Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 380 ドラフト展望 ④

2015年06月24日 | 1983 年 
【読売ジャイアンツ】:駒田・吉村がいるから藤王はない。狙いは水野… " 王野球 " は間違いなく攻撃主体となる筈でドラフト戦略もパワフルな打者に狙いを定めていると思われがちだが内情は投手陣に不安を抱えており実際は投手に絞ったドラフトを展開するのではと言われている。そこで1位指名入札は原の後輩でもある高野(東海大)か或いは競合を嫌い水野(池田)に行く可能性が高い。特に水野は寧ろ打者としての評価の方が高く投手として使えなくても損は無いという訳。また高野同様に川端(東芝)や池田(日産)も1位候補だがスカウト陣は水野の将来性を評価している。

球団内には攻撃野球の色を出す為に藤王(享栄)を推す一部勢力もあるが同じ左打ちで成長著しい駒田や吉村がいては藤王の出番は無く、敢えて競合の危険を冒す必要はないとの意見が大勢だ。水野入札でもしも他球団と競合し抽選で外れた場合でも投手路線は変更せず渡辺(前橋工)や小野(創価)ら高校生を指名する予定。幸い槙原や駒田・吉村といった高卒選手が育ち活躍している事がアマチュア球界でも「巨人は育成も上手い」と評価されており交渉権さえ獲得出来れば入団に障害は無さそうだ。



【広島東洋カープ】:地元の小早川が既定路線だが一転高野も…野崎球団本部長が「ウチは藤王や」と報道陣を前に大見得を切っても誰ひとり信じていない。思い返せば昨年も野崎本部長は「木戸(現阪神)で行く」と言いながら実際は田中富(現日ハム)に入札した過去があるだけでなく今年は地元・広島市坂町出身の小早川(法大)以外は考えられない。小早川は卒業を前にしても一般企業への就職活動はせずプロ一本に絞り、しかも「カープが好き」と事実上の逆指名をし、木庭スカウト部長も「彼の気持ちに応えてやらんといかんでしょう」と相思相愛で他球団の付け入る隙は無いなのが現状なのだ。

万が一、他球団に獲られた場合は投手陣の強化が急がれるチーム事情から仲田幸(興南)、三浦(横浜商)、青木(東芝)もリストアップしている。更にV奪回が至上命令で後がない古葉監督が高野(東海大)を高く評価しており、どうしても欲しいと球団に直談判すれば急転直下、高野入札も可能性はゼロではない。また2位以下の隠し玉は板倉(早実)と紀藤(中京)。板倉のパンチ力は昨夏の甲子園大会で実証済み、紀藤に関しては中学生の頃から木庭スカウト部長がマークしていて同じ中京高の野中以上の評価をしている。



【横浜大洋ホエールズ】:投手力不足は相変わらず。狙いは青木か…4年ぶりのAクラス入りを果たしたが打線におんぶに抱っこの弱体投手陣の補強が今ドラフトの目標。青木(東芝)、池田(日産)、中西(リッカー)ら実績のある社会人投手がターゲットとされているが、昨年指名した関根との入団交渉の際に日産側と行き違いがあり一時トラブルになった事から池田獲得は難しいのではとの声がある。また野手陣も山下や田代の後継者作りが急務で藤王(享栄)、池山(市立尼崎)が候補となっているがこちらは即戦力というより将来性を見越しての指名を検討している。

銚子(法大)は法大野球部の監督を務めた事もある藤田省三氏と関根監督の法大OB人脈を活用して獲得を狙っている。他にも外野手の鶴岡(日産)や鈴木(東芝)もリストアップされているがやはり本命は投手でスカウト陣の評価が高い青木であろう。しかし現場の関根監督や小谷投手コーチは高野(東海大)に御執心で「大学の先輩でウチの遠藤に似てるけど球速は高野が上だね(小谷コーチ)」と諦めきれないようだ。「大物が少なく少数精鋭だけに誰に入札しても1位指名の重複は必至(湊谷スカウト部長)」と玉砕覚悟で高野入札も消えていない。
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# 379 ドラフト展望 ③

2015年06月17日 | 1983 年 
【近鉄バファローズ】:再建は投手陣から。岡本新監督は水野を希望…水野(池田)の1位指名を山崎球団代表が早々に打ち出している。当初は即戦力左腕投手に狙いを定めて西村(新日鉄広畑)、中村(拓銀)、小野(創価)、仲田(興南)らの調査を続けていたが依田投手をテストで獲得して状況が変わった。今季、南海が畠山を獲得し予告先発で観客動員数を増やした例を見倣って実力と人気を兼ね備えた水野が1位指名候補に一気にのし上がった。櫟コーチが池田高の蔦監督と同志社大の先輩・後輩の間柄で、その関係を生かし積極的なアプローチを続けている。

岡本新監督も「チーム再建は投手陣の立て直しが第一。ドラフトも投手中心にお願いしたい」と要望している。梶本スカウト部長は「今年は1位指名入札で競合を恐れる必要はない。仮に抽選に外れても順番的に入札と同レベルの選手を獲れる」と見ている。粒揃いと前評判が高い今年のドラフトの恩恵に与ろうという訳だ。一昨年、対外試合禁止処分を受けて1年間公式戦に出場出来ず他球団が指名を躊躇していた小山(天理)を獲得したように今年も同じ境遇の加藤(倉吉北)に目をつけている。「球のキレは一級品。実戦から遠ざかっているだけで素晴らしい素材(河西スカウト)」と高評価の加藤が隠し玉か。



【南海ホークス】:左腕不足で小野。ポスト門田で小早川・銚子…1位入札はズバリ、小野(創価)か。左腕投手不在解消が長年のチーム課題。そこで全スカウト・スコアラーがビデオを参考に検討した結果、小野の名前が急浮上してきた。勿論、仲田幸(興南)や西村(新日鉄広畑)も候補だったが仲田は甲子園で評価を下げ西村は伸びシロの点で消えた。ただ流動的な面が残っているのも確かでポスト門田の主軸を打てる野手を求める声も根強く候補は共に法大の小早川と銚子。特に銚子は名門・法大の主将を務める程のリーダーシップの持ち主で将来の幹部候補生にと球団は考えている。

一方で水野(池田)を推す声も球団フロント陣の中で少なくない。昨年、池田高の先輩・畠山を指名したが当初は畠山サイドが大学進学を打ち出して入団交渉は暗礁に乗り上げたが粘り強い交渉の末に獲得に成功した。その際に開拓した交渉窓口を水野にも使えるという訳だ。ただ畠山自身にある種の " 池田アレルギー " がある事が露呈した。それは今夏の甲子園大会中に母校の池田高の戦いぶりの感想を記者から求められると畠山は露骨に嫌な表情で「池田高時代の話はしたくない」と頑なにコメントを拒否した。記者達は「高校時代に何かあったのか?」と訝しがったが畠山は現在に至るまで無言を貫いている。なので池田高出身の水野との共闘は無さそうだ。



【ロッテオリオンズ】:人気・実力に長けた高野にチームの浮沈を賭ける…ロッテの来季は今年のドラフトにかかっている。8日のスカウト会議では「とにかく即戦力投手」を再確認した。それは剛腕・高野(東海大)の1位指名入札を意味している。三宅スカウト部長は一応「川端・青木(共に東芝)、池田(日産)も候補」としているが本命は高野一本だ。幸いな事に高野も「大学の先輩である井辺さんがいるので心強い」とロッテに対して悪い印象は持っていない。

しかし高野に最大5球団が入札すると予想されるだけに抽選に外れた場合の次善策が大事となる。当然、即戦力の川端・青木、池田が候補となるが競合を嫌って高野を回避し彼らに入札する球団があれば最悪だれも残っていないケースも考えられる。その場合は藤王(享栄)や小早川(法大)など好打者も揃っているが野手は見送って渡辺(前橋工)や小野(創価)とあくまでも投手に固執する腹づもりでいる。昨年はドラフト外も含めて10人が入団したが「来年は丙午で高校生が少なくなるのでその分今年も昨年並みの人数を獲得するつもり(三宅スカウト部長)」と今年もロッテは意欲的だ。
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# 378 ドラフト展望 ②

2015年06月10日 | 1983 年 



【西武ライオンズ】:スターは高校生から。将来のレオの星は藤王…「人気プラス実力」 これがドラフト1位指名の条件である。野球の能力だけではダメ、さらに人気が備わっていなければ常勝軍団の1位には相応しくないと言う訳だ。しかしどちらをも合わせ持った選手となると限られてくるのは当然で導かれる答えは藤王(享栄)となる。パンチ力は高校生レベルを遥かに越えている。「何よりもホームランを打てるのが魅力。プロはショーマンシップだから」と担当する毒島スカウトはゾッコン惚れ込んでいる。また「ポスト田淵のスターは高校生から(坂井球団代表)」と公言するフロント陣の思いとも一致しており、藤王1位指名は間違いないと思われていたがここにきて情勢が少し変わってきた。

スカウト陣内部から実力ナンバーワンの高野(東海大)を推す声が日毎に増してきていて、ドラフト会議に向けて根本管理部長は最終的判断を決断する前に今一度、全スカウト意見とフロント幹部の要望を取りまとめる必要に迫られている。ただ球団内の大勢は藤王指名で固まっており入札はほぼ確実だ。いずれにせよ野手の高齢化が進み世代交代が必至の為、2位以下も白井(駒大)・西浦(近大)・池山(市立尼崎)と野手中心で行く予定。野手に比べて余裕のある投手は青木(東芝)・加藤(国鉄名古屋)・小野(創価)・渡辺(前橋工)らが候補に挙がっている。



【阪急ブレーブス】:現場は高野ら即戦力だが水野の人気も捨て難い…人気か実力か、ハムレットの心境になっているのが今年のドラフトに賭けている阪急。観客動員数をアップさせるには高校野球界のヒーロー水野(池田)を獲得したい所だがそうもいかない台所事情を抱えている。今季の戦いぶりを見て即戦力の投手が必要不可欠なのは歴然で上田監督としては1人でも多くの先発を務められる投手獲得を熱望している。今月の1日に行なわれた2回目のスカウト会議でも上田監督は「外角に来る直球は一級品。即戦力No,1間違いなし」と改めて高野(東海大)指名を求めた。

ただ人気面を無視する事も出来ない。観客動員数100万人を目標とする球団フロントとしては水野、野中(中京)の他にも小野(創価)も1位指名の候補に挙げている。藤井編成部長は「将来的に必ず戦力になる」と水野ら高校生投手を単に人気だけの選手とは捉えていない。ただ現実問題として山沖投手以外に信頼出来る先発候補が見当たらないのも事実で即戦力投手を補強出来なければ来季の先発ローテーションを組めない。上田監督以下首脳陣の希望もこの一点で一致しており1位指名は正攻法で高野、池田(日産)、川端(東芝)らの大学・社会人投手に落ち着くものと思われる。



【日本ハムファイターズ】:狙いは左腕投手。狙いは小野か仲田幸…即戦力にしても将来性にしても左腕投手を狙っている。6日に六本木の球団事務所で5回目の編成会議が開かれた。「順位をつけるのは最後の会議。まだプロ入りの可能性のある選手をリストアップしている段階で植村新監督の希望を聞かないと(三沢編成課長)」と煙幕を張る。一昨年の球団初優勝後は西武の後塵を拝し続けているだけに来季こそ打倒・西武が至上命令となり、その為には投手の補強が最優先課題で当然1位指名は投手重視になる見込み。高校生では水野、小野、野中、渡辺、吉井(箕島)、津野(高知商)、山田(久留米商)、仲田(興南)。大学・社会人では高野、川端、池田の名前が挙がっている。

「う~ん、コレッという選手がねぇ…。今年は即戦力が少ないので各球団も頭が痛いでしょうね」と渋谷・宮本両スカウトも顔を曇らす。「野手だと藤王、池山が頭ひとつ抜けている。しかも2人とも最近の在京セを逆指名する風潮に感化されず12球団OKと言ってくれて好感が持てる。出来たら2人まとめて一緒に獲りたい」とは丸尾球団顧問。しかし「やはり台所事情から言って左腕投手になるんじゃないかな」と三沢編成課長が発言している事から1位指名は小野か仲田の2人に絞られているようだ。
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# 377 ドラフト展望 ①

2015年06月03日 | 1983 年 



今年も暑い甲子園大会が終わり、いよいよドラフト会議に向けてスカウト達が本格的に動き出す。今大会で目立ったのは水野(池田)だがスカウト達が絶賛する声はどうやら建て前のようだ。確かに実力は投打とも高校生として抜きん出ている事は間違いないが、今のままプロでやっていけるかと問われると首を傾げる。打撃に関してはプロで経験を積めば一軍でプレー出来るレベルまでいくのは可能であろうが肝心の守る所が限られてくる。肩は強いがあのスローイングでは外野は務まらない。では一塁手?しかし投手としてのフィールディングを見る限り内野手は難しいだろう。そもそも一塁は動きの鈍くなったベテランや助っ人用のポジションに空けているのが各球団の現状で今は寧ろ投手としての評価の方が上ってきている。右打者の外角に決まる直球は確かに威力があり内角をえぐるシュートも通用しそうだ。

水野に関しては各球団の評価もまちまちである。近鉄は投手として評価していて「暫くは投手で。大学に進学したと思えば打者転向は3~4年後でも遅くない(担当スカウト)」と。阪急は打者として考えているが評価は藤王(享栄)より下で「昨年南海に入った畠山の契約金6千万円はとても出せない」としている。巨人はまだ投手でいくか打者かは決めかねていて同様にヤクルト、広島、西武も検討中だ。評価が分かれているのは仲田幸(興南)も同じ。阪急などは左腕不足で補強が急務であるだけに飛びつきそうだが「時間がかかりそう。2~3年先まで待つ余裕は今のウチには無い」と否定的。対照的に高く評価しているのが阪神でスカウト達には球団から仲田については箝口令が敷かれているらしく仲田に対するコメントは一切出していない。

仲田が素晴らしい素材である事は間違いなく魅力的だが不安も付きまとう。右打者の内角低目にズバリと決まる直球は確かに威力がある。しかし続けて同じ所に投げられる制球力がない。スピードと違って制球は練習すれば良くなると言う意見もあるが、過去にスピードはあるが制球難を解消出来ずに球界を去った先人は多い。制球難は直らないという持論の下、近鉄スカウトは仲田と同様に三浦(横浜商)に対する評価も低い。巨人は仲田や三浦に興味はなく秋村(宇部商)と吉井(箕島)に熱視線を送るが広島は2人には全く無関心で荻原(仙台商)を虎視眈々と狙っている。実のところ荻原は今大会での掘り出し物の左腕である。

野手で目立っていたのが池山(市立尼崎)である。大型遊撃手でありながら捕球の際にしっかりと腰を落とす基本が出来ている。何度かイレギュラーバウンドが襲ってきたが慌てず対応していた。これはかつての有藤(現ロッテ)の高校時代を彷彿とさせる。打撃は長打力も備えているが課題は変化球への対応だが、近鉄は打撃フォームに欠陥があり時間がかかると指摘し、更に近鉄は同じ大型内野手の金村の育成に手一杯で指名には慎重だ。阪急は春木(駒大岩見沢)にゾッコンで守りだけなら朝山(PL)の評価も高い。確かに春木の強肩はプロレベルだが打撃は力不足は否めず巨人や広島はリストにさえ入れてない。

野手に関して多くのスカウトの目は甲子園に出場していない選手に向けられている。藤王と板倉(早実)である。ただし難点もある。それは2人が一塁しか守れないという事。一塁は体力面から動きが鈍くなった強打者が守るというのが今のプロ野球界の実情から指名を躊躇している球団は多い。その点でDHのあるパ・リーグ球団の方が指名しやすく阪急、近鉄、西武あたりが指名を検討しているが近鉄はセンバツ大会より評価を下げ撤退。セ・リーグの巨人は板倉はリストから外し藤王は検討中との事。中日は地元のスターを逃す訳にはいかず山内新監督の投手希望も聞き入れず藤王指名に動いている。過去に地元出身の槙原(巨人)や工藤(西武)を他球団に獲られた事に対する批判が名古屋圏で強く、二の舞いは御免という所か。
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