Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#266 期待の星 ③

2013年04月17日 | 1982 年 


森脇浩司(近鉄)…猛牛打線が象徴するように近鉄は打撃優先のチームだ。その近鉄に守備のスペシャリストがいる。端正な顔立ちの森脇だ。元々守備には定評があったが今年に入ってからはさらに磨きがかかってきた。打球に対するスタートの勘の良さ、軽快なフットワーク、そして正確なスローイングとどれをとっても「パ・リーグで一番」と仰木コーチは絶賛する。関口新監督も「日本一の遊撃手になれる器」と賞賛。

「練習量で人に負けるのはイヤ」「実績が無いから練習の時からが勝負なんです」「もう充分練習したと納得した後にオマケに1つ練習するようにしている」居残り特打に特守、夕食後は素振り、とにかく今年のキャンプは練習・練習・練習なのだ。

その結果は守備の進歩だけでなく打力の大幅アップにもつながった。紅白戦の打率はチーム最高で右へ左へ打ち分ける技術もかなり身に付けてきた。課題の打撃も進境著しいとあって関口監督も「守りは当然、打つ方でもピカ一や」と今キャンプの成果に大満足のようだ。
 
【 通算成績 244安打 14本塁打 打率.223 】



源五郎丸 洋(阪神)…久々の大器出現に「無理はさせない」という方針の下、源五郎丸に許されたのは「捕手を立たせたままの30球」だが逸材ぶりを周囲に知らしめるには充分で、その投球は安芸キャンプを訪れた評論家の目を釘づけにした。「高校生でこれだけ安定感のある投げ方をする投手は珍しい(村山実)」「逞しい上半身とドッシリとした下半身は池永や尾崎の再来(須藤前大洋二軍監督)」と賛辞は枚挙に暇がない。チーム内でも予想以上の好評価につられてか二軍のグラウンドに足を運んだ安藤監督と小山投手コーチも真剣に一軍昇格を検討し始めた。

源五郎丸の特徴は身体の柔らかさとバネだ。早大のセレクションを受けた際に反復横飛びや立位体前屈といった身体能力テストが参加者中唯一満点で周囲を驚かせた。大きくワインドアップする、左ヒザを上げる、テークバックからしなるように出される右ヒジ、そして右足を高く蹴り上げてフィニッシュ。その間、途切れる事なく見続ける捕手のミット目がけて糸を引くような回転の良い直球が放たれる。安藤監督が2月24日に急遽一軍に上げたのは上の雰囲気に慣れさせようといった気軽なものではなく本腰を入れて一軍で使うと考えたからであろう。

柴田コーチと若菜捕手相手に60球を投げると「若い時の鈴木孝政(中日)そっくり。開幕から一軍でいけるんじゃないの(柴田)」「手元でグイッと伸びるあたり一級品(若菜)」と両者ベタ褒めだ。では池永や尾崎のように鮮烈なデビューを飾る事が出来るのだろうか?久保スカウトは「もし彼らのいた時代なら源五郎丸も開幕から勝ち星を上げる事も可能だろう。でも現在はその頃より打撃レベルが進歩したからいきなり活躍するのは無理でしょう。じっくり2~3年かけて育てる方が将来の彼の為になる」と否定的だ。

【一軍試合出場なし】 



金沢次男(横浜大洋)…21日の紅白戦で白組先発の金沢は同じく登板した新人・右田(2失点)を向こうに回して3回を2安打無失点と好投した。金沢はひとつ道を間違えたら今頃はプロゴルファーになっていたかもしれない。茨城県の佐竹高出身だが籍こそ野球部にあったが在学中は殆んど練習をしていなかった。というのも新設校ゆえにグラウンドが整備されておらず近くの空き地で素振りをするのが日課という有様で試合をすればコールド負けが当たり前の環境で練習に身が入らないでいた。中学時代に近所のオジサンから貰ったゴルフクラブを自己流で振っているうちに野球よりもゴルフに興味が移っていった。

「高3の時にやっとグラウンドが出来て真面目に野球に取り組むようになってゴルフ熱は冷めていきました」と言うものの現在のゴルフの腕前はハンデがシングルだ。高校卒業時には三菱自動車から誘いが来るほど投手として成長し、後に阪神入りする福家とエースの座を争うまでになる。関根監督も「とにかく良い度胸をしている。球威もあるし変化球もカーブ、スライダー、フォークと多彩で学校出の新人とは一味違います」とゾッコンだ。他球団の偵察隊も「球の出所が分かりづらく球質も重そうですね。低めにしっかり制球されているし要注意な存在(阪神・山本スコアラー)」と警戒する。

ドラフト後の12月13日に結納、今年の1月10日に挙式。「新婚旅行にも連れて行ってないから今年は精一杯やってオフには堂々と海外へ行きたいですね」契約金の一部を注ぎ込んで横浜市に3LDKのマンションを購入した。まだかなりの借金も残っていて「やるしかない」と自らを追い込んでいる。知子夫人も堂々としたもので「給料さえ運んでくれたら文句は無いですよ。怪我が心配?危険は多いでしょうがサラリーマンだって交通事故に遭う事だってあるでしょうから心配してたらキリがないです。まぁ建築現場関係の仕事だと思うようにしています」と、この新婚さんは夫婦揃って頼もしい。
  
【 通算成績 60勝70敗7S 防 4.21 】




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