毎日を何の悩みもなく、ノー天気に過ごしている俺でさえ、衝撃を受けた映画が今回紹介するミスティック・リバー。表面上では人殺しの犯人は誰だ?というサスペンス映画のように見えるが、実際は多岐に渡るテーマが内包されている。特に我々の善悪に対する常識的な考えを嘲笑うかのような展開は、観ている者を大いに混乱させ、更なる深い悩みに陥れる。
それにしても本作の登場人物たちは、どいつもこいつも、やることなすことが全て空回りで、悪い方へ向かって突っ走る。それは、まるでワザと不幸になるために行動しているのかよ、なんて思えたりしたのは俺だけか。にわかには理解しがたいような行動をする奴ばかり出てくるために、夢の中の出来事のように思えたりするが、よく考えたら極めてリアルな世界が描かれている。そして、この世の中はなぜ理不尽な事が次々に起きてしまうのか、そんな疑問が少々理解できるような映画でもある。
ある忌まわしい出来事によって友情が引き裂かれてしまった3人の少年達。そんな彼らの25年後を描いたストーリーの紹介を簡単にしよう。
アメリカのボストンの郊外において。道端で遊んでいたジミー、ショーン、ベイブの少年3人は、舗装している歩道の乾きかけているセメントに自分の名前を書き込んでいた。そこへ現れたのが警察らしき2人の人物。彼らは他の2人を残して、ベイブだけ連れ去ってしまう。実は彼らは警察ではなくて、連続少年誘拐犯。4日間監禁されたベイブは自力で脱出するのだが、それ以来ジミー、ショーン、ベイブたち3人の関係は疎遠になっていた。
そして25年の時を経て、ヤクザ稼業をしていたジミー(ショーン・ペン)は堅気になって小売店で店長をして働いている。しかし、ある日のことジミーの愛娘ケイティ(エミー・ロッサム)の惨殺された死体が発見される。よりによってこの殺人事件を捜査することになったのが、今は殺人課の刑事になっているショーン(ケビン・ベーコン)。そして、あろうことか殺人の容疑者として捜査線上に浮かび上がってきたのがベイブ(ティム・ロビンス)。殺人事件を切っ掛けにして再会した幼馴染みの3人だったのだが、とんでもない運命に導かれてしまい・・・
25年ぶりに旧友に出会うことを楽しみにしていたプチ同窓会のような気分になる映画、と言うのは嘘。過去のトラウマ、後悔に責められて前進できない大人達がいる。時々、いつまでも過去に囚われてないで前に進め!なんてアドバイスしている人を見かけたりするが、俺に言わせれば余計なアドバイス。一度背負った重い十字架は決して一生消すことができないということを本作を観てたらよく理解できる。この仲良く遊んでいた3人も、子供の頃の起きた忌まわしい過去が消えない限り、再び友情が戻ることはないのと一緒。決してあの頃には戻れないし、一度失敗したら取り返せない人生の厳しさを思い知らされるし、甘い言葉をかけたぐらいでは過去に受けた傷は決して消せない。
しかし、この映画を観ていたらなぜ犯罪が起きてしまうのかが少しわかった気になる。本作で描かれているのが嘘、疑惑、コミニュケーション不足が招く世界。それは、映画の世界だけではなく、この現実の世界も一緒のこと。俺の身近でも嘘をつきすぎて、自己保身のために更に見苦しい嘘を重ねたり、自分の飲み代を浮かすためにピンハネ、横領をしているために何処からかイカさまをしてカネをパクっているんじゃないかとソイツに対して更に疑惑が深まったり、他人の親切なアドバイスをシャットアウトして自己中で独裁者のごときやりたい放題の馬鹿がいる。こんな人間が偉そうにモラルを語るんだから、そりゃ~犯罪が起きてしまう。住みやすい場所の町づくりを始めるためには、こんな奴を生み出さない環境整備をすることが条件の一つに挙げられるだろう。
しかし、この映画が凄いのは人間描写が優れていること。あり得ないような偶然の積み重ねは、リアリティゼロの内容に思えたりするが、主要の3人の登場人物は勿論のこと、それ以外の脇役に至るまでキャラクター設定がしっかりしているおかげで重厚な人間ドラマを見ることができる。
25年前の出来事、25年間に起こっている最中、そして25年後の現在を通して、贖罪、十字架、家族愛、復讐、後悔、怒り、憎悪、裏切り、嘘、時間の経過、犯罪社会を描き切ってしまうクリント・イーストウッド監督の凄さを感じ、そして最も彼の特徴が色濃く出ている映画だろう。そして、後味の悪さがずっと残るがほんの少しの小さな希望が描かれているのが良い。これだから理不尽な出来事に遭っても強く前を向いて行こうと思える。
単純明快な映画に飽きた人、いつまでも余韻が残る映画が観たい人、しばらく深~い悩みに陥りたい人、人生の厳しさを知りたい人、自分は世界で一番不幸だと思っている人等に、今回はミスティック・リバーをお勧め映画として挙げておこう。
監督は名匠中の名匠であり今でも積極的映画を撮っているクリント・イーストウッド。お勧め映画が多数。今回は彼にしては余裕綽々のミュージカル映画ジャージー・ボーイズ、比較的最近の作品で今まで何の役に立っていない人生を送ってきたと嘆いている人には勇気づけられる15時17分、パリ行きをお勧め映画として挙げておこう。
それにしても本作の登場人物たちは、どいつもこいつも、やることなすことが全て空回りで、悪い方へ向かって突っ走る。それは、まるでワザと不幸になるために行動しているのかよ、なんて思えたりしたのは俺だけか。にわかには理解しがたいような行動をする奴ばかり出てくるために、夢の中の出来事のように思えたりするが、よく考えたら極めてリアルな世界が描かれている。そして、この世の中はなぜ理不尽な事が次々に起きてしまうのか、そんな疑問が少々理解できるような映画でもある。
ある忌まわしい出来事によって友情が引き裂かれてしまった3人の少年達。そんな彼らの25年後を描いたストーリーの紹介を簡単にしよう。
アメリカのボストンの郊外において。道端で遊んでいたジミー、ショーン、ベイブの少年3人は、舗装している歩道の乾きかけているセメントに自分の名前を書き込んでいた。そこへ現れたのが警察らしき2人の人物。彼らは他の2人を残して、ベイブだけ連れ去ってしまう。実は彼らは警察ではなくて、連続少年誘拐犯。4日間監禁されたベイブは自力で脱出するのだが、それ以来ジミー、ショーン、ベイブたち3人の関係は疎遠になっていた。
そして25年の時を経て、ヤクザ稼業をしていたジミー(ショーン・ペン)は堅気になって小売店で店長をして働いている。しかし、ある日のことジミーの愛娘ケイティ(エミー・ロッサム)の惨殺された死体が発見される。よりによってこの殺人事件を捜査することになったのが、今は殺人課の刑事になっているショーン(ケビン・ベーコン)。そして、あろうことか殺人の容疑者として捜査線上に浮かび上がってきたのがベイブ(ティム・ロビンス)。殺人事件を切っ掛けにして再会した幼馴染みの3人だったのだが、とんでもない運命に導かれてしまい・・・
25年ぶりに旧友に出会うことを楽しみにしていたプチ同窓会のような気分になる映画、と言うのは嘘。過去のトラウマ、後悔に責められて前進できない大人達がいる。時々、いつまでも過去に囚われてないで前に進め!なんてアドバイスしている人を見かけたりするが、俺に言わせれば余計なアドバイス。一度背負った重い十字架は決して一生消すことができないということを本作を観てたらよく理解できる。この仲良く遊んでいた3人も、子供の頃の起きた忌まわしい過去が消えない限り、再び友情が戻ることはないのと一緒。決してあの頃には戻れないし、一度失敗したら取り返せない人生の厳しさを思い知らされるし、甘い言葉をかけたぐらいでは過去に受けた傷は決して消せない。
しかし、この映画を観ていたらなぜ犯罪が起きてしまうのかが少しわかった気になる。本作で描かれているのが嘘、疑惑、コミニュケーション不足が招く世界。それは、映画の世界だけではなく、この現実の世界も一緒のこと。俺の身近でも嘘をつきすぎて、自己保身のために更に見苦しい嘘を重ねたり、自分の飲み代を浮かすためにピンハネ、横領をしているために何処からかイカさまをしてカネをパクっているんじゃないかとソイツに対して更に疑惑が深まったり、他人の親切なアドバイスをシャットアウトして自己中で独裁者のごときやりたい放題の馬鹿がいる。こんな人間が偉そうにモラルを語るんだから、そりゃ~犯罪が起きてしまう。住みやすい場所の町づくりを始めるためには、こんな奴を生み出さない環境整備をすることが条件の一つに挙げられるだろう。
しかし、この映画が凄いのは人間描写が優れていること。あり得ないような偶然の積み重ねは、リアリティゼロの内容に思えたりするが、主要の3人の登場人物は勿論のこと、それ以外の脇役に至るまでキャラクター設定がしっかりしているおかげで重厚な人間ドラマを見ることができる。
25年前の出来事、25年間に起こっている最中、そして25年後の現在を通して、贖罪、十字架、家族愛、復讐、後悔、怒り、憎悪、裏切り、嘘、時間の経過、犯罪社会を描き切ってしまうクリント・イーストウッド監督の凄さを感じ、そして最も彼の特徴が色濃く出ている映画だろう。そして、後味の悪さがずっと残るがほんの少しの小さな希望が描かれているのが良い。これだから理不尽な出来事に遭っても強く前を向いて行こうと思える。
単純明快な映画に飽きた人、いつまでも余韻が残る映画が観たい人、しばらく深~い悩みに陥りたい人、人生の厳しさを知りたい人、自分は世界で一番不幸だと思っている人等に、今回はミスティック・リバーをお勧め映画として挙げておこう。
ミスティック・リバー 特別版 〈2枚組〉 [DVD] | |
ショーン・ペン,ティム・ロビンス,ケビン・ベーコン,ローレンス・フィッシュバーン | |
ワーナー・ホーム・ビデオ |
ミスティック・リバー [Blu-ray] | |
ショーン・ペン,ティム・ロビンス,ケビン・ベーコン,ローレンス・フィッシュバーン | |
ワーナー・ホーム・ビデオ |
監督は名匠中の名匠であり今でも積極的映画を撮っているクリント・イーストウッド。お勧め映画が多数。今回は彼にしては余裕綽々のミュージカル映画ジャージー・ボーイズ、比較的最近の作品で今まで何の役に立っていない人生を送ってきたと嘆いている人には勇気づけられる15時17分、パリ行きをお勧め映画として挙げておこう。