昨年、新春早々 文化ホールにて手渡されたプログラムを読み、会場にて大笑いし、(後方の席でしたので…)ベルリンフィルをこよなく愛する北九州伯林的管弦楽団による演奏に心を動かされたわたくし。 今年も新春の時期に演奏会がある筈なんだけど… きっと会場は昨年と同じ筈。日曜日開催だろうから、この連休あたり…とアンテナをはっておりましたところ、遂にっ! ポステイングにて配布される「リビング北九州」にて記事を発見しかも開演二日前っ! 早速カレンダーを確認、”自宅にて国家試験に向けて自習”以外に予定はなし! よし! クラシック好きの母上、共に行こうぞってことで、今年もお邪魔致しました。昨年は伯林的管弦楽団の話題で一週間は盛り上がっていた我が家。私も伯林的管弦楽団のみなさんに大いに感化され、「一度は弾きたい超定番!クラシック全8曲」なるものを購入。エレクトーンではありますが、モーツァルトの交響曲など8曲中、6曲をマスターし、(先生に丸を頂戴し)只今、7曲目となる「白鳥の湖」を練習中。いやぁ~ オーケストラっていいなぁ。生演奏っていいなぁ。クラシックって、やっぱり素晴らしい・・・と40半ばにして悟ったのでありました。大人になって楽しさに気付いた次第です、はい!
(開演前の様子。演奏中は撮影禁止とのこと)
今年も会場の雰囲気を味わいたくて、そして何より あの若くて素敵な指揮者の中田氏を始め、演奏家の皆さまにお会いしたく、会場入り 今年はどんな演奏を聴けるのでしょうか~ そして何といっても第一のお楽しみは…ぐふふっ、あの パンフレット ですわよ 北九州伯林的管弦楽団!!! ←詳しくはこちらをクリック(昨年の記事)
受付嬢からプログラムを受け取る際、よほど言おうかと迷ったのですが…「わたくし、この パンフ/プログラムの筆者のファンでして・・」
でも ちょっと恥ずかしいので思いとどまりました。
今年は母の支度でちょっと出遅れ、音楽全体の調和を楽しめる後方の席は ほぼ満席。前列の方は空席がずらり。前列に座るとつい、舞台を見上げることになるため、首が痛くなるかなぁ… あるいは 目の前のコントラバスの音がメインに聴こえてくるとか、もしかしたら あるかも…だけど 演奏者の指先や表情まで細かく見えるから、良かったね、と二人でささやきつつ、演奏が始まるのを待ちました。
おっと、その前に 本日のお楽しみであるプログラムに目を通し…ワクワクっ
指揮とお話:中田延亮(Nobuaki Nakata)
....とあります。指揮者は昨年と同じ、中田氏ですただ、昨年と違っていたのは、「お話」とあるところ。もしや今年は さだまさし氏のように 歌の合間にトーク…(彼の場合はトークの合間に1曲、ですが)昨年とはスタイル変更でしょうか。中田氏の指揮の様子は穴が開くほど遠くから見ていた私も、生の「声」は聞いていない気がします。これは新たな楽しみが しかもプログラムによれば、伯林的管弦楽団の場合、「天の声」によって演目も宣下されるのだとか。「しかも、その声に逆らう団員は眼病を患ったり、通行中の道路に突然穴があいて落ちたりします」(プログラムより抜粋)とのこと。注目すべき今年の演目は…
べドルジハ・スメタナ:連作交響詩《わが祖国》
スメタナと言えば モルダワラ~ララ~ララ~ララ~という流れるような旋律が有名ですよねぇ。実際、お恥ずかしいのですが、モルダワしか聴いたことがないな、と言うのが正直なところでした。モルダワが全6曲からなる連作交響詩の中の2曲目である、ということすら知らずにいたのです。今回の演目では、全6曲を休憩を2回挟んで全曲演奏してくださるとのこと。クラシック好きの母は「40代で最もよい時期だった、あの頃、すべて聞いたわ~」「でも学校の音楽室で聞いたのは、モルダワだけだったよ。ドーナツレコードで」云々と話をしていると、演奏会の幕開けです。
中田氏が現れ、「あら 随分と若いのね」と母。
スメタナは この交響詩に彼の故郷であるチェコのあらゆる歴史、風景、そこで暮らす人々などを盛り込んだのだそうです。演奏を通じて私達観客をスメタナの故郷であるチェコに連れて行って下さるとのこと。
中田氏「恐らくここにいらっしゃる方の殆どはチェコに何度も行ったことがあるでしょうか~」
私(小声で)「にゃははっ。殆どの方、行かれてるって、わたしら一度も行ったことないさ~チェコパブリックは遠い…あれ?でも誰も笑わないねぇ。クラシックを愛する人々って、やっぱりウイーンとかプラハとか、普通に行ってるのかしらん」
スメタナが1874年から1879年にかけて恐らく身を削って作り上げたであろう連作について、詳しく解説されました。2曲目以降、ほぼ聴力を失っていた中での作曲。完成から数年後にスメタナはこの世を去ったということですから、この交響詩に彼の魂を注ぎ込んだのですね。解説だけで ぞくぞくっとしてきました。特に3曲目、「シャールカ」男に裏切られたか何かで男を信じない女性の深い悲しみから曲が始まり、男たちによって彼女が助けられるシーン、酒盛りするシーン、やがて男たちが眠ってしまうシーン、いびきの音まで「ぼわっ」と表現されていました。最後はシャールカの合図で女性達が眠ってしまった男たちを虐殺してしまうシーン… 「皆で虐殺のシーンの音楽を聴くというのも…」と第3交響詩の演奏後、つぶやかれた指揮者の中田氏。チェコの荒野をさまよっているかのような錯覚を起こしかけた私達、聴衆… うーん、深い吐息… ここは何処? あ、ひびしんホール(文化会館ね)と我に返るのに数秒必要でした。まさしく時間旅行。
「ボヘミアの森と草原から」になるうと 解説で聞いていた通り、あたかも自分が鳥になって森の上空を スーッと飛んでいるかのよう。「スメタナは映画を知らない時代の人であるにもかかわらず、映画のシーンのようだ」と曲紹介された直後、生演奏に耳を傾けた訳ですが、実際、わかりやすい解説に助けられ、こちらの想像力もいつもより更に増し、大迫力の映画のシーンを体感しているかのようでした。
1交響詩 「高い城(ヴィシェフラド)」
2交響詩 「モルダワ(ヴルタヴァ)」
3交響詩 「シャールカ」
4交響詩 「ボヘミアの森と草原から」
5交響詩 「ターボル」
6交響詩 「ブラ二ーク」
2度目の休憩が終わり、いよいよ最後の演目、5曲目に入るところで、「壇上を見て頂くとお分かりのように 旅の終わりが近付き、疲れも出てきているようで…」と指揮者の中田氏。ただ座って聴いているだけの私達ですら、(身体全体で演奏している感じで大変だわね、あの集中力、真似できないね、どのくらい練習しているんだろう)演奏者の方が良く見える席で聴くのは人生初だったので、特に新鮮でした。モルダワの川…北九州市民であれば、紫川でしょうか… それとも遠賀川… 人生を川の流れに例えると、今、自分はどのあたりを旅しているのか… 新年に聴くに相応しい選曲だわ…(しみじみ)
一度も行ったことがない中央ヨーロッパ、チェコではありますが、伯林的管弦楽団のみなさんによる演奏に乗って、スメタナが生きた時代の遥か彼方…チェコへ旅した気分になったのでありました。これでこの日、会場に集まった方は全員、「スメタナの故郷、チェコを訪れた」のであります! 勿論、案内人は指揮者である中田氏、そして伯林的管弦楽団の皆さまです! 良い旅をご提供下さり、感謝でいっぱいです!
最後に忘れていけないのが プログラムノート。
実際のところ、プログラムの見開き2ページに目を通した時点では、「今回は、割と真面目だなぁ。」という印象。裏表紙に秘密情報?が隠れている?とも知らずに… 前回は、ベートーベンの若かりし頃の普通の風貌のお写真や、ハリウッド映画の差し替え写真(≧◇≦)などなど、ありましたっけねえ。今回は、スメタナさんの若かりし頃のお写真とか期待しちゃうんだけどなぁ。なかったのか…と思ったら!
おや? これって!?
没になっていない (怒られるよね)1958年生まれの方の とても見慣れたお写真が…
なぜに わが祖国の曲紹介で、秋元康氏がご登場!? 彼によれば、企画のポイントは 「記憶に残る幕の内弁当はない」なんでも プログラムノートの筆者の方によると、バランスよく詰め込んだ幕の内より 一品で勝負する 「かしわめし」「焼きうどん」(どれも私の好物、きたきゅう名物や~)の方が 「あの かしわめし」 「あの 焼きうどん」という風に 「あの」と共に記憶に残りやすいのだとか。確かに そうですよね。 「あの 伯林的管弦楽団のパンフレット/プログラムの筆者!」として私の記憶に留まり続けた この一年…。あなた様のことを 忘れたことは ありませんでしたよぉ。そしてスメタナ作曲の交響詩も 「あの 高い城」、「あのモルダワ」のように記憶に残る一曲、一曲となるわけです。
今や私の中では「かしわめし」や「焼きうどん」と並ぶ、きたきゅう名物となった、あの! 伯林的管弦楽団の専属作家さま、ファンですっ!最後の段落に 「今回も相変わらずの駄文」云々とあるのは何故(?_?) なんて謙虚な…
そして 私は早くも来年の演奏会、並びにプログラムを受け取る日を心待ちにしているのでありました。 ちなみに母は指揮者である中田延亮さまのファンになって帰宅の途につきました。(もちろん、わたくしも!)「分かりやすい解説だったねぇ。声もいいねぇ。指揮棒をふる姿が素敵だったねぇ。来年も会えるかねぇ。クラシックにどっぷりつかった若かりし日を思い出したわ~ うん、良かった~」と終始、感動しておりました。皆さんのおかげで良い新年となりました。ありがとうございます
一夜明けた今も感動の渦真っただ中の… すず&母