かつてイギリスのサッチャー元首相を爆弾テロで吹っ飛ばそうとしたり、北アイルランドを始めイギリス国内でテロ行為を頻繁に行ってきた過激派組織IRAだが、武力闘争の放棄を宣言してから、すっかり大人しくなった。それでも現在においても北アイルランド問題は尾を引いており、いつ火種が爆発するかわからない状態であるのは確か。宗教、政治、歴史、利権などが絡み、北アイルランドの地域だけでなく、なかなか世界中から暴力が排除されない現実が本当に嘆かわしい。
映画において、けっこう昔からアイルランド独立、アイルランド内戦、北アイルランド紛争、IRA等それぞれ因果関係のあるアイルランドの問題をテーマにした作品は多いが、そんな中でも大スターのネームバリューで最も惹きつけられる映画といえば今回紹介するデビル。ハリソン・フォードとブラッド・ピットという当時の新旧二大スターの共演がとてもワクワクさせる。
アイルランドの諸問題と言っても日本人には大して興味が湧かないテーマであり、確かに俺の感じたところでは本作を観ただけでIRAが武力闘争に走ったり、アイルランドとイギリスが現在でも抱える諸問題がわかった気分になれると思わない。むしろ暴力による負の連鎖の悲劇、そして武力解決の是非を問いかけるテーマ性がこの映画にはあるように思う。
さて、ハリソン・フォードとブラッド・ピットという二大スターの共演と聞いただけでも観たくなるが、一方で復讐、暴力といった人類の始まって以来の普遍的な内容が描かれたストーリーとはいかなるものか。
8歳の時にIRAシンパの父親を目の前で撃ち殺されて以来、フランキー(ブラッド・ピット)はIRAの組織の人間としてイギリス政府や軍隊、警察の人間を次々に殺害するテロリストとして国際指名手配されるまでに成長?してしまっていた。仲間の大半をイギリス政府の情報機関の襲撃によって失ってしまったフランキーは、イギリス政府との平和的な解決を諦め、ミサイルを購入するためにローリーと言う偽名を使ってニューヨークにやって来る。
ニューヨークではIRAシンパである判事の手引きで、ニューヨーク市警の警官であるトム(ハリソン・フォード)の家に居候することになる。ローリーはトムの娘たちからも慕われ、トムからも親切にされる。しかし、居候している間も武器調達に勤しんでいた。
しかし、ある日の事。トムと妻が家に帰ってくると黒い覆面をした男が侵入しているのを発見し、大乱闘になるが途中から現われたローリーの活躍もあり、黒い覆面をした男達を逃走させる。しかし、その事件をきっかけにトムはローリーの正体に薄々と気付くようになるのだが・・・
実はこの映画を観るまでは、ニューヨークの警官は犯罪人と同じぐらい拳銃を振り回していると思っていたのだが、かなり自制しているのに驚いた。あの犯罪都市で極力、拳銃の力を借りないで窃盗犯を捕まえようとする努力、勇気は尊敬に価する。しかし、この映画を見てたらニューヨークなんて随分と平和に感じ、そのことが逆に北アイルランドで起こっているIRAとイギリス政府の血の抗争の悲惨さを感じさせ、祖国の嘆かわしい現状を打開するためには武力解決しか道を選ばさせない悲劇をブラッド・ピット演じるIRAの闘士から感じさせる。
たびたび流れてくるアイルランド音楽は非常に心地良いし、随所にアイルランドを感じさせる演出はアメリカ社会に詳しい人ならばその点でも楽しめそうだ。もちろん真面目で良い人過ぎる警官を演じるハリソン・フォードの設定もアイルランド系アメリカ人。さて、タイトルの意味(原題は『The Devil's Own』)が俺にはもう一つ理解できなかったのだが、デビル(悪魔)が表わすのはブラッド・ピットの方ではなくて、実はハリソン・フォードの変貌ぶりを表わしているのかと思ったのだが、果たして真相は如何に。
他にもこの映画から家族の温もり、アイルランド人同士の友情等も描かれており、そちらの面でも楽しめる。深読みすれば船が旋回するラストシーンも何だか意味深だ。巷では本作はサスペンス、アクションの部類だそうだが、そのような面白さを期待するとガッカリするかもしれない。むしろ社会派作品に2人の大スターが華を添えているぐらいの感覚で観るとちょうど良いぐらいだろう。
監督は社会派サスペンス映画の分野で傑作を生み出しているアラン・J・パクラ、ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォード共演でウォーターゲート事件を題材にした大統領の陰謀、ナチスの傷跡の大きさが身に沁みるソフィーの選択、ジョン・グリシャムの同名小説の映画化でデンゼル・ワシントン、ジュリア・ロバーツ共演のペリカン文書がお勧めです。
追記
今年はブログを更新する事は無いと思っていたのですが、意外に早く気力が湧いてきたので更新できました。これからもよろしくお願いします
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映画において、けっこう昔からアイルランド独立、アイルランド内戦、北アイルランド紛争、IRA等それぞれ因果関係のあるアイルランドの問題をテーマにした作品は多いが、そんな中でも大スターのネームバリューで最も惹きつけられる映画といえば今回紹介するデビル。ハリソン・フォードとブラッド・ピットという当時の新旧二大スターの共演がとてもワクワクさせる。
アイルランドの諸問題と言っても日本人には大して興味が湧かないテーマであり、確かに俺の感じたところでは本作を観ただけでIRAが武力闘争に走ったり、アイルランドとイギリスが現在でも抱える諸問題がわかった気分になれると思わない。むしろ暴力による負の連鎖の悲劇、そして武力解決の是非を問いかけるテーマ性がこの映画にはあるように思う。
さて、ハリソン・フォードとブラッド・ピットという二大スターの共演と聞いただけでも観たくなるが、一方で復讐、暴力といった人類の始まって以来の普遍的な内容が描かれたストーリーとはいかなるものか。
8歳の時にIRAシンパの父親を目の前で撃ち殺されて以来、フランキー(ブラッド・ピット)はIRAの組織の人間としてイギリス政府や軍隊、警察の人間を次々に殺害するテロリストとして国際指名手配されるまでに成長?してしまっていた。仲間の大半をイギリス政府の情報機関の襲撃によって失ってしまったフランキーは、イギリス政府との平和的な解決を諦め、ミサイルを購入するためにローリーと言う偽名を使ってニューヨークにやって来る。
ニューヨークではIRAシンパである判事の手引きで、ニューヨーク市警の警官であるトム(ハリソン・フォード)の家に居候することになる。ローリーはトムの娘たちからも慕われ、トムからも親切にされる。しかし、居候している間も武器調達に勤しんでいた。
しかし、ある日の事。トムと妻が家に帰ってくると黒い覆面をした男が侵入しているのを発見し、大乱闘になるが途中から現われたローリーの活躍もあり、黒い覆面をした男達を逃走させる。しかし、その事件をきっかけにトムはローリーの正体に薄々と気付くようになるのだが・・・
実はこの映画を観るまでは、ニューヨークの警官は犯罪人と同じぐらい拳銃を振り回していると思っていたのだが、かなり自制しているのに驚いた。あの犯罪都市で極力、拳銃の力を借りないで窃盗犯を捕まえようとする努力、勇気は尊敬に価する。しかし、この映画を見てたらニューヨークなんて随分と平和に感じ、そのことが逆に北アイルランドで起こっているIRAとイギリス政府の血の抗争の悲惨さを感じさせ、祖国の嘆かわしい現状を打開するためには武力解決しか道を選ばさせない悲劇をブラッド・ピット演じるIRAの闘士から感じさせる。
たびたび流れてくるアイルランド音楽は非常に心地良いし、随所にアイルランドを感じさせる演出はアメリカ社会に詳しい人ならばその点でも楽しめそうだ。もちろん真面目で良い人過ぎる警官を演じるハリソン・フォードの設定もアイルランド系アメリカ人。さて、タイトルの意味(原題は『The Devil's Own』)が俺にはもう一つ理解できなかったのだが、デビル(悪魔)が表わすのはブラッド・ピットの方ではなくて、実はハリソン・フォードの変貌ぶりを表わしているのかと思ったのだが、果たして真相は如何に。
他にもこの映画から家族の温もり、アイルランド人同士の友情等も描かれており、そちらの面でも楽しめる。深読みすれば船が旋回するラストシーンも何だか意味深だ。巷では本作はサスペンス、アクションの部類だそうだが、そのような面白さを期待するとガッカリするかもしれない。むしろ社会派作品に2人の大スターが華を添えているぐらいの感覚で観るとちょうど良いぐらいだろう。
デビル [DVD] | |
ハリソン・フォード,ブラッド・ピット,ルーベン・ブレイデス,トリート・ウィリアムズ | |
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Happinet(SB)(D) |
監督は社会派サスペンス映画の分野で傑作を生み出しているアラン・J・パクラ、ダスティン・ホフマン、ロバート・レッドフォード共演でウォーターゲート事件を題材にした大統領の陰謀、ナチスの傷跡の大きさが身に沁みるソフィーの選択、ジョン・グリシャムの同名小説の映画化でデンゼル・ワシントン、ジュリア・ロバーツ共演のペリカン文書がお勧めです。
追記
今年はブログを更新する事は無いと思っていたのですが、意外に早く気力が湧いてきたので更新できました。これからもよろしくお願いします
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