褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 ブローニュの森の貴婦人たち(1945) 女の復讐を描く

2025年01月30日 | 映画(は行)
 フランスの観光スポットであるブローニュの森だが昼間は安全らしいが、夜はいかがわしい街に変身してしまう治安の悪い場所。フランスへ観光する際は気をつけてください。まあ、夜はドコモ治安が悪いので出歩かないことに越したことはない。とりあえずは俺がアドバイスをしておこう。そんな俺のアドバイスとは関係なく前から観たいと思って観たのが今回紹介するロベール・ブレッソン監督の映画ブローニュの森の貴婦人たち。古い映画であり、内容も古さを感じさせるが、何度も原作が映画化されているピエール・ショデルロ・ド・ラクロの『危険な関係』を思い出させるような恋愛を利用して、自分を裏切った相手を滅ぼそうとするストーリーが描かれている。

 マリア・カザレス演じる女主人公の遠大な復讐を描いたストーリーを紹介しよう。
 上流階級で暮らすエレーヌ(マリア・カザレス)は恋人のジャン(ポール・ベルナール)のことを愛していたのだが、彼が少し最近は冷たくなってきたように思えていた。ある日のこと、エレーヌはジャンに冗談半分で別れ話を切りだす。すると、ジャンはあっさりと『実は俺も別れたかったんだ』と予想もしない答えが返ってきた上に彼はさっさと出ていく。すっかりプライドを傷つけられたエレーヌはジャンの人生を破滅させるために復讐を開始する・・・

 さてエレーヌはどのような復讐の方法をするのか。エレーヌは3年間会わなかったが、今ではボロボロの生活苦に陥っているアニエス(エリナ・ラブルデット)とその母に会いに行く。アニエスは生活を支えるために、見せ商売の踊り子をしており、男性相手の仕事をして生活費を稼いでいる。そこへエレーヌはつけ込み、母娘の面倒を見る代わりに自らの計略に乗せようとするのだ。何気なくジャンとアニエスを会わせるるのだが、これが大成功。すっかりジャンはアニエスに熱を上げてしまう。しかしながら、アニエスは自分の恥ずかしい経歴からなかなかジャンの気持ちに応えられないでいた。
 どんな復讐方法なのかと思いながら見ていたのだが、ジャンを報われない恋に苦しめることが目的かと途中まで思っていた。しかし、ジャンの強引なアプローチは、苦難の末にアニエスの心をゆれ動かし2人は結ばれる。これじゃ、エレーヌの復讐が失敗してるんじゃね~なんて思ったが、まだ続きがあった。最後までエレーヌの狙いに気づかない俺がアホなのか、個人的には衝撃を受けた。
 しかし、エレーヌを演じたマリア・カザレスだが面長で、切れ目なのだが、ずっと不気味な雰囲気を漂わせていた。まあ、見た目で女性を判断するわけではないが、顔付もふっくらした女性の方が俺は好みだ、なんてどうでも良いっか。
 ちなみに本作は台詞の監修を才人ジャン・コクトーが担当している。その点にも興味が惹かれたのだが、コクトーがその役割を担ったからといって、どれだけ効果があるのかは俺には理解できなかった。
 ちょっとした冗談っぽい行動が恐ろしいことを引き起こすことなんかは現実でもありそうだ。俺なんかは何でも冗談で済ましてしまうことが多いのだが、本作を観て反省させられた。そんな俺と同じく冗談好きな人、女性の罠に嵌りたくない人等に今回はブローニュの森の貴婦人たちをお勧めに挙げておこう

 監督はロベール・ブレッソン。実はこの監督はあえて題名は言わないが1本だけ観たことがあるのだが、面白くなかった。この監督のお勧めがあれば逆に教えた欲しいです

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映画 ブルーベルベット(1986) デヴィッド・リンチ監督のお勧め

2025年01月19日 | 映画(は行)
 先日亡くなられたデヴィッド・リンチ監督。彼の作品を全部観ているわけではないが、個人的には理解不能な映画を撮るイメージがある。もしかしたらワザとわからない映画を撮っているんじゃねぇ。そんな監督作品の中でも個人的に最も好きな作品が今回紹介するブルーベルベット。変態っぽいアクの強いキャラクターが出てくるし、陰と陽の部分を感じさせる二面性が楽しいサスペンス映画。この監督らしい映像センスを感じさせるが、難解な印象は本作にはない。ちなみにタイトルの意味は『青い布の生地』。主題歌にもなっているが非常に聴き心地の良い曲である。

 どす黒い部分がありながらも、オールディーズな音楽が素敵なストーリーの紹介を。
 父親が倒れたことを切っ掛けに大学を休学して、地元に戻ってきたジェフリー(カイル・マクラクラン)。父親の見舞いからの帰る途中に、切り離された人間の耳を見つける。彼はすぐに知り合いの刑事ジョンを訪ねてそれを渡す。そのことを切っ掛けにジョンの娘であるサンディ(ローラ・ダーン)と知り合いになるのだが、サンディから耳についての話を聞かされる。どうやら現場の近くのアパートに住む歌手であるドロシー(イザベラ・ロッセリーニ)が事件に関係があるらしいことを。すっかり今回の事件に興味を持ってしまったジェフリーはドロシーの部屋に忍び込むのだが、そこでとんでもない光景が繰り広げられるのを見てしまい・・・

 最初は非常に長閑な雰囲気でスタートするのだが、カイル・マクラクラン演じる主人公の青年が事件に首を突っ込んでから恐ろしい世界が繰り広げられる。場所はけっこうな田舎なのだが、意外にもそこは暴力、麻薬、倒錯した性に支配されている町だった。
 ローラ・ダーン演じる女の子も、もっとジェフリーの行動を止めるように努力しろよと思っていたら、どうやら好奇心旺盛な男性が好みだったらしく、彼女も面白がってジェフリーから事件の行方を興味深く聞きたがる始末。お父さんが刑事なんだから、さっさとお父さんと相談しろ。
 案の定、ジェフリーは事件に首を突っ込み過ぎて、いかがわしい所へ連れまわされ、暴行を喰らってしまうし、二股をしているのをバレたりで踏んだり蹴ったりの状況に陥る。勝手に人の家に入るから、その報いを受けてしまったかのような展開が非常に教訓めいたものを感じさせる。
 ドロシーを演じるイザベラ・ロッセリーニ(母親のイングリッド・バーグマンの面影があります。)がとんでもない姿を見せるし、デニス・ホッパーがラリッた勢いで演じているかのような快演を見せるし、ディーン・ストックウェルはオカマの役で出ているなど、脇役が面白い映画でもある。
 途中はメンタルがやられそうなボロボロの展開だが、やっぱり平和な日常が良いよねと思わせる結末が待っているのが良い。デヴィッド・リンチ監督の作品を観たことがない人は本作から観れば良いし、他の作品は観ているけれど本作を観ていない人にはお勧めできる。子供には見せたくないシーンが出てくるが、大人であればブルーベルベットはお勧めと言うことにしておこう

 デヴィッド・リンチだが意外に監督した映画の本数は少ない。とりあえず俺が観た映画を好きな順で並べておこう。ブルー・ベルベットワイルド・アット・ハートストレイト・ストーリーエレファントマンマルホランド・ドライブイレイザーヘッドロスト・ハイウェイ。正直なところロスト・ハイウェイは頭の中が?だらけでした

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映画 ブギーナイツ(1997) ポルノ業界の光と闇を描く

2025年01月04日 | 映画(は行)
 1970年代から80年代にかけてのポルノ業界を群集劇にして描いたのが今回紹介する映画ブギーナイツ。最初に断っておくが、本作はポルノ映画ではない。確かに扱っているテーマがテーマなだけに、際どい表現はある。しかし、本作の見方としてエロ目的ではなく、ダメダメな人間の生き方を優しく見守っていくというのが正しい観方だろう。
 そして、1970年代のイケイケのポルノ映画が1980年代に陰りを見せるように栄枯盛衰の世界が描かれている。本作はある意味では特殊な世界を描いているが、どこの世界でも同じことが起こっていることが理解できる作品だ。

 主役が実在したポルノ男優をモデルにしたストーリーの紹介を。
 1977年、ナイトクラブでアルバイトしていた17歳のエディ(マーク・ウォールバーグ)はお客に来ていたポルノ映画監督のジャック(バート・レイノルズ)からポルノ男優へとスカウトされる。それまで何をやっていてもダメだったエディだったが、彼には巨根という天性の武器があり、そこをジャックから見込まれたのだ。 
 エディはジャック・ディグラーという芸名でたちまちポルノ映画界の大スターに登りつめる。しかし、1980年代に入るとポルノ映画界も不況に陥り、エディも麻薬漬けの日々がたたり、次第に自慢の巨根も立たなくなってきて、ジャックとの確執もおこり次第に落ち目になっていく・・・

 1970年代を感じさせるポスターや音楽なんかは、この時代のアメリカの雰囲気を感じさせる。そして、本作は冒頭からの長回しで主要人物を登場させてしまう映像が圧巻。その他にも映像表現で色々と魅せる。前半のストーリーは何をやってもダメな17歳の少年が母親の一言にブチギレて、ポルノ男優になって成功をおさめるサクセスストーリー。『人間、誰にだって長所が一つぐらいあるだろう』なんて主人公の口から発せられるが、俺もなんだか急に元気になった気分だ。
 そして、登場人物が個性的な面々。嫁がセックスに狂っている映画助監督、前の夫との間で息子がいるポルノ女優、ゲイの映画スタッフ、ローラースケートをいつも履いているポルノ女優の卵等。この登場人物達も悩みを抱えながら頑張って生きていこうとする姿が描かれている。まあ、この中には悲惨な結末を迎える奴もいるが。
 1970年代は、みんながイケイケだったポルノ映画関係者だったが、1980年に入ってからは、エロビデオの普及や麻薬の日常化に伴い彼らも次第に転落の人生を歩んでいく。この落ちっぷりがポルノ業界や大麻とは関係のない俺が見ていても深刻だった。元ポルノ男優という理由で銀行から融資されないシーンには俺が見ていても可哀想に思えた。しかし、エロやバイオレンスが若干強めだが、全体的には音楽や凝った映像シーン、そしてサタデーナイトフィーバーを思わせるダンスシーンのおかげでノリが良くて明るい雰囲気を感じさせる。そして、最後の方ではどんなに苦しい時があっても頑張ろうという展開になるのが良い。しかし、最後のボカシが入るシーンはいただけない。あのボカシがなければ、俺なんかはもっと色々な意味で自信が持てたはずなのだが。
 1970年代のアメリカの文化に興味がある人、ポルノ産業に興味がある人、多数の豪華キャストが出演する映画が好きな人、登場人物やストーリーに共感ができなくても映像表現に惹かれる人等に今回はブギーナイツをお勧めに挙げておこう

 監督はポール・トーマス・アンダーゾン。本作のような群集劇が繰り広げられるマグノリア、長編デビュー作品にあたるハードエイト、ちょっと刺激の恋愛映画パンチドランク・ラブ、そして私利私欲に溺れる石油王を描くゼア・ウィル・ビー・ブラッドなどがお勧め

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映画 舞踏会の手帖(1937) ロマンチックなフランス映画

2024年12月26日 | 映画(は行)
 昔、好きだったあの人は今頃はどうしているんだろう?なんて懐かしむ気持ちが時々湧いてくる。しかし、現実を想像するとちょっと怖くなる想いをする映画が今回紹介する舞踏会の手帖。まあ俺みたいに50歳を超えても格好良さとユーモアを維持していれば良いのだが、だいたい俺が想像する50歳超えの男女というのはオッサンにオバハンで期待して会おうとするとショックを受けることが多々ありそうだ。
 本作はめちゃくちゃ古い映画であり、モノクロの映像。しかし、俺に言わせれば1930年代のフランス映画はサイコ~。哀歓を漂わせる雰囲気に引きずりこまれるのは、この時代のフランス映画ならでは。その中でも本作は人生の酸いも甘いも味わった大人の鑑賞にもってこいの作品だ。

 1人の女性に対して豪勢な男性が次々に登場するストーリーの紹介を。
 まだ36歳の年齢にして未亡人になってしまったクリスティーヌ(マリー・ベル)。夫との思い出の品を全部処分しようとしていたら、20年前の16歳で舞踏会デビューした時、自分に甘い言葉で言い寄ってきた男達の名前を記した手帖が出てくる。無駄にしか思えなかった結婚生活を脱して、今までの人生を取り返すために、手帳に載っている男達に片っ端から出会うために旅に出るのだが・・・

 クリスティーヌは7人?の男性と会うのだが、既に死んでいたり、ヤクザに落ちぶれていたり等で、古き良き思い出が幻滅するばかり。1人ぐらいは立派な人間になっていても良さそうなものだが。クリスティーヌに言い寄る男の殆どがロクな目に遭っていないことに笑ってしまいそうになったし、これではクリスティーヌはファムタールの典型に思えてしまう。実はクリスティーヌには自分に言い寄って来た男の中でも、最も気に入っていた男が居るのだが住所不明という設定。このまま会えないのかと思いきや最後の最後に一発逆転のチャンスが訪れるのだが、ネタ晴らしは避けよう。
 ノスタルジックな雰囲気が漂い、ワルツの音楽が優雅な印象を与える。そして、ペーソス溢れるロマンチックな展開が1930年代のフランス映画らしい気品が窺えるし、人生の哀歓が描かれているのが良い。高校生ぐらいでは、この映画の良さが理解できるとは思えないが、まだまだ褒めたりないぐらいの映画舞踏会の手帖を今回はお勧めに挙げておこう

 監督はフランス映画を代表し、多くの傑作を遺したジュリアン・デュヴィヴィエ。ジャン・ギャバン主演の望郷わが青春のマリアンヌ、犯罪映画の殺意の瞬間、コメディの陽気なドン・カミロなどがお勧め





 
 

 
 
 
 
 

 
 
 


 
 
 
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映画 ペイ・フォワード  可能の王国(2001) 恩返しではなくて恩送りです

2024年12月19日 | 映画(は行)
 よく俺の周りでも見られるのが、「お前のためにやったんだから、お前も俺のために何かしてくれよ!」という恩返し的な発想。酷いのになると「俺が呑み会の幹事をしてやっているんだから、お前ら俺がタダ飲みできるぐらいの会費を払えよ」なんてことを言っているような行いをしている卑怯な奴もいる。こんな奴が市民の財産を守るなんてことを、ほざいて市議会議員になっているのには心の底から腹が立つ。上に立とうとする人間から恩返しを求められることほど、迷惑なことなんかない。
 クソのような世の中、おっと言葉が汚すぎた。なんだか報われない世の中が良くなるような方法がないものか?なんて思わせる考え方を描いているのが今回紹介する映画ペイ・フォワード 可能の王国

 残念ながら俺1人が実践しても良くならないが、みんながこのような気持ちを持てば、素晴らしい世界が可能なように思えてくる気がするストーリーの紹介を。
 ラスベガスに住むトレバー(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は中学1年生。父親は母に暴力をふるって家出をしており、母親のアーリーン(ヘレン・ハント)は仕事を2つ掛け持ちしながらもアル中を患っている。
 トレバーは社会の授業で初めて顔面の半分が焼けただれたシモネット先生(ケヴィン・スペイシー)と出会う。シモネット先生から「もし世界を変えたかったら、君たちは何をする?」というテーマで宿題を出される。それに対するトレバーの答えは「善意を困っている人に与え、善意をもらった人は困っている人に善意を与え、さらにその善意をもらった人は困っている人に善意を与え・・・」、これこそペイ・フォワードの考え方。トレバーは困っている人を3人選び(その中にはシモネットも入っている)、自らの考えを授業で発表し、それを実践していくのだが、ことはそう簡単に運ぶことが出来ずに・・・

 恩返しではなくて、恩送り。これがペイ・フォワード。トレバー君は中学1年生なのに本当に素晴らしい考え方の持ち主。そして俺が特に感心するのは、トレバー君は善意を施したことに対して、偉そうにすることもなく謙虚に振る舞う。この態度が素晴らしいではないか。上に立つと偉そうな態度をとる奴が居るが、本当にこの少年の行いを見習え。
 しかし、自らの行いが良きものだと思っていても、相手にとっては、はた迷惑に思われる可能性もあったりする。そんな時に立ち止まりそうになるが、そこで必要になるのが勇気。トレバー君だけでなく、本作に登場する人達に勇気を迫られる場面が出てくるのだが、果たして彼らは克服できるのか。俺にも本当に勇気が欲しい。
 ところが本作は意外過ぎるラストシーンを迎える。もっと違うエンディングは無かったのか?なんて思えたりするが、これが非常にキリスト教的なエンディング。最初に手を挙げた者は茨の道を進み、その後に続くものが、彼の意志を継ぐ。何とも後味が悪く感じられたりするが、希望の光を見ることができる、ということで今回は映画ペイ・フォワード 可能の王国をお勧めに挙げておこう

 監督は女性のミミ・レダー。他の作品は観たことはありませんが、ディープ・インパクトは面白いみたいです

 


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映画 ベルリン・天使の詩(1987) 天使が人間に憧れる

2024年11月27日 | 映画(は行)
 まだドイツが東西に分裂していた頃のベルリンを舞台に天使たちが人間界に寄り添うストーリーが今回紹介するベルリン・天使の詩。非常に静謐であり、映像もスタイリッシュで荘厳さを感じさせる。そして、大方のイメージを覆すのが天使がオッサンであること。服装も冬用のコートを着ていて見た目は本当に姿は人間とまるで変わらない。しかしながら、天使は人間が何を考えているかを読み取ることができる能力がある。そして、天使の姿は子供からは見えるのだが、大人には天使が見えないという設定。そんな天使たちが悩める大人達に寄り添う姿が印象的。しかしながら、そんな天使でも人間の苦悩を救えないのがもどかしいところ。
 
 ある程度本作に登場する天使のキャラを説明したところでストーリーの紹介を。
 天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)は永遠の命を持ち、太古の時代からベルリンを見てきており、人間が誕生してからのベルリンをずっと見てきており、人間が喜ぶ姿も悲しんでいる姿も傍観している。人間の生活に興味が惹かれたダミエルは親友の天使であるカシエル(オットー・サンダー)に、俺も人間になりたいんだよな~と相談するのだが、カシエルはあんなロクでもない世界に憧れるのは止めておけと注意する。しかし、ダミエルはサーカスの空中ブランコ乗りの女性マリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)に一目惚れ。
 そしてベルリンに撮影にきていたあの刑事コロンボ役で活躍していたピーター・フォーク(実物)から、ダミエルは自分の姿が見えないはずなのに、こっちの世界へ来いよと後押しを受けて、人間の世界に降りる決心をするのだが・・・

 冒頭から「子供が子供であった頃・・・」みたいな朗読が流れてくるが途中でも流れてくるのでその問いかけを深読みしようとしたが、理解できなかったし、それ以外にも難解に感じさせるシーンが多かった。天使たちが自由奔放にベルリンを自由自在に動きまくって人間の心の声を聞ける特殊能力を持っていて、しかも相手側は自分の姿が見えないって俺には天使というよりも透明人間を思い出させた。天使ダミエルなんか自分の姿を見えないことを良いことにストーカーしまくる。マリオンが服を着替える途中で裸になるところでモノクロからカラーへの鮮やかな変換。何とも嬉しいシーンではあったのだが、監督のスケベな心も見えてしまった。
 俺なんかは人間よりも天使の方が永遠の命を与えられて、女の子を追いかけることが出来て良いじゃん、なんて思ったが、ダミエルが天使を辞めて人間として生きることに喜びが一杯。人間の世界には天使の世界ではわからなかったことがたくさんあったのだ。例えばカラーの色別、コーヒーの味、そして人間同士の触れ合い等今まで天使のままでは理解できなかったことが出来て大いに楽しんでいた。本作は実は大いなる人間賛歌を謳っていた内容だったのだ。今まで自分は人間として得をしたことなんか何にもないと思っていたが、いやいや人間は素晴らしい。
 他にも大きな図書館が天使たちのたまり場になっているのにびっくりしたし、ベルリンが舞台だから決して避けられない戦争の傷跡も描かれており、ちょっとだけ笑わせるシーンがあったり、色々なテーマを内包している。なんだか自らドイツの語り部となるべくウダウダ言っている爺さんの存在が気になったり、「子供が子供であった頃・・・」が連発される意味がよく分からないなど、不可解な部分もあるが、なんだか映画に芸術とファンタジーを融合した名作として今回はベルリン天使の詩をお勧めに挙げておこう

 監督は今や尊敬を集めるヴィム・ベンダース。本作はハリウッドのシステムが合わずに故郷の西ドイツに帰って一作目の作品。他ではパリ、テキサスアメリカ、家族のいる風景が好きです。






 




 
 
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映画 プレイス・イン・ザ・ハート(1984) 自立していく女性を描く

2024年11月22日 | 映画(は行)
 ひたすら身に降りかかる不幸に嘆くだけで、まるで行動できない人がいる。しかし、切羽詰まった時に根性を発揮できるのも人間の素晴らしさであることを教えてくれるのが今回紹介する映画プレイス・イン・ザ・ハート。本作の主人公は冒頭からとんでもない出来事に襲われ、その後も次々とトラブルに見舞われるが、根性と運そして逞しさで乗り切ろうとする。
 俺なんかよく自分の境遇に嫌気がさして自暴自棄になりそうになるが、本作を観ると不思議と、まあ生きていりゃ何とかなるんじゃねえ~、なんて思わさせられる。よく考えたら俺も運の良さで人生のピンチを乗り越えてきたことがあったっけ

 さて、どことなく頼りなさそうな女性が自立していくストーリーの紹介を。
 1930年代の大恐慌の時期であり、アメリカの南部であるテキサス州の小さな町において。エドナ(サリー・フィールド)は保安官の夫ロイス(レイ・ベイカー)と子供二人と暮らしている。食事中に夫のロイスが部下から呼び出され、現場にかけつける。そこで酔っぱらった黒人のワイリーが銃を乱射していた。ロイスは止めようとしてワイリーに近づくが、あろうことかワイリーが振り回していた銃はロイスに命中。そのままロイスは死んでしまう。
 悲しみに浸るエドナを更にどん底に突き落とすことを知らされる。エドナはお金のことを全てロイスに任せていたために家計の事情をわかっていなかったのだが、ロイスが家の購入資金を銀行から借金をしていたことを知らされ、自宅を売ることを提案されてしまう。すっかり専業主婦にどっぷり浸かっていたエドナは、大不況の時期もあり、何の仕事をこれからしていけば良いかわからずに途方に暮れかけていたのだが・・・

 衝撃的なシーンから始まり、この後も悲劇が次々と起きる。しかも、エドナという女性だが、まるでお金の計算ができない経済音痴。そのことを突かれて危うく騙されそうになったりする。まだ幼い子供二人を抱えてどうやって生活していくんだと思えたが、人間生きていれば何とかなるという展開が続く。このエドナという女性の凄さは大した知識が無くても、土壇場で力を発揮するところ。このあたりのヒューマニズムの描き方は感動的であり見習うべき点が多々ある。
 そして、テキサス州が舞台であることから人種差別の問題もテーマに盛り込んでいる。正直なところタイトルのプレイス・イン・ザ・ハート(直訳すると、心の場所)に込められた意味の深さが個人的にはわからなかったのだが、どうやら人種差別や過酷な自然環境の場所であっても去りがたい場所であることにヒントがあるようだ。そして本作のエンディングシーンが非常に印象的。もしかしたらこのエンディングの描き方に否定的な人が居るかもしれないが、個人的には良いも悪いも忘れがたい思い出が集約しているようで大いに感心させられた。
 力強く生きていく女性が描かれている内容が好きな人、ヒューマニズムと社会派が融合されている映画が好きな人、生きる気力が湧いてくるような映画を観たい人等に今回は映画プレイス・イン・ザ・ハートをお勧めに挙げておこう

 監督はロバート・ベントン。ダスティン・ホフマンとメリル・ストリープ主演のクレイマー、クレイマーがお勧め。







 
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映画 フォックスキャッチャー(2014) 実話のサイコサスペンス

2024年11月19日 | 映画(は行)
 アメリカでは実際に起きたデイヴ・シュルツ殺人事件を描いているのが今回紹介する映画フォックスキャッチャー。個人的にはこんな殺人事件があったことを知らなかったので、どことなく全体的に不穏な雰囲気を感じた。しかし、多くの人が知っていると思われるアメリカ人と、こんな殺人事件があったことを知らない日本人が見るのとでは、感覚が異なるか。実は最初はレスリングを舞台にしたスポコン映画かと思っていたのが、全く違った方向へ行くので戸惑ったのだが、実は結構好きな人が多い分野のサイコサスペンスだったことに後から気づいた。
 しかし個人的に惹かれたのが愛国心の描かれ方。俺の周りには、ネジ曲がった奴が愛国心を強調するのを見掛ける時があるが、うっぷん晴らしに愛国心を強調する人間が我が国ニッポンにも多く見かけるのが何とも嘆かわしい。本作を観ると何処にでも不満の鬱憤晴らしに愛国心を利用する奴が存在するんだとわかる。

 さて、コメディの印象が強いスティーヴ・カレルがイメージを覆すほどの演技を見せるストーリーの紹介を。
 1984年のロス五輪のレスリングにおける金メダリストであるマーク・シュルツチャニング・テイタム)だが、レスリングがマイナー競技であるためか貧乏暮らしから抜け出せないでいた。彼の兄であるデイヴ・シュルツマーク・ラファエロ)も同じくレスリングの金メダリストであり、すでに家族も持っており、今では競技に未練もなく安定した今の生活に何の不満も持っていなかった。
 そんな時にマークに声をかけてきたのが、デュポン財閥の御曹司であるジョン・デュポンスティーヴ・カレル)。彼は次のソウル五輪へ向けて金メダリストを産み出すために自前のレスリング練習場を設立し、エリート集団フォックスキャッチャーを創設。そのエースとして破格の待遇でマークを迎えるのだった。当初はジョンとマークの間は上手く行っていたのだが・・・

 本作は実話であり、実名でそのまま登場させている。カネの力で何でもやり遂げようとするジョン・デュポンだが、そんな彼でも何処か満たされない想いを抱えている。そして、金メダルをとりながらも、国民的に人気のある兄のデイヴの陰から抜け出せないままであることに不満を持っているマーク。金持の頂上にいるかのようなデュポンと、対照的に貧乏暮らしのド底辺にいるマークが運命的に出会い、その二人を結び付けたのが愛国心というのが興味深い。世の中への不満に対して愛国心が逃げ場になっているリアルな現実を本作から感じ取れる。
 そして、スティーヴ・カレル演じるジョン・デュポンが非常に不気味な雰囲気を漂わせており、本作を興味深い作品に仕立てている。なぜこんな事件が起きてしまったのか?とハッキリさせない感じが余韻を残す。
 ハッピーエンドな映画を見飽きた人、サイコサスペンスが好きな人、ウヨクチックな人、そしてサヨクチックな人も。今回はフォックスキャッチャーをお勧めに挙げておこう

 監督はベネット・ミラー。トルーマン・カポーティーの伝記映画カポーティー。ブラッド・ピット主演の野球映画マネーボールがお勧め








 
 
 
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映画 バットマン ビギンズ(2005) 誕生秘話です

2024年03月08日 | 映画(は行)
 DCコミックが送り出した不滅のヒーローであるバットマン。現在に至るまで多くの俳優がバットマンを演じてきたが、最も格好良いのが本シリーズにおけるクリスチャン・ベールが演じるバットマン。そんなシリーズの第一作目が今回紹介する映画バットマン ビギンズ。生身の人間であり金持ちの御曹司であるブルース・ウェインが如何にして戦闘能力を身に付けたのか。そんなバットマン誕生秘話が描かれているのが従来のシリーズとは違うところであり、この辺りは個人的には楽しめると同時に、ヒューマニズム性も感じさせらた。

 すっかり腐敗してしまった生まれ故郷であるゴッサムシティの街に平和を取り戻すために戦い続ける宿命を背負ったバットマンを描いたストーリーの紹介を。
 少年時代に目の前で両親を浮浪者チル(リチャード・ブレイク)に殺されたブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)。青年になった彼は司法取引で仮出所をしてきたチルを復讐するために拳銃を持って近づいた矢先に、ゴッサムシティを牛耳るマフィアの親玉ファルコニー(トム・ウィルキンソン)の手下によってチルは射殺されてしまう。
 その帰り際に幼馴染みであり、今や女性検事補になっているレイチェル(ケイティ・ホームズ)から復讐しようとしたことを責められ、ゴッサムシティが不況に陥り、浮浪者を大勢生みだし、司法、警察の汚職や腐敗を招いているのは全てファルコニーが原因だと諭される。
 ブルース・ウェインは単独でファルコニーに会いに行くが、彼の手下に叩きのめされ、しかも刑事や政治家がファルコニーに操られていることに、己の無力さを知ってしまう。そんなウェインは自ら犯罪を繰り返して、犯罪者の気持ちを理解しようとし世界中を周る。彼がアジアの刑務所に収監されている時に、謎の男(リーアム・ニーソン)と出会い、彼の下で戦闘力を身に付けるべく修行に励むのだが・・・

 少年時代にレイチェルと一緒に遊んでいる時に井戸に落っこちてしまいコウモリに襲われたり、両親を目の前で殺されたり等、トラウマを抱えてしまったブルース・ウェイン。やさぐれてしまった気持ちを、どこへ向けるのかと思っていたら犯罪者になることだって!正直なところ、この展開は失敗しているようにも思えた。しかし、この映画の奥深いのはブルース・ウェインがゴッサムシティに戻ってから。復讐することは単なる自己満足であることに気付かされ、本当の正義に目覚めてからはバットマンというコウモリ姿のコスプレに身を纏い悪人を叩きのめす。そんなバットマンだが、どんな悪人であろうと決して人殺しはしないことを信条にしている。そんなことは当たり前だろうとツッコミたくなるが、その信条が時には弱点になることもある。
 そして強い奴が現れたら、更に強い奴が現れる。善人がいるから悪人も存在してしまう。まるで国際関係の仕組みを暗示しているようなテーマ性を含ませる内容は流石である。そして、この監督の特徴でもある意外性も感じさせてくれるのが良い。そんな理由でとにかくバットマンの映画が大好きな人は勿論だが、少しばかり奥が深いアクション映画を観たい人に今回はバットマン ビギンズをお勧めに挙げておこう

 監督はクリストファー・ノーラン。本作の続編にあたるダークナイトは必見。他では天才マジシャン同士の対決を描いたプレステージ、デビュー作にあたるフォロウウィング、救出作戦を描いたダンケルク、驚きの映像が観れるテネット等お勧め多数の天才監督です










 
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映画 バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト(1992) チョ~悪です

2024年03月01日 | 映画(は行)
 本来ならば正義の味方なのに、なぜか映画の悪役でよく使われるのが刑事。そんな映画史上においてもナンバーワンに値する極悪刑事を描いたのが今回紹介する映画バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト。かなりブ千切れた刑事を本作で観れることができる。ありとあらゆる違法行為やモラルに反することに手を染めてしまうように刑事失格どころか、人間として失格。超ダメダメの刑事に対して訪れる運命は如何なるものか?

 早速だが悪の限りを尽くす刑事がやらかしてしまうストーリーの紹介を。
 ニューヨーク、ブロンクスにおいて。息子2人を車に乗せて学校へ送り届けるような良きパパに見える警部補(ハーヴェイ・カイテル)。車から息子を下した後に、コカインで一発決めた後に殺人現場へ向かう。現場のことよりも自ら手をだした野球賭博の結果が気になり、しかも不運なことに彼が賭けているチームは負け続ける。その間も麻薬の売人と売り買いをしたり、家庭がありながら愛人や売春婦にのめり込む。
 更に警部補はドラッグ、アルコールにまみれて、しかも野球賭博で負け続けて借金も倍々に膨らんでしまい、もはや酩酊状態。そんな時に修道士の女(フランキー・ソーン)が2人の若い男にレイプされる事件が発生。警部補はレイプされた修道士の女に、『俺が犯人を見つけて代わりに成敗してやる』と告げるが、彼女から意外な言葉を発せられ・・・

 今や名優であるハーヴェイ・カイテルが猛ハッスルする。ボカシが入るほどの全裸になったり、自慰行為をしたり、イライラしてきたら拳銃をぶっ放し、思いっきり泣き叫ぶなど、メーターを振り切った怪演を披露する。とにかく悪の限りを尽くし、野球賭博で負け続けて本当に首が回らなくなるほどの借金を背負ってしまう警部補はどんな結末を迎えるのか。
 警部補は修道女と出会ってから、心の変化が現れる。すっかり泥沼にはまりこんでしまい、今さらマトモな人間になんか成れるわけがないだろうと思っていたら、キリスト様は粋な計らいをする。まさにキリスト教の厳しさと優しさの相反するような両者を身をもって感じさせられた。
 正直なところ子供に見せるには悪い影響を与えそうな内容だが、大人が観るには充分に鑑賞に堪えられる。自分の人生がどん底に陥ってしまいそうな人に映画バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリストをお勧めに挙げておこう






 
 
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映画 ハムレット(1947) モノクロ映像の素晴らしさに感服

2024年02月17日 | 映画(は行)
 誰もが知っている超有名人のイギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピア。多くの傑作戯曲を遺しているが、現在においても世界の何処かで上演されているだろう。その中でもシェイクスピアの四大悲劇の一つとされ、彼の最も有名な作品はハムレット。今回紹介する映画がそれを原作とする同名タイトル作品。名優ローレンス・オリヴィエが監督、主演を務め、彼はシェイクピア俳優として有名なだけに渾身の作品となっている。
 ちなみに本作はモノクロ映像であり、それを活かした重厚なセットかつ緻密なカメラワークが素晴らしい。またタイトル名は知っているが、内容は全く知らない人も居る思うが、そんな人でも現在においても通じるテーマが本作では描かれているし、比較的登場人物も少ないのでわかり易い。

 それでは全体的に憂いをおびた主人公が印象的なストーリーの紹介を。
 デンマークにおいて。デンマーク国王が死亡、その跡を継いだのが王の弟であるクローディアス(ベイジル・シドニー)。そして彼は前王の王妃であるガートルード(アイリーン・ハーリー)を娶る。父王の死と母である王妃の早すぎる再婚に悩むハムレット(ローレンス・オリヴィエ)は聡明な父とは違い、新しく王に就いた叔父のクローディアスの人間性を嫌っており、彼のやり場のない怒りは深まるばかりだった。
 ある日のこと、ハムレットは親友のホレイショ(ノーマン・ウーランド)から夜の12時に城壁の露台に、亡き国王(ハムレットの父)の幽霊が現れると聞きつける。その話を確認するためにハムレットはホレイショー達と一緒にその場に向かい、父の亡霊と会う。ハムレットは亡霊から、父の意外な死因を聞かされてクローディアスに対して復讐することを誓うのだが・・・

 とにかくハムレットは新しく王となった叔父さんのことが大っ嫌いで、亡き父から復讐をそそのかされるのだが、これがいざ実行になかなか移せない。しかも、ハムレットのとった作戦は正気を失ったような振りをする織田信長と同じ、うつけもの戦法。正直なところそんな作戦必要?なんて俺は思ったのだが、物語を盛り上げるためには効果充分。恋人オフィーリア(ジーン・シモンズ)や王妃である母親を苦しませ、悲劇的結末にも良いスパイスを効かせていた。
 しかし、本作の凄いのは前述したが重厚なお城のセット。こんなセットを作り上げ、またそのセットの奥行きを計算したかのようなカメラワークも抜群。内容だけでなく演出でも惹きつけられる。そして、本作では人間の欲望といったテーマが盛り込まれているが、それも現在までハムレットがなぜ人気があるのか理解できる要因であるだろう。そして、「生きるべきか、死ぬべきか」・・・等、多くの印象的な名台詞も本作の格調の高さを感じさせる。しかしながら、悲しいことに俺の記憶力の悪さが、それらの殆どを忘れさせてしまった。
 シェイクスピアに興味がある人、またはシェイクスピアは敷居が高いと思っている人、格調の高い映画を観たい人、原作の内容を知っている人も知らない人も、モノクロの映像テクニックに浸りたい人・・・等に今回はハムレットをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したようにローレンス・オリヴィエ。個人的には俳優としての方が印象が強い。彼のお勧め俳優作品を挙げるとヒッチコック監督作品のレベッカ、ダスティン・ホフマン共演のマラソンマン、脇役ならスパルタカス素晴らしき戦争もお勧め












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映画 冒険者たち(1967) ロマンが溢れるも・・・

2023年09月04日 | 映画(は行)
 男2人と女1人が友情及び三角関係に結ばれつつ一攫千金とその夢の果てを描いたのが今回紹介する映画冒険者たち。タイトル名から謎解きをしながら、宝物を探しに出かけるトレジャーハンターのスリルに満ちたアドベンチャー映画を想像すると大間違い。むしろ全編に渡って男同士の友情が描かれている。その中に割って入るようにカワイ子ちゃんが入ってくるが、お互いにその女性に気がいきながらも男の友情は壊れそうで壊れない。なんせ夢はでかいことで共通する2人だが、生き方が不器用なところまで共通しているので、尚更2人の男の友情は熱い。そんな2人、いやカワイ子ちゃんも入れての3人の宝物探し、そして悲劇を味わうことによって三角関係が美しい物に昇華される・・・。

 それでは大人達のロマンを感じさせるストーリーの紹介を。
 画期的な車のエンジン開発に挑んでいるローラン(リノ・ヴァンチュラ)、パイロットでインストラクラーであるマヌー(アラン・ドロン)の2人の男は固い友情で結ばれている。そこへ鉄くず同然の廃車になっているドア等を集めにローランの仕事場にやってきたのが美人でスタイル抜群なレティシア(ジョアンナ・シムカス)。レティシアは前衛アートの彫刻家であり、成功を夢見ている。ローラントとマヌーは少し変わっているレティシアを好意的に受け容れる。そして3人は助け合いながら夢に向かって進もうとする。
 しかしながら、3人は夢に破れて挫折。ところがコンゴ共和国の海に莫大な財宝を載せた飛行機が墜落したとの噂を聞く。彼らは一攫千金とばかりにコンゴの海へ行き、何と今までのダメダメな人生を覆すかのように財宝を発見。大喜びしているのも束の間、他にも財宝を狙っていた一味が居て・・・

 夢に向かってチャレンジしろ!なんて言って後押しする人がいるが、この3人を見てたらもう止めとけって思える。しかし、どこに運が転がっているかわからない。ところが本作は財宝を発見してスゲーって思ってたらアッと言う間に悲劇が起きる。ストーリー紹介の後で船上で銃撃戦を起きてしまい、何とレティシアが巻き添えを喰らって死亡。まだ中盤の出来事なのに、最高にショックな展開が起きてしまう。しかし、2人の男は命を亡くしたレティシアに潜水服を着せて海中深くに葬ってやるのだが、このシーンは名場面だと言って良いぐらい神秘的に思えた。でも、ふと思ったのだが、もしもレティシアが生きていたらローランとマヌーの友情はどうなってただろう?みんながみんな人生を思う通りには過ごせんな。
 しかし、大金なんか手にしたらロクでもないことは、この後の展開を見ればわかる。なぜなら、カネの匂いを嗅ぎつけた悪い奴らが2人を追いかけてくるのだが・・・。そして最後の運命を決す場所が良い。その場所はここでバラさないので映画を見て欲しい。
 口笛を使った音楽が甘酸っぱいような青春映画を感じさせるし、自分の事よりも相手の事を思いやれる友情に感動するし、ジョアンナ・シムカスは綺麗で目の保養になるし、オッサン2人が船の上ではしゃぐシーンはノスタルジーを感じさせる。たまにフランス映画を観たくなる人に今回は冒険者たちをお勧めに挙げておこう

 監督はロベール・アンリコ。本作にも出演しているジョアンナ・シムカス主演の若草の萌えるころ、ジャン=ポール・ベルモント主演のオー!HO!、そして追想がお勧め

 
 

 
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映画 バラキ(1972) マフィアの実態がわかります

2023年05月07日 | 映画(は行)
 タイトル名はジョゼフ・ヴァラキという人物名に由来する。ギャングとマフィアを混在している人がいるが、実はその由縁とするところは大きく異なる。ギャングというのも近寄りたくないが、マフィアというのはイタリアのシチリア諸島を起源とする犯罪集団のこと。欧州から多くの人達が新大陸アメリカを目指すが、マフィアも例外ではなく彼らもアメリカへ渡り勢力を広げた。
 そして彼らがアメリカでやっていることと言えば、人殺しのみならず麻薬、賭博など犯罪に手を染めていた。しかし、なかなか犯罪を取り締まるFBIも警察もマフィアの実態がよくわからない。そんなマフィアの実態を全国放送のテレビで放映された公聴会でバラしたのが、マフィアの構成員の1人であったジョゼフ・ヴァラキ
 なかなか内容が内容なだけに映画化となるとマフィアからの報復が怖いので、この映画の企画を持ち込まれた多くのハリウッドのプロデューサー達は断ったようだが、そこで立ち上がったのがマフィア発祥の地であるイタリア人の名プロデューサーであるディノ・デ・ラウレンティス。それでもマフィア連中からの脅迫はあったようだが、まさに命がけで撮った作品が今回紹介するバラキ。生々しい描写、マフィアの怖さ、そして死の接吻オメルタ(血の掟)、コーサ・ノストラという組織、マフィアの内部事情まで教えてくれる映画だ。

 それではマフィアの本当の怖さを知らされるストーリーの紹介を。
 1962年、アトランタの刑務所に服役していたヴァラキ(チャールズ・ブロンソン)は、かつての仲間から刑務所の中でも命を狙われる。ヴァラキの大ボスであるヴィト・ジェノヴェーゼリノ・ヴァンチュラ)も同じ刑務所に服役しており、ヴァラキは助けを求めるためにヴィト・ジェノヴェーゼに面会を求める。実はヴァラキの殺害を指示していたのはヴィト・ジェノヴェーゼであり、ある事件について密告していたのはヴァラキだと思い違いをしていたのだ。ヴァラキがジェノヴェーゼに疑いを晴らそうとするが、ジェノヴェーゼはヴァラキの首に賞金を懸け、手下に殺害を指示する。
 ヴァラキは別の刑務所へ護送され、そこでFBI捜査官のライアン(ジェラルド・S・オローリン)と面会する。ヴァラキはライアンにコソ泥をして生活をしていたことに始まり、マフィアに入る切っ掛け、最初は幹部の運転手からスタートして、やがて殺害にも加わるようになったこと、そしてマフィアの争い、コーザ・ノストラというマフィアの組織、そしてオメルタ(血の掟)で結ばれたマフィアの同士の結束等などを話していく・・・

 チャーリー・ルチアーノサルヴァトーレ・マランツァーノ等、大物マフィアも実名で登場する。ドキュメンタリータッチで描かれているだけに、生々しいシーンもあったりする。この映画の制作開始時は、まだヴィト・ジェノヴェーゼジョゼフ・ヴァラキも存命中。しかも、ヴィト・ジェノヴェーゼは刑務所の中からでも殺害指令を下すことができる等、本作を映画化しようとしたスタッフ達もマフィアの連中から脅迫されてしまい、結局はヴァラキもジェノヴェーゼも獄中で死を迎えてから本作は公開された。
 本作を観ればマフィアの怖さを知るのは当然として、一般市民の生活の中にもマフィアが入り込んでいることがわかる。一部の警察と組んでいたり、労働組合にも入り込んでいたりするので突然不当なことで仕事を解雇されたりする。そして、マフィアの世界にも時代の流れがあり、マフィアの変遷も少しは理解できる仕組みになっている。オメルタ(血の掟)なんかは、日本のヤクザとも共通点が見いだされるし、一度泥沼に嵌ってしまった人生から抜け出すことの難しさをラストで痛感する。
 今回はちょっと怖いマフィアの世界を覗いてみたいという人、マフィア映画が好きな人等に映画バラキをお勧めとして挙げておこう

 監督はテレンス・ヤング。007シリーズの初期の作品が有名。同じチャールズ・ブロンソン主演でサスペンス映画夜の訪問者がお勧め。
 
  
 




 
 
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映画 薔薇の名前(1986) 中世の修道院を舞台にしたミステリー

2022年09月18日 | 映画(は行)
 名優ショーン・コネリーが亡くなってから、もうすぐ2年が経つのかと思うと時の流れは早い。かつては007シリーズでジェームズ・ボンドを演じ、そのまま続けていればもっと大金が自分の懐にザックザックと入っていただろう。しかし、彼の役者魂が自分のキャリアをジェームズ・ボンドだけで終わらせることを許さなかった。ジェームズ・ボンドのイメージを完全に拭い去ったと個人的に思っているのが、今回紹介する映画薔薇の名前。それにしてもジェームズ・ボンド役では女たらしのスパイを飄々と男臭く演じていたイメージがあるが、ジェームズ・ボンド役を自ら降板してからは名優の貫録が抜群。本作においても色々と個性的な脇役陣が登場するが、その中でも抜群の存在感を発揮する。
 さて、本作は1300年代の中世、そして修道院を舞台にしたミステリーというのが珍しい。カトリック教会における宗教の知識や歴史に疎い人は観ている間は少し重苦しいと感じるかもしれないが、逆に言えば少しばかり中世の歴史とカトリックについて少しばかり学べた気分になれる。現在世界中にカトリック信徒が12億人いると言われる。キリスト教から派生した中でも最も多いのがカトリックだ。しかしながら、本作を観ればわかるがカトリックもこの時代になると教会において、腐敗、魔女狩り、免罪符を売りつけたり、徐々に本来の教義を忘れて私利私欲に走る人間が修道院の中にも、外にもたくさんいることがわかる。

 さて、ヨーロッパの中世、修道院を舞台にした本格的ミステリーのストーリーの紹介を。
 1327年の北イタリアにおいて。フランシスコ会のウィリアム修道士(ショーン・コネリー)は弟子であるアドソ(クリスチャン・スレイター)を伴って、高台にポツンと建っている修道院を目指していく。この修道院において、他の修道院の修道士もやって来て、ローマ教皇と今後の財産を含めたカトリック教会の方向を議論することが目的だった。
 しかし、頭脳明晰、観察力抜群のウィリアムは最近において、この修道院で殺人があったことを察知する。そのことを修道院長であるアッボーネ(ミシェル・ロンスダール)に問いかけると、アッボーネは驚きながらもそのことでウィリアムに相談して、殺人の真相を調べることを依頼する。しかし、瞬く間に殺人事件が再度発生。ウィリアムとアドソは調べれべ調べるほど複雑な人間関係がわかってくる。ようやく事件の真相とウィリアムのこの修道院に来た目的を達しようとしたときに過去に因縁のある異端審問会のベルナール・ギー(F・マーリー・エイブラハム)がやって来る・・・

 我ながら西欧の中世の時代に産まれなくて良かったと思えた。異端審問官なんて酷すぎる。こいつ等の行っている裁判なんかやばすぎて、うっかり宗教の自由なんて叫んでしまったら火あぶりの刑に遭ってしまう。俺なんかは今まで笑いの力は世界を平和にすると思っているのだが、ここに登場する修道士の中には『笑い』を許さない奴まで出てくる。どれだけカトリックというのは厳しいんだ。
 そんなカトリックの厳しさを見せつけられながら、ウィリアム修道士とアドソが殺人事件を捜査するのを見ているとシャーロック・ホームズとワトソン君のような関係で本格ミステリーとして楽しめる。そして、この修道院にはキリスト教圏内で一番大きな図書館があるというのが本作を面白くしている要素として挙げられる。この図書館の中がまるで迷路。ウィリアム修道士だからこっそり入って、抜け出すことができるが、俺がこんな図書館に入ってしまったら迷子になって死んでしまうだろう。なかなかのゴシック風で少々怖さを感じさせるサスペンス。タイトルの意味が俺にはよくわからなかったのだが、そのことを考えながら観るのも一興だろう。ちなみに本作はウンベルト・エーコの同名タイトルの小説の映画化。一度は読んでみたいのだが、なかなか文量が多いので根気のある人は小説を読んでください。

 監督はフランス人のジャン=ジャック・アノー。ブラッド・ピット主演のセブン・イヤーズ・イン・チベット、スナイパーの対決を描いたスターリングラードがお勧め。




 
 


 

 
 


 
 
 
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映画 ビッグ・フィッシュ(2003) ほら吹きファンタジー

2022年08月17日 | 映画(は行)
 ちょっと昔の俺は女性にはモテモテで、とにかく毎日違う女の子と出会ってデートの繰り返しで有無を言わせずにプレゼントを贈りまくっていた。それもそのはずで、知らない女の子でも悪そうな奴らに迫られているような場面に出くわすと、ヒーローの如く俺が登場して、そいつらを叩きのめして助けてあげるとその女性と付き合ってしまうことになる。ここまで書いてしまうとホラ吹きと言うよりも大噓つきになってしまうか。
 さて、今回紹介する映画ビッグ・フィッシュだが、どこまでが事実かわからないようなホラを吹くお父さんと、小さい頃はお父さんのホラ吹き話が楽しかったのだが、次第に年齢を重ねると父親のホラ話を聴くのが嫌になってしまう息子。仲違いしてしまった親子だが、死が間近に迫ったきた父親とその息子は果たして仲直りできるのか、というのが大まかなストーリー。
 映画の構成は父親の死期が迫った現在と、父親の若き青春時代を交互に描き出す。やはりと言うか父親のあり得ないような若き時代のストーリーが面白く、ティム・バートン監督らしい鮮やかな色彩を駆使しているし、ほら話の中にとんでもないような人間達?が登場する。身長5メートルの大男、目を見合わせると死に方がわかってしまう魔女、そして狼男?、上半身だけ別々になっている双子の女性など、ホラーテイストを加えながらも笑えるストーリーを繰り広げるのだがティム・バートンの得意なパターンが炸裂している。

 どこまで本当か嘘かわからない話ばかりしているお父さん、そんな父親のことが全く理解できないでいる息子。果たして2人は親子の絆を取り戻すことができるのか?出来るだけストーリーの紹介を簡単に。
 ウィル(ビリー・グラダップ)とジョセフィーン(マリオン・コティヤール)の結婚式の最中にウィルの父のエドワード(アルバート・フィニー)は得意のホラ話で来客者たちを笑わしていたが、父親のホラ話に嫌気がさしているウィルはその場を飛び出し、結婚式は台無し。ウィルはジョセフィーンと一緒に出て行ってしまい父親と会わなくなる。
 しかし、父親の病気が深刻化していることを母親のサンドラ(ジェシカ・ラング)からの手紙で知る。早速ウィルとジョセフィーンは3年振りに実家へ帰り、ウィルは父親のエドワードと二人っきりで話すも結局は父親のことは理解できぬまま。
 ウィルは父親から聴かされた若き頃のエドワード(ユアン・マクレガー)の奇想天外なホラ話を回想しながら、父親の本当の姿、生き様を知ろうと行動を起こすのだが、現実は・・・

 アルバート・フィニー演じるエドワードは体調が悪くてもホラ話なのか作り話なのかわからないが、なかなか面白いことを言っているのだが、多くの人を楽しませている人気者なのだが、そんな父を嫌っているのが息子のウィルだけ。確かに赤の他人が聴くと楽しい話だが、息子のウィルにとってはデタラメばかり話しているのを聴かされるのは自分に置き換えても確かにキツイものがあるか。
 エドワードの若き頃をユアン・マクレガーが演じており、彼が出演している場面はエドワードのホラ話の出来事を演じているのだが、この場面が鮮やかな色彩で見栄えが良く、芸達者な脇役陣のお陰で非常に楽しいシーンが満載。あり得ないようなホラ話ばかりだと思いきや、意外にも真実も含まれている。最初は頭を空っぽにしてどんな話なのか観たい人も居ると思うが、どこまでが真実でどのように盛ったホラ話が展開されるかを考えながら観ても非常に楽しい映画。
 まあ、俺の近くにも嘘つきで、自分自身を偉そうに見せるために大ホラを平気で話している奴が居る。そいつの場合はとにかく嘘やホラ話をして自分を偉そうに見せて格好をつけないと恥ずかしい人生を送ることになってしまうので他人の迷惑を考えずに必死過ぎて可哀想にさえ思えてくる。本作のエドワードのように事実を大きく盛って笑いをとる、その姿勢を少しは見習え!
 まあ俺なんかは自分を落とした自虐ネタで笑わすことが多いので、ホラ話で笑わせることが羨ましく感じるし、とにかく本作には親子の絆、夫婦の絆、人助けの精神といった人間同士の絆を感じさせるのが良い。今や人と出会いにくい時代になってしまっているが、そんな時だからこそ今回は映画ビッグ・フィッシュをお勧め映画に挙げておこう

 監督は前述したようにティム・バートン監督。ジョニー・デップとのコンビ作品で楽しい映画が多い。特にシザー・ハンズエド・ウッドスリーピー・ホロウチャーリーとチョコレート工場がお勧め。他ではバットマンバットマン リターンズの2作品。そしてビートル・ジュース等、お勧め作品が多いです。






 


 
 
 
 
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