日々のあれこれ

現在は仕事に関わること以外の日々の「あれこれ」を綴っております♪
ここ数年は 主に楽器演奏🎹🎻🎸と読書📚

「行かれますか?」

2010-12-21 16:31:27 | とある街のとあるスーパー

 もうすぐクリスマス。

そして忘年会の季節ですねぇ。

先日、新聞に「日本の忘年会は上司が喋り、部下はあいづちを打つ場であり、コミュニケーションとはいえない」っていうアメリカ滞在中の精神科医の先生のエッセイが掲載されていました。

成程~そういう面も大いにあり。私は普通のOLというか、会社勤めをしたことがないので、忘年会とは殆ど縁がない方だといえます。でも、ブログを通じて「会社の忘年会」の様子を読ませて頂いたり、毎年、この時期、楽しませて頂いております。(AKさんのブログの『御ねえ様とか』)

中には年頃の女性が少ない部署もあるでしょうけど、会社の忘年会は、「気になるあの子と話すきっかけになるかもっ♪」という要素も男性にとってはあるんだなぁとか(笑)

「とあるスーパー」では忘年会は一度もなかったし、今の職場の忘年会は先月、少し早目にすでに終わりました。 そんな「忘年会と縁が無い」私ですが、ちょっと想像を膨らませて、ショートショートを書かせていただきま~す。ただし、何か「きっかけ」が欲しい男性の立場からではなく、何も知らない女性の立場から。単純明快に。

 皆さん、楽しいクリスマス、そして「わいわいと忘年会」をエンジョイしてね♪

 

 『行かれますか?』 (タイトル)

 ポットにお湯があることを確認してから、部屋の電気を消す。もう、ほとんどの人がこの時間帯にはお昼休憩を終えている筈だ。でも、もしかしたら、誰かが遅れて階段を駆け上がってくるかもしれない。そんな「誰か」の為に、お湯がなくなりかけたポットに水を注ぐと、私はキッチンを出て、休憩室の扉を閉めようとした、その時だった。

 「あっ!」

 「えっ?」

誰かとぶつかりそうになって、慌てて一歩、後ろへ下がる。ほら、やっぱり。もう時刻は3時を過ぎているけれど、きっといると思ったんだ。仕事が忙しくて休憩時間が遅れる人が。良かった、お湯、、、と思いながらあらためて相手の顔を見た時、私は心臓が止まりそうになった。

 「なっ、何なの、その顔!」

 最初は薄明かりの中で、はっきりと相手の顔も見えなかったが、段々と目も慣れてくる。男性は確か、総務課の…名前は出てこない。でも、顔見知りではある。ただ、私が驚いたのは、彼の顔が平安時代の美女のようにメイクアップされていたことだった。頬紅がなんて、赤いこと! まるでリンゴみたい。

 「あ~ぁ、とんでもない顔、みられたなぁ。俺、こういう趣味がある訳じゃないですから。出し物なんですよ、忘年会」

 「あ、あぁ、そうなんですね」

答えながら相手の顔をまじまじと見る。普段は稀に廊下で会って、会釈する程度。こんなに相手の顔をじーーっと見られるのも、平安美女に大変身しているからこそ、なのよね。何だか、可笑しくて、お互い顔を見合せながらケラケラ笑い転げた。

 「鈴木さんも着てみませんか? このミニスカ」

言われてみて、初めて相手の顔ではなく、下半身に視線がいった。

ミニスカ…。確かに短い。でも、これって、元々ミニスカートってデザインじゃない。体格がいい男性が着ると、こうなっちゃうんだろうなぁ。

 「俺が着るとレスラーみたいですよねぇ。鈴木さんが着た方が…」

独り言のように休憩室の出入り口に設置されている等身大の鏡に向かって喋る男性を はっとしたように私は観た。

私の名字、知ってるんだ。あ、ネームプレート見たのかなぁ。私も慌てて相手のネームプレートを確認しようと、鏡の中の相手の胸元を見る。あ、駄目だ。ミニスカ衣装に合わせてか、いつものワイシャツじゃなかった。

 「俺、ハマグリっていうんですよ、名前。30超えた今は、俺も真面目に会社員してますが、学生時代は都会で年上の女性や上司にもタメ口で話しかけてましたよ。あ、そうだ。イベントなんて、俺のお家芸って感じで、節分の日には、鬼の衣装を着て海苔巻き巻いたりしてましたっけ」

 面白そうな人だな。普段の『総務課』っていう、上層部で、近寄りがたい部署の人だと思っていただけに、いつも廊下で見かける人の印象がかなり違ってみえた。鬼の衣装だって。きゃはは。彼なら案外、似合うかもしれない。それに昔はタメ口? 信じられない。だって、綺麗な丁寧語で話すんだもん。私のような入社1年目の社員にまで、こんなに親切に。そんな印象を正直に伝えると、彼は笑いながら言った。

 「俺がバイトしていたとき。30半ばで学生にしかみえないパートさんがいたんですよ。俺、てっきり俺と同い年くらいだって信じ込んで、タメ口きいてたら、タメ口って何? って意味まで聞かれましたよ」

話を聞けば聞くほど愉快な人。時間を忘れて彼の話に聞き入っていると、急に彼が数回 瞬きした後、声を顰め、ちょっと遠慮がちに言った。

 「ところで、あの・・・。行かれます・・・か? 忘年会」

忘年会。実は欠席にしていた。その日の深夜までに仕上げなきゃいけない仕事があったからだ。

 「いいえ、あの…。仕事があって…」

口ごもりながら答えると、彼は小さく肩で息をして、「そっか…」といい、力なく笑った。

鏡の中の彼の背中と目が合う。

 「あ、でも。今日から仕事、2倍速で進めます☆ ハマグリさんの出し物、なんだか見なきゃ損っていうか、年を越せない感じ」

そういった瞬間、気のせいか、彼の背中がシュンと伸びた気がした。

 

おしまい

 

 

 みなしゃん、忘年会の出し物でお忙しい方、頑張って~ね☆ 恋は突然やってくるかも~です。現在、恋してない「すず」がいうので、何の保証もありましぇんが。

すず

 

 

 

Comments (6)
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