健康を科学する!

豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

長寿世界一は優れた遺伝子による

2013-01-12 08:30:56 | 研究
男性の長寿世界記録を昨年12月28日に更新した京都府の木村次郎右衛門さんは、幼少期の幸運だけでなく、同世代の大多数よりもここまで70年長く生きることを可能にした優れた遺伝子を授かったのではにかという(ブルームバーグ)。1月4日に115歳と260日目を迎えた次郎右衛門さんは、乳幼児死亡率を高めた原因とされた結核や肺炎のような病気を患わなかったそうです。次郎右衛門さんが生まれた1897年ごろの日本人の平均寿命は44歳。こうした病気による乳幼児死亡率の高さが平均寿命を抑える要因となっていたという。京都府京丹後市で暮らす次郎右衛門さんの孫の妻、木村栄子さんはインタビューで、次郎右衛門さんは大人になってからも大病を患ったことがないと。栄子さんによると、次郎右衛門さんは数年前までテレビで相撲番組を楽しみ、毎日2紙の新聞を読んでいたとも。年を取るにつれて優れた遺伝子が次郎右衛門さんの頑健さを際立たせているという。複数の科学者は、心臓病やがん、その他高齢者に見られる慢性病の発生を防ぐ特殊な遺伝子が長寿を促しているようだと指摘しています。関係する生物学的なメカニズムを理解することが、増加傾向にある非伝染病疾病を治療する鍵を与えてくれる可能性があるそうです。非伝染病疾病による世界経済への負担額は今後20年で47兆ドル(約3950兆円)に達すると予測されているとも。米国ボストン大学 のニューイングランド長寿研究プロジェクトでディレクターを務めるトマス・パールズ氏は「最適な組み合わせになるのは宝くじを当てるようなものだ」と述べ、次郎右衛門さんの遺伝子の一部は「老化の原因となる細胞機能の低下だけでなく、彼にとって好ましくないであろう遺伝子異変さえも防いでいる公算が大きい」と分析。パールズ氏によれば、人が80歳代後半まで生きる確率の約3割は遺伝的要素で決まるという。残りは生活習慣や環境に左右されるが、105歳まで生きる人は遺伝的要素の影響がより大きくなるというのです。ダンディー大学(スコットランド)の細胞生物学者ダリオ・アレッシ氏は、人が年齢を重ねるにつれて壊れたDNAを修復する機能の効率が落ちるため、細胞には潜在的に害になる変異が蓄積されると説明しています。次郎右衛門さんには重大な病気を引き起こす異変がないか、壊れた遺伝子を修復する優れた能力があるのかもしれないとみられるとも。2009年にノーベル医学生理学賞を受賞した米ジョンズ・ホプキンズ大学 のキャロル・グライダー教授(分子生物学)は、染色体の末端に存在して細胞分裂の可能回数を決めるテロメアと呼ばれるDNA構造が別の細胞老化メカニズムに関係していると指摘。出生の段階でテロメアの長さは人それぞれだが、100歳以上生きる人は比較的長いテロメアを持っていると。細胞分裂が起こるたびにテロメアは若干短くなりますが、健全で素晴らしいテロメアを持って生まれてきた人でも、それぞれが寿命を全うする過程で損なわれていきます。生来テロメアが短い人は年齢に関係する変性疾患にかかる確率が高いそうです。その上で、次郎右衛門さんも長いテロメアを持っている可能性があるとの見方が。次郎右衛門さんのおいの三宅保さんによると、次郎右衛門さんの両親は78歳と65歳で亡くなったそうです。5人の兄弟姉妹のうち4人は90歳以上生き、末弟は100歳まで生きたそうです。
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