロシアの厳しい冬を乗り越え、とりあえずアルセーニエフたちは当初の目的を果たし、彼らは
ウラジオストクの街へ帰ろうとするが、一緒にデルスもウラジオストクへ連れて行こうとするがデルスは自然に帰ることを選んだ

アルセーニエフとデルスは再会を約束して別れる

1907年、アルセーニエフは再びシホテアリン地方に地図作成のためにやってくる

アルせーニエフは地図製作の仕事に没頭しながらもデウスの事を考えていた

そしてアルセーニエフとデウスは再会する

再びデウスを連れてアルセーニエフの一行は森林(タイガ)で覆われた自然を突き進むが、アルセーニエフはこの5年の間にシホテリアンが変わってしまったことを知る

フンフーズと呼ばれる山賊

によって、シホテリアンの原住民たちの生活が脅かされていた

そしてアルセーニエフはデウスもかつてのように自然の中で驚異的能力を発揮していた頃と違う事もわかっていた

デウスは視力が悪くなっており、銃の腕も明らかに落ちていたのである

デウスもやはり老いによる衰えを隠せなかった

更にデウスは虎に遭遇して、今までは話しかけるだけで虎は逃げていったのに、向かってきた虎を撃ってしまう

デウスはその事により
虎を撃ってしまったために森林の妖精が再び自分に虎を差し向けてくると嘆き悲しむのである

デウスは自分の中で自信をすっかり無くしてしまう

そんなデウスを見てアルセーニエフは彼にウラジオストクの自分の家で暮らす事を持ちかける

今や自然の中では暮らす事が出来ないデウスにとっては、アルセーニエフのこの申し出は有難いものであった

しかし、デウスにとってウラジオストクでの街の暮らしは・・・

続きは映画を見てください
ショーン・ペン監督の作品で
イン・トゥ・ザ・ワイルドという映画あった

何不自由の無い生活を送っていた若者が、現代の文明社会を捨ててアラスカの荒野での生活を望み旅に出るが、自然の罠にはまってしまう実話を基にした映画

この映画には若者の旅をたどることで自然の活き活きした描写が描かれ、この若者と出会う文明を捨てて生きていく人々の出会いが感動する映画だけれど、自然の恐ろしさも同時に描いている
今回紹介した
デルス・ウザーラは、大自然と一緒に暮らしていたデウスが実際に街で暮らしてみると彼にとって街での生活が、自然との生活と対比した時にデルスを通して文明社会の矛盾点を鋭く描いている事がわかる

自然で生活する者にとって水は普通に使えるのに、文明社会において水はお金を払わないと水を得られない事

自然において木を切ることは当たり前の出来事なのに、文明社会において勝手に木を切ってしまうと警察に連れて行かれること

自然で行ってきたことにおいて、何の損得勘定も無しでしていたことが文明社会において利益の追求になっていることをこの映画から学ぶ事ができる
圧倒的なスケールで数々の名作を世に送り出してきた
黒澤明監督だけれど、僕が観た黒澤作品においてこれだけの大自然を映像化した作品は知らない

しかし、この大自然の姿、脅威を映し出す映像は
デヴィッド・リーン監督のの
戦場にかける橋、アラビアのロレンス、ドクトル・ジバコに決して劣らない

この映画を観て、日本映画界を飛び出して海外で撮った黒澤明監督の執念の映画のように思えるのは僕だけだろうか

デルスとアルセーニエフの友情、そして圧倒的スケールで迫る大自然を描いたこの映画はお勧めです
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