Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 624 週間リポート・広島東洋カープ

2020年02月26日 | 1976 年 



いったいどうしたというのだ
予想外の黒星続きにファンもウンザリ
4月12日現在、昨年初優勝したチャンピオンチームが開幕から6試合が経過しても未だ勝ち星なしの5敗1分けという体たらく。古葉監督は口を開けば「打てない…」を繰り返す。ヒットが繋がらないばかりか、たまに走者が出ても併殺。6試合で11併殺では古葉監督もお手上げだ。試合中にリードしたのは巨人3回戦の一度だけとあっては勝てないのも当然だ。6試合合計で得点は僅かに13点。昨季の首位打者・山本浩選手の打率は1割に満たない上に三番・ホプキンス選手が山本以上の不調で投手を除いた8人のレギュラーの内、5人が打率1割台では赤ヘル打線ならぬ赤貧打線だ。

10日の巨人戦の前には「新浦にウチは昨年4連勝したし、ヒットの出やすい人工芝だからチームに勢いをつけるにはもってこいだ」と首脳陣は余裕を見せていたが結果は新浦投手に散発4安打の完封負け。翌日も小林投手に完投勝利を許し3連戦3連敗を喫した。調子が悪いのは投手陣も同じ。昨季のチーム防御率はセ・リーグトップの2.99 だったが現在は4.94 でリーグ最低。総失点は33点で総得点(13)を大きく上回っている。とにかく先発した投手で2回まで無失点に抑えた投手がいないのでは話にならない。昨季18勝した池谷投手に至っては二度の先発で2試合とも2回終了時点で4失点では勝てるわけがない。

エース・外木場投手も2試合に先発して2試合とも4失点。相撲に例えれば負けてもともとの平幕力士が勢いだけで優勝した次の場所で、大関や横綱のように受けて立つような気取った相撲を取っても勝てないのと一緒と言うのがネット裏の多くの声だ。巨人に3連敗した後に古葉監督が発した「去年と違う野球をやっている」はまさにそうだ。投打共に絶不調で浮上の兆しは見えないがシーズンは始まったばかり。過去には開幕6連敗を喫しながら優勝した昭和35年の大洋の例もある。勝負はこれから、と言うカープナインの言葉を信じよう。



男は黙ってハムには行けん!
一方的なトレード通告にいささかオカンムリの佐伯
まさか、まさかの佐伯投手のトレード。古葉監督は常々「外木場と佐伯は絶対に出さない」と公言していただけに今回の日ハムとの交換トレードは佐伯にとってまさに青天の霹靂であっただろう。「日ハムへ行けと言われてもハイそうですかというわけにはいかんよ」と佐伯の怒りは治まらない。11月19日のトレード発表の当日にいきなり球団から聞かされたのも癇に障ったようだ。「球団がいらないと言うなら仕方ないけど事前に一言あってもいいでしょ?昨年の初優勝には微力ながら僕も貢献したんだから」と怒りの矛先は球団フロント陣に。

「人にはそれぞれ事情があるから黙って日ハムへ行くか分かりませんよ(佐伯)」これは大好きなカープから放出される事へのシッペ返しなのか。「事前にトレードの打診が無かったことで感情が高ぶってしまったのかも。でも佐伯はクレバーな男だから一連の発言は単に感情に流されてのものとは考えにくい。少しでも自分に有利な条件を引き出そうとしているのでは?(球団幹部)」という声もある。「まだ24歳だから野球をやめるわけにもいかない。ただね東京は地震が多いでしょ。何か起きてもカープは保証してくれないですからね(佐伯)」。なるほど、だから放出される前に貰うものは貰う腹づもりなのか。



期待裏切られて喜ぶ外木場
気前いいフロント?本人予想を下回る減俸にニヤニヤ
昨季は悲願の初優勝を果たしたことで契約更改では日本一となった阪急ナインがビックリ腰を抜かさんばかりの大盤振る舞いだったカープ。何と1千万プレーヤーがホプキンス選手、シェーン選手の両助っ人を含めて7人も飛び出す華やかさだった。MVPの山本浩選手は倍増の2千万円台にアップするなど、これまでのカープを知る人には考えもつかない気前の良さだった。もっとも当時の重松球団代表は「もし来年がダメだったら厳しく減俸します」と釘を刺すのも忘れていなかった。それだけに今季は3位に終わっただけに大荒れの契約更改になると予想されたが意外や意外の展開となった。

更改は若手から始まり1千万円プレーヤーの一番手は外木場投手。今季は四度の故障もあって登板回も激減し昨季の20勝から半減の10勝に。本人も「15%から20%のダウンは覚悟している。15%だったらサインするつもり」と話していた。結果は球団側の温情で13%ダウンの1千7百万円(推定)の提示。外木場は二つ返事で即サインした。「球団に感謝している。来年は怪我なくフルに働きたい。その為にも明日とは言わず今日からでも筋力強化の練習をするよ」と満足顔。果たして残りの不振だった1千万プレーヤー達が揃って球団の温情を受けられるかは疑問だが、少なからず光明を見出した気分であろう。
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# 623 週間リポート・日本ハムファイターズ

2020年02月19日 | 1976 年 



オレたちの味方は84万人
観客動員独走!首位キラーの迫力も十分
9月12日のロッテ戦の試合前に行われた「第6回・少年ファイターズ会」の " 人工芝で遊ぼう " は大成功だった。午前11時半、ヨーイドンの合図と同時に後楽園球場の人工芝はアッという間にちびっ子に占領された。グローブとボールを持って来た子はキャッチボールを、何も持たずに来た子は人工芝の上を飛んだり跳ねたり大喜びだった。この日の参加者は少年ファイターズの会員とその保護者や友達など総勢1万8千人。中には墨田区から自転車に乗ってやって来た少年のように午前3時過ぎに球場に到着した子も少なからずいた。大盛況ぶりに球団関係者は「こんなに喜んでもらえるなら何回でもやりたいが、参加希望者が多すぎて二部制・三部制にしないと」と嬉しい悲鳴。

今や17万人を越えた少年ファイターズ会員。それに呼応するように日ハムの観客動員数は昨年の3倍増だ。この日のロッテ戦の観客は3万6千人、前日は3万5千人、前々日が1万6千人と3連戦で8万7千人を集め日ハムの観客動員数はセ・リーグの大洋を抜いて84万人に達した。「100万人は無理かも知れませんが来年には何とか達成したいです」と営業担当者は一足先にパ・リーグ制覇を成し遂げた事にホクホク顔だった。一方の現場もホクホク顔。首位のロッテを迎えての4連戦は4戦目を雨で流し3連戦となったが2勝1敗と勝ち越し、ロッテを首位から引きずり落とす上位いじめぶりを遺憾なく発揮した。

特に投手陣の踏ん張りが見事だった。10日は杉田投手がロッテのエース・村田投手と投げ合い被安打「3」に抑えたが山崎選手に2ラン本塁打を浴びて負けた。「フォークがすっぽ抜けてしまった(杉田)」と悔やんだが「杉田の悪い癖だった立ち上がりもだいぶ改善された。次は期待できる」と大沢監督も合格点を与えた。まさに後期の日ハムは首位キラー。首位チームに対して4勝3敗でロッテ戦の前にも南海を首位転落に追い込んだ。「ウチは弱い者いじめはしない(大沢監督)」とは人情家の親分らしい。多くのファンの声援を背に残りの試合も上位いじめに徹する覚悟だ。



オレ嬉しくたまらんョ
ドラフト・トレードいずれもグーで高笑いの大沢親分
「実にいい補強が出来たぜ」と大沢監督は自信いっぱいに断言した。11月19日のドラフト会議とトレードに関しての感想だ。ドラフト1位で指名したのはセンバツ優勝投手の黒田真二投手(崇徳高)。2位指名は社会人選手権準優勝投手の藤沢公也投手(日鉱佐賀関)。黒田は甲子園で一躍有名になったが藤沢はそれほど一般には知られていないが実力は折り紙付きで昭和44年にロッテ、46年にヤクルト、48年には近鉄がそれぞれ指名した過去がありプロの世界では知られた存在。3位指名は夏の甲子園大会で8打数8安打を記録した末次秀樹捕手(柳川商)、4位指名も東都大学リーグのスラッガー・大宮龍男捕手(駒大)でバッテリーを強化した。

5位指名は柿田登外野手(宇部商)、6位指名は下田充利投手(岡山東工)。下田について瓜生編成部長は「遠投105㍍の強肩、ズック靴で100㍍を12秒を切る走力。打率も5割超と投打どちらでも一流になれる素材」と絶賛する。「とにかくポジション関係なしに実力だけのランクを作り順番に指名した。彼らは上位24人に入っていた選手ばかり。ポジション的には偏った印象もないではないが満足できるドラフトだった」と大沢監督。1位の黒田は高校生では将来性がトップクラスの投手で2位の藤沢は社会人3羽ガラスの1人で即戦力とバランスも取れている。指名順が九番目にしては上々のドラフトだった。

次なる補強策はトレード。新実、皆川の新人王コンビに内田、鵜飼の4人を放出し、15勝は固いと言われる佐伯と火消し役の宮本の2投手と投手陣の強化と共に補強ポイントの一つだった内野手に久保の計3人を広島から獲得した。また佐伯の加入は副作用を生む可能性がある。それは日高を刺激することである。日高は高校時代は「広陵の佐伯」か「広島商の日高」かと広島県下で好投手の評価を二分した投手だったが、日ハム入団後に肩を怪我して現在は内野手に転向し二軍で奮闘中。佐伯の存在が好影響を与えるのを期待する。

広島から新実が欲しいと申し込まれた日ハムが「新実は出せないがウイリアムスで佐伯か外木場のどちらか欲しい」と新実以外のトレードを提案したが佐伯も外木場も出せないと答えてトレード話は頓挫した。その後、渡米先から帰国した古葉監督が改めて球団内で協議をして前述の4対3の複数交換トレードが成立した。昨年もドラフト会議後に近鉄から阪本、服部、永淵を獲得した交換トレードに続く大型トレードだった。「新実と皆川を出すのは痛いが、これで軸になる投手が高橋直、高橋一、野村、杉田、佐伯と5人揃った。来年が楽しみだよ」と大沢監督も手応えを感じている。



全面拒否
「くじ運の割に良い選手を指名できた」と今回のドラフト会議について御満悦だった瓜生編成部長だったが、1位指名の黒田投手(崇徳高)以下、3位指名の末次捕手(熊本工)らの入団拒否にあって頭を抱えている。「金銭的な条件面での難航なら交渉次第でいくらでも解決法はありますが、" プロ入りしない "・ " 日ハムには入団しない " とあっては交渉のしようがない。本当に頭が痛いですよ」と瓜生部長。ただし手をこまねいているわけにはいかない。「こうなったらじっくり腰を据えて、こちらの事情を説明して理解してもらうしかありません(瓜生)」と各担当スカウトたちは連日、広島・熊本・東京を行き来している。現状では年内の入団は難しそうだ。

一方、現役選手たちへの契約更改交渉も大きく変わった。これまでは選手が球団事務所に出向いて宮沢総務部長か三原球団社長と話し合い交渉して来季の契約を行なってきたが、今年から球団が選手宛てにあらかじめ来季の年俸を記入した契約書を郵送して選手がそれに納得すればサインをして返送するシステムに変更となった。ただしイエスかノーかの二択しかないのではなく、来季の年俸に不満があれば球団事務所に行き交渉するのも可能なのだが三原社長は「球団事務所まで来て話し合うといっても選手の方は『上げてくれ、下げないで』を言うだけ。そのために時間を割くのは無駄」と切り捨てた。

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# 622 週間リポート・南海ホークス

2020年02月12日 | 1976 年 



オレ様は「名消防士」さ
連日の好リリーフでまさに「神様・仏様・佐藤様」
開幕から佐藤投手が火消し役で大活躍している。チームを窮地から救っては「神様・仏様・佐藤様」とかつての鉄腕・稲尾のように崇められている。今季の南海には阪神から江夏投手が移籍し抑え役を務めているが、その江夏が目を丸くするほどのタフネスぶりを佐藤は発揮している。何しろ過去6年間怪我知らずで「毎日投げないと調子が狂う(佐藤)」と出番を催促するくらいだからまさに火消し役をやる為に生まれてきた投手なのだ。「南海投手陣でタイトル争いが出来るのは江夏くらいって思われたら悔しいからね。オレだって " リリーフの佐藤 " で売ってきたんだ。軽く見られたら男がすたるぜ」とキャンプから江夏をライバル視していた。

良い意味での対抗意識が佐藤には常にあり、江夏と張り合う覚悟でいる。4月4日の開幕戦(太平洋戦)でリードした9回の頭から起用された佐藤だったが、一死後に白選手に安打を許し代打に左打者の吉岡選手が起用されると江夏に交代させられた。この時の佐藤の悔しがりようといったらなかった。「ちくしょう!吉岡ごときに交代とはオレも落ちたもんだぜ。今に見ていろ必ずスカッと最後まで投げてやるからな、憶えてろ」と吐き捨てた。こうした台詞をベンチで堂々と言ってのけるのが佐藤の良さでもある。陰でコソコソ言う陰湿さが無いので首脳陣も批判とは受け取らずシコリも残らない。

この負けん気は翌5日に早速実を結ぶ。中山投手をリリーフして今季初セーブ。更に7日の近鉄戦ではピンチを迎えた江夏をリリーフしてセーブを記録して開幕戦の汚名を返上した。「あの近鉄戦のリリーフは久しぶりに熱くなったね。江夏は潔くオレにバトンタッチしてくれたし、試合後も素直に感謝してくれて嬉しかったね。リリーフ投手の最高の喜びはこれ。本当にジーンときたよ(佐藤)」と。佐藤にはひとつのジンクスがある。それは1年おきにタイトルを獲ってきた。1年目は新人王、3年目は勝率第1位、5年目はセーブ王、そして今季は7年目だからタイトルと縁のある年になりそうだ。

「投手の夢はもちろん最多勝・勝率・防御率の三冠だけどリリーフ専門のオレに最多勝は無縁。狙うとすれば残りの2つかセーブ王。一番欲しいのはセーブ王だね」リリーフ専門で1000万円プレーヤーになったことに佐藤は誇りを持っている。年俸を更にアップするにはどんどんセーブを稼がねばならない。今季の目標は60試合登板。それだけ投げれば結果は付いてくる筈。「本当は先発投手が完投すればオレが登板する必要はない。その方がチームにとっては喜ばしいだろう。でも現実は甘くない。投手個人もチームにも好不調の波は必ずある。先発陣が苦しい時こそオレの出番だ」と佐藤は力強く話す。



雨が降ったら何もでけんでは
なんとか室内練習場を。ノムさん深い悩み
日本列島に深いツメ痕を残した台風17号。各地の災害もさることながら混戦が続くパ・リーグ戦線に大きな影響を残した。南海も8日からの6日間で消化したのは僅か1試合。しかもエース・山内投手の乱調で痛い黒星を喫し優勝戦線から一歩後退となってしまった。「雨ですっかりコンディションを狂わされた。ウチが雨に弱いのは伝統や」と野村監督が自嘲するのには根拠がある。各球団の雨対策はほぼ解消されつつある。巨人は多摩川グラウンド脇に、ヤクルトは神宮に室内練習場を完備させた。在阪パ・リーグの阪急や近鉄も本拠地球場の隣に打撃練習には十分な広さの雨天練習場を作った。

片や南海は中モズの合宿所の隣に申し訳程度の室内練習場があるだけ。実際は室内練習場とは程遠く「あれはブルペンだろ。しかも1人が投げるのが精一杯の。打撃練習をしても打球がすぐネットに当たるから飛距離も分からずかえって調子を崩してしまう」と選手には不評だ。そこで球団は大阪球場内に雨天練習場を作る計画を何度も立てたが広さが十分に確保できず実現しなかった。雨が降る度に調子を狂わされて雨天中止の翌日の試合に勝てない理由の一つが室内練習場を持っていないせいでもある。ただでさえ打力に不安のある南海打線。中でも新井・相原・片平・定岡など経験の浅い若手は打ち込まないと好調を維持するのは難しい。

「打ち込みをさせたい選手が沢山いるのにこんな状態ではな…(野村監督)」先発メンバーの半数以上が打ち込みを必要としながら練習場が無い。野村監督の悩みが深刻なのもこのあたりに原因がある。1試合の勝ち負けがペナントレースの結果を大きく左右する団子状態の現在、野村監督ならずとも万全の態勢で試合に臨みたいのは当然である。「ここにきてこんな事で頭を痛めるなんて情けない。でも無い袖は振れない。どこか打ち込みが出来る場所を探さなくては」と額に皺を寄せる野村監督であった。



わてらの町の英雄ノムさんだ
野村監督故郷に帰り引っ張りダコのモテモテぶり
テレビ局がシーズンオフの企画として野村監督の里帰り番組を制作した。今は両親も亡くし生まれ育った実家もない京都府竹野郡網野町だが故郷はやはり格別だった。愛車のコンチネンタルで町を一望できる高台を訪れると「ここは30年ほど前に遠足で来たなぁ。当時は終戦間際でね、満足な弁当も無くて腹をすかしていたを思い出すよ」とポツリポツリ語った。続いて海岸へ移動すると「夏に遠泳をした。懐かしいな」と今は冬の海で白い波が岩に砕ける荒々しい風景を前に当時の様子が昨日の事のように蘇っているようだった。

このあと創立101年目を迎えた網野小学校へ向かった。当時と変わらない校門脇の椎の木や二宮金次郎の石像に懐かしさもひとしお。職員室に入ると4年生時の担任だった川戸先生(現教頭)と対面した。「当時は軍隊帰りの先生によく殴られました(野村)」と昔を蒸し返して大笑い。その後、教室に向かう途中に在校生たちに捉まって立ち往生する場面も。更には川戸先生に「講演をやってくれないか?」と予定外のお願いをされた。人前で喋るのが苦手なノムさんだが恩師の頼みを無下に断るわけにもいかず渋々承諾。

冷や汗をタラタラ流しながら講演を終えたノムさんに川戸先生が「創立記念の原稿も頼む」と追い打ち。これ以上は勘弁してくださいと丁重にお断りし学校を後にしたノムさんに一難去ってまた一難。町へ戻ると今度は顔見知りから「どうしたんや?」と次々と声をかけられた。なにしろノムさんは町の英雄であり名誉町民であるから仕方ない。しかもこれらの人達から夕食の招待が続々と。こちらも川戸先生同様に断りきれず " はしご訪問 " するはめに。普段より多忙となった里帰りだったが「やっぱり故郷はええなぁ」のノムさんだった。
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# 621 週間リポート・ロッテオリオンズ

2020年02月05日 | 1976 年 



三井「オレ、豪雨大歓迎」
コールドゲームに助けられノーヒットノーラン
4月14日の対近鉄戦(後楽園)で三井投手は5回を無安打・3四球・無失点の好投を見せた。ロッテ打線は2回裏に江藤選手が左翼席へ先制アーチ。3回裏にもラフィーバー選手の適時打で2点をリードし三井が6回表の先頭打者の石渡選手に1球目を投じたところで豪雨に見舞われ試合は中断。結局、中村球審がコールドゲームを宣告して試合終了。これによりパ・リーグでは史上6人目となる参考記録としてのノーヒットノーランを達成した。「そりゃあ最後まで投げたかったですよ。調子そのものは8日の太平洋戦の方が良かったけど、変化球は今日の方がキレていた。参考記録とはいえレコードブックに自分の名前が残るのだから雨が降ってくれて助かりました。エへへ」

「今日の三井なら9回まで投げても1点くらいしか取られなかったろう。まだ若いんやから今後もバンバン完投してくれないと困る」と普段は小言が多いカネやんもこの日ばかりは目尻を下げた。しかしカネやんも胸の内は複雑であろう。思えば5ヶ月前の昨年の暮れ、三井と巨人の高橋一投手プラス柳田選手との1対2の交換トレードが内定して三井は「憧れの巨人のユニフォームを着られるなんて人生最高の幸福」と感激したのだが、その後に紆余曲折あってそのトレードは御破算になってしまった。当時の三井以上にショックだったのがカネやんで欲しかった高橋一投手はその後に日ハムに獲られてしまい「アカン、来年のウチは最下位や」と嘆いたが今現在の三井の2勝がなかったら本当に最下位に沈んでいたかも。



物いえば口びる寒し秋の風 !?
ハム喰えずライオンに喰われカネやんガックリ
台風17号の影響で甲子園の伝統の一戦などセ・リーグの3試合が全て中止となったがパ・リーグの3試合は行われた。後期25勝19敗で同率首位に並ぶロッテと南海。半ゲーム差で追う阪急の3強による争いは激しい。9月10日の日ハム対ロッテ8回戦(後楽園)で村田投手(ロッテ)がプロ入り9年目で初の20勝をマークし単独首位に。「ワシは素晴らしいファミリーを持ってホンマ男冥利に尽きるで(金田監督)」とハムをパクリと喰ったカネやんだったが喜びは長くは続かなかった。翌11日の試合は村田に次ぐ12勝の八木沢投手がいきなり初回に小田選手に3ラン本塁打を浴びて敗戦。一日にして首位陥落したカネやんは怒り心頭だった。

そのカネやんの怒りに油を注いだのが12日に先発予定だった三井投手。試合当日の朝に下痢による腹痛を訴えて先発を成田投手に変更。試合に勝てていれば大した問題にもならなかったが急きょ先発投手に代わった成田は4回迄は無失点に抑えていたが、5回に千藤選手に左中間に決勝適時打を許し2対5で3連敗を喫した。しかも下痢の原因が前夜の食事の食べ過ぎと聞いたカネやんの血圧は更に上昇し「日頃から体調管理は注意せい、と口を酸っぱくして言っていたのに…。よりによって大事な試合前に食べ過ぎで腹痛になるとは情けないで」と怒りを通り越して呆れ顔。

「ロク(八木沢)のやつ、試合開始30分前にクーラーの効いた選手サロンでサンドイッチを食べていたんだと。汗をかいたままクーラーで体を冷やしたらアカン。そもそも30分後にマウンドへ上がるのにメシを喰ってる投手がいるか !?」と金田監督の怒りの矛先は2人の投手に向けられた。それでも何とか気を取り直して「ジプシー生活を強いられているロッテの選手達はたまに東京に戻ると女房や子供の世話に大忙しなんや。その点を大目に見てやらんと選手が気の毒や。まぁ次の仙台での試合で仕切り直しや(金田)」と15日からの太平洋戦のダブルヘッダーに向けて気持ちを切り替えた。

ダブルヘッダー第1試合の太平洋は7連敗中、一方のロッテはエース・村田が先発とあって連敗を止められると楽観的だったが、村田は太平洋打線の餌食となり先発全員安打を許し4失点でKO。ロッテ打線は新人の古賀投手に散発4安打で完封されてしまった。続く第2試合は八木沢・三井の " 日ハム戦因縁の2人 " が奮起して完封リレーで勝利した。この日は南海と阪急が共に勝利した為、ロッテは3位のまま。「ウチは体力的にも精神的にも限界にきているんや。選手もここで踏ん張らないとズルズルいってしまうと頭では分かっているが体が動かないんや…」とカネやん。まさに物いえば口びる寒し秋の風だ。



ええ~トメはいらんかやあ
カネやん弟の留広売り込みに連日の大忙し
ドラフト会議には姿を見せなかったカネやん。「ワシが行くとクジを引かされる。クジはもうこりごりなんや」と苦笑いするのも尤もで、昭和48年のドラフト会議では予備抽選で見事「一番目」を引き当てて意気揚々と本抽選に臨むと今度は何と「十二番目」を引いて会場を大爆笑させた苦い経験があるのだ。金田監督の代わりに土屋コーチが引いたクジの結果は「八番目」。何とも中途半端な順番だったが東都大学リーグのエース・森繁和投手(駒沢大)を指名したとの連絡を受けた金田監督は「まさにラッキーエイトや。これで来シーズンのローテーション問題は解決する」とご機嫌だった。

一方でなかなか解決しないのがカネやんの弟・金田留広投手の処遇だ。これまで巨人や中日に売り込んだが色よい返事は貰えず宙ぶらりん状態。ゴルフ場で顔を会わせたヤクルトの松園オーナーに浅野投手プラス益川投手との交換トレードを申し込むと松園オーナーは「広岡君に伝えておく」と返事。期待して待っていたが「釣り合わない(広岡)」とにべもなく断られた。「ワシの為にもトメの為にも出来ればヨソの球団でプレーするのが良いと思っている。トレードはホンマに難しいわ」と顔に皺を刻み付けていた。

11月23日には甲子園球場で阪神・巨人のOB戦が行われてカネやんも出場した。試合前に広岡監督を見つけると「もう一度、考え直してくれ。トメはまだまだ働ける。環境が変われば10勝できる。ワシが保証する。ヤクルトにとっても悪い話ではないで。何なら浅野や益川以外の選手でも構わないので頼む」と猛プッシュしたが、「もう来季の編成は終わっているので(広岡)」と再度断られた。巨人の柴田選手に次ぐオフの主役になった金田留広の売り込みにカネやんは今日も東奔西走のお忙し氏ぶりだ。
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