褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 落ちた偶像(1948) 嘘と秘密が駆り立てるサスペンス

2024年12月02日 | 映画(あ行)
 純粋な子供と少しばかりイカサマを覚えてしまった大人との対比を上手く利用したサスペンス映画が今回紹介する映画落ちた偶像。子供の視点で描かれているのがユニークであり、大人の事情のせいで巻き添えを喰らってしまった子供の姿が痛々しい。現実として大人の世界でもあるだろう。例えば会社の中で、意見の食い違う二人の上司の板挟みを喰らってしまい、どちらに付けば良いのか悩ましい選択を迫られる時が。

 アッチを立てれば、コッチが立たず。そんな心理サスペンスを感じさせるようなストーリーの紹介を。
 ロンドンにある某国の大使館にて。週末を控えて大使館には、大使の息子であるフィリップ少年(ボビー・ヘンリー)と執事であるべインズ(ラルフ・リチャードソン)とべインズ夫人(ソニア・ドレスデル)の3人がいた。フィリップはべインズのことを好きであるのだが、厳格すぎるべインズ夫人のことが大嫌い。べインズもそんな妻の性格に嫌気がして、夫婦仲はすっかり冷めており、べインズは七カ月前から大使館で働いているジュリー(ミシェル・モルガン)と浮気をしていた。
 べインズ夫人は夫が浮気していることをフィリップの言動から嗅ぎつけ、罠を仕掛けて大使館の中でべインズとジュリーが一緒に居る所へ現れようとするのだが、はずみでべインズ夫人はベランダから足を踏み外して落下死してしまう。べインズがべインズ夫人を殺したと勘違いしてしまったフィリップは、べインズのために警察の聞き取り調査に対して嘘を重ねるのだが・・・

  べインズ夫人は非常にヒステリックで自分に気に食わないことがあると、フィリップ少年のような子供にでも手を挙げてしまうようなパワハラ以前の問題があるような人間。俺もこんな女性は、はた目から見てても嫌になるだろうし、べインズが嫁さんのことを嫌になるのもわかる。
 しかし、もっとダメなのが良い人そうに見えるべインズ。このべインズがフィリプ少年を楽しませるために話をめちゃくちゃ盛ったり、嘘を付くのがフィリップ少年を困らせるし、自分を追い込むことになる。そもそも、ジュリーとの浮気現場をフィリップ少年に見られて嘘を付くのはいけない。よって、この映画のテーマには嘘と秘密があるだろう。べインズはジュリーのことをフィリップには「彼女は姪なんだよ」と噓をつき、「ジュリーと会っていたことは秘密だよ」とべインズ夫人に浮気をしていることを悟られないためにフィリップ少年を巻き込んでしまう。フィリップ少年はべインズのことを敬愛までしているのだが、そのために大いなる重圧を受けてしまう。この辺りの件は大人の罪深さを感じさせる。
 そして、フィリップ少年がべインズとの秘密を守ろうとすればするほど、無罪のべインズがピンチになってしまうところにサスペンスの盛り上がりを感じさせる演出が良い。特に一流の演出を感じさせるのが紙飛行機が螺旋状に飛び落ちていくシーン。この場面が色々な想像を掻き立てる名シーンだ。最後の方はフィリップ少年は正直者になろうとするのだが、この展開も心が痛む。嘘をつけ!と言われていたのに、後から「本当のことを言ってよ」と大人に言われるとは、悩める少年が可哀想すぎる。
 サスペンス映画の奥の深さを感じたい人、一流監督の演出の妙を感じたい人、子供が好きな人等に今回は映画落ちた偶像をお勧めに挙げておこう

 監督は超一流のサスペンス映画の名手であるキャロル・リード。名作第三の男邪魔者は殺せがお勧め

 


 



 

 
 
 
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映画 アニー・ホール(1977) ウディ・アレン監督作品の中でも人気

2024年10月08日 | 映画(あ行)
 もうそろそろ90歳に手が届きそうなウディ・アレン監督だが、それでも彼の映画への情熱は衰えないのか年に1本ぐらいのペースで監督業に乗り出している。あまりにも多くの佳作を次々に発表しているが、その中で現在においても人気の高い作品が今回紹介するアニー・ホール。この時期のウディ・アレン監督は監督のみならず主演もこなすのだが、見た目は非常に冴えない風貌をしており、まるでオーラの無い普通のおっさんの出で立ちをしている。本作はロマンチックコメディの分野に入るのだが、そんな風貌を逆手にとり自虐ネタを繰り出し、大人の苦みを出しているのが結構笑える。
 そして彼の作品の特徴である長いセリフ。本作以前の作品ではドタバタ調のコメディが多かったのだが、そのスタイルは本作で確立したと思えるのだが、そのセリフの内容が非常にアレン監督のインテリっぽさを感じさせる。セリフの中で実在した映画監督、哲学者、作家などの名前がポンポン飛び出したり、政治、宗教などを皮肉っぽく批評するのが個人的には楽しかったりする。しかしながら、そんな人名を知らなかったり、政治や宗教に興味がない人が本作を観るとその面白さが伝わらない可能性もある。そういう意味では観る人を選ぶ作品だと言えるかもしれない。

 少々インテリっぽさが鼻につくシーンもあるが、どこか大人の恋愛の苦みを感じさせるストーリーの紹介を。
 見た目は頭は薄く、ダサい眼鏡を掛けた40歳ぐらいの年齢のオッサンであるアルビー・シンガー(ウディ・アレン)はコメディアンを職業としている。しかしながら、性格も暗く何かと後ろ向き。今までも恋愛はしてきているのだが、失敗ばかり。そんな彼の前に現れたのが、それほど美人ではないが明るい性格のアニー・ホール(ダイアン・キートン)。彼女は歌手を目指しており、一度は夢を諦めようとするがアルビーの励ましのおかげもあり、彼女はオーディションを受け続ける。2人は恋愛関係になるが、喧嘩や仲直りを繰り返し、結婚までには至らない。
 そして、ついにアニーに対してハリウッドの大物プロデューサーから歌手のスカウトがくる。ニューヨークからハリウッドへアルビーとアニーは渡るのだが、そこで2人の仲は決定的なすれ違いを起こし、アルビーは1人でニューヨークへ帰ることになってしまうのだが・・・

 ストーリーだけなら淡々と進むような印象があったりするが、表現方法は非常にスタイリッシュ。度々主人公が観客側に話しかけてきたり、過去と現実が行き来したり、途中で漫画が挟まれたり、その他にも色々と工夫がされている演出が光る。そして、時々ギャグも入り大爆笑とはいかないが、結構笑わせてくれる。ウディ・アレン監督らしい自虐ネタが多めなのだが、彼の風貌とマッチしていているのが更なる笑いを引き起こしてくれる。
 若者のエネルギーがほとばしる様な恋愛が描かれているのではないが、大人同士の苦みを感じさせる恋愛模様。酸いも甘いも知り尽くしたようで、大人といえども決して完ぺきではなく、どこかに欠点を抱えている。そんなことを観終わった後に感じさせる映画です。
 ウディ・アレン監督が好きなのに本作をまだ見ていない人、文化、政治、宗教など一般教養が非常に高い人、大人同士の恋愛映画を観たい人、ロマンチックコメディが好きな人、気持ちが大人な人に今回は映画アニー・ホールをお勧めに挙げておこう 

 監督は前述したようにウディ・アレン。監督作品がかなり多く時々失敗作品も作ってしまいますが、総じて面白い作品が多い。奇想天外なアイデアが面白いカイロの紫のバラ、本作と同じくダイアン・キートンとの組み合わせのマンハッタン殺人ミステリー、笑いとサスペンスの融合したブロードウェイと銃弾、ウディ・アレン監督のファンでなくても楽しめるタロットカード殺人事件をお勧めに挙げておこう
 


 
 

 
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映画 大人は判ってくれない(1959) 自伝的映画

2024年09月28日 | 映画(あ行)
 映画界に一時代を築いたヌーヴェルバーグと呼ばれるフランス映画。その代表的作品が今回紹介する映画大人は判ってくれない。本作を観ると自分の少年時代を思い出させるような作品になっている。本作はヌーヴェルバーグを代表するフランソワ・トリュフォー監督の自伝的映画であるのだが、自分の少年時代を描いている。俺なんかは自分の少年時代の自伝なんかは恥ずかしくて本に書いたり、映画に撮ったりすることを憚られるが、この監督は本作の後も自伝的映画を撮り続けることになる(アントワーヌとコレット 二十歳の恋、夜霧の恋人たち、家庭、逃げ去る恋)。
 本作はこの監督の長編デビュー作品であるのだが、さすがは天才監督は少年時代から、何をやらせても優秀だったんだろうと思いきや、本作に登場する主人公であり、トリュフォー監督の分身でもあるアントワーヌ少年(ジャン=ピエール・レオが演じる)は、なかなかの不良ぶりを見せてくれる。時々、噓偽りを演じて自分自身を善人に見せる人間を見掛けるが、トリュフォー監督はアントワーヌ少年を通して、馬鹿正直に自分の少年時代を描いた。

 それではこの天才監督は少年時代をどのように過ごしたのか。簡単にストーリーの紹介を。
 地元の小学校に通うアントワーヌ少年(ジャン=ピエール・レオ)は、先生に目をつけられているために授業中に悪さをしたら直ぐに見つかってしまう。学校では勉強はできないし、家に帰っても両親の仲が悪く、その巻き添えを喰らったりで、少年にしては辛い毎日を送っている。そんなアントワーヌ少年の慰めは映画。映画を観ている時だけは日頃の辛さを忘れることができる。
 しかし、相変わらず学校生活は辛く、家に帰っても辛いことだらけ。学校をサボりがちになり、家出を繰り返し、ついには悪友と盗みを働くようなり警察に捕まる。すっかり両親から見放されたアントワーヌ少年は鑑別所での生活を強いられることになるのだが・・・

 トリュフォー監督は自分の初年時代を全く見栄を張ることなく描いている。学校の勉強はできない、いたずらはする。学校はサボり、その理由が母親が死んだからと大噓をつくのだが、この辺りは笑ってしまった。しかも、親の金をパクるだけでなく、重たいタイプライターを盗んでそれを売ろうとしたりで悪ガキもいいところ。しかし、同情できるのは両親の教育がまるでなっていないこと。特に母親のダメっぷりも描かれていて、これではマトモな少年生活を送るのは難しいと感じたりさせられる。
 他にストーリー以外の部分で語ると、アントワーヌ少年が護送車で送られる時に涙を流しながらパリの夜景の街並みを眺めるシーンがあるのだが、冒頭のシーンをしっかり覚えていると少しばかり感傷に浸れる。
 そして、ラストシーン。これが見る人によって見解が分かれると思うのだが、まだまだ幼いように見えていたアントワーヌ少年の力強い表情から観る者は何を考えるか。俺なんかはアントワーヌ少年の自立する覚悟の現れだと想像した。
 ロクな少年時代を送れなかったことに後悔している人、フランソワ・トリュフォー監督と聞いて心が躍る人、ヌーヴェルバーグと聞いて興味が惹かれた人・・・等に大人は判ってくれないをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したフランソワ・トリュフォー監督。西部劇タッチを感じさせるピアニストを撃て、奇妙な男女の三角関係を描いた突然炎のごとく、シュールな設定が面白い華氏451、監督の映画愛を感じさせるアメリカの夜、イザベル・アジャーニーが綺麗で情熱的なアデルの恋の物語あたりがお勧めです




 
 
 


 
 

 


 


 

 

 

 
 



 

 

 
 

 

 
 
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映画 アメリカン・ハッスル(2013) 実在の事件が基ネタ

2024年02月06日 | 映画(あ行)
 現在の日本の政治は裏金、キックバック、政治資金記載漏れなどの言葉が連日賑わしており、史上空前の政治スキャンダルの嵐が吹いている。会計責任者に不手際の責任をなすりつける等、何とも醜いことになっている。そして今回紹介する映画が1970年代にアメリカで実際に起こった政治スキャンダルであるアブスキャム事件にヒントを得たアメリカン・ハッスル。強烈な個性を持った登場人物達がドタバタを繰り広げながら笑わせてくれる。
 一瞬タイトル名だけを見ると「アメリカよ、もうこれ以上ハッスルするな!」なんて思った人も居たかもしれないが、実はこのハッスルには『詐欺』の意味が込められている。そう言えば俺の周りにもハッスルし過ぎて空回り、そして詐欺師みたいな奴が居ることを思い出してしまった。

 早速だが、こんな事件が本当にあったのか⁈なんて思えるストーリーの紹介を。
 体はブヨブヨで、頭は禿げているのだが一九分けのセットが痛々しいアーヴィン(クリスチャン・ベイル)は詐欺師。彼は愛人兼仕事のパートナーのシドニー(エイミー・アダムス)と次々に詐欺を成功させていくのだが、ついにはFBI捜査官リッチー(ブラッドリー・クーパー)に逮捕されてしまう。
 しかし、意外なことにリッチーから2人に他の4組の詐欺師グループを摘発するのに協力すれば、罪を見逃してやると提案される。当然の如く断るわけがなくリッチーに協力するのだが、次第にリッチーの野心は詐欺師を摘発するどころか、カジノ利権に群がる政治家達をターゲットにすることになってしまう。アーヴィングとシドニーも嫌々ながらもリッチーに協力するのだが、思いも寄らなかった超大物が捜査線上に現れて・・・

 アーヴィンにはイッチャッテルゥ~嫁ロザリン(ジェニファー・ロレンス)が居るのだが、これがことごとくアーヴィング達の邪魔をしてしまう。ジェニファー・ロレンスの弾けっぷりがなかなか見ものだ。
 しかし、本作で面白いのがFBIと詐欺師がまさかのタッグを組んで、虚々実々の駆け引きをしていること。このように書くと鮮やかな騙しの手口が見れるのかと思いきや、ハッキリ言ってそこに快感は全く得られない。むしろ人間誰しもが完ぺきではないし、弱みを持っていることが描かれていることに興味が惹かれる。
 アーヴィングにしてもサッサとそんな馬鹿な嫁と別れろよと思えるが、そこには親権の問題が絡んでいて簡単に離婚できなかったり、シドニーにしても自らの経歴に大きな傷があったり、アーヴィングと親友になるニュージャージー州の市長であるカーマイン(ジェレミー・レナ)にしても、真剣に市民の事を考えているのだが裏では黒い繋がりに関わっていたり、リッチーは果てしない野心によって自らを追い込んでしまったり。このように本作には多くの悩めるキャラが出てくる。
 裏金を貯えたり、政治資金記載漏れを他人のせいにしている国会議員の連中には腹が立つが、本作の登場人物達はどこか憎めない。俺ってダメ人間だよな~なんて嘆いている人に今回はアメリカン・ハッスルをお勧めに挙げておこう

 監督はデヴィッド・O・ラッセル。外れが少ない優秀な監督。社会派、アドベンチャー、コメディ等色々な要素が含まれているスリー・キングス、異色ボクシング映画ザ・ファイター、何となく生きる気力が湧いてくる世界にひとつのプレイブックがお勧め







 
 

 
 
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映画 アマデウス(1984) 天才と凡人

2023年10月23日 | 映画(あ行)
 クラシック音楽にたいして興味が無い人でもモーツァルトの名前ぐらいは聞いたことがある人が殆どだろう。音楽もパッと思い出せなくても、聴けば、「あ~、あの曲はモーツァルトだったんだ」とわかる曲を多く遺している。そんな彼の本名はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。この名前のミドルネームに当たる部分をタイトル化した映画が今回紹介するアマデウス。幼少の頃から既にピアノを弾き、6歳で既に作曲を始める等、神童の名を欲しいままにし、そして35歳で夭折するまで現代においてもクラシック愛好家から評価の高い曲を作り続けたモーツァルト。そんな彼の非常に興味深い伝記映画ではなく、ブロードウェイの舞台を映画化した作品。
 本作の面白いところは数多く流れてくる美しいモーツァルトの曲の数々だけではなく、人間として欠陥だらけに描いているところ。そして、そんな天才に対する対決軸として凡人を配して比較しているところが更に興味を引き立てる。凡人であるが故の苦しみ、悲しみが描かれているだけでなく、天才であるが故の脆さが描かれているあたりが、本作の真骨頂。耳障りの良さだけを描いているのではなく、他にも色々なテーマを内包しているように名作としての条件を揃えている作品だ。

 それでは天才と凡人の対決を描いたストーリーの紹介を。
 ある冬の夜。老人が「モーツァルト、許してくれ!君を殺したのは私だ」と叫びながら、首を斬って自殺を図る。老人の名前はアントニオ・サリエリF・マーリー・エイブラハム)。精神病棟に送り込まれたサリエリは若き神父に自らとモーツァルトトム・ハルス)との出来事を回想し語りだす。
 オーストリア皇帝ヨーゼフ2世(ジェフリー・ジョーンズ)に仕える宮廷作曲家であったサリエリは、かねてから神童と評判のモーツァルトの開催する音楽会を見に行き、彼がいか程の者か自分の目で確かめようとする。実際に確かめると、あまりにも想像とかけ離れていたことにショックを受ける。変な笑い声を挙げながら、女性を追いかけまわし、下品さを露骨に表していた。
 しかし、サリエリは外見とは全く異なるモーツァルトの音楽的才能に驚愕する。そして、神に敬虔な生き方をしてきたサリエリだったが、自分の信じる神がモーツァルトのような下品で失礼極まりない人物に音楽的才能を与えてしまったことに苦しみ、嫉妬を抱き、モーツァルトに猛烈な復讐を浴びせていく・・・

 サリエリが凡人の代表として本作で描かれているが、宮廷作曲家にまで登りつめているだけに決して不幸な人生を歩んできたようには思えないし、むしろ音楽の才能はあった方だろうなんて俺がサリエリに嫉妬してしまいそうになった。しかし、彼が俺以上に嫉妬深い人間として描かれている。神々しい音楽を次々に作り出し、しかも即興で作り出す恐るべき才能を何の努力も研鑽も積まずに持ってしまったモーツァルトに、音楽家として明らかに劣っていることを痛感してしまう苦しみ、そしてモーツァルトから小馬鹿にまでされてしまう始末。ここの描き方は、古い時代、古い有名人を描きながら嫉妬によって人生を狂わしていく現代にも通じるメッセージ性を強く感じさせる。特に本作は西洋人らしい宗教的観念をぶち込んでくる大袈裟な演出が効果的で、サリエリの苦しみが痛いほど伝わってくる(まあ、そうでもない人も居るっか)。サリエリを見ていると、凡人は凡人らしく生きることの大切さ。そして、自分の価値を他人と比較することの無意味さがわかる。
 歴史が証明するが、意外に天才とは脆くもあり、早くに消え去っていくものである。これは世界史だけではなく、日本史においてもいえることである。凡人の方が結構しぶとく生き残っていくものである。俺も今まで天才に憧れていたのに、何だか天才かどうかなんてどうでも良くなった。そして、アマデウスというのがラテン語で「神に愛された」という意味があることを知って、ヘェ~なんて驚きと同時に勉強にもなった。
 映画ならではのオペラシーンは楽しめるし、モーツアルトの美しい曲の数々に気分が害されることなく良い気分になったり、豪華セットが楽しめたり、観る人によっては更なるテーマ性を見つけ出したりできるような感想を持てる映画として今回はアマデウスをお勧めに挙げておこう

 監督はミロス・フォアマン。本作は名作としての誉れが高いですが、カッコーの巣の上でも名作です。そして宮廷画家ゴヤは見たも西洋史の恐ろしさを知れる映画として見応えあります



 


 
 



 

  

 





  
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映画 赤ひげ(1965) お医者さんになる人は必見

2023年08月24日 | 映画(あ行)
 山本周五郎原作の小説赤ひげ診療譚を原作とする映画化作品が今回紹介する赤ひげ。多くの名作を生みだしてきた黒澤明監督の作品の中でも人気が高い映画だ。小石川養成所が舞台になっているのだが、この場所について少しばかり説明しておこう。江戸時代は八代将軍徳川吉宗の時に江戸に設置された無料の医療施設。当時の江戸は人口増加が著しく、その中には貧困に陥ってしまう人もいた。そんな人でも必要な医療処置を受診できるために設置されたのだ。
 そこでの老医師と青年医師の師弟関係、そして彼らとそこに集まる貧しき病人達との交流が描かれている。まったく病を治せないような医者のことをやぶ医者と呼ぶが、だったら逆に名医と呼ばれる医者とはどのようなものか。末期症状の人でも治せてしまう医者のことか、重い症状に罹っている病人を即効で元気にさせてしまう医者のことか。本作を観れば、医者のあるべき姿が大なり小なり理解できるし、勿論医者で無い人が観ても自らの人生を省みることが出来る。
 
 江戸時代の医療事情、底辺社会で暮らす人の生き様が描かれているストーリーの紹介を。
 長崎で最先端の医学を学ぶために留学していた保本(加山雄三)は帰ってきたら幕府の御番医になれると思ってウキウキな気分だったのだが、何と出向させられたのは小石川養成所。そこの所長は目付きが鋭く不愛想に見える通称赤ひげこと新出去定(にいできょじょう)(三船敏郎)。保本は理想と現実のギャップにショックを受けてしまい、初日から不貞腐れてしまう。
 しかし、患者だけでなく困っている人を助けようとする赤ひげの善意からの行動を間近で見ているうちに、保本は赤ひげの偉大さに気付きだすのだが・・・

 ドクター赤ひげのキャラクターが面白い。社会悪を徹底的に憎み、弱者を助けるためならば裏で脅迫は厭わないし、ヤクザが10名ほど掛かって来ても医者のくせにアッと言う間に叩きのめす。そして、医者がこんな事をしたらダメだなと自ら反省しながら悪い手本を弟子の保本のために教えてやる。そして『医学は自分のためではなく、公のために使うものだ』なんて俺の知っている元議員にも教えてやりたいような台詞がポンポンと出てくるあたりは本当に気持ち良い。
 赤ひげは見た目は少々怖いが、行動で優しさを見せる。その行動が周囲にも良い影響を及ぼし、人間の誰もが持っているはずの優しさを引き出すエピソードの数々が感動的に描かれる。そりゃ~、こんな師匠が傍に居てくれたら、自分の人間としての器の狭さを反省し、誰にも優しくなろうと思えるし、成長するって。
 黒澤明監督は自分の想いを作品の中にも投影する人だと思う。特に本作は自らの伝えたいメッセージを赤ひげに言わせているように感じる。映画史において名監督と呼ばれる人の作品は難解な作風の場合も多々あるが、黒澤明監督作品は理解しやすいし、面白い。娯楽、社会派、ヒューマンドラマとどんな分野を撮らしても一流。感動的エピソードが満載の作品として今回は赤ひげをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したとおり黒澤明監督。お勧め多数。個人的にベスト10を1位から順番に挙げておく。七人の侍悪い奴ほどよく眠る隠し砦の三悪人天国と地獄生きる用心棒椿三十郎野良犬羅生門どん底、そして蜘蛛巣城も挙げておこう

 
 

 
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映画 インターステラー(2014) 壮大なSF映画

2023年08月11日 | 映画(あ行)
 いつもその抜群のアイデアで楽しませてくれるクリストファーノーラン監督が、宇宙を舞台に壮大な人間ドラマを描いたのが今回紹介する映画インターステラー。CGを使わずにビルをぶっ壊すのが好きな監督なだけに、SF映画ではあるがどこか懐かしいローテクな作風を感じさせる。特にお喋りなだけでなく冗談好きの長方形のロボットが使い勝手が悪そうに見えるのに大活躍するのが個人的にはツボだった。まあ宇宙を舞台にした映画なんか殆どが嘘くさいものばかりだが、本作はアメリカの理論物理学者のキップ・ソーンをスタッフに迎えたガチな宇宙観が展開される。そして宇宙に関連する専門用語がけっこうな割合で飛び交う。例えばブラックホール、相対性理論、ワームホール、特異点、ガルガンチュア、重力・・・等など。専門用語やそれらの関連性の説明されるが、これがなかなか難しい。しかしアドバイスとしてはそんな専門用語を気にし過ぎないように。なぜなら本作を観たからと言って宇宙に詳しくなれるはずがないし、そもそも映画の内容は人間ドラマ。難しい専門用語にこだわり過ぎて、本作で言いたいことのテーマを見逃してしまったんでは本末転倒になってしまう。

  SF映画ではあるが、奥深いテーマが内包されているストーリーの紹介を
 近未来のアメリカにおいて。そこら辺で起こる砂嵐のせいで作物に被害が出ていた。かつては飛行士として活躍していたクーパー(マシュー・マコノヒー)だが、今はトウモロコシ畑の栽培を営んでおり、義父のドナルド(ジョン・リスゴー)、息子のトム(ケイシー・アフレック)、娘のマーフ(ジェシカ・チャスティン)の4人暮らし。慎ましくも平和に暮らしていたが、マーフの部屋で、本棚からいつも同じ本ばかりが転倒していたり、砂嵐による砂埃が規則的に落ちていたり不思議なことが起きていた。
 クーパーとマーフはその現象が、ある場所の座標を示していることに気付き、そこへ向かう。何とそこへ辿ると国家予算から締め出されていたはずのNASAの研究所。そこにはクーパーと同じ仕事に携わっていたジョン・ブラント教授(マイケル・ケイン)、その娘であり博士のアメリア・ブラント博士(アン・ハサウェイ)等、他にも研究員が居た。
 クーパーはジョン教授から衝撃の話を聞かされる。もはや地球は砂嵐による食料飢饉で人間は住めなくなると。よって地球以外に人間が住める星を探すための極秘プロジェクトがNASAによってされていたのだ。そのミッションのためにクーパーとアメリア、そして他に2人の博士を連れて宇宙船に乗り込む。しかし、宇宙の時間の流れは地球のそれよりも遥かに遅い。果たしてクーパーは人間が住める星を探し出すことができるのか、それとも自分より猛烈なスピードで年齢を加算する子供たちが生きている間に地球に帰れるのか?・・・

 本作で理解しておかないといけないのが、ワームホールに飛び込んでからの星の重力についての説明が必要だろう。そこでの星の重力が大きければ大きいほど地球とその星の間には時間差が生まれること。クーパーたちが最初に訪れる水ばかりの星では、その星での1時間が地球での7年間に相当している設定。しかも、その星でトラブルに巻き込まれてしまい何と子供に年齢が追い付かれてしまう事態になる。子供の方が先に年を取っていく事に対するクーパーの焦りは半端でない。しかも、早く子供の顔が見たいのにトラブルや困難が目の前に立ちはだかり時間はドンドン経過してしまう。
 そして、本作では嘘つきの人間が2人ほど登場する。それはクーパーやアメリア、成人してNASAでジョン・ブラント教授と一緒に研究しているクーパーの娘マーフを絶望に叩き落とすぐらいの嘘を吐く。それでも決して諦めない信念を彼らは持ち続けていた。この様子を見ていると困難なことがある直ぐにへこたれてしまう自分の人生を深く恥じてしまった。
 そして本作の奥深さとして、この2人の嘘つきは絶対に悪だと言えるかどうか?モラルの問題にまで本作によって問いかけられる。このあたりの演出は流石はクリストファー・ノーラン監督といったところ。彼の作品の凄さは本作においてもSF映画の絵面だけでなく、人間ドラマにまで突っ込んでいるところ。
 そして特に後半は感動の連続。前半で何だかモヤモヤとした謎を残されたのが観ている最中はずっと気分が悪かったのだが、アッ、そうだったんだ!と気づいた時に家族の絆、愛の力の凄さに観ている者は素敵な気分になれるだろう。それと個人的に何度も繰り返すが長方形型のロボットが大活躍するのがツボ。この活躍がなければ人類は終わっていた。
 少しばかり手作り風なSF映画を観たい人、多くのテーマが内包されている映画を観たい人、愛の尊さを学びたい人、豪華スターがたくさん出演する映画を観たい人、クリストファー・ノーラン監督作品と聞いて心が躍る人に今回は映画インターステラーをお勧め映画に挙げておこう

 監督は前述したクリストファー・ノーラン。お勧め映画多数だが今回は彼のデビュー作品であるフォロウィングをお勧め映画に挙げておこう







 
 
 



 
 

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映画 アメリカン・ドリーマー 理想の代償(2014) 石油業界の闇

2023年07月29日 | 映画(あ行)
 本作は夢が溢れるようなタイトルが付けられているが、原題はA Most Violent Year。直訳すれば『最も暴力的な年』といったところ。さて今回紹介するアメリカン・ドリーマー 理想の代償だが、1981年のニューヨークが舞台。この当時はまだ俺は愛くるしい小学生だったのだが、すでにこの頃からニューヨークは治安が悪いと聞かされていた。本作を観ていてもニュースが流れるシーンが非常に多いのだが、その中で聞かれるのが多くの発砲事件。それも日常茶飯事的に発生していたことを映画はリアルに伝えてくれる。
 まあ、暴力が日常茶飯事的に行われ、目にしたり、被害に遭ったりするような世界において、まずは自分の身を守るために銃の一丁ぐらいは持っておこうか、なんて思ったりするのが普通のような気がするが、本作の石油会社を経営する主人公は銃を持つことを極度に嫌い、また石油を運ぶタンクローリーの運転手にも銃を持たすことは許さない。それによって自社のタンクローリーが強奪され、何万バレルかの石油の損失に頭を悩ませながらも、銃を持つことには絶対に反対。しかしながら会社を成長させようとすればするほど、嫉妬を買い損失が酷くなる。理想と現実のギャップを主人公がどうやって埋めていくのかというのが本作の大きな見所だろう。

 暴力には非暴力でなんて、偉大なるインドの指導者であるガンジーを思い出させる主人公の悩みと葛藤のストーリー紹介を。
 1981年のニューヨーク。移民であるアベル(オスカー・アイザック)は石油会社を立ち上げて10年ほどになるが既に成功者として知られていた。しかしながら、彼は更なる会社の成長のために、イーストリバーに面している石油貯蔵庫がある土地をユダヤ人から買おうとする。そして全財産を頭金として突っ込み、残りは銀行からの融資で賄おうとしていた。
 ところがその途端に、自社のタンクローリーが襲撃されて石油ごと持ち逃げされる事件が連発する。物流組合の会長や会社の経理を担当している妻アンナ(ジェシカ・チャスティン)からは違法ながらもドライバーの自衛のために銃を持つことを提案されるが、何の疾しいことのない健全なる会社運営をすることを信念とするアベルはその案を却下。アベルはその対策として検事に話を持ち掛けるのだが、何と会社の脱税や価格操作を指摘されてしまい、挙句の果てには家宅捜索まで受けてしまう始末。
 しかも、そのことがライバルの同業者達にバレて話が広まり、しかも銀行からの融資も止めれてしまいそうになってしまい・・・

 他社のライバル同業者達とは一線を画して公明正大 に取り組み、健全に会社を運営することを信念としていたのに、まさかの不正追及を食らってしまう展開は、ただ今お騒がせ中のビッグモーター社を思い出してしまった。正直なところビッグモーターの前社長の会見はなんだか更なる疑念が深まったが。
 しかし、本作で描かれる石油業界のドロドロとした利権絡みの出来事が当たり前のように描かれていることに驚く。石油を売るだけなのに銃撃されたり、銃を持った男に家宅侵入されてしまう等の嫌がらせの数々。そんな世界において自衛のための銃を持つことを拒否し、そんな悪質な業界の中で公正な競争にこだわるアベルのやり方は、一見ひ弱すぎる態度に思える。そんな男が最後に究極の選択を迫られることになるのだが、その行動は果たして是か非か。生きるか死ぬかの弱肉強食のアメリカ社会の厳しさを観ていて思い知らされた。
 俺みたいに常に自分の信じるモラルに従って生きていくことに息苦しさを感じている人、アメリカ社会の厳しさを見たい人、ビッグモーターの前社長の会見に怒りを覚えた人、自分の働いている会社が不正をしていることに気付いている人等に今回は映画アメリカン・ドリーマー 理想の代償をお勧めに挙げておこう

 監督はJ・C・チャンダー。まだ監督作品は少ないですが長編デビュー作品のマージン・コールはお勧め







 
 
 

 

 
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映画 黄金の腕(1955) 麻薬がテーマですが・・・

2023年07月24日 | 映画(あ行)
 1960年代までのアメリカ映画においてヘイズ・コードと呼ばれる色々と規制される項目があった。例えば、裸、ベッドシーン等等。その中には麻薬をテーマにした作品もヘイズ・コードに引っ掛かるが、そんなタブーをぶち破って制作された映画が今回紹介する黄金の腕。本当に世の中には悪い奴がたくさん居るが、本作も薬漬けから抜け出して人生を一からやり直そうとするフランク・シナトラ演じる主人公の脚を引っ張る奴が登場する。とことん弱みに付け込んで利益を貪ろうとする悪党は何時の世にも居るのが本作を観ればわかる。

 さて、麻薬を断ち切れない意志の弱い男だけでなく、他にも弱い人間が登場するストーリーの紹介を。
 六カ月の療養生活を終えて故郷に戻ってきたフランキー(フランク・シナトラ)。彼は『黄金の腕』と異名を付けられるほどの凄腕ディーラー(トランプを配る親のこと)として、この町の近辺では有名人であったのだが、彼は新しい生活を進もうと療養生活中にドラムを覚えドラマーとして生きていく決心をしていた。しかし、『黄金の腕』を持つフランキーを昔の仲間が待ち構えており、彼らは麻薬をチラつかせながら、ディーラーへの道へ引きずり込もうとする。
 フランキーは妻のゾシュ(エリノア・パーカー)が待つアパートに戻るが、彼女は車椅子の生活を強いられていた。それはフランキーの飲酒運転が原因の事故であり、それでもゾシュはフランキーを愛しており、フランキーも自らの過ちに対する贖罪からゾシュの面倒を一生見るつもりでいた。しかし、ゾシュはドラマーを目指すフランキーに対し将来性を見出すことが出来ずに、ディーラーとしての道に戻って欲しいと願い、そんなフランキーを責める。
 やり場のないフランキーは再び麻薬に手を染めてしまい、再びゾシュの願い通りにディーラーとしての道を歩き出すのだが・・・

 せっかく新しい人生を切り開こうとしているフランキーに襲い掛かる踏んだり蹴ったりの事態。かつての賭博仲間だけでなく、妻のゾシュも純粋にフランキーの事を愛しているのかと思ってたら、実は結構な悩みの種であったり、ドラマーになるための面接も前日から当日にかけての徹夜でのトランプ賭博を強要されるわ、薬切れの禁断症状に襲われたりで、もちろんドラマーになるためのテストは手が震えて大失敗。しかも、人殺しの疑いまで掛けられる始末。すっかり神様からも見放されてしまったかのような絶望感が漂うが、そこは悪党が居れば、困った時に助けてくれる善人もいる世の中。本作を観ていると改めて、どんな困難な目に遭っても決して諦めてはいけないと思わせる。
 実は俺が本作で気に入ったのがストーリーよりも全編に流れる格好良いジャズ音楽。ストーリーだけだったらワザワザ本作を紹介することは無かった。薬物をテーマにした映画と格好良い音楽の組み合わせがこれ程までに相性が良いとは我ながら驚いた。そして、タイトルバックが非常にお洒落。この時代にこれ程までに凝ったデザイン性を感じさせるタイトルバックはあまり記憶に無いぐらいの出来栄えであり、ストーリーが始まる前から惹きつけられる映画だ。
 ストーリーと音楽が見事にハマっている映画を観たい人、麻薬の怖さを知りたい人、中身よりもタイトルバックに興味がある人、ボロボロになる人間を見たい人等に今回は黄金の腕をお勧め映画に挙げておこう

 監督は社会派映画の良品を連発するオットー・プレミンジャー。本作なんかはヘイズ・コードをぶち破るあたりは面目躍如たる作品ですが、他には法廷劇の或る殺人、現代版(1960年の作品ですが)十戒(じゅっかい)とでも言うべき作品の栄光への脱出がお勧め

 
 
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映画 丘(1965) 強烈な軍隊批判です

2023年06月27日 | 映画(あ行)
 タイトル名が何とも味気ないが、てっきり俺は恋人同士が丘に登って、星空を観ながら愛を交わすストーリーが内容だと思っていた。ところがそんな想いとは全く違い、女性なんか殆ど出てこないし、舞台は北アフリカの陸軍刑務所内。そこで囚人達に行われる曹長や幹部のしごき、暴力が胸糞悪くなるぐらい描かれているのが今回紹介する映画。初代ジェームズ・ボンドとして007シリーズをドル箱映画にした立役者ショーン・コネリーの主演作品だ。 
 最近はパワハラ、モラハラといったものが非常に厳しい世の中になってきた。それは良い風潮のはずなのだが、昔は当たり前にあった体罰に関しては、本人にそのような意識が無いからなのか痛ましい事件を毎日のように見る始末。特に、か弱き者に対しての度の過ぎた体罰が目立ちすぎる。
 
 さて、タイトル名のとは、果たして本作ではどのような意味を成すのか。それではストーリーの紹介を。
 第二次世界大戦下の北アフリカの陸軍刑務所において、今日も泥棒や逃亡といった罪を犯した5人の囚人が送り込まれてきた。彼ら5人は同じ刑務所部屋になるが、何かとふてぶてしい態度をとるロバーツ(ショーン・コネリー)のせいで、看守長ウィルソン(ハリー・アンドリュース)から目をつけられ、彼の新しい部下であるウィリアムズ看守(イアン・ヘンドリー)から猛烈なシゴキを食らってしまう。
 ある日のこと、ウィリアムズの徹底的な度を過ぎたシゴキのせいでスティーヴンス(アルフレッド・リンチ)が死んでしまう。あまりにもの理不尽な扱いに怒りを募らせたロバーツはついに刑務所内の実態を告発しよとするのだが・・・

 ちなみにタイトル名にもなっているとは、体罰のために重装備で駆け足で上り下りをさせられる砂丘のこと。北アフリカの炎天下でやらされているのを見ると本当にコッチまで体罰を喰らっているように思えてしまう。執拗な嫌がらせを権力を利用して囚人達に課しまくるウィリアムズの卑劣さが凄いし、部下である彼の責任が問われると自分の首が吹っ飛ぶことを心配してウィリアムズの肩を持とうとする看守長のウィルソンの囚人達をしごきまくることに関しては何事も厭わない恐るべきドエスっぷりを発揮する場面は観ていて気分が滅入ってくるぐらいだ。
 看守側にも良い人が居たり、軍医が居たり、看守長の上の位である所長もいるのだが、これが全く役に立たない。このような中で囚人達が体力のみならず精神的にもぶっ壊れていく展開が非常に巧みだ。ところどころで巧みな演出も目立っていて感心させられたり、また権力者の言いなりになっている人間の卑屈さ、弱さをまじまじと見せつけられたりで観終えた後は疲労に駆られた。それに輪をかけるようなラストシーンでこれが非常に秀逸すぎて、人間の誇りがズタズタにされる。
 本作を観終えて冷静になって考えると、なぜ007シリーズで絶頂期バリバリの英国人であるショーン・コネリーが、このようなイギリス軍隊を猛批判するような映画に出演しているのか?よく考えれば、彼の中には英国からの独立志向が強いスコットランド人の血が入っており、非常に政治的な発言が多かったことで有名。そんな彼のバックボーンが007シリーズで安堵している場合ではなかったことを本作を観て感じさせられた。
 ひたすら映画に娯楽を求める人には全く向かないが、人間の弱さ、腐った権力、こんな酷い刑務所があるのか!?なんて感じたい人には今回は映画をお勧め映画として挙げておこう

 監督は社会派映画の分野で多くの傑作を遺したシドニー・ルメット。彼の初期作品は本作のように後味の悪い作品が多いですが、その中でも質屋未知への飛行がお勧め。そして、彼を最も有名にした十二人の怒れる男セルピコ狼たちの午後ネットワークデストラップ 死の罠評決など、僕が観た映画の中でもキリがないほどお勧め作品が多いです





 

 

 
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映画 エルマー・ガントリー 魅せられた男(1960) 宗教家の偽善を暴く 

2023年04月21日 | 映画(あ行)
  もう最近どころか今年に入ってブログは殆ど放置状態。これからはもう少し更新頻度を上げていきます。さて最近は日本でも政治と宗教の結びつきの問題が取り沙汰されたが、なかなか宗教と人間との関係は難しい。そもそも「私は無宗教です」なんて言う人もいたりするが、世界中の多くの人が宗教にすがりついているのが実際のところ。しかし、悲しいことにこの世の中には、とんでもない悪徳なインチキ宗教家やマインドコントロールされて騙される一般人も多くいる。それにしても、なぜアメリカにおいてキリスト教の人が多いのか?そんな疑問が少し理解できる映画が今回紹介する映画エルマー・ガントリー 魅せられた男。そして、更に言えば宗教と人間の関係、宗教とカネ、人間の欲望、神の存在・・・等など宗教について多くのことを学べる有難い映画であり、本作を観れば多くの人が宗教についてもっと詳しく知りたくなるはずだ。

 単なる宗教としてではなく、人間ドラマとしても見応えたっぷりのストーリーの紹介を。
1920年代の大恐慌のアメリカにおいて。トークは上手くて、酒に女好きの自堕落なセールスマンであるエルマー(バート・ランカスター)は旅回りをしているセールスマン。かつては神学校に通っていて、教会を見るとすこしだけ首を突っ込んでは、すぐに旅回りにでる生活を送っていた。
 ある日のこと、信仰復興を目指して大きなテントを張って、そこに集まってくる人々を相手に説教をしている女伝道師であるシャロン(ジーン・シモンズ)の姿を見て、エルマーは一目惚れ。シャロンが次の場所へ行くのに、無理矢理エルマーも付いて行って宗教団体に入り込み、やがて持ち前のトークとアグレッシブな動きで幹部としてのし上がっていく。そんなエルマーに対して聖女シャロンは心も体も奪われて愛し合うようになってしまう。
 やがて彼らは次第に信者を増やし、不動産との金銭のやり繰り行い、宗教界の中でも大きな勢力を成すようになる。今や聖人君子として崇められるようになったエルマーは伝道師としての仕事だけでなく、訪れた町に蔓延る賭博、売春を警察と組んで木っ端みじんに撲滅させようとするのだが・・・

 何と言っても悪い奴なのか、良い奴なのか、わかりづらいエルマー・ガントリーを演じるバート・ランカスターのもの凄い大熱演が楽しい。トークは巧みで教会に訪れた人々を脅すようなことを言ったり、オーバーな行動にでたりするのだが、逆にジーン・シモンズ演じるシスター・シャロンは人々に優しく問いかける。この2人の真逆の説教の仕方の対比が非常に巧みで、俺も洗脳されてしまったのか、プロテスタントの宗派に信仰を変えようかと思った。
 しかし、宗教団体のスキャンダル探しに引っ付いてくる新聞記者とエルマー・ガントリーが神の存在について議論しあったりするシーンは短いながらも興味深いやり取りが見れるし、神の遣いである伝道師はどこまで聖人君子として振る舞わないといけないのかを考えさせられるし、過去の過ちは永遠に追いかけてくるかのような展開において人生の厳しさを知らされ、大きな過ちをした人間がいかに更生しようとも苦難の道が待っていることを本作から伺い知れる。
 小さい頃に現実だと思っていたお伽噺が、実はそんな物は適当な作り話だと大人になってから目の当たりにした時に崩れ落ちていく人間の姿を見て、神の存在について考えさせられ、宗教とは何たるかを永遠に考え込むようになってしまう結末。俺ぐらいピュアな心を持った人間はこの世には殆ど居ないと思いながらも、やっぱりお金が欲しいと思ったりする卑しい心を反省したりする今日この頃である。
 宗教映画であり人間ドラマとして見応えがあり、アメリカの1920年代における旅回りを続けるセールスマンの存在、そしてキリスト教の広まり方が理解できたりして、少しばかりアメリカと言う国が理解できるエルマー・ガントリー 魅せられた男を、今さらながら今年一発目のお勧め映画に挙げておこう

 監督はリチャード・ブルックス。有名監督なのだが、個人的にそれほど観てないのだが、エリザベス・テーラー主演の文芸作品雨の朝巴里に死す、テネシー・ウィリアムズの戯曲の映画化でありポール・ニューマンとエリザベス・テイラーが共演した熱いトタン屋根の猫がお勧め




 
 
 
 
 
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映画 オーシャンと十一人の仲間(1960) シナトラ一家が勢ぞろいです

2022年07月29日 | 映画(あ行)
 日本の芸能界において石原裕次郎や渡哲也など仲間で構成される石原軍団がかつては隆盛をほこっていたが、そのアメリカ版がエンターテイーナーとして大活躍していたフランク・シナトラをボスとするシナトラ一家。石原裕次郎はまさに皆から慕われていてダーティーな印象はまるでないが、一方フランク・シナトラ率いるシナトラ軍団、ではなくてシナトラ一家は政界、マフィアに足を突っ込み、ハリウッドの美人女優達を次々に食い物にした経緯がある。今回紹介する映画はオーシャンと十一人の仲間だが、フランク・シナトラとその一家達という題名の方が相応しいぐらいシナトラ一家の面々が登場。特にディーン・マーチンサミー・デイヴィスJr.は、映画の中でも美声を披露している。
 実は映画自体はラスベガスの大金強奪をテーマにした犯罪サスペンス。タイトル名から、勘の良い人ならわかると思うが、実は本作はあの人気者が多数登場するオーシャンズ11のリメイク基。オーシャンズ11の方は面白いのか、大して面白くなかったのか、判断に迷うところだが、ハイテクで守られた大金を強奪する現代風の味付けがあった。しかし、本作は監視カメラもないし、ハイテク設備なんかまるでない。しかし、その手作り風なラスベガス襲撃の手口は、一つ一つの行動にはスリルは大して無いのだが、ラスベガスの5つのホテルから大金を強奪しようとする壮大な計画だけでも楽しく思えるし、コメディー要素が強く出ているのでちょっとぐらいは笑わせる。

 前半の仲間集めから後半へ向けてのクライマックスへ向けてストーリーの紹介を。
 クリスマスが迫ったある日のこと、エースボスがとある計画を練っていたのだが自分で手を汚すことはしたくないので、ダニー・オーシャン(フランク・シナトラ)に全ての指揮を任せる。ダニーは第二次世界大戦中で一緒に戦った第84団空挺部隊であった仲間達を呼び寄せる。仲間たちはもはや戦争が終わった今では貧乏暮らし。仲間集めには大して苦労もせずに大晦日から日が変わった瞬間を狙ってラスベガスの5つのホテルから大金を同時に強奪する計画を練り、実行する。一攫千金を狙った彼らの作戦は大成功に終わったかのように思われたのだが・・・

 男くさい映画かと思いきやフランク・シナトラ演じるダニーの嫁であるアンジー・ディキンソンや無名の女優達まで綺麗どころが出てくるので、目の保養になる。それにしても少々ネタバレになってしまうが、意外なところから完璧?だった作戦から綻びがでてくるのが個人的には楽しかった。それは家族関係であったり、一番大活躍していたように思えたリチャード・コンテが実は悲壮な想いを抱えてこの作戦に参加し、無惨に散っていく様子が、悲しさを感じることもなく少し楽しめた。
 はっきり言ってシナトラ一家の内輪で楽しんでいるだけの映画に見えるが、流石にエンターテイメント一家の楽しんでいる姿は何故か観ている我々も楽しめるし、最後のオチも悲壮感があるはずなのだが印象的なシーンで笑える。リメイクされたオーシャンズ11とラスベガス大金強奪という点では一緒だが、ストーリー運びにおいては全然違うので別物映画として見れることができる。
 今やシナトラ一家と聞いても心が躍る人は殆ど居ないと思われるし、.そもそもシナトラ一家以前の問題としてフランク・シナトラを知らない人達にとっては、それほど心が躍る映画ではないかもしれない。しかし、意外にオーシャンズ11に始まって、オーシャンズ12、オーシャンズ13と続くシリーズが大して面白く感じなかった人には、実は本作は面白く感じられるかもしれない。シナトラ一家と聞いて心が躍るご年配の人達、オーシャンズ11を観ている人、笑いもあるクライムサスペンスを観たい人には今回は映画オーシャンと十一人の仲間をお勧め映画に挙げておこう

 監督はルイス・マイルストン。映画史に遺る西部戦線異状なしはぜひ観て欲しいです。


 

 
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映画 ヴェラクルス(1954) 二大スター競演の西部劇

2022年06月13日 | 映画(あ行)
  かつての大スターであるゲイリー・クーパーバート・ランカスター。この2人の年齢は一回りほどゲイリー・クーパーの方が上であり、この時は既にゲイリー・クーパーは大スターの座を不動のものとしてており枯れた味わいを出している。一方バート・ランカスターの方はちょうどバリバリの売り出し中の時であり、そして彼自身が映画会社ヘクト=ランカスター・プロを設立して、今では大して珍しくもないが、当時としては非常に珍しい俳優兼プロデューサーとしてアクションと社会派映画の両極端の映画を世に送り出していた頃。社会派作品ではトニー・カーティスと共演した成功の甘き香りがお勧め。
 そしてヘクト=ランカスター・プロが送り出したアクション映画が今回紹介する映画ヴェラクルス。どういう経緯でゲイリー・クーパーが本作に出演することになったか知らないが、とりあえず大スターをお客さんとして迎え入れW主演という形で共演している。このことを少し予備知識として知っておくと、本作のラストシーンが非常に深読みしながら観れるとアドバイスしておこう。

 それでは大金を巡っての駆け引きが見れる西部劇のストーリーの紹介を。
1800年代の半ばアメリカ南北戦争直後。その頃メキシコはマクシミリアン皇帝によるフランスの傀儡政権であったが、この政権に対する反乱軍との争いが激化していた。そんな折にアメリカ南北戦争で南軍として参加していたベン(ゲイリー・クーパー)は流れ者としてメキシコにやってくるが、そこでガンマンのジョー(バート・ランカスター)とひょんなことから出会い、2人は当初は反発しあっていたが、次第に意気投合。そして2人はマクシミリアン皇帝率いる政府軍か反乱軍の両方から仲間にならないか誘いを受けるが、報酬の良さそうなマクシミリアン皇帝側に付く。
 そして2人はマクシミリアン皇帝から銃の腕前を見込まれて、フランスへ帰るマリー伯爵夫人(デニーズ・ダーセル)を港町ベラクルスまでの護衛役として使わされるのだが、勘の鋭いベンとジョーの2人は馬車に大量の金貨が積み込まれていることに気付き・・・

 アメリカ南北戦争が終わると、特に負けた南軍の兵士たちはガンマンとしてメキシコへ多く流れ込んだ。銃でしか生活できないガンマンの哀愁を既に年齢を感じさせるゲイリー・クーパーから漂っている。一方、バート・ランカスターの方は無法者であり、いつもニヤリとして白い歯を見せている。当初はこの2人はマリー伯爵夫人も巻き込んで金貨をせしめようとするが、この金貨を巡っての駆け引きが面白い。そして、反乱軍も襲ってくるので充分にアクションシーンも楽しめる。メキシコの歴史も少しばかり勉強できて、西部劇らしい男同士の熱い戦いが見れる。ひたすら金貨に固執するバート・ランカスター、そして次第に反乱軍のメキシコに対する愛国心に心を動かされるゲイリー・クーパーとの一騎打ち。このラストが先ほどの予備知識が頭に入っていると少々得した気分になる。まあ、少しネタバレになるがお客さんに花を持たせて、最高の演技を見せつけた、って感じか。メキシコの女性は綺麗だとか、バート・ランカスターの運動神経の良さとか他にも褒めたいところがあるのだが、この二大スターの駆け引き及び対決が面白いヴェラクルスを今回はお勧め映画に挙げておこう。

 監督は骨太の男同士の戦いを描くのが得意なロバート・アルドリッチ。真っ向から描いた反戦映画攻撃、年増の姉妹のイジメっぷりが恐ろしい何がジェーンに起こったか?、死刑囚、終身刑囚に対する税金が無駄だと感じたのか、彼らを鍛えて戦争に行かせる特攻大作戦、名誉のために不細工な男同士の戦いが熱い北国の帝王、砂漠に不時着という最悪の事態が展開する飛べ、フェニックス!、刑務所を舞台にしたアメフトを題材にしたロンゲスト・ヤード等、お勧め多数の監督です。
 






 
 
 
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映画 一日だけの淑女(1933) 人間の善意に涙がでます

2022年05月15日 | 映画(あ行)
 俺の周りにも居るが、自分を偉そうに見せて他人を騙したり、猫を被っていたのがバレてしまい皆から馬鹿にされている奴がいる。まあ、そいつに限っては信頼を取り返すことはもう無理。更に嘘をつきまくって今の地位にしがみついておけ。さて。今回紹介する映画一日だけの淑女は、まさに前述したような見栄を張って細々と暮らしている老婆さんが主人公。前述した奴は助けてもらうことが出来ないほど迷惑をかけまくっているが、本作の老婆さんは口は悪いが中々の人気者。利己主義の人間になんか誰も助けの手を伸ばさないが、このお婆さんには行動に少しばかりの問題はあるが一寸の善意があるのだ。

 細々とその日暮らしの生活を送っているのに、嘘がバレそうな大ピンチを迎えた結果ははたして。それでは少しばかりストーリーの紹介を。
 毎日をリンゴを売って細々と一人暮らしているアニー(メイ・ロブソン)は、ルイス(ジーン・パーカー)という父親がわからない一人娘がいるが、彼女をスペインに留学させている。アニーの楽しみは毎日ルイスからやって来る手紙を読み、そして手紙をルイスに送ること。アニーは手紙の中でいつも優雅なホテルに住み、貴婦人として生活していると毎回嘘を書いて娘に手紙を送り返している。
 ところがある日のこと、娘のルイスが結婚を前提に付き合っているスペイン伯爵の息子と父の伯爵を連れてそちらに向かうというのだ。まるでルイスに送っている手紙の内容とは大違いの生活を送っていたアニーはひたすら困り果てるのだが・・・

 困った人間を助ける人が出てくるのは世の中の常。人間の中にはクズに近い人間の中にも少しばかりは善意を持っているとしたものだ。困っているアニーを助ける人達がまた笑わせる。特に賭博が好きで多くの子分を持っているヤクザっぽい親分であるデーヴ(ウォーレン・ウィリアム)なんかは、アニーが売っているリンゴを買って持っているだけで運が向いてくることに恩を感じている。そして、デーヴは子分たちを使って、総力を尽くしてアニーを立派なレディに変身させたり、貴婦人に相応しい旦那を探したりしてやることに笑える。
 しかも、デーヴは刑事の捜査の的になっているので、なかなか上手く計画が進まなかったりすることがあったり、アニーも伯爵に正体をばらそうとするのだが・・・。ここで人間の善意が身に染みる。ヤクザ、警察、市長、州知事などが現れたりして、アニーのために一芝居をうつのが本当に気持ちいい。最近も有名芸人が自殺したりしているが、一人で悩むな。誰しも人間には善意がある。そして、人の善意を踏み潰すような奴は本作を観て大いに反省しろ。そんな悩みを抱えている人や、人の善意を踏み潰すような人間は大いに反省することを促すために今回は一日だけの淑女をお勧め映画として挙げておきます。ちなみに本作はフランク・キャプラ監督作品ですが、後にカラーとしてポケット一杯の幸福としてセルフリメイクしているし、あのジャッキー・チェンが奇蹟/ミラクルでリメイクしています。

 監督は前述したフランク・キャプラ。本作もですが人間の大いなる理想を描いたハリウッド黄金期を支えた名監督。ある夜のの出来事オペラハット我が家の楽園素晴らしき哉、人生!など落ち込んでいる時に彼の映画を観ると気力が湧いてきます





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映画 暗殺のオペラ(1970) 真相に驚きました

2022年03月08日 | 映画(あ行)
 巨匠ベルナルド・ベルトルッチ監督の初期の作品は政治的なテーマが含まれている作品が多いが、今回紹介する映画暗殺のオペラもその類にもれない。彼の映画を観ればファシズムという政治的な言葉の意味が少しだけわかるし、イタリアの近代史をちょっとだけ学んだ気分になれる。ちなみに本作はイタリアのサスペンス映画だが、ベルトルッチ監督なだけに非常に良質な政治サスペンス映画になっている。

 少しばかり難解に感じるが、驚きと喪失感をを感じさせるストーリーの紹介を。
 中世の街並みがそのまま残っているイタリアのタラ駅に一人の青年が降りる。彼の名はアトス・マニャーニ(ジュリオ・ブロージ)。彼の父の名前も同性同名でこの町では反ファシズムの闘士として30年ぐらい前に命を落とし、しかし彼のファシズムと戦う姿勢は英雄とされており、彼の名前を使われた道通りがあり、そして彼の銅像まで作られていた。
 彼がタラに来た目的は父の愛人だったドライファ(アリダ・ヴァリ)に呼ばれて、父を殺した犯人を捜して欲しいという依頼だった。タラの町にも昔の父についても興味がないアトスはさっさと電車に乗って帰ろうとするのだが、馬小屋に閉じ込められたり、見ず知らずの男からパンチを食らったり、不快な出来事が起こる。そのことを切っ掛けに父の死の真相を探り出そうと決心し、まだ生きている父の同胞の3人の男と出会ったり、さらに詳しい出来事をドライファから聞き出したり、ドライファの地主のファシズムにのめり込んでいた男と話している内に真相を知ってしまうのだが、それはあまりにものショッキングな出来事で・・・

 30年前の父の死の真相を究明することなんか、さすがに無理難題だろうと思っていたら、けっこう拍子抜けな感じで真相がわかってしまう。なかなかミステリーとして面白く、けっこう惹かれたのだが何とも悲しい結末。これなら美味しそうなスイカを全部食ったら直ぐに帰れば良かったなんて思わさせられた。真実に興味を持ってしまいどうしても知りたいという欲望に捉われる気持ちはわかる。俺も飲み会でピンハネされていることに気付かなかったら、どれだけ幸せだったかと思う。ベルナルド・ベルトルッチ監督と名カメラマンであるヴィットリオ・ストラーロとの名コンビがこの作品から始まるのだが、その構図や自然の描写なんかは流石だと感じさせられるものがある。ベルナルド・ベルトルッチ監督の作品と聞いて心が躍る人、アリダ・ヴァリという女優の名前に惹かれた人、単純なサスペンス映画に見飽きた人に今回は暗殺のオペラをお勧めしておこう

 監督は前述したベルナルド・ベルトルッチ。特に日本ではジョン・ローン主演のラストエンペラーが有名。個人的なお勧めはバート・ランカスター、ロバート・デ・ニーロ共演のイタリアの20世紀の近現代史を描いた1900年、ファシズムから共産党へ苦悩に侵されながらも思想の変更を余儀なくされるジャン=ルイ・トランティニャン主演の暗殺の森、北アフリカの砂漠で冷め切った夫婦が真実の愛を求め彷徨うシェルタリング・スカイ、殆どポルノ映画に近いですがエヴァ・グリーンが素敵なドリーマーズがお勧め
 
 
 
 
 
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